BanG Dream!~青薔薇との物語~   作:TRcrant

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第11話 初日

無事に全校生徒の前であいさつをすることができた僕は、次なる試練に直面することとなった。

 

「それじゃ、合図をするからここで待っててね」

「は、はい」

 

向井先生に返事をすると、先生は教室のドアを開けて中に入っていく。

そう、クラス分けだ。

 

『今日から、D組の担任になります、向井です。最初のHRを始めます』

 

どこか教室内がざわついているような気がする。

それもそうだ。

おそらくどのクラスでも、一番の関心事は僕がどのクラスに来るのかだ。

男子生徒という存在を受け入れる入れないはともかくとして、自分たちのクラスなのかどうかは、気になるはずだ。

とはいえ、D組の生徒はすでに察しているのかもしれない。

何せ、空席があるはずなのだから。

 

『はいはい。みんなが気にしていることは分かるわよ。本日より皆さんと同じクラスとなる生徒を紹介します。どうぞ』

 

教室内からこれほどわかりやすいことこの上ない紹介と合図に、僕は一度深呼吸をすると教室のドアを開けた。

この時すでに緊張は限界点を突破していた。

あえて横は見ずに教卓の前まで移動すると、初めてクラスメイトになる人たちのいるほうに体を向ける。

 

「奥寺一樹です。ご迷惑をおかけすると思いますが、今年一年間よろしくお願いします」

 

そう言い切った僕は、彼女たちに頭を下げる。

挨拶は朝礼の時のを少しだけアレンジしたものだ。

無難な挨拶にしたのがよかったのか、教室にいた人たちから拍手が返ってきた。

 

「それでは、奥寺君は空いている席に座ってください」

「はい」

 

先生の案内に、僕は空いている席を探す。

 

(あった)

 

そこは廊下側のやや前側の席だった。

おそらくは五十音順だろう。

 

(座ったら、隣の席の人に挨拶はしておこう)

 

何事も始めが肝心だ。

親密になるか否かは別として、あまり悪い印象を持たれるのはまずい。

 

「これからよろ――――」

 

僕は自分に言い聞かせるようにして、空いている席に腰かけて、隣の席のほうに顔を向けながら挨拶をしようとした僕は、思わず言葉を失った。

 

「うん、よろしくね☆ 奥寺君。同じクラスでよかったね」

 

そこにいたのは、先ほど迷子になっている僕を職員室まで案内してくれた、今井さんだった。

どういうわけかは知らないけど、隣の席になったようだ。

 

「よろしく、今井さん」

 

色々と先が思いやられる中、何とかやっていけそうだと思いながら、向井先生の連絡事項を聞くのであった。

 

 

 

 

 

「一樹ってば、みかけによらず手が早いわねー。もう女の子と仲良くなれちゃうんだもんね」

 

HRも終わり、今日は解散となる中、同じクラスになっていた森本さんが意味ありげなことを言いながらこちらに近づいてきた。

 

「変なこと言わないでもらえる?」

「何何? 二人とも知り合い?」

 

僕と森本さんのやり取りを見て、軽く驚きながらも興味ありげな様子で今井さんが声をかけてきた。

確かに、今井さんと最初に会った時は警戒心MAXに加えての敬語だったにもかかわらず、森本さんには親しそうに話をすれば、興味を持たれて当然だろう。

 

「ええ。彼とは幼馴染なのよ、小さい時からいつも一緒でね」

「へえ、そうだったんだ。アタシにも幼馴染がいるんだけどね。いやー、なんだか親近感を感じるなー」

 

(すご、もう意気投合してる)

 

まだ話をして間もないのに、意気投合している二人に、僕は軽く引いていた。

 

「あ、アタシは今井 リサ。リサでいいよ」

「私は、森本 明美。明美でいいわ。よろしくねリサ」

 

そしてすっかり仲良くなってるし。

 

(この二人怖い。本当に)

 

あまりの展開の速さに、僕は恐怖心を抱くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、今井さんが用があるということで教室を後にしたのをきっかけに、僕たちも自宅に帰ることにした。

 

「ただいまー」

「お邪魔します」

 

勝手知ったるなんとやら。

学校帰りに直行でここに来るのも、珍しいことではない。

 

「おかえり、一樹。それとよく来たわね、明美ちゃん。お茶を出すから二人ともリビングで待ってなさい」

 

故に、母さんの反応も自然だ。

そんなわけで、僕は鞄を自室においてリビングに向かうと、すでに出されていた麦茶を飲んでいる森本さんの姿があった。

 

「それで、初日はどんな感じ?」

「……色々と圧倒されたよ」

 

台所にいた母さんの問いに、僕は苦笑交じりに感想を言う。

朝礼の時は、視線の強さに圧倒され、教室ではまた違う意味での視線に圧倒され。

まさに、圧倒され尽くしの一日と言っても過言ではないだろう。

 

「て言ってるけど、実際のところいい感じに溶け込んでいますよ。すでに仲良くなった人とかいますからねー」

「ちょっ!?」

「まーまー、今度こそ春到来ね~」

 

からかうように笑みを浮かべる森本さんの言葉に、母さんが嬉々として声を上げる。

 

「そんなんじゃないから! ただ、信頼できる人を見つけたってだけの話だから!!」

「顔を真っ赤にして否定しなくてもいいのにね~」

 

もう、何を言ってもからかわれるのは確定しているようだ。

 

「とりあえず、啓介の前ではこの話はだめよ」

「……どういうこと?」

 

いきなり表情を引き締めて真剣な面持ちで忠告する森本さんに、僕もつられて真剣に彼女に聞き返す。

 

「彼女はね、容姿もそうだけど性格とかからも、中等部の時は男子たちにとっては高根の花的な存在だったのよ」

「確かに……わかるかも」

 

僕も困っているところを助けられた経験者だ。

面倒見のいい、……彼女の言葉を借りるのであれば”お姉さんキャラ”のようにも感じられる性格などから、そのような存在になってもおかしくはない。

 

「でも、それと啓介の話と何の関係が?」

「これは噂なんだけど、彼女と話をするにはチケットが必要で高値で売買されていたのよ。他にも”今井リサからチョコをもらう権”のチケットもね」

「なにそれ?」

 

今井さんはどこのアイドルだ?

売る方も売る方だけど、買うほうも買うほうだ。

 

「……まさか」

 

そんな時僕の脳裏に、ある”可能性”が浮上した。

 

「そのまさかよ」

 

できれば外れていてほしかったのだが、僕の想像通りだったようだ。

 

「啓介買ってたのよ。チョコのやつ」

 

うなだれるようにして言う森本さんの様子を見て、何となく森本さんの気持ちがわかるような気がした。

 

(そういえば、あの時お金貸してたっけ)

 

すっかり忘れていたが、お金を貸してほしいと言われていたのを思い出した僕は、このためだったのかと納得していた。

 

「ちなみにだけど、結果は?」

「パチモンよ」

 

なんだか、頭を抱えたくなってしまった。

啓介のバレンタイン当日の自信に満ち溢れた感じや落ち込みっぷりも、ある意味頷ける。

 

「そんなわけだから、彼女の話はタブーよ」

 

森本さんの言うとおり、下手に今井さんの話をすれば啓介は暴徒と化すだろう。

どうなろうとそれほど脅威ではないけど、面倒には違いないので、ここは触れないでおくのが得策だ。

 

「わかった。啓介の前では極力今井さんの話は避けるよ」

「おい、今なんて言った?」

「うお!?」

 

これで話は終わりと思ったが、突如割って入ってきた啓介の言葉に、僕は思わず間の抜けた声を上げてしまった。

 

「今、”今井さん”って言わなかったか?」

「さ、さあ?」

「き、気のせいじゃない?」

 

啓介は、とぼける僕に合わせて、森本さんもしらを切るほどの、不穏な雰囲気をまとっていた。

 

「いいや、気のせいじゃない。確かに、今井様の名前を言っていた! 彼女と会ったのか? ま、まさかお話までしたのか!? もしくは席が隣になったりとか!?!?!」

「お前はエスパーか!!」

 

今日の羽丘での出来事をピンポイントで的中させる啓介に、僕は思わずツッコミを入れてしまった。

それは、啓介の言葉をすべて肯定しているようなものだった。

 

「や、やっぱり、そうだったのかああああ!!!」

「うるさ!?」

 

案の定、啓介は暴徒と化した。

絶叫する啓介の声に、僕は耳をふさいだ。

 

「おのれ~、俺の全財産が消滅しても、できなかったことが……ぬおおおおおお!!!」

 

これが漫画であれば、啓介の背後には炎が噴き出しているであろうぐらいの覇気を感じる。

 

「裏切り者には死を~。幸せ者には疫病神を~」

「怖いことを口走りながらにじり寄ってこないでっ!!」

 

ぶつぶつと呪文のようにつぶやきながらにじり寄るその姿はホラー映画のお化けのようで、かなり怖かった。

結局、この騒動は遅れてきた田中君の一撃によって啓介が沈められるまで続くことになるのであった。

 

 

第3章、完




最近1章辺りの話数が少ない状態です。
……なぜこうなったolz

ということで、次章予告をば。

―――
時は流れ、9月。
羽丘は文化祭ムードが強まっていた。

次回、第4章『文化祭』
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