BanG Dream!~青薔薇との物語~ 作:TRcrant
第15話 オフ会
文化祭も終え、そろそろ季節も冬になろうとする10月のとある日曜日の朝。
「気を付けるのよ」
「大丈夫だって。ちゃんと夕飯までには戻るから」
玄関先まで見送りに来ていた母さんに、僕は安心させるように笑顔で返した。
「それじゃ、行ってきます」
そして、僕は家を出るのであった。
BanG Dream!~青薔薇との物語~ 第5章『そして、始まりへ』
電車に乗って、揺られること数十分。
駅を降りて、携帯の地図を頼りに目的の場所を目指した僕は
「ここだ……」
ついに、目的地であるレストランにたどり着いた。
『貸し切り』という看板が出ている中、僕はレストランに入った。
「失礼ですが、パスポートを拝見します」
入ってすぐの場所に立っていた、中世の雰囲気を感じさせる服装をした男性に、僕は持っていたパスポートを手渡す。
「はい、確認しました。ようこそ、旅の方。どうぞ、お進みください」
「ありがとうございます」
完全に役になり切っているであろう男性スタッフに、僕はお礼を言いつつ奥のほうに進んでいく。
そこはやや広い場所で、数十人の人達でにぎわっていた。
カウンター側のテーブルには、色々と個性的な料理が並べられている。
バイキング形式のようで、各々が好きなものを取り分けていた。
どの料理もおいしそうな感じはするので、食べたくなるがとりあえず我慢することにした。
(これが、オフ会か)
そう、僕が訪れたのはオンラインゲーム『NFO』のオフ会と呼ばれる集まりだった。
僕自身、あまりこういう場所に行くのは苦手だ。
そんな僕がここに来たのはある人からの誘いがあったからだ。
(とりあえず、その人を探すか。プロフィールを偽ってなければ女性だったはず)
僕は、足を進めてあたりを見渡しながら目的の人物を探す。
「きゃ!?」
「っと!」
そんなことをしていたからだろうか、来ていた人にぶつかってしまった。
ぶつかったのは、声からして女性だった。
腰元まで伸びる黒髪に、白黒の落ち着いた服装と、まるで大和なでしこを彷彿とさせる人だった。
「すみません、ちゃんと見てなくて」
「い、いえ。こちらこそ……すみま、せん」
ぶつかってしまった女性に謝るが、女性はどこか落ち着かない様子だった。
そのしぐさは、誰かを探しているようにも見えるし、単純に僕におびえているようにも思える。
「えっと……―――あ、りんりん! ごめんね、遅くなっちゃった!―――ん?」
「あこちゃん……ううん、私も今来た…ところだよ」
気まずい雰囲気の中、それを一変させたのは、僕の言葉を遮るようにして声を上げた、やや背が小さい紫色のツインテールの髪型をした少女だった。
「あれ、この人は?」
「あ、えっと……」
”あこちゃん”と呼ばれた少女が、興味津々な様子でこちらをじっと見つめてくる。
そんな中、僕は
「あの、もし違ってたらごめんなさい。もしかして、あなたは『RinRin』さんじゃないですか? ウイザードの」
「え!?」
黒髪の少女の反応から、どうやら僕の予想は当たっていたらしい。
つまりは、目の前にいる女性が、あのRinRinさんで間違いないみたいだ。
「申し遅れました。私は『KAZU』です。同じウイザードの」
そう言って、僕はここに入る際に提示したパスポートを二人に見せた。
「え!? あなたが、KAZUさんですか?!」
「りんりんと一緒に会えるなんてすごい偶然だね! 妾の名は、深淵の闇より舞い降りし聖堕天使、あこ姫ぞよっ!」
そして、紫色の髪の少女がRinRinさんと一緒にパーティーを汲んでいたあこ姫さん(長すぎるので、省略している)だったようだ。
「と言うより、そもそもここに誘ったのはあこ姫さんですよ?」
「私もだよ、あこちゃん」
「ごめんね、りんりんをびっくりさせようと思って内緒にしてたんだ」
このオフ会はあこ姫さんに誘われたことがきっかけだった。
当初は行く気などなかったのだが、直接会ってみたいなという気持ちが勝ってしまった結果、今に至る。
「とりあえず、立ち話もあれですので、向こうの席でどうです?」
そこで、僕はようやく立ったまま話していることに気づいたため、近くの空いている席を指し示しながら二人に提案してみた。
「あこは賛成です! りんりんは?」
「わ、私も賛成、です」
こうして、僕たちは近くの空席で話をすることになった。
「先ほどは失礼しました。RinRinさんの印象が思っていたのと違っていたので、全然気づきませんでした」
二人と向き合う形で席に着いた僕は、もう一度さっきのことを謝る。
「い、いえ……」
ゲーム内での彼女は、チャットがものすごく速く、パーティーメンバーである僕へのアドバイスなども的確だったので、はきはきした性格なのかと思っていたが、実際は大人しい(と言うより、どこか小動物のような)感じだったので、全く気づけなかった。
「あ、あこはどうですか!?」
「えっと……比較的想像通りでした」
興味津々に目を輝かせるあこ姫さんに、僕は申し訳なく思いながらも感じたことをそのまま口にした。
「だ、大丈夫だよ、あこちゃん。悪い意味で言ってないから」
「うー、なんだか複雑だよ」
がっくりと肩を落とすあこ姫さんの姿に、僕は罪悪感を感じずにはいられなかった。
「そういう、KAZUさんは全然違ってましたよ」
「はい……もっと大人の方だと思って、ました」
かくいう僕もまた、人のこと言えないみたいだ。
「流石に、ため口はあれだと思ったもので」
キャラを作っているのかもしれないが、僕にはそういうのでため口だったりやんちゃな感じにするのはかなり気が引けたのが一番の理由だ。
「あの、KAZUさん。敬語じゃなくてもいいですよ。KAZUさんはりんりんとほぼ同じ年齢ですよね?」
「ええ、たぶんですけど……でも、RinRinさんがお嫌では?」
あこ姫さんの提案はある意味ありがたかった。
年もそんなに離れていないのであれば、やっているゲームのジャンル的にも、敬語ではなくため口のほうが、チャットも速くなって楽になる。
とは言っても、肝心の彼女が嫌なのであれば、それはするべきではないと思っている。
「わ、私は……KAZUさんだったら、大丈夫……です」
顔を赤らめてはいるものの、ため口で大丈夫そうだ。
「でしたら、私にも敬語ではなく、普通でいいよ。それが筋だし」
「は、はい。これからも……よろしくね、KAZUさん」
「あこも、これからもよろしくね。KAZUさんっ」
そんなこんなで、僕たちは親睦を深めていくことになった。
「KAZUさんって、NFO始めて半年でしたよね?」
「そうだね……来月ぐらいで半年になるかも」
僕がNFOを始めたのが、GWの真っただ中だったのでよく覚えている。
「半年で、上級クエストが、できるまで行くなんて、すごい……です」
僕はどちらかというと効率的にやるタイプだ。
バンドの練習もあるので、週末などしかプレイしないので、こうでもしないと進みようがない。
「あこもあこも!」
「あはは……それもこれもRinRinさんのご教授のおかげだよ」
「そ、そんな……私は何もしてない、です」
RinRinさんは照れたようにうつむくが、実際のところ本当に彼女のおかげと言っても過言ではない。
半年ほど前、ゲームを始めたきっかけはネットでたまたま目に入った、ゲーム内で実施されているキャンペーン広告だった。
当時、新しい趣味を見つけようと思っていた僕は、そのゲームを始めてみることにしたのだが、操作などがいろいろ分からず完全に詰んでいた。
いわゆるスランプのようなその状況に、NFOは合わないと思い、やめようかとも思っていた時に、『大丈夫ですか?』と声をかけてきたのが彼女だったのだ。
正直、お手上げ状態だった僕は操作方法などを聞いてみることにした。
はっきり言えば、やり方さえ教えてもらえるだけでも僕としては御の字だったのだが、彼女の返信は意外なものだった。
『よければ、一緒にやりませんか?』
こうして僕は彼女と共にクエストをこなすこととなった。
職業も同じウイザードだったことから、彼女の教えはとても分かりやすく、クエストを終えるころには何とか一通りの操作ができるようになっていた。
こうして、僕のスランプは無事に解決したのだが、終わり際にRinRinさんの『よかったら一緒にまた冒険しませんか?』というメッセージと共にフレンドの申し出をしてきたのは、僕にしてみれば意外だった。
何度も言うが、彼女たちは上級プレイヤー。
そんな人が、超がいくつもついてもおかしくないほどの初心者のプレイヤーに、フレンド申請をするなんて僕には予想もしていなかった。
なので、僕は『こちらこそ』と返して、RinRinさんとフレンドになった。
その後、あこ姫さんともRinRinさんを通じて知り合うことになった。
ちなみに、正しくは聖堕天使あこ姫なのだが、長いので僕は”あこ姫”さんと呼んでいる。
それはともかくとして、僕たちはクエストの情報などをお互いに交換し合った。
交換し合うといえば格好がいいが、実際は教えてもらうばかりだったけど。
「それじゃ、僕は失礼するよ」
「あ、もうこんな時間だ」
話し込んでいて気付かなかったが、もう夕方まで僕たちは話し込んでいたようで、外は徐々に暗くなり始めていた。
「ねえねえ、KAZUさん。よかったら連絡先交換しませんか?」
「僕は構わないよ……はい、どうぞ」
僕は自分の電話番号を表示した状態で、携帯をあこ姫さんに手渡した。
別にみられて困るようなものはないし、今日話して十分に信頼できる人なのは確信しているので、個人情報を漏らすようなことはしないだろう。。
「それじゃ、あこの番号を……りんりんはどうする?」
「え!? ………そ、それじゃ」
あこ姫さんの問いかけに、とても驚きながらこちらに問いかけるように視線を向けてきたので、僕は”大丈夫ですよ”という意味を込めて頷いて返すと意を決した様子で携帯にを操作していく。
「ど、どうぞ」
「ありがとう。それじゃ、申し訳ないけど、これで」
RinRinさんに携帯電話を返してもらった僕は、時間がないこともあり確認もせず二人に一礼してその場を後にした。
こうして、僕の初めてのオフ会はとても実りのある一日となった。
「RinRinさんに聖堕天使あこ姫さん……か」
帰りの電車で、二人が登録した連絡先を見ながら、今日一日を振り返る。
(予想とは色々と違っていたけど、でも二人ともいい人だったな)
改めて、今日のオフ会に参加してよかったなと思いながら、僕は連絡先の画面を消す。
(まあ、実際に使うことはないとは思うけど)
そんな僕の予想は、大きく外れることになるのだが、それがわかるのはもう少し後のことだった。
これが俗にいうご都合主義というやつです(汗)
ということで、これでRoseliaのメンバーは全員登場しました。
いつか時間がある時にオフ会に出てみたいなと思う、今日この頃です。