BanG Dream!~青薔薇との物語~   作:TRcrant

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今回より、新しい章となります。


第二部 第1章『始まりは唐突に』
第18話 新しい始まりと


季節は再び春。

出会いと別れの季節になった。

 

(今年も頑張ろう)

 

そんなこの日、僕は心機一転、羽丘女子学園に向かうのであった。

テストも終わり、無事に進級できた僕たちは、羽丘の掲示板の前に森本さんと一緒に立っていた。

 

「クラス分けは、ここに貼りだされるの」

「……なるほど」

 

多くの女子生徒が、クラス分けが記された掲示物を見ようと集まっていた。

 

「一樹には無理だろうから、私が見てきてあげる」

「ありがと」

 

女子しかいないこの中に割って入るのは、さすがにまずいので、ここは森本さんの厚意に甘えることにした。

森本さんは群衆の中に入っていく。

 

(贅沢は言わないから、今井さんか森本さんか知っている人と一緒だといいな)

 

ある意味今年一年の命運を分けることになるのだ。

僕は祈らずにはいられなかった。

 

「お待たせ」

 

それから少しして森本さんが戻ってきた。

 

「それで、どうだった?」

「私は、A組でリサと同じクラスよ」

「すごい偶然だね。……で、僕は?」

 

今井さんと二年連続で同じクラスになるのはものすごく偶然に近い。

後は僕が同じクラスになれば、最高なんだが……

 

「一樹は、C組だったわ」

「………え」

 

森本さんの言葉に、僕は一瞬気が遠くなってしまった。

頭では理解しているのだが、それを現実だと思いたくない自分がいるのだ。

 

「一樹はC組」

「………」

 

そんな僕の状態を理解してか、森本さんは現実を突き付けてくる。

 

「えっと……大丈夫?」

「……たぶん」

 

こうして、僕の羽丘の二年目はハードモードが確定した瞬間だった。

そんな風に思ている僕の視界の端に誰かが通り過ぎていくのが見えた。

 

「ん?」

 

人が大勢いるのだから、横切ったところで不思議ではない。

 

(紗夜さん?)

 

でも、それでも気になったのは、一瞬ではあるけど見えた横顔が、紗夜さんに見えたからだ。

紗夜さんに似た人物が去って行ったほうを見て見るが、そこにはそれらしき人影は見当たらなかった。

 

(本当に、大丈夫なんだろうか?)

 

知っている人がいない現実に、幻覚まで見るようになったのだとすると、もはややばいでは済まない状態なわけなのだが……。

色々な意味で、不安を抱く僕なのであった。

 

 

 

BanG Dream!~青薔薇との物語~   第二部 第1章『始まりは唐突に』

 

 

 

「そうか、知ってる奴が誰もいなかったか」

「一樹、大丈夫か?」

「たぶん……」

 

この日は、去年と同じくHRのみだったので、割と早く帰れた。

そんな訳で、早速バンド練習をしようということになったのだが、話題がクラスのことになった途端、心配そうにこちらを見てくる始末だ。

 

「でも、一樹って裕美ほどじゃないが人見知りが激しいだろ。大丈夫なのかよ?」

「さすがに二年生だよ? 倒れるようなことはないって」

 

田中君が心配するのは、おそらくあの時の一件があったからだ。

それは、小学生の時のこと。

それまで一緒のクラスだったみんなと別々のクラスになってしまった。

今にして思えばそれだけのことだったのだが、当時の僕には深刻なことだったようで、少しして倒れたのだ。

原因についてはおぼろげにしか覚えていないが、おそらくは知らない人に囲まれている状況が、当時の僕に耐えきれないほどのストレスとなっていたのかもしれない。

 

(もう高校になったんだし、ストレスを感じても発散する方法くらいは知ってるよ)

 

それが今と昔の違いだ。

 

「……そういえば、例の動画。どうなってんだ?」

 

重苦しい空気を変えるべく田中君が話題を変えて僕に聞いてきた。

 

「ああ、あれか……気にしても仕方がないからって、見ないようにしてたけど、ちょっと気になってきちゃった」

 

それは、去年に僕たちが撮影したMVのことだ。

あれ以降、動画サイトを見てはいない。

森本さんの言うように、再生数とかを気にしていて練習がおろそかになっては本末転倒なので、一定期間見ないでおこうと決めていたのだ。

あれから約半年。

見るのには最適な頃合いだろう。

僕は携帯を取り出すと、動画を投稿したサイトの管理画面を開く。

後は、投稿動画一覧のページを開くだけだ。

 

「それじゃ……出すよ」

 

全員が固唾を飲むなか、僕はそのページを開く。

 

『………』

 

その瞬間、僕たちはそのページの内容に、時間が泊まったような錯覚を覚える。

 

「ひ……百万再生!?」

 

最初に声を上げたのは啓介だった。

それは、動画の再生回数を現す部分だった。

そこには確かに『119万再生』と表示されていた。

 

「ここここ、コメントもたくさん」

 

続いて、反応を示したのは中井さんだ。

動画に書き込まれたコメントも軽く4桁は超えている。

 

『ナニコレ、すげえ』

『最初の、白装束がじわるwww』

『神曲キター』

 

目に見えるだけでもそんなコメントが寄せられていた。

 

「………また、MV撮ろうか」

「お、おう。かかってこいや!」

 

(別に喧嘩をしに行くわけではないんだけど)

 

そんなことを思いながら、僕はまた次のMVの撮影の計画を練っていくのであった。

 

 

 

 

 

練習も終わり、啓介たちが帰ってから少しして来訪者を告げるチャイムの音が鳴り響く。

 

「一樹、悪いけど出てくれる?」

「はーい」

 

ちょうど手が空いていた僕は、玄関に向かう。

 

(この時間だし、あの人だよね)

 

父さんは鍵を持っているので、帰ってくるときにチャイムは鳴らさない。

そして、この夕飯時の時間帯からして、来訪者は一人に絞られた。

 

(やっぱり)

 

念のためのぞき穴から来訪者を確認すると、そこには僕の予想した通りの人物の姿があった。

僕は鍵を開けてドアを開ける。

 

「か、一樹さん」

「こんばんは、紗夜さん」

 

そこに立っていたのは隣の家に住んでいる紗夜さんだった。

その手に持っているのは、おそらくいつものおすそ分けだろう。

 

「母からおかずを作りすぎたのでと、こちらを」

「うん。いつもありがとね」

 

紗夜さんからおかずが入ったお皿を受け取りながらお礼を言う。

基本的に氷川家と奥寺家は家族ぐるみの付き合いだ。

とはいえ、一緒にバーベキューをしたりなどはしておらず、おかずのおすそ分けをしてもらったりしたりしているだけなのだが。

 

「一樹さん。羽丘は慣れましたか?」

 

その問いは、去年の夏にも聞かれた。

 

「うーん、どうだろう。皆悪い人ではないんだけどね……周りが女子っていうのも色々と大変だよ」

 

僕は去年とほとんど同じ内容の答えを返した。

どれだけ通っても、慣れるのは難しい。

 

「そうですか……私は一樹さんを信じていますので、大丈夫だとは思いますけど、くれぐれも風紀を乱すようなことは慎んでください」

「う、うん。信頼を裏切らないようにするよ」

 

注意の仕方がある意味紗夜さんらしいなと思いながら、僕は自分を戒める。

と、そんな時昼間の学園でのことを思い出した。

 

「そういえば……紗夜さん」

「はい?」

「紗夜さんの妹さんって、どこの学校に通ってるの?」

 

それは、学園で見た紗夜さんによく似たような気がする人のこと。

紗夜さんは花女の生徒。

だとすると、あそこにいたのは僕の見間違いや幻覚とかでない限り、他人の空似か紗夜さんの妹さんのどちらかになる。

 

「…………」

「紗夜さん?」

 

だが、僕の問いかけに、紗夜さんは挙動が怪しくなっていくばかりか、顔が青ざめているような気がした。

 

「すみ、ません。私、用があるので」

「あ……」

 

僕が止める間もなく、紗夜さんは逃げるように去って行ってしまった。

 

(悪いことしちゃったかな……)

 

なんとなくではあるが、これから先に何かが起こりそうな……そんな予感を感じずにはいられなかった。




まさか、知り合いが誰もいないクラス。
色々な意味でフラグを折りました。

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