BanG Dream!~青薔薇との物語~   作:TRcrant

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第19話 嵐の少女とオアシスと

僕の嫌な予感と言うのは、なんでこうも当たるんだ。

そう愚痴をこぼしたくなる場面はこれまでにも何度かあった。

 

「ねーねー! 一君って、何か部活入ってるの!? もし入ってたら教えて! 絶対にるんっ♪ な奴だと思うんだー!」

 

そう、それがまさに今なのだ。

彼女を一言でいうのであれば、”嵐”そのもの。

 

(なんでこうなったんだろう)

 

僕は、こうなったいきさつを思い出すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、今から数十分前のこと。

この日は朝からいつもとは違うことだらけだった。

例えば、いつもより30分も早く起きたことや、いつもより早く学園に行こうと思ったことなどだ。

いつもの僕であれば、そんなことは微塵も考えはしなかっただろう。

でも、この日の僕は”早起きは三文の徳”と言わんばかりに行動を起こしたのだ。

 

「僕が作った『chaotic』のほう、どうなってるだろう」

 

先日の僕たちのMVのこともあり、それより前に投稿していたあのお蔵入りの曲のことが気になった僕は、悪いこととは思いつつも、歩きながら携帯を操作することにした。

ちょうど校内で、しかも早く来たために生徒の数も少ないので、ぶつかることはないだろう。

 

「きゃっ」

「うわ!?」

 

そう思い込んでいたのが悪かった。

曲がり角でちょうど、僕と同じように朝早くに来ていたであろう誰かに、ぶつかってしまったのだ。

 

「すみませんっ。大丈夫で――――」

 

僕は慌てて携帯をポケットにしまい、ぶつかってしまった相手に謝ろうとしたところで、僕は言葉を失った。

 

「あいたた……」

 

ぶつかった相手は、尻餅をついていたのだが、その顔は間違いなく紗夜さんの面影がある。

髪は横に括られているが、それでも紗夜さんに似ている。

 

「紗夜、さん?」

 

もしかしたら、紗夜さんは羽丘に通っており、それが言い出しづらかったのではと思った僕は、彼女の名前を口にした。

 

「え? 君、おねーちゃんのこと知ってるの?!」

 

僕からすれば小声で言ったつもりだったのだが、彼女にははっきりと聞こえたようで、勢い良く立ち上がると、僕に迫ってきたのだ。

 

「あ! もしかして君が奥寺 一樹君でしょ? やっぱり、そうなんだ!! わーい! るるるるんっ♪」

「へ? へ?」

 

突然始まった彼女のマシンガントークに、僕は頭の中真っ白になった。

そして、今に至る。

 

「あ、そうだ! おねーちゃ――「ちょといいかな?」――え? 何何?」

 

あれから長い間質問攻めにあっていた僕は、目の前にいる人物が紗夜さんではないことはすぐにわかっていた。

彼女は、間違いなくここまでのマシンガントークはしない。

そうなると、僕のすることは一つだけだ。

 

「あなたは誰?」

「えー。一君、おねーちゃんの名前を知ってるのに、なんであたしの名前知らないの?」

 

名前を聞くと、目の前の女子生徒はあからさまに不機嫌そうな表情で聞いてくる。

 

「聞いてないから」

「そっか……おねーちゃん、やっぱり(・ ・ ・ ・)言ってないんだ」

 

先ほどまでのはつらつとした感じとは違い、どこかかな地毛でさみしそうな表情を浮かべる。

 

「あたしの名前は、氷川 日菜(ひな)だよ! おねーちゃんとごっちゃになるから名前でいいよ。よろしくね! 一君」

 

これが、僕と彼女……日菜さんとの出会いだった。

 

「知ってると思うけど、奥寺一樹です。よろしく、日菜さん」

 

とりあえず、お互いに自己紹介はできた。

ここまでは問題ない。

あるとすれば、ここから先だ。

 

「ところで、何で僕を”一君”って呼ぶの?」

「え? だって、そのほうがるんってくるから」

 

これまで、一度も呼ばれたことのないあだ名だっただけに、疑問は尽きないが、日菜さんの答えにその疑問は違う意味で増えた。

 

「その”るん”って、どういう意味」

 

もはや日菜さんの代名詞ともなりつつある、”るん”の意味が全く分からない。

 

「るんっはるんっだよ!」

「すみません、全然わかりません」

「えーっ!」

 

疑問に対して全く答えになっていない答えに、僕は聞くことをあきらめた。

 

「じゃあねっ、一君!」

 

タタタと走り去って行く日菜さんの背中を見送る僕は

 

(あれはもはや嵐そのものだな)

 

心の中でそう呟くのであった。

 

 

 

 

 

「………」

 

学園も新学年となり、少ししてようやく少しだけ落ち着いたようにも見える。

 

「あれ、奥寺君お昼食べないの?」

 

今年は、よくクラスの人が話しかけてくるよになったからだ。

 

「あ、いえ。今から食べに行くところだったんですよ」

「良かったら、一緒に食べない?」

「ごめんなさい、今日はちょっと先約があって」

 

本当は、先約なんてない。

せっかく誘ってくれたのに申し訳ないが、ここは嘘をつかせてもらった。

 

「えー、残念」

 

昼食を知らない人と一緒に食べるのは、ある意味地獄のようなものだ。

自分の所作がおかしくはないのかと、一挙一動を気にしだしたらきりがない。

休む時間のはずなのに、神経を使って精神的に疲れるのは避けたかった。

もし嘘であることがばれても、急用があったみたいでこれなくなったみたいなことを言えば、十分切り抜けられる。

そんな状態ではあるけど、去年とは違い今年は、そこそこうまく馴染めているような気がする。

 

(でも、遠巻きに見られるのって、いまだに慣れないな)

 

去年よりは減ってはいるが、いまだに遠巻きにこちらを見ている人がいるのは、精神的にも悪い。

話しかけてこられたほうがまだましだ。

 

(僕は動物園の見世物じゃないぞー)

 

心の中でツッコむあたり、僕の心はかなりのチキンだなと感じてしまう。

とりあえず、これ以上ここにいても気が滅入るだけなので、食堂に移動することにした。

 

 

 

 

 

「今日の定食も中々おいしかったな」

 

昼食を食べ終えた僕は、食後の散歩をすることにした。

食堂の料理はどれもおいしいが、一つ言うのであればメニューが少ないようにも見える。

もう少しメニューを増やしてもらえるといいのだが……。

 

(これもレポートに書いておこう)

 

取り入れられるかは微妙なところだが、書いておいても損はないだろう。

 

(それにしても、どうしたものか)

 

僕の悩みの種は、学園でのことだけではない。

お蔵入りとなった曲を投稿していたのだが、それもまたかなりの反響があった。

アカウントの概要蘭に載せておいた連絡先になるメールアドレスは、フリーアドレスを使っており、それを確認していなかったのでわからなかったのだが、かなりの量のメールが届いていた。

 

『応援しています』

 

そういった感じのものが多い中で、特に目立っていたのは楽曲提供の依頼だ。

 

”自分たちに楽曲を提供してほしい”

 

そういった類の連絡がいくつも来ていた。

無償での依頼もあれば、代金は支払うと言っている人たちまでいる。

正直、無償提供でもいいのだが、それには何らかのルールを設ける必要がある。

 

(どちらにせよ、前途多難だな。これ)

 

とりあえず、できることを一つずつやって行こう。

 

「ん?」

 

散歩しているうちに、人の少ない場所まで来たようで、昼休みにもかかわらず静かな落ち着いた空気に包まれていたのだが、そんな中で聞えてきた音が僕の足を止めさせる。

 

(これって、ピアノ?)

 

それが僕の聞き間違えでなければ、ピアノの音に聞こえる。

 

(確かこの近くに音楽室があったっけ)

 

授業でよく使用しているので間違いない。

 

「……行ってみるか」

 

その音色が、どこか心地よかった僕は、音楽室に向かって足を進める。

最初はただのピアノの音が、近づくにつれてメロディに変わっていた。

 

(これって、英雄ポロネーズ?)

 

そのメロディはショパンの『英雄ポロネーズ』だった。

難易度的にかなり高いとして有名なその曲は、少しだけ走りがちなテンポだったが、どこかステップを踏みたくなるようなリズムでもあり、僕には意外と好きな感じだ。

 

「……」

 

そして、ついに音楽室前にたどり着いた僕は、ドアの窓部分から中を確認して、誰が弾いているのかを見る。

 

(あれは……)

 

そこには僕の良く知る人物の姿があった。




ということで、まさかの日菜の登場です。
色々と今後の展開で彼女は重要なキーパーソンにもなるので、登場となりました。

今月も残りわずかですが、最後まで突っ走ります。
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