BanG Dream!~青薔薇との物語~   作:TRcrant

2 / 62
二日連続で失礼します。



第2話 新たな出会いと

電車に揺られること数分、田中君たちが下車する駅に到着した。

 

「それじゃ、俺たちは先に行くぞ。今日の練習は?」

「いつも通りだよ」

 

電車から降りる前に思い出した様子の田中君に、今日の練習の予定を伝えると、”おーけー”と応えて電車から降りた。

僕たちは幼馴染ではあるが、通う学校はバラバラだ。

田中君と啓介、森本さんの三人は『羽丘学園中等部』に、そして僕と中井さんが『花咲川学園中等部』に通っている。

いずれの学校も、中等部までは男女共学でそこから先は女子校となる。

何でも少子高齢化がどうのこうのという理由らしいが、特に興味もないのでよくは覚えていない。

 

「あ、お昼休みでもいいから、ちゃんと花音ちゃんにお礼を言っておいたほうがいいよ」

「そうだね、色々迷惑かけちゃったしね」

 

中井さんからの又聞きではあるが、僕が入院中に松原さんは何度もお見舞いに来てくれようとしていたらしい。

来れたのは、意識が戻ってしばらくした時の一回のみだったが。

 

(まあ、しょうがないよね。松原さんだし)

 

来れなかった理由は『迷子になったから』というものだったのが彼女らしいともいえる。

そんなわけで、僕たちも自分の通う学校の最寄り駅についたので、電車を降りると学校に向かうのであった。

 

 

 

 

 

「おう、退院できてよかったじゃねえか、仲介屋!」

「……どうも」

 

教室に入るなり、クラスメイトの男子が声をかけてくる。

だが、僕自身それが嫌だったりする。

どちらかというと、”仲介屋”のほうが。

”仲介屋”

それは僕に対してのあだ名である。

理由としては、”僕を仲介すれば中井さんや松原さんとお近づきになれるから”という至極どうでもいい理由からだ。

 

(どうせだったら”委員長”とかのほうがましだ)

 

別に委員長ではないけど、名前で呼ばれないのであればそのほうがましにも思える。

そんなことを思いながら、僕はSHRを行うために来るであろう担任の先生を待つのであった、

 

 

 

 

 

「一樹君、こっちだよ」

 

お昼休み、中庭で先に待っているであろう人達を探していると、ちょうどいいタイミングで声をかけられた。

 

「遅くなってごめ……ん」

 

少し遅くなってしまったことを謝りながら自分の場所を知らせるように振っていた手がある場所に駆け寄った僕は、その場にいた人物を見て言葉を詰まらせた。

そこにいたのは、中井さんとここに入学して少しした頃に知り合った松原さんに加えて、金髪の女子生徒がいた。

 

「どうしたの?」

「いや、なんだか見たことない人がいたから」

 

固まっている僕を不思議に思った松原さんの疑問に、戸惑いながらも応える僕を、その女子生徒は興味津々な様子で見ていた。

正確にはどこかで見たような気がするのだが、おそらく同じ学校に通っているので学内のどこかで見かけたというやつだろう。

 

「あ、この人はね白鷺 千聖ちゃん。私のお友達なんだよ」

「初めまして、白鷺千聖です。よろしくね、奥寺君」

 

微笑みながら自己紹介をする白鷺さんに、僕は自分の名前を言っていないことに気づいた。

 

「あ、はい。よろしくお願いします……あれ、僕名前言ったっけ?」

「ごめんね、私が言っちゃった」

 

僕の疑問に、中井さんはいたずらが成功した時のような笑みを浮かべながら応える。

 

(一体、僕の知らないところで何を言ったんだろう)

 

正直気にならないわけではないが、これ以上まごまごしていると時間的にもかなり慌ただしくなりそうなので、深く追求することもなく、靴を脱いで敷かれているレジャーシートに上がると、何時もの定位置である中井さんの隣……一番端のほうに腰かけた

いつもは大体四角形の形で座っているので、松原さんと中井さんが向き合うのはいつものことだが、今日は僕の向かい側に白鷺さんがいるという違いがある。

 

「あ、そういえばお見舞いありがとうね、松原さん」

「ふぇ!? そ、そんなお礼なんて大丈夫だよ。だ、だってお友達だもん」

 

突然お礼を言われた松原さんは顔を赤くしてあたふたとしながら、首を横に振って応える。

 

「ふふ、花音ちゃん顔真っ赤だよ?」

「っ!? 裕美ちゃんっ!」

 

そんな彼女をからかうように笑みを浮かべながら言う中井さんに、顔を赤くさせたまま抗議の声を上げる松原さん。

それはいつも通りの微笑ましい昼の一時だった。

 

「そういえば、どうして今日は遅くなったの?」

「ちょっと先生といろいろ話してたんだよ」

 

本当は少しだけ事情があるのだが、大まかには違いはないので、中井さんの問いかけに僕は、誤魔化して答える。

 

「………」

 

そんな他愛のない話をしている最中、ずっと白鷺さんから視線を感じていた。

 

「えっと、白鷺さん……どうかした?」

「いいえ、なんでもないわ」

 

その視線が、どこか値踏みをしているみたいで少し居心地が悪く感じた僕の問いかけに、白鷺さんは微笑みながら返すが、僕は彼女に対して何とも言えない恐怖心を抱いた。

 

「中井さん、僕何か彼女に失礼なことした?」

「別にしてないと思うけど」

 

無意識のうちに、何か失礼な言動でもしたのかと思ったのだが、中井さんからは否定の言葉が返ってくる。

そのことがますます混乱を招いた。

 

(こうなったら、白鷺さんに聞くほうがいいかな)

 

そのほうがすべてすっきりしそうだ。

 

「どうやら、信頼できそうね」

 

そう思っていると、白鷺さんが何かを呟くが、その声は周りの喧騒にかき消されてよく聞こえなかった。

 

(……放っておこう)

 

下手につついて地雷を踏むような真似をするのは、避けるべきだろう。

まさに、”触らぬ神に祟りなし”というやつだ。

別にチキンなわけではない。

……たぶん。

 

「そういえば、いつもいなかったのに、どうして今日は白鷺さんはここに?」

 

いつも中庭で一緒に食べているというわけではないが、中庭で食べる際はいつも中井さんと松原さんの三人で昼食をとっていただけに、気になったので聞いてみた。

 

「千聖ちゃん、学校に来れない日があるから、都合が合わなかったんだよ」

「来れない? 家庭の事情とか?」

 

松原さんの返答に、僕は首をかしげながら聞き返す。

 

「えっと、そうじゃなくてね。お仕事の関係だよ」

「仕事?」

 

困惑したように松原さんが答えるが、困惑しているのは僕のほうだ。

 

「……もしかして、彼本当に気付いていないのかしら?」

「みたい」

 

そして何やら話をし始める白鷺さんと中井さん。

 

「ごめんね。一樹君ってドラマや映画のスタッフ紹介を、見ないタイプだから」

 

(確かに、見ないけど……なんで今?)

 

ドラマなどでのオープニングやエンディングに流れるスタッフロールはあまり興味がないので、見ないか流して見ているかのどちらかなのだが、どうしてそのことを今言うのだろうか?

僕の頭の中は、ますます疑問でいっぱいになる。

 

「はぁ……仕方がないわね」

 

一つため息を漏らした白鷺さんは、一つ咳ばらいをすると深呼吸を始める。

 

(な、なに……)

 

それだけのはずなのに、一気に彼女が纏っている雰囲気が変わった。

その雰囲気は、とげとげしくあり、まるで反抗期を迎えた人のような印象を抱かせる。

 

「なんで、お父さんは私に干渉するの!? 信じられないっ」

「へ?」

 

いきなり白鷺さんの口から出てきた謎の言葉に、僕は目を瞬かせる。

 

「もう私のことは放っておいてっ」

 

(ん? 今の言葉、どこかで……)

 

冷たく言い捨てられる言葉、そして彼女の雰囲気やしぐさなどを僕は知っている(・ ・ ・ ・ ・)

 

「あ!?」

「ふぅ、やっと気づいたようね」

 

白鷺さんが呆れたようにため息を漏らした時には、先ほどまで纏っていた雰囲気は元に戻っていた。

 

「”黄昏の家”の娘役の人っ!?」

 

黄昏の家。

その番組は日曜の昼に放送されるドラマで、どこにでもある普通の家庭の様子を描いたドラマだ。

そして、白鷺さんはその反抗期を迎えた娘役だったようだ。

最初に見た時の衝撃は大きく、視聴者からの評判も上々らしい。

夫婦の問題や反抗期を迎えた子供の葛藤などがリアルに描かれているのだが、あまりのリアルさにドキュメント番組であると錯覚する人がいるほどだ。

かくいう僕もその一人で、中井さんに番組のジャンルを聞いたぐらいだ。

 

「一樹君、いつも見てるのに、なんで気づかないの?」

 

だからこそ、中井さんの呆れたような言葉も出てくるのだろう。

 

「あまりにも、ドラマの時と雰囲気が違いすぎて……大変失礼しました」

「ふふ、別にいいわよ。いつも見てくれてありがとうございます♪」

 

(白鷺さん、そんなに怖い人じゃないのかも)

 

軽く頭を下げて謝る僕に、怒るわけでもなくお礼の言葉を口にしてきた彼女に、僕はそう思った。

普通、自分のことを知らなければ、怒ったりするはずなのに、彼女はそのようなそぶりは一切見せていない。

 

(うーん……いつも通りでいいかな)

 

目の前にいるのは有名人だが、なんとなくそのような扱いをされるのを嫌がっているような気がした僕は、先ほどと同じように接することにした。

というか、僕が彼女だったらそうしてほしいと思うし。

 

「でも、そうなると勉強のほうとか大丈夫? 僕が言うのもあれだけど」

「ふふ、心配ありがとう。でも、私はどちらも疎かにしているつもりはないわよ」

 

そう断言する白鷺さんのそれは、ある意味プロ意識のようなものなのかもしれない。

 

「それでね、これからお昼に一緒に食べられる日は千聖ちゃんも一緒でいいかな?」

「いや、それを言うのなら僕のほうなんだけど」

 

僕の今の立ち位置は女子たちの話の場に混ざってきた男という感じだ。伺いを立てるのは僕のほうだと思い、松原さんに聞き返した。

 

「私たちは大丈夫だよ。千聖ちゃんは?」

「ええ、私もかまわないわよ。よろしくね、奥寺君」

「う、うん。よろしく」

 

すっとこちらに手を差し出してくる白鷺さんの手を取って握手をする。

さきほどと同じ”よろしく”という言葉ではあったけど、何かが違っているようにも思えた。

それから、みんなでいろいろと話をしながら昼食を摂ったが、そのころには、白鷺さんに感じていた怖い印象はなくなっていた。

そんな、昼食時だった。




まだ、あらすじの部分にも触れていない状態です(汗)
今現在プロローグ的な状態なので、もう少しだけお付き合いいただけると幸いです。


それでは、また次回お会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。