BanG Dream!~青薔薇との物語~   作:TRcrant

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ついに、これまで登場しなかった最後の一人が出てきます。

……キャラ崩壊になってなければいいのですが


第20話 ピアノ

「あれ、一樹。どうしたの?」

 

ドアを開けた音で気が付いたのか、演奏を止めた森本さんがこちらを見ながら声をかけてきた。

 

「いや、食後の散歩をしていたら、ピアノの音が聞こえたから来て見たんだけど……毎日弾いてるの?」

「まぁね。気が乗ったらだけど。ここって、超穴場だから、心行くまで引けていいんだよねー」

 

両腕を上にあげて体を伸ばしながら立ち上がった森本さんは、どこかすっきりしたような印象を感じさせるほどに輝いて見えた。

 

「あ、そうだ!」

 

そんな彼女は、何かを思いついたように顔色を変えた。

 

「なんだか、ものすごく嫌な予感がするんだけど?」

「何もしないって~。ただ、ピアノ弾いてほしいなーって」

 

してるじゃんと、僕はため息交じりに返してしまった。

 

「スタジオとかだったらいいのに、どうしてこういうとこはだめなの?」

「ここだからだよ」

 

ここにあるのはグランドピアノ。

スタジオにあるのは普通のシンセサイザーだ。

同じ鍵盤楽器ではあるが、感じは全然違う。

もっと言えば、グランドピアノを弾いたのは、一度か二度。

しかも小さい時の話だ。

それに何より……

 

「……大丈夫だよ。もう啓介だって、ピアノを弾いて目くじらを立てるような、ちっちゃい奴じゃないわよ」

 

僕の心を読んでいると思われるようなタイミングで、森本さんはそう口にした。

その表情は、まるで母親のような、優しく包み込むような感じがした。

 

「……わかったよ。一曲だけ」

「やったー」

 

かに思ったらすぐにまた砕けた感じに戻る。

 

(何を信じればいいのかわからないな、これ)

 

とりあえず、僕はピアノの前に置かれた椅子に、静かに腰かける。

やや控えめに沈み込むこの感触を感じたのは、一体いつ以来だろうか?

 

(ここに座ると、本当に何もかもが違って見える)

 

馬鹿にされるかもしれないが、その席特有の雰囲気、世界観と言うのは確かに存在するのだ。

それの感じ方は人それぞれ。

重苦しく感じる人もいれば、プレッシャーに感じる人だっている。

そんな僕の感じ方は

 

(このピリッとした空気。本当に久しぶりだ)

 

周りの音が一斉に消えていくような感覚だった。

 

「リクエストは?」

「鬼火!」

 

(よりによって、それを言うか)

 

――鬼火。

それは、小さいころに僕が作り出した曲だ。

曲調は早めで、難易度も高めのそれは、僕にとってはある意味思い出深い曲でもあった。

 

「すぅ……」

 

一度僕は深呼吸をする。

ピアノの鍵盤に手を添える。

そして、僕は演奏を始めた。

 

 

 

★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

何でもない昼休み。

私は、お昼を食べて校舎内を歩いていた。

理由は特にない。

しいて言うのであれば、考え事をしたかった。

 

(早く、バンドメンバーを見つけないと……もうエントリーは済ませたのよ)

 

それは『FUTURE WORLD FES』に出場するためのコンテストのエントリー。

そのイベントは、音楽においてはかなり有名なもので、プロですら予選のコンテストでは落選が当たり前のレベルだ。

 

(私は、そこのステージで父さんの音楽を認めさせて見せる)

 

思い出すのは、父さんの音楽を切り捨てたあのフェスの出来事。

あれから、お父さんはバンドを解散させて、音楽の話をするのをやめてしまった。

だから、やらなければいけない。

『FUTURE WORLD FES』で、父さんの……私の音楽を認めさせてみせる。

 

「ん?」

 

そんな時、私の耳に微かではあるが、音が聞こえてきた。

その音は、誰かが話をしているような声ではなく、どちらかと言うと……

 

「これは……ピアノ?」

 

ピアノの音にも聞こえる。

いつもであれば、気にも留めないその音が、この時の私には、なぜか気になって仕方なかった。

気が付けば、私は音のするほうに足を進めていた。

 

 

 

 

 

聞えてきた音の場所と思われる場所にたどり着いた私は、その一室の名前が記されたプレートを見る。

 

「音楽室……ここね」

 

音楽室であれば、ピアノの音がするのは当然だ。

先ほどまで聞こえていたピアノの音は、今はすっかり聞こえなくなってしまった。

 

(もしかしたら、弾くのを辞めたのかしら?)

 

私は、ふとドアの窓から中を覗き込む。

中には女子生徒と男子生徒、二人の人影が見えた。

ピアノの前に腰かけている男子生徒に、女子生徒が何かを言う。

それを受けて、男子生徒はピアノに手を伸ばす。

 

「ッ!!」

 

その瞬間、私の体中に衝撃が走る。

たった一音だけのはず。

それなのに、ピアノの音が私からすべての音を奪っていく。

私に聞こえるのは、ピアノの音だけ。

その曲は、男子生徒のオリジナルの曲なのか、全く聞いたことがない曲だった。

速いテンポで進んでいくその曲調もだが、一番印象に残るのは弾いている男子生徒だ。

 

(一音一音が情景を浮かび上がらせていく)

 

それはまるで、魔法のようだった。

どこか儚く、それでいて力強さを感じさせるその曲調が、私に映像として映し出していく。

その演奏力、何よりもポテンシャルの高さ。

 

(彼となら、組めるかもしれない。私の理想のバンドを)

 

「ん?」

 

ちょうどいいタイミングで演奏が終わり、彼をスカウトするべくそのドアを開こうとした瞬間、中にいた女子生徒と目が合った。

だけど、それも一瞬のことで女子生徒は、すぐに私から視線をそらした。

 

「――――」

「――――? ―――――」

 

何やら二人で会話をしていると思っていると、男子生徒は椅子から立ち上がって女子生徒の後ろをついていく形で、どこかに消えた。

 

「……?」

 

そのことが不思議だった私は、ドアを開けて中に入るが、音楽室内には、私以外誰もいなかった。

 

「確か、こっちのほうに……あそこは、準備室?」

 

誰もいないことを不審に思った私が、二人が歩いて行ったほうを見ると、ちょうどドアのところからは死角となる場所に、隣の教室(確か準備室)に続くドアがあった。

ドアを開けて隣の教室にも、誰の姿もない。

 

(まさかッ)

 

そこで、ある可能性に気がついた私は、慌てて教室を飛び出す。

 

「やられたわ……ッ!」

 

廊下の端のほうで、あの二人の後ろ姿を見た私は唇を噛む。

あの女子生徒は、私に彼を会わせないようにするために、私を撒いたのだ。

 

(いいわ。こうなったら必ず彼とバンドを組んで見せるわっ)

 

私は、心の中で、強く決意を固めるのであった。




ここで、皆様に重大なお知らせです。

どこかでお知らせしたと思いますが、『隣の天才』の続編にあたる『BanG Dream!~隣を歩む者~』の執筆のため、本作はいったん投稿を休止いたします。

本作の次話の投稿は7月1日の午前0時となります。
また、今後も8,10,12,2,4月とで投稿を休止いたします。
楽しみにしていただいているところ、大変申し訳ありませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです。

よろしければ、6月投稿予定でもある続編の『BanG Dream!~隣を歩む者~』もよろしくお願いします。

*アンケートを開始いたしました。
内容は『バンドストーリー2章にあたるNeo-Aspect編を読みたいか否か』です。
プロット的にどちらに転んでもいいのでいっそのことと思いこのアンケートを実施いたしました。

もしかしたら第二弾も行うかもしれませんが、皆様のご回答お待ちしております。
なお、期限は6月末までを予定しております。

2章(Neo-Aspect編)は読みたいですか?

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