BanG Dream!~青薔薇との物語~   作:TRcrant

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タイトルはかなりふざけていますが、内容は割とまじめです。


第23話 残酷な練習のテーゼ

「僕は、受けない」

 

僕の出した答えは、彼女に対しての拒絶の言葉だった、

 

「あの人の人となりは知らないけど、僕はギターリスト。確かにそれ以外の楽器は弾けるけど極めている人に比べればお遊びなレベル。だから、僕は受けない」

 

あの時、僕がピアノを弾いているのを見ていたのだとすれば、彼女がスカウトしようとしているパートは『キーボード』である可能性が高い。

確かに、弾けることは弾けるが、それを極めている人と比べれば、明らかに完成度に差ができるし、何よりお遊びでやっていることの延長線上を彼女のバンドでもやるのは、湊さんを馬鹿にしているような気がしたのだ。

 

「つまり、もしギターだったらOKってこと?」

「まあ、その時はね」

 

もし彼女と気が合わなければ、それでも受けないとは思うけど。

 

「ほんと、一樹って時々大物っぽい発言をするわね」

 

でも、森本さんの言葉は少しだけ謎だった。

 

 

 

 

 

あれから僕の家に帰って、既に集まっていたみんなと一緒にスタジオで練習を行い、リビングで休憩をしていた。

 

「さてと、いつもの”アレ”やりますか!」

 

そう言ってどこからともなく啓介が取り出したのは、僕たちにはおなじみの正方形の白い入れ物に入った五本の竹串だった。

それを僕たちは適当に一本ずつ掴んでいく。

 

「それじゃ、いっせー、の!」

 

啓介の声に合わせるようにして、掴んでいた竹串を持ち上げる。

 

「よっし! 今日は俺が主役、DA☆」

「俺はドラムか」

「私はギターだ」

「あたしはベースね。ということは」

 

それぞれが手にした竹串を確認して感想を呟いていく。

そして、森本さんに促されるように視線を竹串のほうに移して確認すると

 

「キーボードだね」

 

と、つぶやいた。

これは、変なゲームとかではない。

毎回、練習の後半はそれぞれの楽器を入れ替えて練習をしているのだ。

理由は、他の楽器に触れておいたほうが、それぞれの音を理解することができるから……というもっともらしいものだけど、その実『俺、ギターをカッコよく引いて彼女をゲットするんだっ!!』という、ある人物の妄言がきっかけだったりする。

とはいえ、ギターを弾いたところで、素性を隠している以上モテることなど土台不可能なわけだけど。

それは置いとくとして、この練習を”シャッフル”と呼び、決まりも設けている。

その決まりは、『担当楽器は竹串で決める』、『抽選結果に文句を言わない』、『楽器を壊さない』の三つだ。

僕の手にある竹串の先端には『キーボード』と書かれていたのだ。

 

「それじゃ、移動するか」

 

田中君の言葉を受けて僕たちは地価の練習スタジオに移動していく。

 

「皆、準備はいい?」

「俺は問題ない」

「こっちも大丈夫さ」

「私もいいよ」

「あたしも」

「僕も」

 

田中君の確認の言葉に、みんなが答えていく。

大体週に二,三回は同じ楽器にあたることがあるのだが、先ほどのこともあり、鍵盤に添えている手に少し力が入る。

 

「あのさ! ちょっと頼みたいことがあるんだが、いいか?」

 

いざ練習開始となった時、唐突に待ったをかけたのは田中君だった。

 

「聡志が頼み事なんて珍しいじゃん」

 

森本さんの言うとおり、田中君はなかなかそういった言葉を口にすることはないので、かなり珍しいことだった。

その分、頼みごとのレベルがかなり高くなるけど。

 

「これから練習する曲、これにしたいんだがいいか?」

 

そう言って僕たちに配っていったのは楽譜だった。

 

「これって、カバー曲?」

「ああ」

 

その楽譜を見た中井さんが田中君のほうを見ながら聞くと、田中君は頷いて答える。

その曲は、昔のロボット物のアニメの主題歌になった曲だ。

題名を『残酷な天使のテーゼ』という。

高い歌唱力を求められるこの曲は、何年経ってもカバーされ続けるほどの名曲なのだ。

 

「実は、最近サポートミュージシャンのバイトを始めたんだが」

『えぇ!?』

 

田中君のカミングアウトに、僕たちは驚きを隠せなかった。

 

「な、なんだよ。そんなに俺がサポートミュージシャンになるのが意外なのかよ?」

『うん』

 

みんなの反応に戸惑いながらも聞く田中君に、僕たちはまた声をそろえて頷いた。

 

「だって、あの暴走ドラマーがサポートだなんて」

 

田中君は、ドラマーの素質としては十分だが、隙があれば音を入れまくってしまう一面を持つ彼が、違うバンドのところにサポートで入っていることが僕には驚きだったのだ。

 

「俺だって、高校に進学したからには新たな一歩を踏み出そうと思ってたんだよ。文句あるか!」

 

最後は逆切れのような形になったけど、それでも田中君からすれば大きな一歩なのかもしれない。

 

「お、大人だ」

「いやー、育てた甲斐はあったなぁ」

「そうだろそうだろ……啓介、てめえ後でしばく」

 

口は禍の元ということわざ通りの展開になった啓介は放っておくことにして、楽譜に視線を向ける。

 

「でも、なんだか違う気がするんだけど、これってアレンジ?」

「そうなんだよ。今回のバンドがアレンジを入れて、根本的にタッチが違う感じになってるんだ」

 

田中君の言うとおり、譜面を見ただけで僕の知っている曲とは根幹は同じでもその周りは似て非なる物にアレンジされている。

例えば、原曲では前奏部分がドラムを前に出しているのに対して、この譜面ではどちらかというとキーボードが前面に出されている印象を受ける。

 

「大丈夫だとは思うんだが、この譜面の曲をしばらくシャッフルでやらせてほしいんだが」

「だってよ、リーダー?」

 

田中君の言葉を受けて森本さんが僕のほうに視線を向ける。

HPのリーダーである僕が決めろということらしい。

僕の答えは最初から決まっていた。

 

「もちろん、いいよ」

「サンキュ、一樹」

 

とまあ、そんなわけで僕たちはこの曲の練習をすることになった。

 

(キーボードは……こんな感じか)

 

「一樹、少し音が硬いぞ」

「ごめん」

 

少々力みすぎたのか、田中君から注意の声が飛んでくる。

それを受けて、僕は演奏のタッチを変えた。

最後の終わりも、ギターの余韻を残しながら、それに乗っかるようにキーボードの音で締めくくる形になっているので、始まりから終わりまで気が抜けない状態だ。

 

「これ、元より難しいだろ」

「だよな……なんだか当日が不安になってきたな」

 

原曲より難しくなっているこの曲に、ドラムに前のめりに寄りかかりながら珍しく田中君が弱音を口にする。

 

「何かあんのか? 聡志がちょっと難しいくらいでそんなこと言わないだろ」

 

そんな彼に、啓介が直球で疑問を投げかける。

 

「まあな。今回のライブはいつもとはわけが違うからな」

 

ドラムから体を起こした田中君は真剣な面持ちで、言葉を続けた。

 

「歌姫が来やがるからな」

 

と。




曲の感じとしてはRoseliaのカバー版となっています。

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