BanG Dream!~青薔薇との物語~   作:TRcrant

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第31話 ぶつかり合い

「友希那さん!!」

 

ちょうど校門前まで来たところで、滑り込むようにして姿を現したのは、何度もバンドに入りたいと言っていたあこさんだった。

 

「あなた、学校にまで……ってその制服」

「はい! 実は、同じ学園の中等部に通っていました、宇田川あこです!」

 

あこさんが来ている制服は、確かに前に森本さんが来ているのと同じだった。

 

「って、あこじゃん。どうしたの?」

 

さらに、あこさんの姿を見た今井さんが、親しげに話しだした。

 

(二人って知り合いなのかな?)

 

「リサ、知り合いなの?」

「うん、ダンス部の後輩で――「お願いします! 良いドラム叩きますからバンドに入れてください!!」――って、ちょっとちょっと話が見えないんだけど」

 

湊さんの疑問に答えようとする今井さんの言葉を遮るような形で、あこさんは必死に湊さんにバンドに入りたいとお願いしはじめる。

そんな彼女の言動に、さすがの今井さんでも混乱したようであこさんを一度落ち着かせるようとしていた。

 

「えっと、もしかして友希那のバンドに入りたいの?」

「うん。でも、何度もお願いしても駄目だったから……あこ、友希那さんが今まで歌った曲を全部叩けるように練習してきました」

 

そう言ってあこさんがカバンから取り出したのは、この間僕が渡したスコアだった。

 

「だから……お願いです! 一回だけ、一緒に演奏させてください! それでだめだったら、あこ諦めます」

 

そう言って深々と頭を下げるあこさん。

 

(なるほど……どのくらい本気なのかはわかった)

 

僕はそんな彼女ではなく、別のところを見て彼女の本気を確認していた。

それはあこさんの手にあるスコア。

そのスコアは使い込まれているのが分かるくらいボロボロになっていた。

それだけでも受分彼女の本気さを伝えるのに十分なものだった。

 

(ならば、僕も約束は守らないとね)

 

「………前にも言ったけど、遊びはよそでやって」

「バンドリーダーは湊さんだから、別に口を出すつもりはないけど、演奏を聞くくらいならいいんじゃない?」

 

だからこそ、僕も約束を守るべく口を開いた。

 

「口を出すつもりはないって言いながらしっかりと出してるわよ。それに奥寺君も聞いてたでしょ? 自分で二番だと自慢していたのよ」

「だから何? 僕は別にバンドに入れろとは言っていない。ただ、彼女がバンドに入りたいのが本気かどうかを彼女の音で確かめる。これはいわばオーディションだ。それの何が問題?」

「練習時間を割いてまでするほどではないと言ってるの」

 

湊さんは一歩も譲ろうとはしない。

だが、そんな彼女の物言いに、僕は少しだけカチンときた。

 

「音も聞かずに切り捨てるのであれば、湊友希那。君はミュージシャン失格だ。バンドを解散して、二度とステージに上がるな」

 

僕は無意識のうちに声色を低くして、湊さんに言い放った。

 

「何ですって?」

 

そんな僕の言葉に、湊さんの目が鋭くなる。

 

「僕、湊さんのように勝手に決めつけて判断するようなミュージシャンの存在が気にくわないんだよ。しかもそれが目の前でうろうろされると尚更」

 

蘇るのは、僕たちを笑いものにするためだけに書類審査を通され、ライブハウスで笑いものにされた時の光景だ。

あの時の屈辱は、きっと死んでも忘れないだろう。

 

「はいはいはい。二人とも落ち着いて」

 

そんな一触即発の僕たちの間に、今井さんが割って入って仲裁してきた。

 

「友希那も……ほらこれを見てよ。こんなにボロボロになるまで練習してきたんだよ。一回だけでも聞いてあげてもいいんじゃない?」

「リサ……」

 

あこさんの手からスコアをとると、それを湊さんに見せて説得に加わってくれた。

 

「それに、あこはいつもやる時はやる子だよ」

 

あこさんの頭をやさしい表情で撫でながらそう付け加えた今井さんに、湊さんは一つため息を漏らすと、

 

「……いいわ。でも、一度だけよ」

「っ! ありがとうございます!! 一樹さん! リサ姉、ありがとう!」

「よかったねっ☆」

 

(セッションができるだけなのに、そんなに嬉しいんだ)

 

今井さんと一緒になって喜んでいるあこさんを見て、僕もどこか微笑ましい気持ちになっていた。

 

「ねえ、アタシも見学していい?」

 

ひとしきり喜び合ったところで、今井さんは手を控えめに上げて湊さんにそう聞いた。

 

「別にいいけど……スタジオには寄り付きもしなかったのにどうして?」

「い、いやーライブハウス以外で歌っている友希那を見て見たいなーって思って。それに、その紗夜って子にもあいさつしたいし」

 

(もしかして、今井さんも音楽をやってた?)

 

さすがに、考えすぎではあると思うが、もしそうだとすると今井さんがメンバーになっていない理由が少しだけ引っ掛かる。

 

「……好きにしたら」

「やったー」

 

それはともかくとして、素っ気なくはあるが湊さんのOKも出たことで急きょオーディションという名のセッションが行われることになった。

 

 

 

 

 

「今井さん」

「ん? 何かな奥寺君」

 

スタジオへの移動中、僕はどうしても今井さんに言っておかなければいけないことがあるので、彼女に声をかけた。

 

「さっきはフォローありがとう。おかげで助かったよ」

 

さっきは話の流れで言う暇がなかったが、お礼を言うのは人として大切なことなので、僕は今井さんにお礼の言葉を言ったのだ。

 

「いーのいーの、可愛い後輩のためだからね☆ でも、奥寺君は少し言い過ぎだよ。アタシはそう言うのはよくわからないけど、あれじゃ聞いてくれるものも聞いてくれなくなるよ。それに、友希那ってものすごく頑固だから」

「……反省してます」

 

湊さんの頑固な一面は、何度も狭間見たので知っているが、今井さんの言うとおりだ。

あのまま行ってれば、交渉決裂だってあり得たかもしれない。

 

(僕もまだまだ未熟だな)

 

改めて、僕はそれを思い知ることになった一幕だった。

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