BanG Dream!~青薔薇との物語~   作:TRcrant

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お待たせしました。
第34話です。


第34話 打つ手なし

(まさか曲名を他人につけてもらうなんて……僕もヤキが回ったかな)

 

放課後、一人で練習スタジオに向かいながら、僕は心の中でつぶやく。

いつもであれば、幼馴染である田中君やみんな以外の赤の他人に曲名をつけさせるなんてことは考えもしなかったはずなのに、この日はどういうわけかたまたまその曲を聞いた今井さんに曲名を考えてもらったのだ。

それも、おそらくは今朝田中君から言われた言葉が原因だと思う。

 

『今日からしばらく、HPの練習は中止だ』

 

田中君は湊さんのバンドとこっちの練習を両立するのは難しく、何とかするための準備のために時間が欲しいからと言っていたが、僕にはなんとなく本当の理由がわかったような気がした。

 

(きっと、いつまで経っても行動を起こさない僕に呆れたんだ)

 

やはり、僕も田中君たちに頼らないで、動くべきだったんだ。

抜けたい抜けたいと言っておきながら、バンドメンバーを集める手助けまでして、バンドを完成させた僕に、みんなはあきれ果てたのかもしれない。

 

(でも、後悔はしてないんだよね)

 

その時点で、僕は救いようもないバカなんだと思い知らされる。

あこさんが加わって、今井さんもまた加わって、一つのバンドの形になったことを、僕は純粋に喜ばしいことだと思っている。

 

(もうどうにでもなれ、だ)

 

僕はこの時この瞬間、バンドを抜けるというのをあきらめたのであった。

 

 

 

「あこ、今テンポがズレた」

「はいっ!」

「今井さん、もっと宇田川さんの音を意識して!」

「りょーかい!」

「奥寺君、もっときめ細やかく」

「わかった!」

 

メンバーが全員そろってからというものの、僕たちの練習内容は変わり、さらに激しさを増していた。

それは、一曲を通しで演奏するというものだが、湊さんや紗夜さんから矢継ぎ早にダメ出しや指導が入ってくる。

その指摘を受けて、修正しながら何度も何度も演奏をし続ける。

そうやって、スキルを身に付けて行くのが今の練習内容だと思う。

それは実に理にかなった練習法であり、効率的であるともいえる練習方法になる。

とはいえ

 

(これは、中々にハードだな)

 

ノンストップでの練習は、思った以上にハードであり、凄まじい勢いで体力や精神力を消耗していく。

流石に休憩はあるものの、消耗が激しいことには変わりがなかった。

 

「はぁ~~~~~疲れたぁぁ」

「あこさん、お疲れ……」

 

練習の終了時刻になった頃には、あこさんはドラムのほうにぐったりと体を倒していた。

 

(ここまでの練習も久しぶりだな)

 

HPを結成したての頃は今よりもかなりタイトな練習をしていたが、最近は加減をしているのでへとへとになるまで練習をしたことがなかったりもするので、久々にやるといい刺激になる。

 

「皆さん、少しいいですか?」

 

そんな僕たちに構うことなく、紗夜さんはカバンから紙を取り出した。

 

「オリジナル曲もまとまってきたので、こんな感じで課題曲を増やしたいのですが」

「ちょいと失礼」

 

そう言って湊さんに渡した紙を、僕も横から覗き見た。

 

「……レベルの底上げに適したリストだと思うわ。奥寺君はどう?」

「うーん……湊さんと同じ意見かな」

 

本当のことを言おうとも思ったが、僕はそれを言うこともできず、湊さんの意見に合わせた。

 

「そう。それじゃ、来週までに全員弾けるように練習してくること」

「わーお」

 

湊さんの課題に、僕は思わず芝居じみた声を上げてしまった。

何せ、今日が週末の土曜であるということを考えると、猶予は約二日しかない計算になる。

 

(いくら難易度が低いとは言っても、さすがに厳しいぞ……)

 

「く、くれーぷ……」

 

なんだかあこさんの口元から魂が抜けて行っているような気がするのは、気のせいだろうか。

 

(今度クレープでも差し入れようかな)

 

もっとも、そんなことをすれば湊さんから何か言われるような気がするが。

 

(そもそも、クレープ屋なんて知らないし)

 

そんなわけで、僕の案は誰にも知られることなく没になるのであった。

 

 

 

 

 

「一樹さん、最近はバンドの練習に最後までいるようですが、家の用事は良いのですか?」

「あー……」

 

帰り道、僕の隣を無言で歩いていた紗夜さんの問いかけに、僕は少しだけ気の抜けた返事をしてしまった。

当初は両立させるべく都合のいい言い訳で使っていたのだ。

もちろん半分嘘で半分本当なため、気にもしなかったのだが、紗夜さんはそうではなかったみたいだ。

 

「何ですか、その返事は。これでも心配してるんですよ」

「そうなんだ。心配かけてごめんね」

「べ、別に一樹さんが練習に来れなくなったらバンドの皆さんに迷惑をかけてしまうからという理由で、一樹さんのことを心配したわけではないです」

 

(うわ、完全にツンデレのテンプレだ)

 

”デレ”はないが、今の紗夜さんのセリフは啓介が教えてくれたツンデレのテンプレートそのものだった。

「ごめんごめん。家の用事は大丈夫……たぶん」

 

HPがどうなるのかがわからないため、中途半端な答えになってしまった。

 

「……本当に大丈夫なんですか? あまり、早退とかを繰り返すと一樹さんでも抜けてもらう可能性だってあるんですよ」

「いっそのこと、そうしてほしい」

「今何か言いましたか?」

「う、ううんッ! 何も言ってないよ」

 

思わず口をついて出てしまった本音をごまかすように、僕は必死に誤魔化した。

そんな僕に、紗夜さんは首を傾げながらも「そうですか」とだけ言って、それ以上追及することはなかった。

 

(気を付けよう)

 

本心だとしても、あまり波風立てるのは好ましくない。

きっとどこかのタイミングで抜けることができる時が来るはず。

僕はそれが来るのを待ちつつも、心のどこかで諦めかけていた。

もはや、HPは解散の危機にまで陥っていた。

 

(方向性の違いとか、喧嘩とかで解散するかと思っていたけど、蓋を開けてみればなんとやら……か)

 

この日の夜空は、僕の心境とは裏肌に、星が見ることができるほどの天候だった。




色々と不定期な投稿頻度ですが、大体週に3~5話ぐらいの投稿で落ち着きそうです。

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