BanG Dream!~青薔薇との物語~   作:TRcrant

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第36話 新バンド

「うわ!? びっくりした」

「え? な、なに?」

 

スタジオのドアをノックもせずにけり破るのに近い形で開け放ったため、当然みんなは驚いた様子だった。

 

「……一体何の用かしら?」

「そうです。そもそも、ノックもせずにドアを蹴り破るように開けるなんて、非常識じゃないかしら?」

「しかも、それって道場破りのセリフだし」

「冷たい視線で俺は凍えそうに……って、一樹、お前もか!」

 

凍えそうになっているのはむしろこっちの方だ。

今日も啓介は啓介だった。

そして、啓介の言葉に、湊さんがこちらに振り向く。

 

「彼はあなたの知り合い?」

 

その目はものすごく冷たかった。

気持ちはわかる。

僕だったら間違いなく引くか関わり合うのを辞めるだろう。

 

「僕としては、遺憾だけど幼馴染です」

「遺憾……なのね」

 

僕の言葉のニュアンスを感じてか、今度は同情の目で見られた。

 

「『たのもー』ってなんだかカッコいい! あこ、次からは――「宇田川さん、絶対に真似をしないでくださいね」――はい」

 

啓介のせいで、後輩がとんでもないことを真似しようとしたのを紗夜さんが止めてくれた。

 

「おいおい、大親友に―――――――ピッ」

「ん?」

 

突然啓介が気勢を上げて硬直しだした。

その視線の先にいたのは、今井さんの姿があった。

 

「リサ様が、生リサ様が――――――」

 

なんだか変なことを口走りながら、啓介は完全に硬直してしまった。

 

(そう言えば、啓介って今井さんと話すために大金騙されてたっけ)

 

それはそれであほな話だと思うが、重要なのは、啓介にとって今井さんはそれだけすごい存在でもあるということなのだ。

 

「えっと……アタシ、何かまずいことした?」

「いや、気にしないであげて」

 

硬直した啓介を見て、困惑している今井さんに、僕はそれしか言うことができなかった。

 

(とりあえず、これは端のほうにでも移動させておこう)

 

「邪魔するぞ」

 

置物化した啓介を引きずるようにしてスタジオの端に移動させると、田中君が中に入ってきた。

今度は普通にだけど。

 

「私たち、練習中なのだけど」

「そう固いこと言わずに。こっちも用事さえ終わればすぐに退散する」

 

一瞬固まっている啓介のほうに視線を向けた田中君は、不満そうな声を上げる湊さんに言い返した。

 

「俺たちの用事は、一樹を返してもらうことだからな」

「ええ!?」

「何ですって?」

 

あこさんの驚きの声を遮るように、驚きと疑問に満ちた湊さんの声が上がる。

 

「一樹は俺たちのバンドのメンバーなんだよ」

「ッ!? どういうことですか、一樹さん!」

「あ、いや……それは」

 

田中君のカミングアウトに紗夜さんが驚きを隠せずに、僕を問いただしてきた。

当然みんなの視線は僕に集まってくるわけで、その圧に圧されて言葉が出てこない。

 

(まさか、本当にhyper-Prominenceのことを!?)

 

田中君たちの結論は、僕たちがhyper-Prominenceであることを告げてバンドを抜けられるようにしようというものなのかもしれない。

確かに、それならば抜けられるかもしれないけど、変なことに巻き込まれる危険だってあるし、色々と面倒なことにもなるから、それだけはやりたくなかった。

 

「一樹が言えないのなら、俺から言おう」

 

そしていつまでも何も言わない僕に業を煮やしたのか、田中君はそう言うと話し始めた。

 

「俺たちは『Moonlight Glory』というバンドを結成している」

「へ?」

 

僕は、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

田中君の口から出たバンド名は、僕も知らない名前だった。

 

「ムーンライト……」

「グローリー?」

「わー! かっこいい名前ですね! 一樹さん」

 

素っ頓狂な声を上げる僕をしり目に、目を細める湊さんと紗夜さんとは対照的に感想を口にしているあこさんとバラバラな反応が返ってきた。

 

「ちょっと待って。私たちは一度もそのことを聞いてないわ」

「それは……きっと言い出しずらかったんじゃねえのか?」

 

田中君が僕に目配せをしてくるので、僕は彼に合わせて頷いて答える。

 

「色々あってつい最近結成にこぎつけたんだが、一樹がこんなかんじだから全然次のステップに進めなくて困ってたんだよ。だから、こいつをあなた方のバンドから抜けさせてやってほしい」

 

(そうか……そう言うことだったんだ)

 

田中君の準備というのは、新しいバンドを結成することを意味していたんだ。

でも、そうなると一つだけツッコまれてしまうことだってある。

 

「ちょっと待ってください。話は分かりましたが、最近できたということはこちらへのバンドに入った後ということで間違いないですよね?」

「ああ。それが何か?」

「でしたら、強引過ぎではありませんか? 本人の意思を尊重するべきです。第一、本当にバンドを結成されたんですか?」

 

それは、田中君のやり方が、少々強引な形になってしまうということだ。

いや、それも元々はバンドを抜けることができなかった僕が原因なのだから僕が悪いことになるのだが。

 

「それは、バンドを結成したと嘘をついているとでも?」

 

田中君の声色がいつもより低くなる。

 

「えっと、二人とも落ち着いて、ね?」

「そうよ。聡志、少しトーンダウン」

 

険悪なムードになるのを、今井さんと森本さんが回避させる。

それを僕は、ただ見ていることしかできない。

ここで僕が何か言うと、さらに状況が悪くなりそうな気がしたのだ。

 

「すみません。少し言い過ぎました」

「俺も売り言葉に買い言葉だった」

 

紗夜さんと田中君がお互いに謝り合うことで、何とか話は落ち着いた。

 

「……ならこういうのはどうだ? 来月にこの地区では登竜門と言われたライブに俺たちのバンドが出る。その演奏を聞いて、判断してほしい。俺絵たちの本気度を」

 

(ん? それってもしかして……)

 

「それって、あこたちが出るライブですよね?」

 

僕の予想が正しかったようで、偶然にも湊さんたちが出ようとしていたのと同じライブに出演することになっていた。

 

「ええ……わかったわ、そう言うことなら、あなた達の実力、見させてもらうわ」

 

こうして、僕がバンドを抜けるのを賭けた(?)ライブが確定するのであった。




『たのもー』=道場破りの印象が強いのですが、ほかにも使う場面てある物なのかと考えている今日この頃です。

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