BanG Dream!~青薔薇との物語~ 作:TRcrant
気を付けているつもりですが、時々出たりすることがありますので、見つけた際はお手数ですが、間奏か誤字報告よりお知らせいただけると幸いです。
「えっと……確かこの辺のはずなんだけど」
RinRinさんの相談事に乗ることとなった僕は、彼女に指定された場所であるカフェテリアに向かっていた。
彼女から教えてもらった住所を頼りに向かったのだが、そこはカフェテリアではなくライブハウスだった。
場所は『CiRCLE』
前に湊さんと一緒にライブに立った場所だ。
(これでも、カフェテリアって言うんだ)
ライブハウスとしては珍しいタイプだったが、僕はとりあえずそのことを置いとくことにしえ、目的の人物を探すことにした。
(あ、いた)
その人物を見つけるのは意外にも早かった。
白と黒のゴスロリ(?)風の服装をしているRinRinさんの姿を見つけた僕は、席について落ち着きのない様子の彼女のもとに歩み寄る。
「お待たせしてすみません」
「い、いえ。こちらこそ……いきなり呼んだりしてすみません」
彼女に声をかけた僕は、一言断ってから彼女の向かい側の席に腰かける。
(本当は何か頼むべきなんだけど、今回は勘弁してもらおう)
「それで、相談というのは」
「はい。わたし、その……あこちゃんから、皆さんが演奏している動画を……見せてもらって……それで一緒に演奏を」
(うーん。要領を得ないな)
僕が相手だからか彼女の性格だからかは知らないが、どうにも話が見えてこない。
このままでは、彼女の言いたいことが伝わりづらい。
「RinRinさん、別に私は急いでいるわけではないので、落ち着いてゆっくりと順番に話してください」
「あ……すみません」
なので、僕は一度RinRinさんを落ち着かせることにしたのだ。
「私、昔ピアノを弾いていたことがあるんです。ただ……今はやってなくて」
「なるほど……」
どうしてピアノを弾くのを辞めたのか。
疑問は感じたが、今の話とは関係なさそうなうえに、あまり深く聞くのも気が引けた僕は、一度その疑問を忘れることにした。
「少し前に、あこちゃんから……皆さんが練習している光景の動画を、見せてもらって……一緒にピアノを弾いたら……楽しくて」
(楽しい……もしかして)
まだ断定はできない。
だが、彼女の話を聞く限りだと、共鳴現象が起こった可能性は高い。
「でも、あこちゃんや友希那さんたちのバンドには……奥寺君が……」
「何で僕の名前を……あぁ、あこさんから聞いたんだね」
名前を言われてびっくりしたが、考えてみれば動画を送っているくらいだから僕の名前を言っていたとしても不思議ではない。
僕も誰にも言うなとも言ってないし。
「それだけど、僕は彼女たちのバンドから抜けましたよ」
「え!?」
僕のその言葉に、RinRinさんは驚いたように目を見開かせる。
「元々組もうと思っていたバンドがあってそっちに入るために。だから、キーボードは今フリー。だからあなたがバンドに入りたいといえば、入ることだってできると思いますよ」
「そ、そんな……私は奥寺君みたいに、うまく弾けないです」
あこさんが送った動画というのがどの動画なのかはわからないが、さすがに彼女よりうまいというのはない。
「あはは。そんな謙遜を。動画と合わせて一緒に演奏して楽しいと感じることができたことが何よりの証拠じゃないですか。それに、私はたぶんあなたよりピアノは下手ですよ。ブランクありまくりですし」
「それは……奥寺君だって、コンクールで賞を取ったこと、ありますよね?」
「まあ、かなり前にだけど。あれこそただのまぐれだよ」
(あの時のコンクールのことを知ってる……調べたのかな)
あのコンクールはかなり大きなものだったので、調べればわかっても不思議ではない。
「そんなことないです。奥寺君は私の……」
「僕は……RinRinさんの何ですか?」
途中まで言いかけて俯く彼女に、僕はたまらず続きを聞くが、何も言おうとはしない。
「あの、覚えて……ないですか?」
「……大変申し訳ないけどさっきからあなたが何を言いたいのかがよくわからないんですけど」
「そう、ですよね」
悲しそうに目を伏せる彼女に、罪悪感を感じずにはいられなかったが、全く覚えていない以上何も言えることがない。
何より、あのコンクールは当時天狗になっていた啓介を叩きのめすために出た物なので、あまり覚えてもいないだけだけど。
「ただ、貴女が湊さんのバンドで一緒に演奏をしたいということは分かりました。僕でよければ今からでも湊さんに繋ぎをとりますけど、どうしますか?」
「それは……友希那さんのバンドの方達は、とても真剣に音楽をやってる中に、部屋で弾いているだけの私が入るのは………」
(なるほど、一歩を踏み出す勇気が出ない。ということか)
そうなると、こちらとしても詰みになる。
いくら強引に連れて行っても、当の本人がやる気がないとなると湊さんが加入を認めることはありえない。
「本当に、やりたいのであれば、時には思い切って……それこそ崖の上から飛び降りるくらいの勢いで、一歩を踏み出すべきです。もし、その勇気ができた時は、私に連絡してください。湊さんたちにあなたの演奏を聞いてもらえるように話を通しますから」
「ありがとう、ございます」
「いえ。RinRinさんのお役に立てずに、申し訳ないです」
僕のしたことなんて、彼女だったらとっくに結論を導き出しているはずだ。
だから、僕のしたことは何もないのだ。
「あの!」
話しも終わり、練習があるために”では”と、断りを入れて席を立とうとした僕に、RinRinさんは先ほどよりもはっきりとした声で、呼び止めてきた。
「わ、私の名前は……白金燐子って言います。その……同い年なので、敬語じゃなくても大丈夫、です」
「……僕の名前は、奥寺一樹。僕にも敬語は不要だよ」
こうして僕はRinRinさん……白金さんと名前を交換し合った。
その後、僕の携帯の電話帳の名前をプレイヤー名から、彼女の名前に変えるのであった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
(今日、話せてよかった)
奥寺君が帰っていくのを見ながら、私は今日、彼と話をすることができたことを喜んだ。
(奥寺君やっぱり、私のこと覚えてないよね)
奥寺君の様子から見て、多分あの時のことを覚えていない。
私がピアノコンクールにでなくなったきっかけになった、あのコンクールで彼が言ってくれた言葉のことを。
(いつか、思い出してくれると、いいな)
思い出してくれた時、奥寺君が何を言うのかも、そして私がどうなるのかもわからないけど。
でも、思い出してくれると嬉しい。
だから、私は待つことにした。
奥寺君が、あの時のことを思い出すその時を。
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