BanG Dream!~青薔薇との物語~ 作:TRcrant
今月もよろしくお願いします。
第43話 デビュー
あのライブも終わり、いつも通りの日常が戻った。
なんだかんだで忘れていたが、湊さん達にも僕たちのバンドの本気度が伝わったと思う。
(これで、また静かな毎日が―――)
「ねえねえ、ちょっといい?」
「な、なんですか?」
戻ってくると思った矢先、クラスメイトである二人の女子がそわそわしながら声をかけてきた。
「ここに載ってるのって、奥寺君?」
「え? ………ゲッ!?」
女子生徒が僕に見せるように開いた何かの雑誌のページを見た僕は、思わず引きつった声を上げてしまった。
そこに写っているのは、楽器をもってステージに立つ僕たちの写真だったのだ。
そのページの見出しには『すい星のごとく現れし新生バンド、Moonlight Glory爆誕!』というタイトルまでつけられていた。
――X月X日に開催されたライブイベントにて、さらに期待のバンドが爆誕した。
その名も『Moonlight Glory』。
その演奏はプロ顔負けであり、ダイナミックなドラムや寸分たがわぬ音を奏でるキーボード、ほかの音に埋もれぬように存在感を高めるベース、そして壮絶なテクで会場を魅了するギターが特徴だ。
楽曲は、変わり種が多いが、そのどれもが活き活きとしている。
今後のライブの予定は不明のようだが、彼らのバンドが動向に注目したい。
その雑誌に書かれていた記事の内容を要約すると、そんな感じだった。
「ねえねえ、今度いつライブするの?」
「次は私も誘ってよ!」
「あー、清美ズルい!」
(さようなら、僕の穏やかな日々)
なんだかどんどん集まってくる女子たちのやり取りを呆然と眺めていた僕は、心の中で儚くつぶやくのであった。
BanG Dream!~青薔薇との物語~ 第5章『悪意』
「困ったわね」
「困ったな……」
昼休み、森本さんと音楽室で落ち合った僕たちは、お互いに頭を抱えていた。
もちろん理由は一つしかない。
「イベントの内容は理解してたつもりだけど、まさかこうも大事になるとは思ってもいなかったわ」
僕たちのことが記事に載ったことだ。
「流石に去年出なれたけど、だからと言ってちやほやされるのは、少し落ち着かない」
今日の休み時間だけで、何十人の女子たちから声をかけられたり、遠巻きに見られたりと居心地が悪くてしょうがなかった。
まだ声をかけてくる方がマシだ。
とはいえ、向こうも悪意があってやっていることじゃないだけに、拒絶するわけにもいかず。
そんな状況に森本さんも陥っていたのか、昼休みになって耐え切れなくなり、音楽室に向かうとちょうど同じタイミングで音楽室前で出くわして今に至るのだ。
「とにかく、帰ってから皆で話し合って対策を決めましょう」
「そうだね………まあ、結論は何となく想像つくけど」
とりあえず、考えなければいけないことは一応蹴りはついた。
そんな時、ノックの音が聞こえてきた。
「あなたは……」
「湊さん、それに今井さんまで」
ノック音がした出入り口には、湊さんと今井さんの姿があった。
湊さんは無表情で、今井さんは申し訳なさそうに苦笑していた。
「奥寺君、あなたに用があってきたの」
「用って……僕にはないんだけど」
今までのこともあるので、軽快して彼女の動きを待つ。
「そんなに警戒しなくてもいいわよ。別に無理やり勧誘するつもりはないわ」
「……用件は?」
「あなた達の演奏。とてもよかったわ。どのパートも高い実力で素晴らしい演奏だった」
「うんうん、アタシなんて、思わず仰け反っちゃたよ☆」
警戒を緩めることのない僕に、湊さんが口にしたのは意外にもこの間のライブの感想だった。
今井さんも照れ笑いを浮かべながら続くが、そのどれもが好意的なものだった。
「それじゃ、一樹の件はあきらめてくれるわよね? あなた達の演奏も十分素晴らしいものだというのは変わりないのだから」
「ええ。奥寺君がバンドを抜ける件
森本さんの挑発めいた口調の言葉に、湊さんは頷くが、その言葉のニュアンスに僕は引っ掛かった。
「”は”って……それって、どういう意味?」
「奥寺君。改めて、あなたに私たちのバンドのコーチをお願いするわ」
湊さんから出されたそれは、とても合理的なものだった。
約束したのはあくまでも”バンドを抜けること”だ。
関わりを持たないことを約束したわけではない。
「ちょっと湊さん。さすがにそれは都合が良すぎないかしら?」
「悪いけど、今は私と奥寺君とで話をしているの。いくらあなたが彼女でも、それに割って入るのはどうかと思うわ」
湊さんと森本さんの間で火花が飛び散っているような気がするほど、二人は無言でにらみ合う。
「森本さん」
「……わかったわよ」
流石は幼馴染といったところだろうか。
名前を呼んだだけで、僕の言おうとしていることを察した森本さんは、ため息を漏らしながらも一歩後ろに下がり、見ているだけの姿勢をとる。
「湊さん。条件さえ呑んでくれるのであれば、喜んでコーチの件引き受けたい」
「……その条件は?」
「僕たちのバンドの活動と湊さんのバンド……Roseliaとの練習やライブなどの活動がかぶった時は、こちらを優先させてくれること」
あの時、一番支障をきたす原因になったのは、僕が二つのバンドを両立できなかったこと。
だからこそ、あえて自分たちのバンドに優先させるようにしておくことで、問題になりそうな因子を取り除こうと考えての条件だった。
対する湊さんは、視線を下に落として少しだけ険しい表情で考えこんでいたが、再びこちらに視線を戻すと
「いいわ。その代わり私たちのバンドにすべてを賭ける覚悟でやって頂戴」
「もちろん」
コーチということは、彼女たちの練習の一つの指針にもなりうる存在。
手を抜くなんて選択肢は、僕の中にはなかった。
こうして、僕は湊さんのバンド……Roseliaのコーチという形に収まるのであった。
「ということで、一つ練習の日程を調整したいんだけど」
放課後、いつものように僕の家のリビングに集まった啓介たちに、昼休みにあった出来事を説明して協力をお願いしたところ
「甘いな」
「甘いぜ」
「甘いよ」
「甘々だね」
みんなから一斉にブーイングをもらってしまった。
「って、森本さんあの時いたじゃん!!」
「いや、いたけどあえて口を挟まないで上げたの」
片目を開けてこちらを見るその表情は、いたずらが成功した小悪魔のようなものになっていた。
「……そんなに僕って甘い?」
「ああ。お人よしもいいとこだ」
「別に、ただ甘くしてるわけじゃないよ。ちゃんと僕にも考えてることがある」
僕の言葉に、田中君は”ほほう”と声を漏らすと両腕をくんでこちらを見つめる。
その目は、”話してみろ”と言っているようなものだった
「湊さんのあの目、気にくわないほどに似てるんだよ」
「誰にだ?」
「僕が一番嫌っている奴」
僕は一度そこで言葉を区切ると、こう続けた。
「ミュージシャンという名の人殺しにね」
『……っ』
僕が誰のことを言っているのかが分かったみんなは、全員息をのんだ。
「湊さんは、確かに才能もあるし実力もある。何より、音楽に対する意識……理想が高い。だからこそ、だ」
僕は一度そこで言葉を区切る。
「だからこそ、彼女は知るべきだ。その理想が鋭い刃となり、凶器となりバンドメンバーを傷つけていくことを。でも、湊さんは高すぎる理想が、時にして人を殺める凶器になることをわかっていない。本当は関わるべきじゃないとは思うけど、でも彼女たちの才能を無駄にするのを僕は防ぎたいんだ」
「一樹……本気、なんだな?」
僕は無言で、田中君から目をそらすことなく頷く。
高すぎる理想は、時にして人を傷つける凶器にもなる。
それを知っているからこそ、同じ思いをさせたくはない。
でも、それは湊さんというわけではなく、紗夜さんたちにという意味だけど。
「わかった。一樹がそこまで考えて決めたことだ。俺たちも最大限できる限りで応戦させてもらうぜっ」
「皆……ありがとう!」
サムズアップをしながら快く協力してくれるみんなに、僕は深々と頭を下げてお礼を言う。
本当に、僕は言い幼馴染を持ったと思う。
「して、一樹よ」
「何、啓介?」
そんな中、真剣な面持ちで僕に話しかけてきた啓介はこちらに歩み寄ると
「Roseliaのリサ様と話をする機会をプリーズ」
と言ってきた。
『………』
そして啓介に浴びせられる冷たい視線。
「さて、練習日程を考えるか」
「「「異議なし!」」」
怒るのも面倒と感じたのか、啓介を無視して話を勧めようとする田中君を止める者は誰もいなかった。
「いや、異議ありまくりだから!! 一樹のハーレム王国を防ぐという重大な話しが――――」
啓介の異論の声を放っておいて、僕たちは話合いを続けていくのであった。
あらすじのほうに記載しておりますので、ご存じだとは思いますが今月より、投稿を毎週日曜日の午前0時とさせていただきます。
これまで、完成したら投稿というか形をとっておりましたが、こういった形式が自分にはあまり合わないため、急遽変更させていただくことになりました。
読者の皆様には混乱を招いてしまい大変申し訳ありませんが、ご容赦いただけると幸いです。
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