BanG Dream!~青薔薇との物語~ 作:TRcrant
第45話になります。
あれからしばらくして練習を一時中断して、休憩となった。
「そう言えば、奥寺君と二人ってどこで知り合ったの?」
「それはね! ゲームで一緒にプレイした時なんだ」
「プレイを始めたはいい物の、何をすればいいのかに戸惑っていた時に、二人が助けてくれたんだよ」
今井さんの疑問に、あこさんに続くように僕も答える。
そう言う意味では、ある意味二人には頭が上がらない。
今でもプレイはしているが、彼女たちのようなレベルになるまでどのくらいかかることやら。
「奥寺君ってそういうのやらなそうなイメージがあったから、ちょっと意外かも」
「それ、どう反応していいのか困るんだけど」
今井さんに僕がどのように見えているのか、一度じっくりと話を聞く必要がありそうだ。
そんなことを考えながら、僕は三人の話を聞いていた。
「おねーちゃんのドラムはね、ドーンッ、バーンッてカッコいいんだよ!」
「あはは、あこってばいつも『ドーンバーン』だね」
話しは自然とあこさんのお姉さんの話に移っていた。
姉妹仲がいいのは、とても好ましいことだ。
とはいえ、
「えぇ!? 普通、お風呂に一緒に入るよね!?」
「さ、さすがに中学生で一緒は……」
僕は無言で白金さんの言葉に頷く。
白金さんの言う通りお風呂に一緒に入るというのは、普通ではない。
「三人とも、おねーちゃんがいないからそうなんだよ!」
普通じゃないと僕たちに言われたあこさんは、ムキになって言うが、いたとしても一緒に入ることはない。
「おねーちゃんはね、カッコよくてあこの憧れなの!」
「っ!」
(ん?)
あこさんの言葉に反応するように、後ろのほうから息をのむ声が聞こえてくる。
それが、少しばかり不穏な空気を感じさせてならない。
「ちょっとちょっと~、友希那カッコいいはどこへ行ったの?」
「友希那さんは超超超カッコいいけど、一番かっこいいのはおねーち――「いい加減にしてッ」―――え?」
あこさんの言葉を遮るようにして響き渡った悲鳴にも近い怒鳴り声に、スタジオ内は一瞬にして凍り付いたように静まり返った。
「お姉ちゃんお姉ちゃんって何なのよ! 憧れられるほうがどれだけ苦痛なのかわかってないくせに!!」
それは、僕ですら初めて聞いた紗夜さんの怒鳴り声だった。
「何でも真似して、自分の意思はないの!? だったら自分なんて必要ないじゃない!!」
その言葉はとても痛々しく感じるほどに、悲痛なものだった。
「紗夜……それってヒナのこと?」
「ッ!? わ、私」
今井さんの言葉で落ち着きを取り戻したのか、それとも言いたいことをすべて吐き出して少しだけ心に余裕ができたのか、紗夜さんははっとした様子で口に手を当てる。
ヒナというのは、紗夜さんの双子の妹のことだ。
どういういきさつかは知らないが、今井さんとも知り合いのようだ。
……もしくは名前だけ知っているだけか。
「ご、ごめんなさい。あこ……また」
「紗夜、
今にも泣きそうな表情で謝るあこさんの言葉を吹き飛ばすように、湊さんは非情にもそう言い放った。
「……返す言葉もありません。お先に、失礼します。……迷惑をかけて、ごめんなさい」
紗夜さんは、楽器を片付けると、おぼつかない足取りで、スタジオを去って行った。
(これは、追いかけるべきか……それともここに残るべきか)
紗夜さんの後姿を見ていた僕の中に、迷いが生まれる。
正直、追いかけたところで僕にできることなんて皆無に等しい。
それでも、友人として放っておくことはできない。
それに、避けられぬことでもあるのだ。
だが、ここに残って後の四人の練習に付き合うことも、長い目を見れば重要なことだ。
迫られる二つの選択肢。
「悪い、紗夜さんを送ってく!」
僕が選んだのは、紗夜さんを追いかけることだった。
「ちょっと、ま―――――」
荷物をまとめてスタジオを飛び出した僕に、湊さんが声をかけてくるが、それはスタジオのドアによって遮られた。
(これは、明日は嫌味言われるかな)
とはいえ、紗夜さんを放っておくことはできなかった僕は、後悔していない。
僕は急いで、紗夜さんの後を追いかけるのであった。
「紗夜さん!」
スタジオを後にして少し走ったところで、紗夜さんの背中が見えた僕は、彼女の名前を口にした。
紗夜さんは足を止めてこちらに振り返った頃には、彼女の近くまで追いついていた。
「はぁ……はぁ……」
「一樹さん……どうして」
「そんなの……紗夜さんが心配だからに、決まってるじゃない」
何とか息を整えながら、僕は紗夜さんに答えた。
「……ッ! へ、変なこと言わないでください」
「……送ってくよ」
友人として心配だから言ったのだが、紗夜さんに怒られてしまった。
無言で頷く紗夜さんの顔は、夕陽に照らされてか赤く見えた。
そうして一緒に歩き続けた僕たちだったが
「「……」」
お互いに見事に無言状態で、ものすごく気まずい。
「一体何があったの?」
なので、僕から話題を切り出してみることにした。
「別に……」
そう言って言葉を濁す紗夜さんだが、僕にはもう見当がついていた。
「もしかして……妹の日菜さんが、ギターを始めたことに気づいた?」
「ッ!?」
僕の予想通り、紗夜さんは息をのみながら肩を震わせた。
「どう、して」
「本人に相談されたから」
紗夜さんの質問の意図を、”日菜さんがギターを始めたことを知っている理由を聞きたいと読み取った僕は、簡潔に答えた。
「そう……ですか。それで、一樹さんは」
「当然、”やりたいんだったらやるべき”とアドバイスした」
僕の言葉に、紗夜さんは息をのんだ。
それが僕には悲鳴のようにも聞こえてならない。
「どう、して……」
「日菜さんに才能があるから」
まるで一問一答だなと思いながらも、僕はショックを受けた様子の紗夜さんに答える。
「まだ本人の演奏を聞いてないからはっきりとは言えないけど、多分うまく磨き上げればいいところまで行けると思う。そんな才能があるかもしれないギターリストが目の前にいれば、そう言うのは当然だと思うけど?」
才能の無駄遣いは大罪だというのが僕の考えだ。
いい意味での無駄遣いならともかく、せっかくその分野の才能があるのだからそれを活かしていく。
それが才ある者の義務だというのが僕の持論だ。
「私が真似をされてどんな気持ちだったのか知らないくせに、勝手なことしないでっ!!」
「はい? 優秀なギターリスト誕生に、どうして紗夜さんの気持ちのことが出てくるの?」
「いつもいつもそうよ! 私が何かをするたびに『おねーちゃん、おねーちゃん』って真似をして、すぐに私よりもうまくなって……褒められるのはいつも日菜ばかり。そんな私の気持ち、あなたにはわからないのよ!!」
それが、彼女の本心だったのかもしれない。
そう思うと、自分自身に熱が入ってくるのが分かった。
「……ちっちゃいな」
それは、彼女に対しての軽蔑の意味を込めた物。
「そんなんだから、あなたのギターはダメダメなんだよ」
「どういう意味よ……」
紗夜さんの言葉の怒気が僕に向けられる。
紗夜さんの視線もまた、怒りに満ちたものになるが、それでも僕は止まらなかった。
「そのままの意味だ。あんたのギターは聞くに堪えない。面白味も何も感じないロボットのようなそれが、僕にはつまらない。正直、同じギターリストとして―――」
そこから先を言うことはできなかった。
それは、僕が冷静になったからではない。
いや、結果からすれば冷静になったのだから、正しいのかもしれない。
僕の左頬に感じた熱と痛みによって、僕は冷静になったのだ。
「一樹さんの馬鹿ッ!!!」
それが、目の前の紗夜さんの平手によってもたらされたことを理解した時には、紗夜さんは走り去った後だった。
「………」
小さくなっていく紗夜さんの背中を追いかけることは、僕にはできなかった。
ふと空を見上げる。
「何やってんだろ。僕」
自然に口から出てきた言葉は、後悔の念だった。
(こうなることなんてわかりきってたはずなのに)
妹の日菜さんの存在が、紗夜さんにとってコンプレックスのようなものとなっていることは、日菜さんに相談されたときにわかっていたはずだ。
紗夜さんだって馬鹿じゃない。
順序立てて話をしていれば、彼女の抱えるコンプレックスを和らげることだってできたはずだ。
少なくとも、今は話を聞いてあげるべきだった。
ここまで後悔の念に駆られるのは、走り去る時に見た紗夜さんの目元から零れ落ちたものを見たからかもしれない。
「最低だ。僕」
僕のその言葉は、夕焼け色に染まる空に虚しく吸い込まれていくのであった。
前回のアンケートは予告通り、回答を閉め切らせていただきました。
皆様の貴重なご意見、ありがとうございます。
続いてで申し訳ありませんが、もう一度アンケートにご協力をお願いします。
今回のアンケートはメインヒロインを決めるものになります。
票数が最も多かったキャラがメインヒロインとなりその人物のルートの話を書くことになります。
・本アンケートはメインヒロインを決める目的の物ですので、票数が少ないからと言って、そのヒロインの話を書かないとは限りません。
・このアンケートの票数がそのキャラの優劣を決めるものではなく、またそう言った意図は一切ございません。
期日は10月31日までを予定しております。
皆様の貴重なご意見をお聞かせください。
メインヒロインは誰?
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湊友希那
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氷川紗夜
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白金燐子
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今井リサ
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宇田川あこ