BanG Dream!~青薔薇との物語~   作:TRcrant

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大変お待たせしました。
第60話になります。


第60話 解決への道

あれから数日後の放課後、僕は一人で自宅に帰っていた。

 

(ここまでは、何とかなったけど)

 

紗夜さんと話が出来はしたが、まだ問題は残っている。

 

(問題は白金さんとあこさんだな……)

 

二人とはあまり面識もないうえに、バンドに入った理由が理由なだけに説得するのが少しだけ気が引けたのが一番の要因であった。

 

(もし、このままRoselliaを解散するという結論に達した時、僕は二人をその場に連れてきたことの責任をどうとればいいんだろう……)

 

バンドに入るのも、そして湊さんが全員を集めて話をする場に集まるのも、最終的には二人の意思なので、責任も何もないのだが、さすがに夢見が悪い。

紗夜さんは、もともとほかのバンドでギターをやっていたので大丈夫なのかもしれないが、二人はそれとはわけが違う。

そんな理由もあって、僕は二人に連絡を取れずにいた。

 

(でも、さすがにそろそろ猶予がないか)

 

『Future World FES』への出場をかけたコンテストまで、あまり日がない。

 

練習のことを考慮すると、あと数日で決着をつけないと危なくなってくる。

その事実に、焦りを感じるが、それでもなお思い切った行動は避け続ける。

焦りから行動を間違えるということを、僕は以前にも行ったことがあるからこその判断だった。

 

(ん? なんだろう)

 

それでも、このままでいいのだろうかと思っていたところに、連絡を告げるように携帯が震えだしたので、僕は足を止めると携帯を取り出した。

 

(メール……白金さんからだ)

 

それは白金さんからの連絡だった。

 

『今から、お話しできますか?』

 

要約すると白金さんの要件はそれだった。

 

「えっと……『大丈夫です』っと、送信」

 

我ながらもっと気の利いた返事でもできないのかと思うが、シンプルイズベストだ。

 

「あ、来た」

『それじゃ、この間行ったファミレスでいいですか? あこちゃんと一緒に待ってます』

 

(あこさんも一緒……)

 

ある意味願ったりかなったりな状況ではないか?

そうは思うのだが、このタイミングだといろいろと複雑な心境ではあった。

 

(ええいッ、もう腹をくくるしかないッ)

 

僕は覚悟を決めて、白金さんにこれから向かう旨の返信をすると、やや速足で二人の待つファミレスへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

「待たせてごめん」

 

ファミレスに到着した僕は、すぐに二人の姿を見つけたのでウエイトレスの人に待ち合わせであることを伝えると二人のいる席に向かうと、遅れたことを謝る。

 

「い、いえ……私も、急に呼び出して、ごめんなさい」

 

二人の服装が制服であることから、もしかしたら白金さんも突然思い立ったことなのかもしれない。

とはいえ、今僕が何とかしなければいけない問題の前では、そのようなことはどうでもいいものだった。

 

「? 座らないんですか?」

「いや、座るんだけど……ね」

 

二人が腰かける席の横で立ち続ける僕に、不思議そうにきょとんとした仕草をしながら聞いてくるあこさんに言葉を濁して応える。

あこさんと白金さんの二人は向かい合うように腰かけているのだ。

つまりは……そう言うことだ。

 

「ぁ……あの、それでしたら……こちらに座って、ください」

 

そんな僕の反応を見て、動かない理由が分かったのか、白金さんが軽く横に移動しながら隣に腰かけるようにと促してきた。

 

「え?! でも、白金さんが嫌なんじゃ」

 

最初に会った頃の白金さんの反応から、中井さんや松原さんと同じ雰囲気を感じ取っていた僕は、白金さんの提案に躊躇する。

 

「か、一樹さんだったら、嫌じゃない……です」

「そ、それじゃ……お言葉に甘えて」

「は、はいッ」

 

横に座るだけなのに、何を緊張しているんだと思うかもしれないが、出会って間もない女子の隣に座ることに抵抗がないわけではないのだ。

 

「二人とも、どうして顔真っ赤にしてるんですか?」

「な、何でもないよ、あこちゃん」

「う、うん。何でもないよ。あはは」

 

一方、それを見ていたあこさんは別の意味できょとんとした様子で聞いてくるので、僕は冷や汗をかきながらごまかすように答えた。

 

「まあいいや。それにしても、りんりんからオフ会に誘ってくるなんて珍しいね」

「う、うん。いきなり呼び出してごめんね」

 

あこさんが話題を変えてくれたことにほっとした様子で謝る白金さんの言葉で、それまで和やかだった雰囲気は重苦しいものに変わる。

 

「……ねえ。あこ、もしかして余計なことしちゃったのかな?」

「……どうしてそう思う?」

 

そんな雰囲気の中口を開いたあこさんの言葉に、僕は疑問を投げかける。

あこさんのあの時の言動に、”余計”というべきものが分からなかったからだ。

 

「だって、あこがあんなこと言っちゃったからみんながバラバラになっちゃったから――「「それはちがう(よ)」」――りんりん? 一樹さん?」

 

今回のこれはあこさんのせいではない。

そう思って声を上げたが、白金さんもまた同じだったようで、妙なタイミングで声が重なってしまった。

 

「今回のはどう考えても悪いのは湊さんだ。だからあこさんは何も悪くはない」

「うん。それに、きっといつかわかってたと思う……だから、あこちゃんのせいじゃ、ないよ」

「一樹さん……りんりん……ありがとう」

 

僕に続けて口を開いた白金さんの言葉が、どう伝わったかはわからないが、彼女の中にある罪悪感のようなものが少しでも和らいだのであれば、それだけで十分だ。

 

「私、あの時思わず飛び出しちゃったけど……またみんなで集まってこんなふうに演奏したいッ」

「それって、練習の時の動画……撮ってたんだ」

 

あこさんがテーブルの上に置いたスマホの画面をのぞき込むと、そこには全員で演奏の練習をしている光景が動画で写し出されていた。

 

(一体いつの間に)

 

おそらく、休憩中に僕がいないときに設置したのであろうその動画に写し出されているみんなの表情は

 

「……楽しそう」

 

楽しそうに笑っているように見えた。

 

(不思議だな。いつも見ているはずなのに)

 

自分でも気づかなかったそれも、動画という客観的なものを介すると、こうも違って見えるのか、それとも単に練習に夢中で表情云々を気にする余裕がなかったのかはわからない。

 

「……あこさんは、どうしたい?」

 

だからこそ、僕は聞かずにはいられなかった。

あこさんの本心……意思を。

 

「あこ……あの時は飛び出しちゃいましたけど、またみんなと一緒に演奏したいですっ」

「あこちゃん……私も、自分を変えてくれた……この人たちと……もっと一緒に音楽がしたいっ」

 

(なるほど……)

 

あこさんに続いて白金さんのその言葉が本心であることは表情を見ていればわかる。

 

「とはいえ問題なのは、現状で集まってもいいのかどうか、か」

 

問題が問題だ。

全員が集まれば、この間のような事態になることも考えられる。

そうなれば今度こそ万事休すだ。

 

(さて……どうしたものか……)

 

湊さんは知らないが、紗夜さんはもしかしたら落ち着いて話をすることができるようになっているかもしれない。

それでも、かなり部の悪い賭けだ。

 

「あの……言葉だけじゃ伝わらなくても、音でなら伝わるって、前にりんりんが言ってたんです」

「音……なるほど……」

 

そのあこさんの言葉で、僕は一つの策を思いついた。

 

「あこさん、その動画を湊さんたち全員に送信してもらってもいい?」

「え?」

「あ、そうか……音で伝えれば……」

 

僕のお願いに、白金さんも狙いに気づいたのか、はっとしたような表情を浮かべる。

 

「この動画で、あこさんが感じたことをみんなにも見てもらうんだ。それでどうなるかはわからないけどね」

「……はいっ! やります」

 

はっきり言って、自信はない。

もしかしたら逆効果にもなりうる。

とはいえ、何もせずにはいられなかったからこそ、僕はこの一手にすべてを賭けることにしたのだ。

 

(うまくいってくれればいいんだけど)

 

あこさんが全員に動画を送っているのを見ながらそう願わずにはいられなかった。

動画自体はそう時間もかからずに送信が終わった。

後は、全員の反応を待つだけなのだが……

 

「お待たせしました。スペシャルパフェです」

「え、二人とも頼んでたの?」

「え、えっと……」

 

終わった頃を見計らったようなタイミングで運ばれてきた料理に、僕は二人のほうをいながら尋ねると、白金さんがあこさんのほうを見ながら頷くので誰が頼んだのかはすぐにわかった。

 

「うわー、やっぱりでかくてカッコいいねっ」

「……あこさん、それ一人で食べるつもり?」

「はいっ!」

 

テーブルに置かれたパフェに、目を輝かせるあこさんに聞くと、なんとも元気な声が返ってきた。

 

「一応聞くけど、それ食べきれる?」

 

そのパフェは、どうも期間限定らしく、大きさは普通のパフェのおよそ二倍くらいあった。

 

「もちろんですっ! 闇に染まりしあこ姫の……えっと、闇の力で……ドーンって食べちゃいますよ!」

 

どう考えても無理だと思えるのだが、あこさんのあまりにも自信に満ちたその言葉に、僕は返す言葉を失う。

 

「「……」」

 

あこさんが巨大パフェに挑む中、お互いに顔を見合わせると苦笑し合う。

 

「ちょっとスプーンをもらってくるよ」

「あ……私も、食べます」

 

今後の展開が想像つく僕は、二つほどスプーンをもらいに席を離れた。

 

 

 

ちなみに、この結末だが。

 

「うー……りんりん、一樹さん」

 

食べ始めて数分が経過した頃、最初はあった勢いは完全に失われ、その表情は少しだけきつそうにも見えた。

 

「何? あこちゃん」

「一緒にパフェ食べて~~ッ」

 

想像通り、あこさんは泣きそうな表情で僕たちにお願いしてきた。

 

「まあ、そうなると思ったよ。白金さん、食べちゃおっか」

「は、はい」

 

こうなることが分かり切っていただけに、僕たちは即答に近い状態でスプーンを手にすると三人で巨大なパフェの攻略にかかった。

 

「食べても食べても全然減らないよ~~ッ!」

 

食べる前からわかりそうなことを口にするあこさんと共に、手を付けて行く中その攻略にはかなり苦戦したが何とか平らげることができた。

………巨大なパフェの7割くらいが僕のお腹の中に納まる形で。




次回で、たぶんこの章は終わると思います。
バンドストーリー1章が終わったらあとのことは、もう少しだけ考えを詰めたいと思いますので、今しばらくお待ちください。
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