BanG Dream!~青薔薇との物語~   作:TRcrant

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大変長らくお待たせいたしました。
数か月ぶりの投稿となります。


第62話 コンテスト

あれから数日間、彼女達は練習に練習を重ねていた。

衣装もでき、コンテストへの音源もでき、それを提出した彼女たちに書類審査の合格通知が来ることは、もはや疑う余地がないだろう。

 

「じゃあ、僕はここまでだね」

 

コンテスト当日、僕は湊さん達と一緒にコンテスト会場を訪れていた。

本来であれば、僕は別行動で行くべきなのだが、『六人目』のメンバーとして、彼女たちを見送りたい。

そう思った僕は、彼女たちと一緒に会場に向かうことにした。

とはいえ、演奏をしない僕が一緒に行けるのは出入り口まで。

そこから先は彼女たち五人で進む必要がある。

 

「みんな」

 

別れ間際に何かを言おうと、僕は彼女たちに声を掛ける。

何て言えばいいのか……それは考えるまでもなかった。

 

「頑張って」

 

ただそれだけで十分なのだから。

 

「……ええ、もちろんよ」

「一樹君に応援されるのは初めてのはずなのに、懐かしさを感じますね」

「は、はいッ」

「あこたちのカッコいい姿、見ててくださいねっ」

「ありがとー☆ アタシ達頑張るね」

 

僕の応援の言葉に応える湊さんに紗夜さん、白金さんにあこさん、今井さんの表情は僕の心配など必要がないと思うほどの笑顔だった。

だからこそ、僕は何も言わずに彼女たちと別れて会場に観客として足を踏み入れる。

 

(あれから、みんなは変わった)

 

湊さんのあの一件を経て、彼女たちRoseliaは大きく変わった。

目に見えた変化はないものの、練習中の彼女たちの雰囲気は、それまであったピリピリとしたものから心地よい緊張感へと変わっていた。

息がつまるような感じではなく、だからと言ってだらけたような雰囲気ではない、適度な緊張感に。

だからといって、合格できるほどこのコンテストは、甘くはないのも事実だ。

 

(だったら、ちゃんと彼女たちを見届けよう)

 

それが、六人目のメンバーとしての責務だろう。

そんなことを思いながら席に腰かけた僕は、これから始まるライブへの期待に満ちた観客たちの声を聴きながらその時を待つ。

 

『お待たせしました。これよりコンテストを開始します。まずは、エントリーNo.1番』

 

そして、ついにコンテストが幕を開ける。

MCが番号を読み上げると、そのバンドのメンバーが姿を現し、演奏をし始める。

 

(なるほど……悪くない)

 

何組かのバンドの演奏を聞いて感じたのは、演奏技術の高さだった。

さすが、フェスを目指しているだけあってどのバンドもその完成度は非常に高い。

上手い演奏ができて当たり前、フェスに出るためにはそれ以上のものを求められる。

 

(やっぱり、立つ場所が違うだけで、こうも見える景色は違うんだな)

 

去年、自分たちがあの場に立ち、そしてフェスへの切符を手にしたということがどれほどに異様だったのかを、僕は今更ではあるが痛感していた。

 

『続いてエントリーNo.――Roselia』

 

そんなこんなで、次々に進んでいく中ついに僕が一番見たいと思っていたバンドの名前が読み上げられる。

その瞬間、観客たちがざわめきだす。

それもそのはずだ。

彼女たちは初めてのライブで音楽雑誌に取り上げられたことがあるのだ。

それだけ注目度は高まってもおかしくはない。

そんな中、ステージ衣装に身を包んだ湊さんたちが、ステージに足を踏み入れる。

ゴスロリ風なその衣装も相まって、僕の知っている人物とは別人なのではないかという錯覚を抱かせるほどに、いつもと違う雰囲気をまとっていた。

 

『Roseliaです。聞いてください。Re:birth,day』

 

湊さんのその言葉と共に、始まった演奏。

力強い音色とそれに合わさるようにして響く湊さんの凛々しい歌声が、会場中を覆い彼女たちにしか出せない独特の世界観を作りあげていく。

それまで演奏に合わせて盛り上がっていた周りにいる観客たちも、その世界観に飲み込まれているのかステージに立つ彼女たちの演奏を唯々静かに、聞き逃さない落ちわんばかりに聞いているようだった。

 

(やっぱりRoseliaはすごい)

 

改めて彼女たちのレベルの高さを思い知らされる。

ふたを開けてみればあっという間で、彼女たちは演奏を終えていた。

そして送られる割れんばかりの拍手に、みんなの表情が少しだけ緩んだような気がした。

 

「Roselia、やばくない?」

「これはコンテスト受賞で間違いないだろ」

 

そして聞えてきた周りにいた観客の誰かの彼女たちの演奏に対する評価の声は、張本人ではないはずの僕でもうれしく思えるほどの物だった。

 

(でも、惜しいな)

 

それでも、僕はこの時このコンテストの結果を悟っていた。

 

 

 

 

 

『それでは、結果発表を始めます』

 

すべてのバンドの演奏が終わり、観客たちがあれやこれやと出場バンドの演奏について感想を言っている中、ステージに上がったコンテストの運営と思われるMCと出場バンドのメンバーたちによってそれはまるで水を打ったようになる。

その中にはもちろんRoseliaのみんなの姿もあり、それぞれ緊張した感じの表情だった。

 

『まずは、審査員賞です。エントリーNo―――』

 

そんな緊張感に包まれた会場に、MCの声が響き渡る。

次々に読み上げられる出場バンドに拍手が鳴り響く中、Roseliaの名前は読み上げられていない。

 

(次はいよいよ優勝バンドか)

 

『それでは発表します。優勝バンドは……』

 

ここで名前が呼ばれれば、彼女たちは『Future World Fes.』への出場権を手にすることになる。

今まで以上の緊張感が会場中を包み込む中、

 

『エントリーNo.15―――』

 

読み上げられたのは、違うバンドの名前だった。

それは、彼女たちが落選したことを意味していた。

こうして、彼女たちのコンテストは、『不合格』という結果を残して幕を閉じるのであった。




ということで4か月ほど更新が止まっておりましたが、ようやく投稿にこぎつけました。
現在、本作でちょっとだけ腑に落ちない箇所の修正作業をしていたりします。
めどは立っておりませんが、完成し次第差し替える予定ですので、今しばらくお待ちください。

次回でこの章も終わりになります。
できるだけ早めに投稿できるようにしますので、楽しみにしていただけると幸いです。
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