体から結晶が生えてくるけど、俺は元気です   作:zhk

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感想で僕の作品で閃の軌跡に興味を持ったという人がいて喜びを隠しきれない、どうもzhkです。

閃の軌跡、面白いので皆さんも是非。是非(圧)


波乱の入学オリエンテーション③

 地面に散らばった結晶を踏みながら、カムイはリィン達の下へと歩いていく。魔獣の気配はもうどこにもなく、あるのは皆の驚愕のみ。

 

「リィン、あれがボスだったの?」

 

「ああ、今のを倒したからこれで終わりだと思う」

 

「ならいいとこ取りしちゃったぜ」

 

 何かによって皆の危険を察知して、全力ダッシュして来てみれば、なんだあれと言いたくなるような化け物が暴れていた。けれど、カムイは特に焦ることもなく処理完了。

 

 まぁルガーランスがあればなんとかなるよね? 的な安直な考えからなのだが、今回はその彼の安直さが功を制したようだ。

 

 そこまでは楽観視出来ただろう。けれども…………

 

「すっごいね今の! どうやったの?」

 

「槍のような物だったが、あれがカムイの得物なのか?」

 

「あれは導力器なのか? だとしたら、あんなもの見たことも聞いたこともないのだが…………」

 

 そうは問屋を下ろさないのは、同じくⅦ組のメンバーシップだった。

 

 やって来たカムイに矢継ぎ早に質問が投げ掛けられ、カムイはたじたじとしてしまう。前世でここまで注目を浴びるなんて事は経験したことがないため、対応に困ってしまうのだ。

 

「九人がかりで勝てなかった化け物を一撃なんて…………」

 

「ただ者ではなさそうだな…………」

 

 あたふたとするカムイを見ながら、アリサとラウラが感嘆の声を出すが、それは周りも同じ事。声には出してはいないけれど、それぞれがカムイを値踏みするように見ていることには変わりない。

 

(そんな目で見るなぁ! 俺なんも凄くない! 凄いのはあれ! ルガーランスだから! 全部ルガーランス先輩が凄いんだから! だから注目しないでぇ!!)

 

 冷や汗をかき、内心焦りのあまり超高速で思考するカムイ。ついさっきまでの頼りがいのある男はどこに行ったのだろう。今の彼には、そんな雰囲気を微塵も醸し出していない。

 

「ま、まぁそんな事より…………なんか変な感じがしたんだけど。遠くにいるのに近くにいるみたいな…………だからすぐに駆けつけられた訳なんだけど…………」

 

「それが、ARCUSの真価よ」

 

 とりあえず周りを囲む者をどけて話題を変えると、それに答えたのは生徒の声ではなかった。

 

 背後から聞こえてきた声に彼らは振り向くと、地上へと続く階段の上に、サラがニコニコとした笑みを浮かべて立っていた。

 

 今の彼らには、その笑みをまったくといって良いほど信用出来ないが。

 

「うんうん、やっぱり最後は友情の勝利なのね。お姉さん、感動しちゃったわ♪」

 

 胡散臭すぎる台詞を吐きながら、サラは階段を降りてカムイ達の前に立つ。

 

「これで一応Ⅶ組のオリエンテーリングは終了なんだけど…………もうちっと喜んでもいいんじゃない?」

 

「喜べるわけないでしょう!?」

 

 ごもっともな事を口にしたのはマキアス。その言葉に、全員が渋い面持ちでうんうんと頷いた。

 

「絶対性格悪いぞあの教官」

 

 カムイが隣に立つリィンに静かに耳打ちする。真剣に言うカムイに、リィンも苦笑を漏らすしかない。内心同じ事を思っているが、それを口にしないくらいの器の大きさは、リィンにはある。

 

「単刀直入に問おう。」

 

 悠然とした口調で、ユーシスは告げた。その言葉に、全員がそちらを向く。

 

「特科クラスⅦ組。一体何を目的としたクラスなんだ」

 

「身分や出身に関係ないというのは、確かに理解しましたが…………」

 

「わからない事が多すぎます。」

 

「それに、なぜ我らが選ばれたのかもわからぬしな」

 

 最初のユーシスに続くように、各々胸に秘めていた疑問をサラに言う。サラはそれに対してわざとらしく顎に手をのせて、考えるような素振りを取ると、その口を開いた。

 

「う~ん。あなた達が選ばれたのには、色々な理由があるんだけど、一番はあなた達が持つそのARCUSにあるわ」

 

「このガラケー擬きですか?」

 

 ポケットからARCUSを出し、フリフリと振りながらカムイがサラに尋ねる。その顔は『さっさと言えよまどろっこしいな』という悪態を隠す気もないようだ。

 

「ガラ…………ケー? なんの事かわからないけど、確かにそれよ。様々な魔術(アーツ)が使えたり、通信機能がついてたりと結構便利なんだけど、それの本来の効果は別にあるわ」

 

「それは、あなた達がついさっき体験した《戦術リンク》よ。」

 

「戦術…………」

 

「リンク…………」

 

 サラの言葉を反復しながら、全員が自分のARCUSを見る。

 

「どんな状況でもお互いを把握でき、さらに最高の連携が可能になる。これを持っていればそんな最高の部隊が出来上がるわ。」

 

 サラの言うことを噛み砕きながら、カムイは考える。

 

 確かにそれはかなりの恩恵をもたらしてくれるだろう。相手の思うことが瞬時に理解できれば、連携を取ることはさほど難しい事じゃない。

 

 それが長年時間を共にした相手なら、効果はより大きくなるだろう。

 

 加えて、場所も把握できるときた。これは最早ゲームのプレイしているみたいになるのだ。

 

「魔法も使えて、しかも通信も出来る…………なにこの携帯万能すぎん?」

 

 明らかに手元に収まるサイズであるはずなのに、機械で出来る事の容量をあっさり越えて見せるARCUSにカムイは驚きを隠せない。

 

(というか連携が簡単にとれるってのはありがたいよな…………俺のルガーランスは絶対団体戦には向かないし)

 

 全長160センチもする長槍を振り回すのだから、やはり連携は取りにくい。けれどARCUSがあれば、その心配も無用となるのだ。

 

 元サッカー部所属の身として、チームワークがどれ程大事な物かはカムイには身に染みて理解していた。万年ベンチだったがそこは関係ない。

 

「この戦場に革命をもたらすARCUSなんだけど、残念ながら今試験段階中でね。使うには適正があるのよ。その適正が特に高かったのが、あなた達だったというわけ。」

 

「だから身分に関係ないのか…………れ…………」

 

 納得したようにカムイは呟いた。身分にこだわっていれば、適正値を基準にメンバーを選考することは出来ない。妥当な判断だ。

 

 まぁその考えに納得しないものが若干名いることにカムイは気がついているが、その点に関しては全力スルー。触らぬ神に祟り無し。

 

 面倒事に首を突っ込んでいては、彼の身が持たない。

 

 と、そこでサラは調子の良さそうな顔をやめ表情を引き締める。

 

「トールズ士官学校は、ARCUSの適正者としてあなた達十人を見出だした」

 

 ピンと張りつめた空気に、他の生徒も顔を引き締める。今からの言葉が冗談の類いじゃない事は、ここにいる誰もが理解できた事だ。

 

「けれど、やる気のないものや気の進まない者を受けさせるほどここに余裕もない。加えて、他のクラスよりカリキュラムはハードの物になるわ」

 

「それを踏まえて、Ⅶ組に所属するかどうかを決めてもらおうかしら? ああ、ちなみに断ったら本来入学するはずだったクラスに所属することになるわ」

 

 サラの問いかけに、全員が押し黙る。

 

 今ここで断るのは、決して悪い選択ではないだろう。

 

 Ⅶ組に入るのは義務ではないし、通常よりハードになるのは教官自ら口にしたのだから相当なのだろう。それにまだ学院生活が始まって一日、今からでもクラスに馴染むのは難しい事じゃないだろう。

 

(どうする…………俺は…………)

 

 サラの言葉を聞き、リィンは考える。そして、隣に立つ彼を見た。

 

 カムイは悩む素振りもなく、ぽけーとした顔でサラを見るだけだ。

 

(ずっとカムイを追い続けてきた。あの、襲われたあの日からずっと。でも、まだ俺はこいつに追い付けていない…………)

 

 肉体も、精神も、成長させるために必死に努力してきたとリィンは言ってのけるほどの自信はある。が、それでもまだ、彼には届かない。

 

(カムイに負けたくない。なら、俺がとるべき行動は…………)

 

 決心をつけたリィンは、周りからサラの方向へ一歩踏み出し、

 

「リィン・シュバルツァー。参加させてもらいます」

 

 はっきりと、淀みのない口調でそう言った。

 

「ほう? 一番乗りは君か。何か事情があるみたいね」

 

「いえ、無理を言って来させてもらった学院です。自分を高められるなら、どんなクラスでも構いません。」

 

「ふむ、なるほど」

 

 芯の通った声でそう言うリィンに、サラも納得したように頷いた。

 

「なら、私も参加させてもらおう」

 

 リィンのあとに続いたのは、ラウラだった。

 

「元より修行中の身だ。此度のような試練なら臨むところだ」

 

「俺も同じく。異郷の地から来た以上、やりがいのある道を選びたい。」

 

 さらにそれにガイウスもあとを追う。

 

「ふむふむ、新入生最強の使い手と、ノッポの留学生も参加と…………他には?」

 

「私も参加させてください。奨学金を頂いてるのですし、少しでもお手伝い出来れば…………」

 

「ぼ、僕も参加します! これも何かの縁だと思うし…………皆とは、上手くやって行けそうな気がするから…………」

 

「ほお、魔導杖のテスト要因も参加っと…………」

 

 魔導杖? と聞き慣れない単語に首をかしげるカムイだが、あの持ってる杖みたいな奴の事なんだろうとエリオットとエマが握る物を見ながらそう結論付けた。

 

(あれ持ってると本当に魔法使いみたいだ…………特にあの眼鏡の子の方はホントにそれっぽいし。)

 

 あれで唾つき帽子を被って、黒のローブでも身にまとってたら完璧だなとどーでもいいことを考えていると、彼の近くから声が響いた。

 

「私も参加します」

 

 そう言ったのは、金髪の少女、アリサだった。隣でリィンが驚いたような表情がカムイには気になったが、興味はすぐに彼女の話に移り変わる。

 

「試験段階のARCUSが使われているのは気になりますが…………その程度で腹をたてていては切りがありませんから」

 

 と、言いつつリィンをじろりと睨むアリサ。それに対してリィンは苦い顔、カムイはにやにやと愉悦顔だ。

 

「ふむ、これで6名か…………フィー、あんたはどうする?」

 

 呼ばれたフィーはカムイと同じようにぽけーとした顔だったが、名を呼ばれて眠たげな目をサラに向けた。

 

「ん、どっちでもいい。サラが決めていいよ」

 

「だーめ。あんたが決めなさい。自分の事は自分で決める、そう言う約束でしょ?」

 

「むぅ。面倒くさいな。じゃ参加で」

 

 眉を潜めてそう言うと、彼女は他の参加者と同じように前に一歩踏み出した。

 

「参加理由あれで大丈夫なのかよ…………」

 

「そう言うあなたはどうするの? カムイ・シュバルツァー。あなたがこの中で、一番訳ありだと思うけど」

 

「んぁ? 俺?」

 

 カムイが困惑ぎみに自分を指差すが、この場にカムイという名の人物は彼一人だけだ。

 

「体から出る謎の結晶、加えてそこから現れる見たこともない武器、これを訳ありと言わざるしてなんと言うのよ」

 

「ああ、確かにそうですね」

 

「それで? どうするつもり?」

 

 サラの問いに対して、カムイは不敵に笑って見せた。

 

「もちろん参加で。この自分の体の理由も知りたいですし。そうするのが、多分一番の近道だと思うので」

 

 トールズ士官学校生という名札があれば、資料や書物を探すのに何かと優遇されるかもしれないし、最新の物でも楽に手に入るかもしれない。

 

 なにより、同年代の輪の中に入っていけるというのが彼にとって大きな理由なのだが、それを説明するならば彼が今の今まで友人がほとんどいなかったという虚しい現実を口にしなければいけなくなるため、割愛することにする。

 

「なるほどりょーかい。それじゃあ最後は…………」

 

 そう言いつつ、サラは視線をカムイからマキアスとユーシスの二人に向ける。だが二人は依然として固い表情を解くことはない。

 

「色々あると思うけど、あんまり深くは考えない方がいいんじゃない?」

 

「そ、そんな訳ないでしょ!!」

 

 マキアスがまたもやサラに反論する。頑なだなぁと呆れ果てるカムイは、このループする話し合いにそろそろ疲れてきた。

 

 どうせまた長々と反論が始まるんだろうなと、半ば心の中で呆れている最中、なんとユーシスが動いた。

 

「ユーシス・アルバレア、Ⅶ組に参加を希望する」

 

 泰然とした態度はまさに名門貴族の風格を醸しており、はっきりと口にする言葉にマキアス大きく目を見開いた。

 

「な、何故だ!? 名門の出である君が、庶民と同じ空間で教えを受けるなど、堪えられないはずだ!!」

 

「偏見で物を語るな。他の貴族は貴族、俺は俺だ。俺は自分が正しいと思った道を行く。それが、平民と卓を共にするとなっても関係ない」

 

 侮蔑するような感情をユーシスからは感じられない。が、いかんせん言葉が悪い。これでは平民と一緒に授業を受けるのは嫌だけれども、それが最善だから我慢すると捉えられても仕方がない。

 

 現に、マキアスはそう捉えたのか額に分かりやすく青筋を浮かべている始末。言葉足らずって損をするんだなと、傍観するカムイは改めて思い知る。

 

「かといって、無用に吠える犬を横に置くのも気が引ける。ここで袂を分かつのも、ひとつの選択だと思うが?」

 

「だ、誰が君のような傲岸不遜な態度の輩の指図を受けるものか!!」

 

 挑発ぎみにユーシスが言ったのに対し、マキアスは面白いほどよい反応を見せた。

 

「マキアス・レーグニッツ! Ⅶ組への参加する! 古ぼけた慣習に捕らわれた貴族風情に、どちらが上か思い知らせてやる!!」

 

「ふっ、おもしろい」

 

 二人が視線を交錯させ、見えない稲妻を迸らせるのを、全員が不安げに見つめる。

 

「先が思いやられるな…………」

 

「そうでもないんじゃないか? 競争意識があった方が、レベルアップは早いもんだろ。」

 

「否定はしないけど…………」

 

 カムイの言葉に、自分も同じタイプだったリィンはぐうの音も出ない。

 

「これで十人全員参加ね、ではここに、特科クラスⅦ組発足を宣言する。この一年、びしばししごいてあげるから、覚悟しなさい♪」

 

 笑顔でえげつない事を言うサラに、カムイ達はそれぞれ覚悟を決めた引き締まった表情をする。

 

 あるものは不安を、

 

 あるものは期待を、

 

 あるものは興奮を、

 

 各々がその覚悟に満ちた表情の中に本心を隠すなか、サラが全員に呼び掛けた。

 

「それじゃ、とりあえず旧校舎から出ましょうか。まだ寮の説明も残ってることだし」

 

 そう言って、サラは一足先に階段を上り旧校舎を出た。それを切り目に、他の生徒も三々五々と旧校舎から出始めていく。

 

「いよいよだな…………」

 

「ああ、これからかなり厳しい訓練が待っているんだろうが、へこたれるなよ。カムイ」

 

「俺は、お前が勝手に限界を決めないかが心配だね」

 

「あの時はお前も納得していただろう…………」

 

 これからの緊張はこれからの緊張、今固くなっていても仕方がない。それを理解しているからか、カムイが軽口を言ってもリィンはそれをたしなめたりはしなかった。

 

 そして二人は他のメンバーに続き、階段を上ろうとしたその時、

 

 カムイの背中に、ぞわっと寒気が走る。

 

「っ!?!?」

 

 反射的に背後を振り向くが、もちろんそこには誰もいない。辺りを見渡しても、上の階を覗いても、結果はなにも変わらなかった。

 

「どうした?」

 

「あっ、いや…………何かに見られてたような気がしてさ」

 

 まるで、なにか大きすぎる存在にじっと睨みを利かされたような。言葉にしにくい感覚に、カムイも言葉に詰まってしまう。

 

「魔獣じゃないのか? 見たところ何もいないようだし、きっと逃げて行ったんだろう」

 

「…………そっか。ならいいんだけど」

 

 納得は出来なかったが、それでも納得するしかなかった。現に、そこには何もおらずもうプレッシャーも感じないのだから。

 

 何度もユミルで魔獣と呼ばれる種の物と対峙してきた彼だが、今のような感覚に襲われたことはない。

 

 じとっと嫌な汗が背を流れる。まだあの謎の感覚が、しっかりと体に残っており、あれはただの魔獣の放つそれではないと警鐘を鳴らす。

 

(なんだったんだ…………あれ…………)

 

 まだ不可解な余韻を残す旧校舎を、カムイはそこをあとにする他なかった。

 

 ━━━

 

 誰もいなくなった旧校舎の闇のなか、一人の子供が笑顔の表情で歩く。

 

 服装は、黒の小さなスーツのような物に短いフォーマルなズボン。まるで今からパーティーに行くような格好の子供だが、向かっている先にそんな明るい物はない。

 

「ふふっ、やっと来た。ずっと待ってたよ」

 

 トコトコと子供らしい軽い足音と楽しそうな声音を響かせるなか、彼は一直線である場所を目指していく。

 

 前方に見えた角を右に曲がると、彼の目的地であり、さっきまでカムイがいたあの重苦しい門が少年の目に入った。

 

 少年はそのまままっすぐ歩き、門を開いた。

 

 瞬間、尋常じゃない熱風とプレッシャーが扉の奥から溢れてくる。常人なら一度浴びるだけで卒倒しそうなそれを浴びても、少年は笑顔を崩すことはない。

 

 辺りの床はドロリと軽く融解しており、この空間がどれだけの熱を孕んでいるのか、明確に示して見せる。

 

 そして、その空間の奥。そこに、『それ』は居た。

 

「もうすぐだ…………やっと僕も解放される。彼がやっと来てくれたから。だから、もう少しだけ待ってね。僕の半身」

 

『━━━━━━━━ッ!!』

 

 プレッシャーと熱風を放つ『それ』は、彼の言葉に答えるように辺りの熱量を引き上げる。高かった熱量は、少年の一言でさらに引き上がり、辺りの融解速度が格段に上昇していく。

 

 この上昇が興奮からなのか、はたまた怒りの炎なのか。それは目の前で聞く少年にしかわからない。

 

「あんまり激しくならないの。僕らを封じたあいつらも着々と目を覚まし始めてる。まぁそのお陰で僕はこうやってこの迷宮の中だけなら自由に動けるんだけどね」

 

『━━━ッ!! ━━━━ッ!!!!』

 

「怒んないでよ。仕方ないでしょ、僕たちはそう言うつくりなんだから。でも…………」

 

 ゆったりとした歩みで、『それ』に近づくと、彼は『それ』に手を伸ばした。

 

「それももう少しだ。もう少しで、僕たちの『否定』が始まる。そうでしょ? 僕の半身」

 

『━━━ッ』

 

 唸るように、『それ』は答えた。

 

 紫の光沢のある体に、円盤型の肩。そこから生える四対の鋭い翼のすべてを大きな鎖で縛り上げれている『それ』は、自分の持つ紅い瞳をより紅く光らせる。

 

 爛々と輝く瞳には、ただ一つ、破壊衝動のみが灯っていた。

 

 

 

 

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