JUMP DRIFTERS   作:悪魔さん

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無限列車、メチャクチャ感動しました。
猗窩座の声が石田さんだったとは……遠目に見ると我愛羅っぽいからかな?(笑)
煉獄さんは本作でも活躍するので、お楽しみに。


第19幕:合流、サン・ジェルミ

 ドワーフ族収容所――ガドルカ大兵器工廠では、ドワーフ達が元の姿に戻っていた。

「銃ってなんじゃい? 食えんのかそれ」

「ニュアンス的に食べ物じゃないことぐらいわかって下さいよ」

「食ったら元気になりすぎだろ! (おも)(しれ)ェ連中だな!!」

 痩せ細っていたドワーフ達が一気にガタイがよくなったことに、ロジャーは酒を片手に爆笑。

「この兵廠には大量の食料もあったはずなのですが……」

「な、何てこと……」

 それなりの日数は持つはずの食料があっという間に空っぽになり、ドワーフの豪快ぶりにしのぶとオルミーヌは唖然とする。それはエルフ達も同様だが、シャラは「寝物語のドワーフが帰って来た」とどこか嬉しそうだ。

「どれ、その銃とやら見せてみい」

「おいおい、壊すなよ? そいつァおれのだからな。しかも世界に一丁だけだ」

「壊しゃせんわい!」

 ロジャーは殺せんせーに促され、ドワーフ達に銃を渡した。

 火打石を取り付けたフリントロック式の銃は、雷管を用いたパーカッションロック式が登場するまで百年以上も使われた。銃というモノが存在しない世界では、見た目だけでなく構造すらも興味を誘う。

「これは何じゃ? 鉄の筒じゃな」

「この引金のからくりはクロスボウのようじゃい。単純なもんじゃのう」

「何らかの射撃装置かのう」

 鍛冶職人としての顔つきになったドワーフ達に、殺せんせーは微笑みながら見つめる。

「で、これがお前さんが言っていた銃というヤツかの?」

「その通り。熱や衝撃などをきっかけにして鉄の筒の中で火薬を爆燃させ、鉛の玉を撃ち出す武器です」

「その火薬とやらは何か知らんが、なぜわざわざそんな面倒な事をするんじゃ? 弓やクロスボウで良いではないか。これで無ければダメなのか?」

「ええ、その二つの理由を説明しましょう」

 殺せんせーは銃にこだわる二つの理由を語る。

 一つは、長い射程や高い威力だけではなく練度を上げる訓練・鍛錬の省略ができること。狙いを定めて引金を引くだけで誰でも即戦力になり得る。また、クロスボウや弓は矢をセットするときにそれなりの筋力が必要になるが、銃は火薬と弾さえ込めればいいだけなので余計な体力・筋力を使う必要が無いのだ。

 そしてもう一つが、敵軍に恐怖心を植え付けること。火薬が爆発する音と煙が上がると誰かが死ぬということを理解させ、侵攻する敵を前へ進めないようにするのだ。ましてや原始的な兵器が主軸であるなこの異世界において、銃や火薬は未知の存在……人間とは未知の存在に恐怖心を抱きやすいため、それを利用するのだという。

「まるで未来を知っているようじゃな、小僧。それも漂流者(ドリフターズ)だからか?」

「ヌルフフフ、それは秘密です」

 ニヤニヤとした笑みで茶を濁す殺せんせー。

 そんな彼に、現在の漂流者(ドリフターズ)の総大将・産屋敷耀哉は問いかけた。

「では殺せんせー、肝心の火薬はどうするのかな?」

「この銃に使われる火薬は黒色火薬……火縄銃と同じです。硝石は便所や土間の土から取れますし、硫黄は火山、木炭はテキトーに作れば最低限は確保できます。三日もあれば実戦に使えます」

「お前さんの頭ン中どうなってんだ」

 すでに数歩先を言った考えの殺せんせーに、鯉伴は若干引いた。

「今日は疲労が溜まっているでしょう、明日試しに造ってみてください」

「うむ」

 

 

           *

 

 

 翌日。

「ほれ、一本目」

「もう完成したんですか!?」

「図面だけからならまだしも、モノがもうあるんじゃ。わしらが造れるに決まっとろうが」

(さすが鉄に長けたドワーフ。加工技術もずば抜けている)

 昨日の今日で、早速銃が一丁出来上がった。

 その仕事の早さと完璧なまでの精密さに、驚愕を隠せない殺せんせーは尋ねた。

「ではドワーフ長……この工房都市は、オルテの武器の半分以上賄っていた。あなた達が全力で動いたら、一日何丁造れますか? 剣や鎧と勝手が違い、慣れるまで時は掛かるかと思いますので大体で構いません」

「そうじゃな……モノが小さいからな、この大きさならまず10丁。筒の部分の長さを伸ばすとなれば6、7丁程じゃろう」

「大きさはともかく、週休二日と仮定すれば一週間に少なくとも30丁は確保できる……上々ですねェ」

 ヌルフフフフフ、と悪い大人の顔を浮かべる殺せんせーに一同は呆れる。

 すると、耀哉が自分の大切な剣士(こども)である杏寿郎がいないことに気づいた。

「……おや、杏寿郎はどうしたのかな?」

「煉獄さんなら、ロジャーさんを連れて外に行きましたけど……」

「そういや、わしらの若い衆も付いて行きおったな」

 

 

 一方、外では時空を超えた試合が始まろうとしていた。

「ではロジャー殿! 手合わせ願おう!!」

「おう! いつでも来い!!」

 誇り高き精神を持つ鬼狩りの最高位と、海の王者となった最強の海賊。

 世界は違えど、無類の好漢である二人は対峙する。

「いざ、勝負!!」

 先制攻撃を仕掛けたのは、炎の呼吸を極めた杏寿郎。

 力強く踏み込み、一気に間合いを詰めてから袈裟斬りを放つ〝壱ノ型 不知火〟を繰り出した。

 ロジャーは愛用のサーベルに覇気を纏わせ、真っ向からそれを防ぐ。ノーダメージではあるが刃が交わった際の衝撃は伝わっており、その重さにロジャーは感心していた。

「しのぶの方が(はえ)ェが、一撃が(おめ)ェな。シビれるぜ杏寿郎!」

「よもや俺の斬撃を真っ向から受け止めるとは! やはり只者ではなかったか!」

 笑みを深めると、二人は目にも止まらぬ速さで剣戟を繰り広げた。

「な、何だアレは……」

「この世の組手(たたかい)とは思えん……」

 あまりの速さに、興味本位で見に来たドワーフの若者達は唖然としていた。

 ドワーフの戦いは一撃必殺……斧の一撃に全てをかける闘法だ。しかし二人の戦闘技術は、ドワーフのそれとは比べ物にならない力を秘めていた。

 岩塊よりも硬い鬼の頸を斬り落とす〝全集中の呼吸〟と、極めれば天をも割り未来予知ができる〝覇気〟。今目の前で行われてるのは、その戦闘技術の達人だ。道を極めた者による、まさに「至高の領域」なのだ。

「では、勝ちに行くぞ!」

「!」

 両者一歩も譲らぬ剣戟の中、杏寿郎は勝負に出た。

「〝弐ノ型 昇り炎天〟!」

 日輪刀を下から上に向けて振るい、猛炎の如き斬り上げでロジャーの体勢を崩す。

 そして今日一番の大技を放った。

「〝伍ノ型 (えん)()〟!」

 烈火の猛虎を生み出すように刀を大きく振るう大技。

 ロジャーはそれを受け止めるが、伍ノ型は間合いを一気に詰めてから強力な斬撃を放つ〝炎の呼吸〟の中でも強烈な技である上、杏寿郎自身も技の威力で列車の横転の衝撃を和らげる程の実力者。〝柱〟の本気の一撃に、さすがのロジャーも宙へ弾き飛ばされた。

 しかし空中で受け身を取って着地したロジャーは、それこそ鬼のようなあくどい笑みを浮かべた。

「何と!」

「いい一太刀だったぜ、杏寿郎! お返しだ! 〝(かむ)(さり)〟!!」

 ロジャーは横薙ぎの一閃を繰り出し、斬撃を飛ばした。

 数多の屈強な海賊・海兵達を一撃で吹き飛ばした海賊王の御業。その威力は、最強の鬼である〝上弦の壱〟に匹敵する技量でないと相殺できない程。銃弾のような速さで迫る斬撃を、杏寿郎は足を踏み締め日輪刀を振るった。

 

 ――〝参ノ型 気炎万丈〟!!

 

 上から下へと弧を描くように日輪刀を振るい、飛ぶ斬撃を正面から受け止める。

 しかし(かむ)(さり)の威力は、杏寿郎の想像を遥かに超えていた。受け止めた瞬間に暴風にも似た凄まじい「圧」が全身を襲い、指一本、筋肉の筋一本でも気を抜いたら吹き飛ばされそうになったからだ。

 最期に戦った〝上弦の参〟猗窩座に匹敵、いや、それ以上の破壊力を生む海賊王の一撃。猛炎をかき消さんとする、神をも退けんとする衝撃に、杏寿郎は限界まで酸素を取り込んだ。

「――うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 空気をビリビリと震わす程の叫びを上げ、どうにか軌道を逸らし弾いた。

 飛ぶ斬撃はそのまま宙へ向かい、はるか上空で雲を吹き飛ばしながら爆散した。

「おっ! やるじゃねェか! 今のを真っ向から弾くのは早々できねェぞ?」

「ハァ……ハァ……」

 笑い飛ばすロジャーに対し、息を荒くする杏寿郎。

 実力差がありすぎることに、戸惑いを隠せない。

「よもやよもやだ……まさしく天と地……技量の差がこうも大きいとは」

「おれはそうは思えねェなァ」

 異次元の強さに呆然としていた杏寿郎に、ロジャーは微笑んだ。

「おめェの剣はぶっちゃけスゲェと思うぜ、おでんと引けを取らねェ。ここまでの剣の使い手は滅多に見なかった。黒死牟もそうだったが、侍の剣はおれのような海賊の剣とは格が違うな!」

「……!」

「どうする? まだやるか? おれはいいぞ!」

「いや、これ以上やってお館様に御心配を掛けるわけにはいかない! それに俺の未熟さも確認できた、前以上に鍛錬を重ねるまでだ!」

 快活に答える杏寿郎に、ロジャーは「おめェも真面目だな」と笑った。

 その時だった。

「エルフに続いてドワーフまで味方に引き入れたとは、漂流者(ドリフターズ)って手が早いのね~」

 突如響いた声。

 声のした方向へ顔を向けると、けばけばしい風体のオカマ二人――サン・ジェルミの側近であるアレスタとフラメーが見下ろしていた。

「いつの間に!!」

「誰じゃ。いや何じゃお前ら!! オルテの手の者か!!」

「そうねぇ、オルテの手の者だわねぇ。()()!!」

 アレスタが腰に差した二本の剣を抜くと、ロジャーと杏寿郎に斬りかかった。

 

 

 そして同時刻。

 工房ではオルテ帝国を見限ったサン・ジェルミが姿を現していた。

「まさか銃を造らせようとしてるとはね……なんておっかないのかしら」

「誰じゃ貴様!」

「あらら、サン・ジェルミちゃんやないか」

「あらやだ、お久しぶりねぇ秀元」

 工房に乗り込んできたサン・ジェルミに手を振る秀元。

 それに応えるかのように、サン・ジェルミもにこやかに笑う。

「たったっ大変です! サンジェルミの馬車が、あのオカマ大番地伯が……あ」

「失礼しちゃう」

 慌てて駆けつけたオルミーヌに、耀哉はサン・ジェルミは何者なのか尋ねた。

「オルミーヌさん、あの人はどなたかな?」

「サン・ジェルミ伯です!! オルテの3分の1を支配する大貴族!! な、何でここに……」

「わざわざこの私が出向いて来たというのに、あんた達あの廃城から出たっきり帰ってこないじゃないの」

 靴に付いた泥を払い、呆れたように言い放つサン・ジェルミ。

 その正体は、ヨーロッパ史上最大の謎の人物であるサン・ジェルマン伯爵。そんな彼の正体を知るのは、この場では殺せんせー以外いない。

「サン・ジェルミ伯……いえ、サン・ジェルマン伯爵。何用でここに?」

「あら、私のこと知っているなんて! あなた何者?」

「これといった名はありません。一応「殺せんせー」と名乗っています」

「殺せんせー……あら! 伝説の殺し屋さんだったのね。私は()()()()()姿()()()を知ってるわよ」

 クスクスと笑うサン・ジェルミに、殺せんせーは目を見開いた。初対面の相手が自分が超生物だった頃の姿を知っていると言われれば、驚きを隠せないだろう。

(油断ならない相手ですね……さすがは伝説の天才錬金術士)

 殺せんせーがそう評する中、サン・ジェルミはオルミーヌと言い争っていた。

 オルミーヌ曰く、サン・ジェルミはオルテ帝国建国の立役者ゆえに漂流者(ドリフターズ)だけでなく廃棄物(エンズ)ではないかと疑っているという。オルテ帝国の蛮行の数々を知ればそう勘繰って当然と言えるが、「こんな廃棄物いるか」と一蹴された。

 しかもサン・ジェルミによると、国父であるあのアドルフ・ヒトラーもれっきとした漂流者であり、彼はこの世界で世襲による腐敗を無くして富を公平に分配し、一部の被差別階層を作ることで強力な中央集権国家を成したという。

「……それで、その大貴族サン・ジェルミ伯がなぜここへ?」

「手を組むに値するかどうか確かめに来たのよ。あなた達、互いの立場と肩書きわかってる? ここには伝説の殺し屋に江戸の闇の支配者、天才陰陽師、それにあの鬼殺隊の当主と隊士がいるのよ?」

「あとこっちの陣営にはロジャーと杏寿郎もいるぞ」

「は?」

 鯉伴の発言に、サン・ジェルミは耳を疑った。

 ――ロジャーって、誰? まさかゴールド・ロジャーなの?

 サン・ジェルミどこかぎこちなく、殺せんせーに尋ねた。

「え、杏寿郎は炎柱の煉獄でしょ? それはわかったけど……ロジャー……ロジャーって、まさかゴールド・ロジャー?」

()()()()()()()()だと頑なに言ってますがね」

 本当にゴールド・ロジャーだった。

 衝撃の事実を知ったサン・ジェルミは凍りつき、二の句が継げなくなった。

 

 ――終わった。この国(オルテ)終わったわ、完全に。

 

「クォルァ紫ィ!! どうなってんじゃゴラァ!! 黒王と鬼舞辻のワカメ頭グルだからって冗談抜きでメチャクチャになってんぞ!!」

「……どうしたのかな?」

「エライことになっとるなぁ」

「こっちの話よ! ほっといて、もう」

 漂流者の中に天災級の怪物が混じっていたことにご乱心のサン・ジェルミ。

 その直後。

「おひいたまぁぁ」

「たじげで~~~~~~」

「おれに勝負挑むんなら、白ひげや金獅子でも連れて来いってんだ!」

 アレスタとフラメーがボコボコにされた状態で工房に入り込んだ。

 その後に、肩をいからせるロジャーと二人の哀れな姿を同情するように見つめる杏寿郎が現れた。

「んん? 何だおめェ、何しに来た」

「うわデカ、何センチあんのよ! ――あたしは売国奴、オルテを売り飛ばしに来たの。今なら大安売り大サービスよ」

『売り飛ばす!?』

 サン・ジェルミの目的を知り、一同絶句。

 彼曰く、国にも滅び方があり、諸国軍が押し寄せて城下之盟(じょうかのちかい)で降伏して国土がバラバラに分割されるわけにはいかないという。

「オルテがまだ力のある内に、たった一撃で効率よく国を滅亡させる必要がある。どうかしら?」

「……ではサン・ジェルミ殿、私達は何をすればいいかな?」

「クーデターよ、()()()

 サン・ジェルミが持ちかけたのは、帝国(オルテ)に対する武力攻撃で政権奪取を行うことだった。

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