JUMP DRIFTERS   作:悪魔さん

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原作読んで、本作書いて思ったんですけど、やっぱり黒王の正体ってキ○○○なんでしょうかね……?
未来人説とかあって、色々気になります。


第25幕:暗黒時代

 殺せんせー達がオルテ帝国を盗り、やぐら達が第二軍に殲滅戦を仕掛ける一方。

 黒王軍陣営の偵察を続けるドグ達が、意を決して内部調査に打って出ようとしていた。

「どうする、俺だけ潜るか?」

「いや、僕も行く。でなければ何が起きているか判らない」

「師弟共に無茶するな「十月機関」は。導士やらせておくのが惜しい」

 その度胸を高く買い、二人はコボルトの兵装でカモフラージュしてカルネアデスに潜入した。

 かつては人外達の侵攻を防いできた城塞都市だったカルネアデス。一体内部はどうなっていたかというと……。

「何という数だ、これじゃ完全に「都」じゃないか!」

 北壁の内部を目の当たりにし、驚きを隠せない二人。

 商人達の〝グ=ビンネン〟以外は戦争で国力が疲弊しているというのに、北壁は大陸で最も盛況な都と化しているのだ。しかも信じ難いことに、銅幣と言葉で「商売」が行われている。

 銅幣はおそらく、すぐ近くに鎮座する青銅竜を供給源としているのだろう。「生きた青銅鉱山」として解体され続けているようで、文字通り生かさず殺さずの身になっていた。

「北壁に元々居た、カルネアデスの人達はどうなったのだろう……」

 あの黒王軍による侵攻では、北壁から脱出した者もいれば逃げ遅れた者もいるはず。

 彼ら彼女らがどうなったのか。皆殺しにされてしまったのだろうか。

 そんなことを考えながらドグ達はさらに奥へと潜入すると、カルネアデスの人々が奴隷として扱われてるのを目撃する。

 しかし奴隷制度そのものは古今東西いかなる国にもあり、現にオルテ帝国もそうであったため、二人は強い衝撃は受けなかった。だがその奥を見て人間との違いを知り、絶句した。

「っ!! ……何ということだ」

 冒険者として多くの血生臭い場面を見てきたドグも、吐き気を催した。

 それは、体を切り刻まれ、肉として売られていた人間の一部だ。

 人が牛馬に労役をさせ、やがて食べてしまうのと同じで、売買して荷役をさせ働けなくなれば食ってしまうという「人間の家畜化」が浸透していたのだ。

「我々とて、始めは野にいる馬や羊の群れを捕らえた。この場合畜産と奴隷制が同一に進んでいる。だが……早すぎる!」

 大通りを離れ路地裏に隠れる二人は、黒王軍の現状について話し合う。

 この北壁の内部で一番驚くべきことは、文明化の進行度合いだ。農耕も文字も貨幣経済も労役奴隷制も、人類は数百年かけて成し得たこと。単に黒王や廃棄物(エンズ)達が答えを教えただけでは済まない領域だ。

 間違いなく、人ならざる者達の平均的な知的レベルが急激に上がっている。

「化物と呼ばれる者達に、何か()()()()のではないか」

「さぁーて……何をしているんでしょーうか」

「「っ!」」

 そこへ、二人の正体を見抜いた者が。

 九郎判官義経だ。

「いずこかの国の間者かな? それとも十月機関とかいう連中かな? 度胸あるじゃないの君ら」

 刹那、ドグが素早い動きで剣を抜く。

 しかし義経は更にその上をいく素早さと身軽さで躱し、太刀を抜いた。

 

 ギィン!

 

「「「!」」」

 太刀音が鳴った。

 義経の太刀はドグに届かず、女物を思わすような派手な着物を着こなす剣士に受け止められていた。

「クク……そいつが世に言う八艘飛びかい」

「おや、これは驚いた。僕の太刀を真っ向から受け止められるのはそうそういないよ?」

「「高杉さん!!」」

 義経の前に現れたのは、単独で潜入していた漂流者(ドリフターズ)・高杉晋助。

 攘夷戦争の最前線で戦った剣技は衰えず、必殺の一太刀を真っ向から受け止めた晋助に戦上手の剣豪は感心するように微笑んだ。

「なぜここに……」

「向こうの手の内知らねーと、勝てる戦も勝てねーだろ」

 肩を震わせて笑うと、高杉は義経を見据えた。

「俺が見てーのは市場や文化じゃねェ、軍事力だ。壁の向こう側はどうなってるか教えてもらおうか、牛若丸さんよォ」

「随分と勘がいいねェ、漂流者(ドリフ)の君。――そうさ、()()()見るべきは()()()()()()だよ」

 

 

 義経に導かれ、三人は「壁の向こう側」を見せた。

 壁の向こうでは、軍事教育が行われていた。よく目を凝らしてみると、コボルトやオーク達以外にもケンタウロスや巨人族もおり、武装・軍隊化が施されていた。

「「……!!」」

「そうだろうたァ思ってたぜ。丸腰で戦争仕掛けるバカはいねェ」

 高杉は予想が的中してたようで、顔色一つ変えずに煙管を吹かす。

「廃棄物とアレが(くつわ)を並べて進軍する。僕も久々の戦でワクワクする。もはやコボルトだゴブリンだって話じゃない。これは人類と化物の全てを賭けた生存戦争なんだ」

「そ、そんなバカな……! 種類も文化も生態も違う化物共が、一つにまとまるなんてことが……!?」

自分(てめー)のやろうとしていることは、敵だってやる。それぐらい当然だろうが」

「へェ……やっぱり君、戦を知ってるね?」

 高杉が十月機関と違って戦場を知る人間と知り、義経は好戦的な笑みを浮かべる。

「黒王はお前達よりも早くできた。そりゃそうさ、救い主になることに慣れているからな」

「!」

 春秋戦国時代を終わらせ中国全土を初めて統一した始皇帝や、人類史上最大級の帝国を創設したチンギス・ハンも然り。「万学の祖」とも呼ばれる古代ギリシャの哲学者アリストテレスや、人類の学問に関するあらゆる分野で才能を発揮した芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチも然り。歴史の中で、偉大な王や英知の学者は山程いた。

 だが黒王は、それらとは比べ物にならない「救世主の玄人」であった。種族も言葉も生態も違う人外を束ねることができるのは、救世主としての経験があるからだった。

「姿を現せ安部晴明。いつまで弟子の影から見ているつもりだ」

 そこへ、杖を突いて廃棄物の頂点・黒王が姿を現した。

 それに呼応するように、十月機関の構成員の背中から形代が群がり、晴明が現れた。

 どうやら北壁の内部に入る前から術で潜んでいたようだ。

「人を救わぬ救世主など救世主にあらず。無用有害そのものだ」

「この世が人の物であると考える。御用学者の不遜そのものだ」

 邂逅早々、論争を繰り出す。

 人の可能性を信じて微塵も絶望していない晴明の言葉に対し、黒王は人に変わって新たな者が世界を継ぐ「世代交代」だと反論する。

「人の可能性と言うたな、「十月」。その可能性とやらが許せぬのだ。人は賢すぎる」

 漂流者によって色々な物が持ち込まれたが、それは漂流者が持ち込まずとも何百年か経てばこの世界の人間も勝手に作り出すだろう。漂流者が去ったとしても改良を重ね、さらに優れた武器で何百万何千万と殺す。そしていつかは都市どころか国をも滅ぼす爆弾や疫病を生み出す。ゆえに人間は他の種族や地球を道連れに心中する救いようがない狂った生命であり、その根幹は賢さにある。

 黒王はそう語り、全てを道連れにするその前に人間を滅ぼし、人ならざる者達にノウハウを継がせ世界を譲渡させると宣言する。

「これが私の救世だ。故に人間は殺し、滅びを加速させる漂流者を殺す」

「そいつはどうかねェ。世代重ねりゃ同じことになるだろ」

「高杉殿……」

 黒王の主張に、高杉が割って入った。

 人間は賢すぎるが、人ではないコボルトやオーク達は違うというのは、楽観視が過ぎる。黒王の望み通り人間が滅んだとしても、人外達は世代を重ねるごとに進歩発展し、いつかは争いを始め殺し合うようになる。狭くとも可能性は残っていれば同じだ。

 高杉は鋭い眼差しで黒王を見据え、笑みを深めた。

「世の中最初(ハナ)から皆で仲良くってできちゃいねェ。そこの天人もどき共も同じ未来辿るぜ。それを止められるってんならぜひお聞かせ願いたいモンだ」

(これが武士の末裔か……何という胆力……!)

 廃棄物の王を前にしても毅然とした態度を崩さない高杉に、晴明は息を呑む。

 すると高杉の言葉に答えるように、黒王は言葉を紡いだ。

「技術も文明も、一歩も進まぬ時がある。むしろ後ろに戻ることすらもある」

 黒王は中世期の「暗黒時代」を語った。

 それは、当時の世界の教えに反する科学的知識が弾圧を受け、文化を後退させた時代。地動説を唱えたガリレオが弾圧されたように、宗教が絶対的な支配力を持っていたがゆえに革新者達が圧力で口をつぐんだ停滞期。

 最終的には暗黒時代は終焉を迎えたが、黒王はそれこそが望みであるのだと告げた。

「絶滅の恐怖もなく、星を汚さぬ安寧の揺り籠。無限永久に続く、素晴らしき暗黒時代を。私の名はそれゆえ「黒王」なのだ」

 技術も文明も一歩も進まない世界。

 黒王は中世期の暗黒時代を再現し、永遠に続くようにすることを目標としているのだ。

 生きとし生ける者が、世界を滅ぼす知性を得ないようにするために。世界を保全するために。

「人類は滅ぼされ、天人もどき達は文明も一歩も進まねェ統制社会を強いられる。つまらねェ世の中だな」

「黒王、やはりお前は倒さねばならん! 壁のこちらの者にとっても、向こうの者にとってもな」

 ――人間を舐めるなよ……人は強いぞ。

 黒王に宣戦布告した晴明は、高杉らと共に得意の符呪術で北壁から脱出した。

「符呪術か! こっち側にいる鬼の術も然り、あっちも面白い術を使う」

「――舐めてなどいるものか。心を込めて滅ぼすとも」

 人の強さを誰よりも理解している黒王は、虚空を見上げるのだった。

 

 

           *

 

 

 その頃、オルテでは目が覚めた黒死牟が殺せんせー達に情報提供をしていた。

「黒王と無惨様……いや鬼舞辻は……異形の者達を統一し、戦に備えている……」

「兵力はやはり我々の数倍、いや数十倍はあるようですね。――廃棄物は何人いますか?」

「私の知る限りでは、同じ上弦の鬼が二人……それとジャンヌの小娘、土方歳三義豊、ラスプーチン、アナスタシア、源九郎判官義経……それに鵜堂とかいう人斬りとザボエラなる者、あとヴァニラという者もいた……これよりも増えてるかはわからぬ……」

「となると、それ以上と考えるべきですね……」

 しのぶは盛大に溜め息を吐いた。

 黒王軍の詳細な内容がわかり、漂流者側も進展すると考えていたが、黒王軍の規模は予想を遥かに超えていた。

 廃棄物の中には、黒死牟のような規格外の戦闘力を有する者がいる事実が今回の防衛戦でわかった。個々の戦闘力が驚異的に高いのはお互い様である以上、今の戦力で黒王軍を打ち倒すのは非常に厳しい。

(それにしても〝アナスタシア〟という名前……どうも引っかかる)

 妙な胸騒ぎを感じ、落ち着かなくなる殺せんせー。

 そこへ黒死牟は、さらなる爆弾を投下した。

「今はどうなってるかは知らぬが……ジャンヌとかいう小娘は、鬼になっている」

『!?』

 その衝撃的な情報に、驚愕する一同。

 廃棄物の異能の脅威は、二度の戦闘で承知している。そこに鬼の特異体質が加われば、戦闘力も危険度も跳ね上がるのは明白だ。

「〝オルレアンの乙女〟がそこまで堕ちたとは……正真正銘の魔女ではないですか……」

「鬼になることを自ら選ぶとは言語道断!! 人々に敬われ讃えられる英雄だろうと鬼に堕ちたのなら斬首するまで!!」

 呆気にとられる殺せんせーに対し、杏寿郎は快活に一刀両断する。

「……困ったなぁ。どいつもこいつも廃棄物が鬼になったら、手に負えへんで」

 秀元の言葉に、息を呑む一同。

 ただでさえ能力がえげつない廃棄物が鬼化すれば、厄介なことこの上ない。体力や戦闘力が規格外であるロジャー以外で、一騎打ちで負かすなど困難を極める。これは戦略を大きく変える必要があるだろう。

「ふむ……貴重な情報をありがとう、巌勝殿。これで対策は多少なりとも打てる」

「当たりめェだバカヤロー!!」

 そこへ、酒を片手にロジャーが黒死牟の元へと向かう。

 顔はほんのり赤く、酒の臭いが強い。大分飲んで酔っ払った様子だ。

「おれの〝今世の相棒〟が仲間を貶めることなんか言わねェよ!! なあ巌勝?」

「ロジャー……買い被りすぎだ……」

 豪快に笑いながら肩に手を置くロジャーに、黒死牟は困ったように微笑む。

 重厚な威圧感が緩むのを感じ、殺せんせーは「随分と絆されてるようで……」と呆れた笑みを浮かべる。

 そこへ、ロジャーよりも早く飲んで酔っ払っている鯉伴がしゃっくりしながら窘めた。

「飲み過ぎだ旦那、五十路過ぎてんだから控えな……ヒック」

「あァん? ウルヘー!! 飲んだくれの色男に言われたかねェよ!!」

「んだとぉ!? オレは魑魅魍魎の主だぞ!! 酒に呑まれるバカはやらねぇよ!!」

 それを皮切りに、酒場でよく見る酔っ払い同士の殴り合いが始まった。

 止めるべきかと耀哉は尋ねるが、とばっちりを食らいたくないという理由で殺せんせーは無視するよう返した。

「まあ、これで黒王は暫くは刺客や尖兵を送ったりはせえへんやろ。懐柔されるなんて夢にも思っておらんかったろうし」

「ええ。それよりも問題はオルテの残軍です」

 ここで防衛戦の立役者であるLが、本題に入った。

 第二軍は謎の大苦戦中、東方第五軍はグ=ビンネンに潰された。しかし残る第三軍と第四軍は、補給路を絶たれ弱体化したとはいえ規模も錬度も無視できない。まともに相手するわけにもいかない。

 そこへ何と意外にも黒死牟が声を掛けた。

「両軍の……将の仲はどうだ……?」

『!?』

 まさか敵だった者が話に加わるとは思わなかったのか、一同は目を点にする。

「へ!? ……い、いや……悪いと言いたいけど、普通ね」

「いや……良くはないはずだ……」

 黒死牟曰く、平時はともかく本国が壊滅して同程度の軍が二つ近在した今、必ず主導権を争うという。

 確かに中央の統制が緩めば、双方独自に動いて主導権を争うのは当然の成り行きと言えよう。

「私とて……元は戦国乱世の武家の長男だからな……」

「生きた時代が時代だからか、スゴくリアルですね……説得力が違う」

 群雄割拠の戦国時代の生き証人の説得力に、殺せんせーは顔を引きつらせた。

「しかし、兵力不足の現状を考えると双方の兵士は欲しいね」

「せやけど、一度中央の統制から離れたんやろ? 僕はまたそのまま従ってくれるとは思えんけどなぁ」

 秀元の言葉に、耀哉と殺せんせーは無言で頷く。

 中央の指揮下から離れた軍隊が素直に恭順してくれる保障は無い。弱体化し、混乱した上に連携も取れないとなれば、むしろ従ってくれた方が内紛の種として危険ではないかと三人共考えているのだ。

「ええ。そこで一つ私から提案があります」

『!!』

 そこで動いたのが、世界一の頭脳を持つ天才・Lだった。

「サン・ジェルミ伯。あなたの名義で両軍に書状を送ってください。文面は――」

 Lは菓子を口に運びながら、サン・ジェルミに次の一手を伝えた。

 

 

 後日。

 オルテ第三軍駐屯地では、指揮官であるジグメンテ将軍がサン・ジェルミの使者から書状の内容を聞いていた。

「本国からの補給は止まったまま。亜種族共の一揆で途上は寸断。何が起きている?」

「帝都が襲撃され、炎上とのこと」

「何だと!? グ=ビンネンか!?」

「いえ、黒王軍と称する化物の軍です」

 使者は帝都の現状を説明する。

 黒王軍の襲撃で帝都は戦場と化し、一応撃退はしたが大きな被害を受けたため帝国の指導部も壊滅してしまい、自分では事態収拾ができないと判断して使者を送ったという。

「当然だ。あのような男か女かわからぬ文弱の徒に何ができるというのだ」

 呆れ返るジグメンテ。

 すると使者は、ある「地位」を言及した。

「そこで数十年空白であった「国父」の地位を復活させ、第三軍もしくは第四軍の将軍にその地位を受けていただき、国威と秩序を回復していただきたいとのことです」

「何……だと!?」

 手紙の内容に衝撃を受けるジグメンテ。

 事態収拾の為に、空位となっていた「国父」を復活させるというのだ。

 手元に王の地位が転がってくるというまさかの報せに、ジグメンテの目つきが変わった。

「使者はどうした!?」

「それが……これより第四軍のレメク将軍にも伝えると」

「すぐそちらに向かいました」

「――先に帝都に到達し、主導権を握った者が()()以来この国初めての()()になる。そういうことか」

 すぐさま早い者勝ちであることを理解し、ジグメンテは部下達に命じた。

「すぐに帝都(ヴェルリナ)に向かうぞ。速度が命だ、少数の騎兵で向かう。それとは別に、もう一隊を編成する。意味は……わかってるな?」

『はっ!!』

 別働隊の派遣を決め、ジグメンテは帝都への帰還に動いた。

 それすらも、Lの思惑通りとも知らずに。




本作ではドグは生存します。
原作読んでて、惜しい人物だったので。
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