JUMP DRIFTERS   作:悪魔さん

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タイトルで察してください。


第26幕:日輪漂流

 時同じくして。

 国父位の座をジグメンテに渡すわけにはいかないと、第四軍のレメク将軍は帝都に向けて急いで馬を走らせていた。

「急げ皆! 馬の()(ばら)が裂けるまで駆けよ!!」

「レメク将軍!! 前方に何かが!!」

 レメクらの前方に、簡易的な関所が現れた。

 ジグメンテが派遣した別動隊が、先回りして首都との最短通路に突貫で関所を設けたのだ。

「この関は何事か!! 関を除けよ、我らを遮るつもりか!?」

「その通り」

 すると別動隊の兵士達が次々とクロスボウを向け、第四軍に一斉射撃を浴びせた。

「な、何をする貴様ら! 正気か!?」

「将軍を帝都に行かす訳にはいかんのですよ。射て!!」

 次々と放たれる矢を前に、レメク将軍と第四軍は成す術も無くを惨殺されてしまった。

 

 

「ふふふ……おいどうだ、俺が国父だぞ、この俺が! ははは!」

 ジグメンテは高笑いしながら帝都を目指す。

 サン・ジェルミの使者は先に第三軍の元へ来た。だからこそ罠を張ることができ、先を急ぐ程に同じような妨害も受ける可能性が下がる。

 両将軍の〝競い合い〟は、ジグメンテに軍配が上がったかのように思えたが……。

 

 ヒュパッ!

 

『将軍!!』

 ジグメンテの首を、矢が貫いた。

 それと共に、鬨の声を上げて第四軍が現れた!

「バカな……第四軍だと!?」

「貴様ら……そんな……!」

「退け!! 退けェェ!!」

 第四軍の奇襲で大混乱に陥った第三軍は、指揮官を失ったこともあってすぐさま撤退した。

 彼らは知る由も無かった。自分達を襲ったのは()()第四軍であることなど……。

「退いていくぞ」

「うまく行った」

 被っていた兜を外す偽四軍。

 その正体は、シャラを筆頭としたエルフ衆だった。そしてジグメンテ暗殺の実行犯は――

「……しかしまあ、本当によく当たったな……」

「ええ。クロスボウは使い慣れていないので、ちょっと心配でしたよ」

「絶対ウソだろ……」

 ニヤリと笑みを浮かべる殺せんせーに、シャラ達は苦笑いせざるを得ない。

 ジグメンテは頭が切れ、用心深い性格である。現に万が一攻撃に遭っても、見分けられないように全員フードを被って配慮していた。しかし服装が同じでも頭は必ず「護られている」のであり、それを看破すれば暗殺など容易いことだ。

 そして殺せんせーは超人的な技能を持つ伝説の殺し屋〝死神〟であり、不可能と思われる殺人を悉くこなす暗殺術のスペシャリスト。クロスボウを操り、一発で喉笛を射抜いて暗殺することなど造作もないのだ。

「さて。あとは竜崎君に任せるとしましょう」

 

 

           *

 

 

 水晶球越しに殺せんせーから任務成功の報告を受けたLは、次の作戦に打って出た。

「これで潰し合いが始まります。この間に西方諸族へ講和、もしくは休戦を申し込み成立させます」

 第四軍は第三軍に将を討たれ、第三軍は第四軍に将を討たれたと()()()()()ことで、両軍が対立する状況になった。そして両軍が混乱し反目している間に、50年近く続いた戦争に終止符を打つのである。

 しかし西方諸族も疲弊しているが、それ以上に恨みが積み上がっている。無条件の講和などまず不可能だろう。

 そこでLが考えた「手土産」は、占有した西方全領地の即時全返還。それに加え、疲弊しきった両軍が将を失って大混乱で反目しており、叩き潰し失地を取り戻す絶好の機だという情報。この二つを差し出すというのだ。

「竜崎ちゃん、正気!? 第三・第四軍を西方諸族の()()()()にするの!?」

「放っておいても潰し合って滅ぶでしょう。ならば無駄死には避けねばならない。〝()〟ならこうするでしょう」

 統制のとれない地方軍に対し、軍の兵を差し出せと命じて素直に応じるわけがない。嫌々従う大軍など、内部分裂を引き起こすだけだ。それならいっそ、壊滅させて「敗残兵」にし行き場を失くした方がいい。それに第三・第四軍がすり潰しきってから西方諸族が攻め寄せれば、敗残兵もロクに残らず、休戦に応じることなく帝都まで侵攻する可能性が高い。

 それら全ての事情をひっくるめた上で、他所から来た第三者である漂流者(ドリフターズ)が軍団の軍兵を手に入れるには、壊滅した軍団の敗兵を吸収する以外に方法は無いのだ。

「サン・ジェルミ伯。グ=ビンネンとの講和は漂流者(ドリフターズ)の存在を出せば成立すると思ってます。ですので、黒王の次の目標が西方諸族であり援軍が行くから今攻めるべきと伝えて下さい」

「ハッタリをかませってこと!?」

 両軍団を潰し、西方にも打撃を与え、自分達には兵隊が手に入り和平もできるハッタリ。

 しかしハッタリやウソも立派な交渉術だ。

「わかったわよ! 一応やってみるけど!」

 Lの策が理解できる上に対案が無いため、サン・ジェルミは承諾した。

 このオカマ、政治家としてかなり誠実なのかもしれない。

(っていうかさっきの竜崎ちゃんの言い方だと、元いた世界には似たような天才がまだいるってことじゃない……)

 Lがいた世界が、それはそれで恐ろしく感じた伝説の怪人物だった。

 

 

 その日の夜。

 グ=ビンネンに身を寄せている志々雄は、煙管の紫煙を燻らせ月を仰いでいた。

「……!」

 ふと、背後から得体の知れない気配を感じ取り、刀に手を添える。

 人間ではない禍々しい気だったが、不思議と笑みが零れた。

「やあやあ、こんばんは。いい夜だねぇ」

「フン……けったいな生臭坊主が来たな」

 志々雄の前に現れたのは、童磨だった。

「こんな所に何の用だ? 茶は出せねェ――」

「それにしても酷い火傷だね。可哀想に、何か辛いことでもあったのかい?」

 童磨の一言に、眉間にしわを寄せる志々雄。

 この火傷は、かつて戊辰戦争で自らの力と野心を恐れた同志によってつけられたモノ。しかし復讐や怒りの象徴ではなく、自らが掲げる「弱肉強食」の信念において当時の自分の力量が足りなかっただけという、一種の教訓なのだ。

 それを辛いや可哀想の一言で片づけられるのは、癪に障るというものだ。

「――てめェの物差しで計るんじゃねェよ。それより誰だ」

「俺は童磨。あの御方の命令で君を殺しに来たんだ」

「……志々雄真実だ」

 志々雄がそう名乗ると、童磨は得物である対の扇を取り出した。

「それじゃあ、とっとと終わらせようか。〝血鬼術 ()(れん)()〟」

 童磨は扇を振るって氷の花吹雪を巻き起こした。

 砕いた氷花弁による、広範囲の切り裂き攻撃。回避困難の無情な異能が志々雄に襲い掛かるが――

「〝(いち)()(けん)焔霊(ほむらだま)〟!!」

 

 ゴゥッ!

 

「!?」

 志々雄が抜刀すると、突如として刀身に炎が発生し、氷花弁を呑み込む。

 凍てつく冷気を炎で蒸発させていくその光景は、まさしく炎を統べる悪鬼。

 全方位の攻撃を易々と捌き切った志々雄に、童磨は扇を小脇に挟んで拍手した。

「わーっ! すごい! 血鬼術でもないのに燃える剣なんて初めてだ!」

「そいつはお互い様だ。俺だって扇から氷を出す奴なんざ初めてだぜ」

 その間にも炎が収まり、志々雄の刀の真の姿が露わになる。

 刀身は極めて細かい鋸状の刃で構成されており、一見は切れ味が鈍そうな刀。

 奇剣とも言える異様な一振りに童磨は興味を持った。

「変わった刀だね。わざと刃をこぼしてるみたいに見えるけど、それじゃあ鬼の俺は斬れないよ?」

「ほう、てめェは鬼なのか?」

 童磨の鬼という言葉に、今度は志々雄が興味を持った。

 修羅や羅刹という言葉こそ自分に似合うと思っていたが、目の前の男は〝本物の鬼〟だというのだ。

 童磨は不死身の怪物を前にしても不敵な笑みを浮かべる志々雄に、微笑み返した。

「今度はこっちから攻めるぜ」

 志々雄はお返しと言わんばかりに、童磨の懐に飛び込んだ。

「シャアアッ!」

「じゃあ次は……〝(つる)(れん)()〟」

 鞭のようにしなる氷の蔓が襲い掛かるが、志々雄は大熱を帯びた斬撃で斬り払っていく。

 炎と冷気が打ち消し合い、絶妙に拮抗することに童磨は「困ったなぁ」と志々雄の攻撃を捌きながら苦笑いした。

 童磨は冷気を操る血鬼術の使い手で、その真髄は全集中の呼吸による身体強化の封殺。すなわち対鬼殺隊に特化した血鬼術である。冷気を一度吸えば肺胞が壊死し、呼吸すること自体に危険が伴うため、初見殺しの効果もある恐ろしい異能なのだ。

 しかし志々雄は極めて高い身体能力を持っている上、炎を付随させた攻撃を繰り出せる。さらに童磨自身は全く知らないが、志々雄は全身が常に常人以上の高熱を帯びている状態である。体質にも戦闘法にも冷気への耐性がついているのだ。

 つまり童磨にとって、志々雄は天敵にも近い存在なのである。

「いやぁ、すごいすごい! 君、柱より強いんじゃない? 今までの剣士なら即死なのにねぇ。しのぶちゃんでも()()()()()()以外成す術も無かったんだから!」

「人の心配をするより、てめェの心配をしな!」

 志々雄は一瞬の隙を突き、童磨の左腕を斬り飛ばし、続いて首を掴んだ。

 相手の隙を突きつつ自分の隙を見せない志々雄に、童磨は驚く。 

 そして――

「〝()()(けん)紅蓮腕(ぐれんかいな)〟!!」

 刹那、志々雄の左手に嵌めた手袋が爆ぜた。手袋の甲部分に仕込んだ火薬に、刀の炎が引火して爆発したのだ。

 そして志々雄は追撃。三度斬りつけてから殴り飛ばした。

「…………成程、鬼ってのはそういうことか」

 志々雄は目を細める。

 視線の先には、傷が全て塞がり元通りになった童磨が平然と立っていた。

「ごめんねぇ、傷全部治っちゃった。それにその刀、日輪刀じゃないから頸斬り落とせても俺は殺せない。残念だね」

「言いたいことは、それだけか?」

 志々雄は、なおも笑う。

 ほぼ不死身の怪物を前にした人間とは思えない、余裕に満ちた態度。それは強がりではなく、自らの強さに絶対的な自信と信頼があることに他ならない。

「あー……君、猗窩座殿みたいだねぇ」

 己を信じ貫く、神や仏に頼らない人種。

 目の前の彼に至っては、神や仏、それどころか鬼の始祖を前にしても屈さないだろう。

 自分に対する賛美や怨嗟とは無縁の、己の信念に従う武者に、童磨は真剣な表情を浮かべた。

「ちょっと本気を出した方がいいかもね」

「やっぱり手ェ抜いてやがったか……まあ国盗りの余興にゃ相応しい」

 童磨が氷の分身を作り出し始めた、その時――

「へ?」

「……何だ?」

 突如、二人の間に石造りの門が現れた。

 軋むような音を立てて門がゆっくりと開くと、そこから一人の和装の剣士が放り出された。

「……ここは?」

 剣士は辺りをキョロキョロと見回す。

 長い髪を一つに纏めた炎のような痣が特徴の青年も乱入に、二人は戦闘を思わず中断してしまう。

「……てめェも飛ばされてきたのか」

「ってことは、漂流者かな?」

「っ! では、あなたも?」

「え? 俺無視されてる?」

 志々雄に顔を向けた青年に、童磨はしょんぼりとする。

 ――が、次の瞬間!

 

 ドッ!

 

「「!!」」

「当然のこと。お前は鬼だろう」

 刹那の瞬間。

 童磨の体が、青年によって斬り刻まれた。咄嗟に反応したため頸は落とされずに済んだが、両手両足は斬り落とされてしまった。

 それと共に童磨の脳に主人の絶叫が木霊し、琵琶の弦の音が響いて障子が現れた。

「うわー、無惨様荒れてるなぁ。これじゃあ戦えないし、これで失礼するよ」

「っ!」

 逃がすものかと青年は刀を振るったが、その時には童磨は逃走に成功し姿を消していた。

「逃がしてしまった……」

「……てめェ、何者だ?」

 項垂れる青年に、志々雄は声を掛けた。

 

 虚を突かれたとはいえ、ほぼ不死身である鬼を一瞬で追い詰めた剣の技量。

 人斬り抜刀斎に匹敵、もしかすればそれ以上であろう「速さ」。

 

 幕末の動乱を生きた志々雄にとって、目の前の青年は規格外が過ぎた。

 しかし表情には、恐れや忌避も、嫌悪も嫉妬も無い。あるのは純粋な称賛だった。

「俺は志々雄真実という。お前の名を教えろ」

「……私は継国縁壱という者だ」

「縁壱か。よろしくな」

 それは、日輪と悪鬼の時空を超えた出会い。

 そして日輪の新たな戦いの始まりだった。




志々雄様なら上弦と互角に勝負できそうな感がしてならない。(笑)
これで漂流者側もカリスマ四天王揃いそう。

廃棄物もいい加減新キャラ出さないと、パワーバランスが……。
ヒロアカのヴィランとか、チェンソーマンのキャラとか……
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