JUMP DRIFTERS   作:悪魔さん

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あ~あ、出しちゃった。(笑)
男の方はいいけど、女の方はヤバイかも。(笑)


第28幕:化け物1号・2号

 その日の夜。

 ロジャーはエルフの兄弟――シャラの弟であるマーシャとマルクから帽子を受け取っていた。

「はい! ロジャーさん、帽子できたよ!」

「おう! ありがとな!」

 目に見えて嬉しそうに笑うロジャーは、帽子を被る。

 それは、波のような口ひげのついたドクロが刺繍された、羽飾り付きの二角帽(バイコーン)……いわゆるキャプテンハットという代物だ。

「こいつがねェと、どうも頭が寂しくていけねェ」

 プレゼントを貰った子供のような、無邪気な笑みを溢す。

 かつて愛用していた帽子は仲間に譲ったため、渡したことに後悔は無いが思い入れもあったので、もう一度被りたくなったのだ。そこで手先が器用なエルフで、中でも個人的に仲が良い関係であるマーシャとマルクに作成を依頼したところ、かつて海賊稼業をしていた頃と瓜二つの代物を渡されたという訳である。

「こうしていると、船や海も恋しくなっちまうな」

「ロジャーさん、海賊だったもんね」

「あの頃は全てが面白かったからな!! 今はまた別の面白さがあっていいがな、やっぱり海賊は海がお似合いだ」

 前の世界の冒険を思い返すロジャー。

 するとそこへ、オルミーヌが慌てて駆けつけた。

「ロジャーさん!」

「どうした? オルミーヌ」

「縁壱さんと鬼が、決闘をすることに……!」

 オルミーヌの言葉を聞き、ロジャーは目を輝かせた。

「〝縁壱〟? 巌勝の弟か!!」

「あんな化け物、私達じゃどうにもできませんから! 助けて下さい!」

「よし、おれが止めに行ってやる!!」

 ロジャーは満面の笑みで外へ飛び出した。

 その背中を見つめ、オルミーヌはもっとヒドいことにならないか心配するのだった。

 

 

           *

 

 

 満月の光が、辺り一面を照らす。

 ヴェルリナ郊外の野原では、日輪と月輪が対峙していた。

「「参る」」

 黒死牟は自身の血肉から形成される愛刀・(きょ)(こく)(かむ)(さり)を、縁壱は数々の惡鬼を滅殺してきた日輪刀を抜く。

 そして――

(――〝月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮〟!!)

(――〝日の呼吸 壱ノ型 円舞〟!!)

 同時に黒死牟と縁壱は動き、刃を交えた。

 それから速すぎて見えない程の連撃を両者繰り出した。かつては広すぎる差があった両者に技量だったが、黒死牟は数百年という長い年月で心技体を研鑚し極め、人も鬼も貪った。その強さは文字通り異次元の戦闘力を有している。

 類稀なる剣の才を持つ縁壱と、互角に渡り合っていた。

(同時に何という斬撃の数……透き通る世界をもってしても躱し続けるのは困難とは、見事です。――まさに冴え冴えとした闇空に輝く、孤高の三日月……)

(私の剣技を相殺しながら日の呼吸の型を繰り出すか。何と忌々しく……美しい。まさしく、はるかな高みから見下ろす天照、神々しい日輪)

 対の存在なれど、互いに最大限の称賛を胸に剣を振るう。

 この兄弟、案外大差ないのかもしれない。

「〝月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾〟」

「!」

 黒死牟はここで、畳み掛けにきた。

 愛刀を三本の枝分かれした刃を持つ大太刀に変化させると、抉り斬るような横薙ぎの一閃を繰り出し、極太の斬撃で攻撃する。

 龍が尾を振るうかの如き一太刀に加え、剣閃に沿って放たれる無数の三日月状の斬撃をも、縁壱は跳び上がって回避。それによって背後の木々や岩々が見事に両断された。

「〝(くだ)(づき)(れん)(めん)〟」

 宙を舞った縁壱目掛け、玖ノ型で雨のように降り注ぐ無数の斬撃を放つ。

 が、縁壱は前方広範囲に渦を描く様に放つ〝灼骨炎陽(しゃっこつえんよう)〟を空中で繰り出し、相殺しながら着地。その流れで〝烈日紅鏡(れつじつこうきょう)〟を放ち、向かい来る斬撃を切り裂いていく。

 互いに大技をぶつけ合い、周囲が次々と破壊されていく。

「素晴らしい……!」

「ああ……スゲェな」

 二人の攻防に、杏寿郎と鯉伴は感嘆の声を漏らす。

 人間だとか妖怪だとか鬼だとか関係なく、男として惚れるような戦い。血が騒ぐとは、まさにこのことだろう。

 しかし、そう言ってる状況ではない。二人の剣戟によって周囲の物が無造作かつ無差別に粉砕されているのだ、このままでは街にまで影響が出てしまう。

「……そろそろ二人を止めるか、鯉伴殿!!」

「ああ、そうしようや」

 杏寿郎は日輪刀を、鯉伴は長ドスを抜くが――

「待て! 鯉伴! 杏寿郎!」

「「!」」

「君達にケガさせるわけにはいかん」

「……()りてえだけだろ、アンタ」

 そこへ駆けつけたのは、ロジャー。

 災厄に等しい力を持つ黒死牟をして「この世の理の外側にいる」と評する剣士と一戦交えたいのか、ウキウキした様子である。

「バトンタッチだ、巌勝っ!」

「ロジャー……!?」

 黒死牟を追い越し、ロジャーは縁壱へと突撃した。

「よう、会いたかったぜ縁壱!!」

(っ!? 私の名を……? それにさっきは兄上の名も……)

 自らの名どころか兄の名すらも知る、立派な口ひげを生やした異人の登場に縁壱は戸惑う。

 対するロジャーは、嬉しそうに走りながらサーベルを抜いた。

「〝神避〟!!」

 

 ドォン!!

 

「っ!?」

 強大な覇気を纏わせた一閃が、至近距離で放たれた。

 ロジャーの〝神避〟は、十二鬼月最強の鬼の絶技と同格以上の威力を持つ。ましてや至近距離で受ければ、いかなる強者でも直撃すれば遥か遠くへ吹っ飛ばされてしまう。

 事実、真っ向から受け止めた縁壱は、その衝撃に耐え切れず――

「ぐっ!」

(――縁壱が吹き飛ばされた!?)

 六つの目全てを見開き、口をポカンと開けて驚愕する黒死牟。

 正真正銘の神童が、その剣技が最強の御業であった剣士が、文字通り吹き飛んだのである。あれ程嫉妬に狂う強さを持っていた縁壱が、唯一心から羨望した男の一振りで一蹴されたのだ。

 が、そこは鬼の始祖を圧倒し追い詰めた男。両足でうまく着地すると、一気に距離を詰めて

ロジャーに迫る。

 剣の力量だけでなく素の身体能力も規格外な縁壱の反撃に、ロジャーは嬉々として迎え撃った。

「ぬぅん!」

 ロジャーは両足首が地面に減り込むぐらいに踏ん張り、両手持ちで横薙ぎに剣を振るう。

 縁壱は限界まで肺に酸素を送り、唐竹割を繰り出した。

 

 ドォォン!!

 

 海賊の頂点と鬼狩りの頂点が、衝突する。

 刃と刃がぶつかったとは思えない雷鳴のような轟音が響き、その衝撃で夜空を漂う雲すらも吹き飛ばした。

 そして衝突と共に衝撃波が発生し、全方向に襲い掛かった。杏寿郎達どころか、黒死牟ですらその場で伏せて耐えるしかない。

「ぐぁっ!」

 弾かれたのは、縁壱だった。

 再び吹き飛ばされ、地面を何度も跳ねながら大岩に激突した。

「おいおい、ありゃマズイんじゃ……!?」

「縁壱殿!!」

「縁壱……!」

 立ち昇る土煙に、視線が集中する。

 すると土煙が切り裂かれ、縁壱が姿を現す。頭からは血が流れており、それを見た黒死牟は絶句した。

(――あの縁壱が、戦いで血を流しただと!?)

「……」

「いい面構えじゃねェか」

 一筋の赤い線を額から流しつつ、ロジャーを鋭く見つめる。

 対するロジャーも、縁壱の高まる気迫を肌で感じ取り、笑みをさらに深めた。

(先程の黒い斬撃……兄上とはまた別のモノを感じた……一体何者だ?)

 異なる世界から飛ばされた大海の覇者に、縁壱は今まで相対してきた者達とは格が違う相手だと察知する。

「よ~し……いっちょやるか縁壱!!」

 完全に戦闘欲を刺激され、()る気満々のロジャーだが……。

「何がいっちょやるかですか!!」

 

 メギャッ

 

「うぐォッ!?」

 突如として黒髪の男の飛び蹴りが炸裂。

 ロジャーの意識が縁壱に集中していたこともあってか、完全に気配を殺した上での不意打ちは対応できず、そのまま蹴り飛ばされてしまう。

「その声、殺せんせーか!? 何しやがる!!」

「何言ってんですか、今どういう状況かわかってるんですか?」

 青筋を浮かべる殺し屋に、楽しみを邪魔された海賊王は立ち上がってズカズカと詰め寄って睨みつける。

 一方の継国兄弟は、殺せんせーが一切の気配を悟らせずに現れたことに驚いていた。

(あの男、いつの間に……!?)

(完全に気配を殺していた……もしや〝透き通る世界〟を習得して……!?)

 殺気や闘気といった、戦闘の無意識に出てしまう情動を一切感じ取れなかった事実に戸惑っていると、殺せんせーに睨みつけられた。

「お二方にも灸を据えさせてもらいますからね」

「「っ……」」

 

 

 ヴェルリナの政庁舎にて。

「黒死牟さん、縁壱さん。家庭問題で色々あったんでしょうけど、今は復興中なんですよこの国。ただでさえジリ貧国家なんです、これ以上暴れて阻害されては溜まったものじゃないんですよ? 戦国乱世を生きたのであれば、国というものぐらいはわかってるでしょう?」

「返す……言葉もない……」

「申し訳……ありませぬ……」

 殺せんせーに叱られてシュンとなる継国兄弟。

 ハシャギすぎたのは自覚しているようだ。

 だがそれ以前に……。

「……っていうかロジャーさん、あなた「止めに行ってやる」ってオルミーヌさんに言ってたじゃないですか。逆に被害大きくしてどうするんですか」

()りたくなったから仕方ねェだろ! わっはっはっは!」

 豪快に笑うロジャーに、しのぶは盛大に溜め息を吐いた。

 この自由気ままな王者歩みを止められた者は、相棒として支えてくれた副船長(レイリー)も、同じ時代を生きた百戦錬磨の好敵手(ライバル)達も、ロジャーの傍に立ったり立ちはだかったりすることはできても止めることはできない。

 異なる世界から飛ばされてきた英傑達も、それは例外ではない。

「……かつてのお仲間さんの苦労が目に見えてきます」

「大将なのに戦闘では勝手に一番槍と殿(しんがり)やる人ですからね」

「……それは……一軍の将として……目に余るぞ……」

「さすがに度が過ぎる……」

 ロジャーの破天荒さに、継国兄弟はドン引き。

 戦国時代を生きた者だからこそだろう。

「ともかく、今度からは剣ではなく口で語って下さい。何の為に顔に口が付いてると思ってるんですか」

「おめェ割と口うるせェんだな」

「勿論です、元教師ですからね!」

 青筋を浮かべ、終始お冠な死神であった。

 

 

           *

 

 

 一方、ここは無限城。

 鬼と廃棄物の拠点の一つであるこの空間で、鬼の始祖は発狂していた。

「なぜだっ!!! ようやくあの男の悪夢を見なくなったと言うのに、なぜまた現れるのだ!!!」

 無惨の無惨な叫びが木霊する。

 彼にとって、漂流者(ドリフターズ)は恐れるに足らない存在だと認識している。それぞれの世界から勇名・悪名を馳せた猛者が飛ばされようと、人間の力では不死身の怪物である鬼に敵わないと思い込んでいるからだ。現に前の世界で自分を滅ぼしたのは、鬼殺隊というよりも太陽の光だった。

 だが今世においては、あの二人は……継国縁壱とゴール・D・ロジャーだけは別だった。

 継国縁壱は言わずと知れた最強の鬼狩りであり、無傷のまま己を死ぬ間際にまで追い詰めた化け物1号である。生物として全てを超越した大災たる自分が傷つけることすらできないなど、未だに理解できない。

 そしてこの世界で対峙した異人……ゴール・D・ロジャーは、絶対的な関係を結んでいた忠臣・黒死牟と一対一で互角以上に渡り合うどころか、たった一回の邂逅で完全に絆して軍門に下らせるという縁壱ですらできなかった芸当を成した化け物2号である。鬼殺隊は異常者の集まりだが、実際はロジャーこそが真の異常者ではないのかと錯覚する始末だ。

 つまり、縁壱とロジャーは、この世界において最大の脅威であるということだ。

「全ては黒死牟があの異人と会ったことが始まりだ!! 私を裏切りおって……!!」

 その裏切りも、廃城やヴェルリナへの侵攻時に散々水を差した無惨にも一因があるのだが、当の本人は全くの無意識。いや、自覚しても自分ではなく黒死牟がいけないと主張するだろう。

 するとそこへ、前の世界からの付き合いである童磨が顔を出した。

「無惨様、ご報告があります」

「……しかもよりにもよって残ったのが貴様とはな……何の用だ童磨」

「例のジャンヌとかいう娘、素質あったようですよ。俺もびっくりするぐらいに成長してますから」

「ほう……」

 ようやく吉報らしい吉報が来たかと、無惨は心を落ち着かせた。

 廃城の戦闘での敗北以来、ジャンヌは鬼になることを選び、侵攻の度に数多の人間を貪り喰らった。それも全てはジルドレの敵討ちと黒王の救世の為だが、その成長ぶりが上弦並みであることには無惨自身も感心していた。

 実戦経験が少ないため、黒死牟の後釜として役に立つとは思っていないが、この世界は鬼を確実に殺せる手段を持つ者が前の世界よりもはるかに少ない。その上人間達も想像以上の弱さであるため、戦力(こま)としては十分すぎる程だ。

「それとつい先日飛ばされてきた、人格が二つある男、分倍河原(ぶばいがわら)だったかな? その男、少々面白い能力の持ち主で、何でも無限に複製ができるとか」

「……複製か」

 その言葉に、無惨は少しばかり口角を上げた。

 

 同じ頃、廃棄物の王・黒王はある廃棄物を迎えていた。

「我らの盟に加わること、心から歓迎しよう〝マキマ〟」

「……キミが私の思っている通りの()()なら、楽しいかなと思っただけです」

 

 

           *

 

 

 そしてワイヤーフレーム状の扉が並ぶ、とある空間。

 廃棄物を呼び寄せる女・EASY(イーズィー)は、腹を抱えて笑っていた。

「フフ……アハハッ! アハハハハ!! 脇が甘いわね紫!! 私の廃棄物(エンズ)に敵うもんですかっての!!」

 

 数多ある世界から集結し始める漂流者(ドリフターズ)廃棄物(エンズ)

 両勢力の全面戦争は、刻一刻と迫っていた。




ロジャーが被っている帽子は、単行本九十六巻のあの帽子です。
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