JUMP DRIFTERS   作:悪魔さん

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だんだん原作が近くなるので、オリジナル展開を混ぜて進めます。


第33幕:どんづまり

 漂流者・志々雄真実は、庁舎の前に群がる難民達の前に姿を現した。

 その異様な出で立ちと圧迫感に、騒いでいた難民達は一瞬で静まり返った。

「候子様、あれが漂流者(ドリフターズ)でございます」

「ああ……」

 黒王の軍勢に敗れたラ・ズナ士候国の候子は、その姿に息を呑む。

(あの異様な剣士が漂流者(ドリフターズ)……若いな。どんな男か見定めねばなるまい)

 候子が志々雄を見極めようとする中、難民達は続々と声を上げた。

 曰く、黒王に国も町も奪われたと。

 曰く、村も家も焼かれたと。

 曰く、家族も家も全て奪われ殺されたと。

 漂流者(ドリフターズ)廃棄物(エンズ)と戦うため、黒王を倒すために来たのだという認識で、助けを求める。

 だが、相手が悪かった。なぜなら――

 

「てめェらの()()()で俺を語るんじゃねェ。そもそもてめェらが(よえ)ェのがいけねェんだろうが」

 

 特大の爆弾発言を平然と言い放つ志々雄。

 当然のように全くブレずに持論をぶちまけた彼に、難民達は唖然とする。

 同じタイミングで駆けつけたしのぶ達も、この発言にはドン引きした。

「ああ……」

「よ、よもや……」

「詰んだ……これ絶対詰んだ」

 一斉に頭を抱える他の漂流者達。サン・ジェルミはこのままでは暴動になり、黒王どころではなくなるのではと慌てふためいたが……。

「所詮この世は弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬ。弱者は強者の糧となり、糧にすらならない弱者は存在する価値すらねェ。そんなどんづまりに逃げ場なんざねェ」

 乱暴な思考のように感じるが、弱肉強食は自然の摂理だ。実力があればどの世界でも自分を貫くことができ、逆に力が無ければ人にいいように使われる。

 黒王軍に勝てずとも、各々の国が進行を一刻食い止める程度の軍事力(チカラ)があれば、国や町村は滅びても命の犠牲は増えなかったのかもしれない。あるいはや時代のうねりに敏感で、十月機関の言葉に耳を傾けたり、いつ動乱の時代になってもいいように準備していれば、先手を打てたのかもしれない。

 その真実からは、誰も逃れられない。全てが後の祭りだ。――志々雄はそれを突きつけているのだ。

「これは自分(てめェ)の誇りの問題だ。泣き喚いて死ぬか、戦って死ぬか。そんな覚悟ができねェ奴は消えろ、二度とその面見せんな。ここは弱者を助ける場じゃねェ」

「!!」

「だが……死んででも黒王(やつ)の首取って国盗りしてェなら、俺がお前らにいの一番の勝利を味わわせてやる」

 不敵とも余裕ともとれる笑みを浮かべる志々雄。

 その言葉に感銘を受けたのか、候子は声を上げた。

「漂流者殿……私は廃棄物(エンズ)故国を滅ぼされた北の一将だ。我々は貴方と共に戦う。めそめそ死ぬのはいやだ!!」

 共に黒王軍と戦うことを宣言した候子に、満面の笑みを浮かべる志々雄。

 候子の言葉は響いたのか、つられる様に他の国々の兵士達も共闘を申し出た。

「漂流者の言う通り!! 自ら戦わずして、何も手に入るまい!!」

「追い立てられ追い詰められ、泣きながら獣のように殺されるより、故郷を家を取り戻すため、前を向いて死んでくれる!」

「勝ちに驕る黒王に、廃棄物共に、化け物共に目に物を見せて死のう! 彼らと!!」

『おおおおおおおおお!!!』

 何と、あっという間に難民の心を掴んでしまった。

 自らの力で明治政府を倒し国盗りを成就させようとした男は、異世界においてもそのカリスマ性は健在だった。

「あ、危なかった……」

「寿命減りますよ、全く……」

 しかし、結果としては上手くいった。

 非常に危険な綱渡りが成功し、大勢の兵力を手に入れた。

「そうとなりゃあ、兵力を整えねェとな」

 煙管の紫煙を燻らせ、高杉は提言した。

「難民をこれから兵の経験者、指揮経験者、そしてズブの素人に分ける。男女老若では分けねェ」

「っ!」

「なっ……」

「――高杉さん、あなた正気ですか!?」

 高杉の言っていることは、女子供や老人も戦力にするということ。

 非戦闘員であるはずの者も兵力とするやり方は、遥か昔から多くの偉人を苦しめてきた。それに兵力が乏しい現状、効果的か否かと言われれば効果的だ。

 しかし、鬼殺隊の面々や平和主義的な思考のジョットからは、反感を間違いなく買う戦術だ。暗殺技術を生徒に指導した殺せんせーも難色を示し、鯉伴も真剣な眼差しで高杉を睨んでいる。

 しかしそこへ、黒死牟が言葉を掛けた。

「……女子供でも……火縄銃の玉込覚えのいい者は、射ち方もできる……」

「!」

「その通りだぜっ!」

 ロジャーはドカッ! と豪快に座り込み、不敵に笑った。

「おれァ海賊だし、おめェらも(つえ)ェが〝軍人〟じゃねェんだろ? だったら()()()()()()を積んでる巌勝と晋助が一番詳しいんじゃねェか?」

 黒死牟は人間時代、群雄割拠の戦国乱世で武将としての経験を積んでいる。

 高杉は攘夷戦争をはじめ、多くの激戦地を刀一本でくぐり抜けてきている。

 一対一(サシ)や総力戦による戦争ではなく、戦略や戦術が重要視される戦争なら、その手の経験を積んでいる者の意見を軸にするべきじゃないのか。

 そんなロジャーのあまりにも真っ当な意見に、一同絶句。

「……一番そういうのに疎そうな奴から正論出やがった」

「わっはっはっは!」

 するとそこへ、難民達に喝を入れてきた志々雄が戻った。

「そこのオッサンの言う通りだが、正しくは()()だ」

「……ホンット危なかったのよ? 極悪人は伊達じゃないわね」

「それは褒め言葉だぜ、オカマ」

 志々雄はそう言い放つと、Lの傍へと向かう。

「――竜崎。俺の言うことをよく聞け」

「話は聞きますが、判断はそれからでお願いします」

「……フン」

 志々雄はニヤリと笑い、提案した。

「まず難民共の中に壊滅したオルテの兵ぐれェ混じってるだろ。オカマはそういうのを集めろ」

「まあタテマエ上、仕方ないわね」

「で、負け犬共は俺に最初に賛同したあのオッサンに任せろ。デキる男のニオイはする。その上で連中と耳長・小人を絶対に一緒にすんな」

 勘を働かせている志々雄の、まさかの言葉にざわついた。

「ちょ、今更反目しないよォ?」

「いっくらワシらでも空気ぐらい読むわい!!」

「人心掌握できるのに、疑心暗鬼なんですか?」

「世界の存亡かかってるんですからね? それ把握してるんですよね?」

 当事者のシャラやドワーフ長、漂流者達からも反対の声が上がるが、志々雄は却下した。

「呉越同舟とかよく言うけどな。危機が迫れば軋轢や不和がなくなると思ってんのか」

『!!』

 志々雄は、相手は必ずしも自分の味方であり続けるとは限らず、些細なきっかけで敵対関係に陥ると語る。

 そもそも志々雄は幕末の動乱では幕府要人の暗殺――いわゆる人斬り稼業に身を投じていた身で、言い方を変えれば薩長中心の明治政府の「弱み」を握っている人物だった。それゆえに戊辰戦争の混乱の最中、同志によって刀で額を突かれ、身体に油を撒かれ火を点けられる形で口封じされた。もっとも、生き延びた志々雄はこの出来事を「いい経験」と言ってのけているが。

 いずれにしろ、住時の不和は土壇場に限って狙うように露わになるモノで、そのせいで取り返しのつかない事態となり、勝てる戦いも負ける。志々雄はそう言いたいのだ。

「そ……そんなことないッスよ……ドワーフくせえとか人間死ねとか思ってないッスよ……」

「イヤ、ホントそうじゃそうじゃ。エルフきもいとか人間死ねとかもう思っておらんじゃヨ」

「ほら見ろ」

 さらに志々雄は、鬼殺隊にも目を向けた。

「戦力として申し分のねェ六つ目のお侍も、鬼殺隊(てめェら)の天敵らしいじゃねェか。しかも洒落にならねェ軋轢って聞いてんぞ。海賊の外人がいりゃあ問題ねェだろうが、俺としちゃ耳長と小人より心配だぜ」

 ビクッとする煉獄達。

 そう、竈門兄妹はあくまでも例外。鬼殺隊を裏切って十二鬼月の頂点に君臨し、罪無き人々と多くの柱を葬り腹に収めてきた元上弦の壱は、鬼殺隊にとってまさしく不俱戴天の仇。ロジャーという縁壱以上の規格外の人物がいたからこそ、元サヤに戻って人間味を取り戻したのであって、未だに人間の血が必要な鬼であることに変わりはない。

 その事実を誰よりも理解している巌勝は、非常に重たい空気を纏って項垂れていた。

「……返す……言葉も……ない……」

「み、巌勝さん! 大丈夫ですよ! とっととくたばれ糞野郎とか、人を殺した分だけ拷問するとか、微塵も思ってませんから!!」

「そ、そうとも!! 斬首するなど一度たりとも考えてないから安心するといい!!」

 本音が見え隠れする、何の意味もない宥め方をする二人。

 志々雄は呆れた様子で耀哉を睨んだ。

「産屋敷、こいつら抜きでやろうぜ」

「そ、そう言わないでおくれ……私の大事な剣士(こども)達だからさ」

「と、とにかく迎撃するとして、この都(ヴェルリナ)が使い物になんないんなら、どこで決戦するのよ」

 何とも言えない空気を切り裂く、サン・ジェルミの言葉。

 ハッとなった一同は、テーブルに広げた地図を見る。

「んなモン決まってる。三つの条件が当てはまるトコだ」

 志々雄が言う三つの条件。

 まず一つ目、街道の結地である場所。

 次に二つ目、黒王の軍の布陣が制限される場所。

 そして三つ目、帝都侵攻の阻止点となる場所。

 この三つ全てが当てはまる地に、強固な陣あるいは砦を設けるという。

「……とすれば、ここはどうだ?」

 やぐらは決戦の地の候補に、オルテの西に存在する「マモン(かん)(げん) サルサデカダン」という山間の平原を指差した。

「昔ここには関所があったわ。オルテの建国で無くなったけど、守るにはいいかも……」

「地形を利用して、身を隠す堀や土塁を造るといいかもね」

「なら水関係は俺が()ろう。白兵を少しでも足止めしなきゃならないだろ」

「野営には……心得がある……私も加わろう……」

 サン・ジェルミや総大将(かがや)、やぐら、黒死牟からの賛同も上がり、布陣の話し合いにまで進む。

「そうとなりゃあ、少し戦力を分けるぞ」

「え?」

「ただ勝つだけじゃ意味がねェ。勝った上で敵の本拠地をガタガタにしねェといけねェってことだ」

 煙管を咥え、志々雄は獰猛に笑った。

 

 

           *

 

 

 同時刻。

 漂流者勢力の一大拠点である廃城で、ミルズはエルフ達と調査をしていた。

 きっかけは、手狭になってきた廃城の集積地拡大。今後を考え、調査の時間を多くとっている。

 そんな中で、事件は突然起きた。

「ミルズさん! 壁の下から、地下への入り口が!」

「何だって!?」

 どよめくエルフ達の前に出て、ミルズは確かめる。

 視線の先には、人が一人通れる程度の穴が。よく見ると階段が整備されており、明らかに地下室が存在している。

「……穴のつくりは思ったより頑丈そうだ。一回調査しよう、使い道はいくらでもある」

 

 

 準備を終え、ミルズはエルフ達と地下室へと入り込む。

 そこには、驚きの光景が。

「これは……!」

「スゴイ、こんなに武器が!」

 それは、武器庫だった。

 武器と言っても近代的な代物ではなく、大抵は刀剣と槍、飛び道具も弓矢と火縄銃ぐらい。だがその数は相当なモノで、戦国大名の本隊に匹敵する程の量だ。それも刀剣は日本刀だけでなく、サーベルやレイピア、野太刀など多種多様。

 まるで、この先に起こる巨大な戦いに備えているかのようであった。

「一体誰が……ん?」

 ふとミルズは、すぐ傍の戸棚に手を伸ばし、ある本を手に取りめくった。

「……これって、そんなまさか!!」

 ミルズは驚愕のあまり、体を震わせた。

 その本は、何と大昔に飛ばされてきた漂流者(ドリフ)達の記録が載っていたのだ!




大昔に飛ばされた漂流者達は、おでんと茂茂以外にも当然います。
誰がいたかは、次回以降紹介します。
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