JUMP DRIFTERS   作:悪魔さん

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お待たせしました、久しぶりの更新です!


第36幕:天下分け目のマモン間原・その2

 ついに開戦した、マモン間原の戦い。

 壕内の戦いでは自分達が有利と、Lは懐に入れて身動きを取れなくさせる作戦を実行。見事黒王軍の巨人兵を退けることに成功した。

「やった、やったよ!! 巨人共を倒したよ!!」

「まだです。尖兵を潰しただけです、ここから総攻撃が来ますよ」

 壕内の戦いでは巨人は不利と悟っていると判断し、総攻撃を仕掛けてくると予見するL。

 それは見事に的中し、ゴブリン・コボルト・オークに竜と、敵軍が出せる兵力が次々に投入されていく。数では漂流者達を圧倒している以上、脅威である。

 それだけじゃなく、廃棄物も多い。ロジャーが囮役となったとはいえ、相手がどう出るか……。

「オルミーヌさん、双眼鏡ありましたよね。貸してくれませんか?」

「え? は、はい……」

 双眼鏡を手に取ると、敵陣へ方向を定める。

 敵軍の参謀の姿も、立派な情報源だ。ふとした仕草もサインとなるため、確認することに越したことは無い。

 そしてピントを合わせ、敵陣地を覗くと、見慣れた姿がそこにあった。

 

 ――夜神月の姿が。

 

「……やはり来てましたか」

「知ってる顔だったかい?」

「私を殺した相手です」

「時を超え、世界を超えて再び始まる因縁の戦い……ってことかい」

 こんな鉄火場でも煙管を燻らせる鯉伴だが、その眼光は鋭い。

 その時だった。

「おい、何だありゃあ!?」

「化け物だ!!」

「!?」

 戦況の異変に気づいたLは、声がした方向へ顔を向ける。

 そこには、この世のものではない異形の軍勢が踊りかかっていた。

 未知の兵力に、さすがのLも冷や汗を掻いた。

「くっ……!」

 しまった、と内心悪態を吐いた直後だった。

 

「〝壱ノ型 不知火〟!」

「〝蝶ノ舞  戯れ〟」

 

 鬼狩り達が肉眼での視認が困難な速さで吶喊。

 次々に頸を斬られ、藤の毒を打ち込まれ、あっという間に倒れ伏した。

 そう、異形の正体は人喰い鬼だったのだ。

「鬼舞辻の差し金だな!」

「とはいえ、かなり弱いですね。竈門君達なら苦も無く倒せる程度の練度です」

「竈門少年か……彼らもこっちに来てくれればありがたいが」

 自分の最期を看取った若人に思いを馳せる杏寿郎。

 その直後、どこからか冷気が漂い始めた。

「……何だ? 妖力とは(ちげ)ぇな」

「これは……」

 異変を感じ取り、一同は警戒する。

 中でもしのぶは一際鋭い眼差しで、相手を射殺す程の圧を放っている。

「胡蝶……?」

「やあやあ、久しぶりだねぇ。あの時はビックリしたよ」

『!?』

 背後からの声に、杏寿郎達は距離を取る。

 いつの間にか潜り込んでいた敵に、Lも警戒した。

「……廃棄物(エンズ)ですね」

「そう呼ばれてるみたいだね。君がこの軍の参謀かな?」

「ええ。……あなたは?」

「俺は童磨だよ。しのぶちゃんとはそれはもう――」

 朗らかに自己紹介していると、童磨の頭をしのぶの日輪刀が貫いた。

「……ちょっとしのぶちゃん、まだお話の途中なんだけどー?」

「黙れ。くたばれ。これ以上喋るな糞野郎」

「うわマジか、こんなに口調悪くなんの?」

「相手が鬼だからな!!」

 しのぶが急に柄が悪くなったことにドン引きする鯉伴。

 対する杏寿郎は、相手が鬼だからであり普段はお淑やかだと擁護する。

 鬼狩りは鬼を前にすると柄が悪くなるのである。ただし元から柄が悪いのもいたが。

「……で、童磨とやら。お前さんちと油断しすぎやしないかい?」

「?」

「シャアァッ!」

 

 ドンッ!

 

 刹那、童磨の頸が斬れて燃え上がった。

 あっという間に炎に包まれる童磨だが、冷気がまるで意思を持ったかのように童磨の周りを渦巻き始め、炎をかき消した。

「……ちっ、浅かったか」

「あーもー、ビックリするじゃないか、木乃伊の君」

「久しぶりだな、虹色野郎」

 童磨を斬ったのは、志々雄だった。

 その目には殺意を孕んでおり、獰猛な笑みを浮かべている。

「あの時の続き、しよっか? 勝敗は目に見えてるけど」

「フッ……鬼の首魁の前哨戦には悪くねェ。どっからでもかかって来い」

 二対の扇を構える童磨と、愛刀の切っ先を虹色の瞳へ向ける志々雄。

 しかし二人の戦いは、勃発しなかった。

「志々雄さん。あの鬼は私が殺しますので」

「ああ?」

 しのぶが童磨の相手を申し出たことに、苛立つ志々雄。

 しかし、その瞳に宿る憎悪と怒りに心が動いたようで――

「ほう……見かけの割にいい目つきするじゃねェか。気に入ったぜ、譲ってやる。せいぜい喰われねェようにしな」

「……()()()()()()()()()()。ですので煉獄さん、場所を変えますよ」

「むっ! 待て胡蝶!」

「しのぶちゃーん! 置いてかないでよー!」

 刹那、二人の鬼狩りと人喰いの伝道師は姿を消した。

 まるで瞬間移動したかのような光景に、一同は魔法使いなのかとざわめいた。

「……純粋な身体能力で、人はあそこまでなれるのか……!?」

(宗次郎の縮地とは(ちげ)ェな……この大戦が終わったら喧嘩売ってみるか)

 勝利前提で志々雄が考える中、静かに瞑想していた剣士が動き出した。

 黒死牟だ。

「私は……ロジャーの元へ行く……。道中……敵軍殲滅には、善処する……」

「なるべく廃棄物を優先してください。彼ら彼女らの異能は未知です」

「愚問だ……」

 黒死牟は単身でロジャーの後を追い、自軍の陣地から離脱する。

 戦力が分散したと思えるが、それでも勝てるようにするのが参謀の務め。Lは陣地の地図を広げ、次の一手をどう打つか考え始めた。

「……まずあの飛竜が吐く炎を何とかしなければ。北壁と同じ運命を辿ってしまう」

 Lは参謀として、尖兵の中でも一際強力かつ厄介なドラゴンの対策を練る。

 空中の機動部隊として配備されているドラゴンが吐く炎は、大量の人間を一発で焼き殺す程の火力を有する。射程も長く、避けきるのは容易ではない。

 その反面、炎自体は直線状に放たれ、幅もさほど広くはない。壕堀に対して縦に吐かれても壕内に伏せて潜んでいればあまり被害はない。

 問題は壕に対して沿って横に吐かれた場合だ。カルネアデスが落ちた最大の理由は「直線の城壁しかなかった」という点であり、壁に沿って吐かれると皆殺しであり、壁上の兵は突き進んでくる炎地獄にきれいに列を作っているのと変わらない。

 壕もまた同じであり、炎は壕内をなめる様に突き進み一吐きで壕内は皆殺しになる。

「だが逆に考えれば、黒王軍は当然狙ってくる。必ず横一直線にやってくるため、どこから襲撃するかなど一目瞭然です」

「間合いに入ったら俺が全部ぶった斬るぜ。龍殺しも悪くねェ。まあ一番は廃棄物だけどな」

 幕末の動乱、それこそ戊辰戦争以上の大戦に血潮が騒いだか、志々雄が名乗り出た。

 人の下に付けるタイプの人間ではないが、利害の一致でも協力してくれるのはありがたい。

「なら私が空中戦を担おう。撃墜ならできる」

「じゃあ、俺達は騎乗者を狙います! 止まらなくとも動きを遅くはできるはず!」

「私も行こう。竜とて獣……法理道理は違えども、どうにか出来るやも知れない」

 菜奈やシャラ率いるエルフ衆だけでなく、十月機関の大師匠も推参を宣言する。

「……巨人に竜に鬼退治。今日一日で頼光と田村麻呂超えるってかい。親父にも見せたかったぜ。行くぞ!」

 長ドスを抜き、鯉伴は反撃の狼煙を上げた。

 

 

           *

 

 

 一方、海の王者(ロジャー)と対峙していた支配の悪魔(マキマ)は、苦戦を強いられていた。

「わっはっはっは! (つえ)ェな、お前」

「いや……君こそ、本当に人間なの?」

 不敵な笑みを浮かべるロジャーに、マキマは引き攣った笑みを浮かべる。

 マキマは悪魔としての強大な能力を行使するが、この異世界は彼女にとって〝前の世界〟よりも不利だった。 

 というのも、マキマ自身はずば抜けた戦闘力を持つ絶対的強者ではない。鳥やネズミを支配して聴覚を借りる能力も、負ったダメージを他人に全部押し付けて不死性を得る能力も、扱える超常的能力は入念な下準備と根回しありきで成り立つモノ。言い方を変えれば、純粋にスペックが高い相手には通じないケースも多い。

 もちろん、指先から衝撃波を放ったり剣術に優れてたりと、相応の戦闘手段はあるし、並の人間では決して歯が立たない。だがさすがの彼女も今回は相手が悪すぎた。

(それにしても、まさか私が「この男は()()()()()()()()()」と感じてしまうなんてね)

 何よりも致命的だったのは、一切の支配能力が通じない点だった。

 

 マキマは「自分より程度が低いと思う者」を洗脳する能力を有している。人間だろうが人外だろうが見下した相手を文字通り「支配」することができ、忠誠心を植え付けるのは朝飯前、記憶の改竄も容易に行える。ましてや廃棄物として送られた今、その支配力は生前以上に強化されている。彼女の支配下に置かれた廃棄物もおり、彼らでも抗い切れない程だ。

 だが、ロジャーは支配に抗うどころか、彼女の支配力を真っ向から打ち破ってみせた。そもそもロジャーは「自由」という信念を掲げる男であり、同時に「支配」を非常に嫌う男……信念のある人間は揺るがぬ覚悟と強大な意思を持ち、他の干渉に抗いきれるのだ。

 

(このまま長期戦に持ち込んでも、スタミナ切れは期待できそうじゃないな)

 マキマは、ロジャーとの戦闘を避けて他の漂流者を狙おうかと考えた。

 だが、直感が「それだけはしてはいけない」と警鐘を鳴らしている。

 はてさて、どう切り抜けようか……そう考えた時だった。

「――ん?」

「〝風遁・圧害〟!」

「!」

 

 ボゥ!

 

 突如、ロジャーの真横から竜巻の塊が襲い掛かった。

 地面を抉りながら風圧が迫るが、見聞色で未来予知していたロジャーは、愛刀に覇王色の覇気を纏わせて一薙ぎ。真っ向から受け止め、強引に()()()()()

「……ウソでしょ」

「何だ、新手か?」

 竜巻を剣で弾き返すという、マンガみたいな展開についていけないマキマ。

 一方のロジャーは、極悪人のような笑みを浮かべて新手の乱入に胸を躍らせている。

「マキマ、何を手古摺っている」

「……角都」

 現れたのは、黒地に赤い雲が描かれた外套を纏った角都という男と、彼に服従する黒い繊維状のナニか。

 今まで見たことない相手が現れ、ロジャーは笑みを深めた。

「スゲェのが来たな。ひじきが生きてやがる!」

「死にたいようだな、貴様」

 いきなりの爆弾発言に、角都は額に青筋を浮かべた。

 彼は基本的に冷静沈着な性格だが、トラブルが起こるとすぐに殺意が湧き、仲間であろうと容赦なく殺害するという悪癖がある。今回は敵のありのままの感想だが、まあ確かにカチンと来ると言えばカチンと来る。

「……それにしてもお前、(おも)(しれ)ェ気配だな。五人はいるな」

「……!! 貴様、一体」

「上等上等、生きててこその殺し合いだ! このバカ騒ぎを楽しもうぜ!」

 

 戦況は、絶えず混沌と化していく。




今ちょっと呪術廻戦のネタとか考えてまして。
煮詰まったら一人か二人出そうと思います。
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