JUMP DRIFTERS   作:悪魔さん

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伏黒パパ、子安さんでしたね。
中の人ネタで少し盛り上がるかな?


第40幕:天下分け目のマモン間原・終結

 その頃、しのぶ達は本気を出した童磨に苦戦を強いられていた。

「しのぶちゃん、もう()()()のような特攻はできないね。でも今回は仲間に恵まれた。俺は君に惚れてるというのに、中々思うようにはいかないねぇ」

「っ……」

 童磨は扇で口元を隠しながら言葉を投げかける。

 疲弊しきったしのぶと杏寿郎、息が上がった鯉伴に対し、先頭に立つ志々雄は仁王立ちしながら笑っている。

「ったく、鬼狩りとやらも半分妖怪の猛者も大したことねェな」

「志々雄殿、あなたは大丈夫か!?」

「ハッ! あいつが冷気を飛ばすおかげで絶好調だ」

 志々雄は獰猛に笑う。

 というのも、志々雄はかつての裏切りで身体に油を撒かれ火を点けられたために、全身の発汗組織がほぼ全滅している。そのせいで体温が常人を超える熱さなだけでなく異常な速さで上昇しやすい。当時の医者の見立てでは志々雄が全力で動ける時間は15分も短く、前の世界では何気に15分以上戦えたが最終的に人体発火を引き起こして最期を遂げた。

 その体質ゆえか、童磨の冷気を操る血鬼術は志々雄にとっては天の恵みに等しかった。肺が凍りついて壊死する程の冷気を、志々雄は逆に常時吸い込んで発汗組織の代用としたのだ。掠っただけでも凍結できる技を童磨は駆使するが、志々雄はそれを食らっても体質ゆえに融けるのが早く、そもそも鬼殺隊の柱以上の剣の技量を持ってるため、上弦の鬼とも互角以上に渡り合えている。

 体力という点では不利なのは変わらないが、志々雄にとってはどうでもいいことだ。

「それにしても、君は刃衛殿と斬り合ってたんじゃないのかい?」

「あいつ、途中で勝負投げ出しやがった。大よその見当はつくがな」

 志々雄は笑う。

 彼は先程まで刃衛と戦っていたが、甚爾が現れたことで彼の気配に反応し、勝負はお預けだと一方的に言い放って撤退したのだ。志々雄としては不完全燃焼だったが、彼も甚爾の気配に興味があったので、追撃せず戻ってきたのだ。

「さてと、そろそろ大勝負と行くぜ」

 志々雄は笑いながら、鍔元から切先に至る無限刃の刀身全体を鞘の鯉口にこすり付け、巨大な竜巻状の炎を纏わせた。

 炎を統べる悪鬼の、究極の奥の手――〝(つい)()(けん)火産霊神(カグヅチ)〟だ。

「シャアアアァァァ!!!」

 志々雄は全力で跳びかかり、刀身全体を発火させた無限刃を振り上げた。

 童磨は本能的にヤバいと察し、最後の大技である〝霧氷(むひょう)(すい)(れん)()(さつ)〟を繰り出し、巨大な氷の仏像で叩き潰さんとした。

 力任せに斬りつける志々雄は、そのまま刀身の炎で焼き切っていく。万全の状態ながら段々と押されていき、童磨は嫌な汗が止まらない。

 そして……!

「うらあァァァァ!!!」

 

 ドパァン!

 

 氷の仏像は、真っ二つに割れた。

 まさか人間に破られるとは思わなかったのか、童磨は心底驚いた。

 それが一瞬の隙だった。

「〝玖ノ型 煉獄〟!!」

「!?」

 童磨の眼前に、灼熱の業火の如き威力で猛進してくる杏寿郎の姿が。

 志々雄の大技は童磨の術を突破するためで、本命は日輪刀を持っている炎柱だったのだ。

 隙は文字通り刹那の瞬間。しかしその刹那の瞬間こそ、懐に潜り込めた鬼殺の剣士にとっては十分すぎた。

(心を燃やせ!! 煉獄杏寿郎!!)

 己を鼓舞し、闘気をさらに解放し、臨界点に達する。

(あ、マズい)

 童磨は、避けられないことを悟った。

 懐に潜り込まれた以上、自分が扇を振るって鬼狩りの頸を刎ねるよりも早く刎ねられる。

 ――まあ、しのぶちゃんに会えたからいっか。

 童磨は敗北を受け入れ、手にしていた扇を落とした。

 

 ザンッ! ゴトッ……

 

 ついに上弦の弐の頸が落ちた。

 杏寿郎は体力が切れたのか、勢い余って豪快に倒れた。

「ハァ、ハァ……」

「いやー、見事としか言えないねぇ」

 ボロボロと崩れていく、童磨の肉体。

 それでも彼は――笑っていた。

「あの時みたいにしのぶちゃんを美味しくいただいてから死にたかったなー」

「とっととくたばれ糞野郎!」

「アハハハ、また聞けた! それじゃあ、また地獄であ――」

 会おう、と言い切る手前で童磨は消滅した。

 廃棄物の討伐が、成功したのだ。

「手強い鬼だったなァ……」

「志々雄殿がいなければ、倒せなかったかもしれない……! 柱として不甲斐ない……!」

 黒王軍の幹部を討ち取ったが、まだまだ本隊は健在。

 これ以上の長期戦で不利になるのは、自分達だ。幸いロジャー達の無双ぶりのおかげで寝返った軍勢は静観を決めているが、不利なものは不利だ。

「皆さん、よく倒してくれました」

 塹壕の中で、Lは健闘を称えた。

 童磨は極めて厄介な存在だ、彼を討ち取れたのはかなり大きい成果である。

「ですが、早めに退かねばこちらも危ない。後退の合図を。()()()()()()()()()()()

「え? 時間を稼いだ?」

「志々雄さんの目論見通りということです」

 Lはニコリと笑い、水晶球で撤退を指示した。

 それを遠くから双眼鏡で眺めていたライトは、怪訝に思った。

(あの余裕は何だ……? 僕の方が優勢だというのに……ここで退くのか? そういえば、北壁からの連絡が一切来ていないが……ま、まさかこの()()()()()()()()で、狙いは別にあるのか!?)

 ライトは血の気が引いた。

 この巨大な戦いは、本隊を誘き出すためのもので、真の目的は本拠地とする北壁にあったのだ。

「黒王!! 後退する敵を追撃するな!! 即時撤退だ!!」

「何?」

 追撃をするなというライトの言葉に、廃棄物は耳を疑う。

 しかし、そのあとに続く言葉によって全てを悟ることになる。

「罠だ!! 敵の真の目標は、北壁だ!!」

「何だと!?」

「どういうことだ!?」

「あー、そういうことかぁ……参ったね」

 甚爾と戦っていた義経は何かを悟り、くるりと踵を返した。

「おいおい、ここまでやっといてトンズラか?」

 問答無用で斬りかかる甚爾だが、義経はひょいっと跳躍して躱す。

「おっとっと……! そういうことだから、今回は君達の勝ちでいいよ。じゃあね、また遊ぼうや」

(あれが有名な「(はっ)(そう)(とび)」か……大した跳躍力だ)

 フィジカルギフテッドの甚爾も、義経の度を越えた跳躍力に舌を巻いた。

 その時、とてつもないプレッシャーが襲い掛かった。

(何だ、このヤベェ圧迫感!?)

 バッと振り返ると、視線の先にはロジャーと黒死牟が構えていたのだ。

 本能的に危機感を覚えた甚爾は、その場からすぐ離れた。

「逃がさぬ……!!」

「もう一発かますぞ、巌勝!!」

 ロジャーと黒死牟は渾身の一振りを繰り出し、全てを破壊する一撃を再び放った。

「「〝覇極〟!!!」」

 

 ズンッ!!

 

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』

 二発目の災厄に、廃棄物の軍勢が大勢巻き込まれた。

 その凄まじい破壊力に、ヴァニラ・アイスやザボエラがのみ込まれ、人外の軍勢と共に斬滅していった。

「……ちっ、取り逃したか」

「だが、黒王はこれで……大きく失った……しばらくは……攻められまい」

「そっか! ありがとよ巌勝、助かったぜ!」

「……ああ」

 満面の笑みで肩を組むロジャーに、ほわほわとした表情で微笑む黒死牟。

 その時、甚爾が呆れた様子で二人に声をかけた。

「しっかし、本当にひでェな。呪術師でもここまで暴れねェぞ」

「わっはっはっは! 生きててこその殺し合いだ、手加減なんざ無粋ってもんだ!」

「左様……敵が抜くのならば……此方も抜かねば……無作法というもの…」…

「スゲェ戦闘狂だな、おっさん二人」

 甚爾は「そこらの特級呪霊や呪詛師より質が(わり)ィな」とボヤいた。

 自身もおっさんであることは棚に上げて。

「甚爾っつったか? おめェもこっち来い! いい仲間になれそうだ」

「……おい、いいのかよ。氏素性もロクに知らねェ〝猿〟をよ」

 眉間にしわを寄せる甚爾だが、ロジャーは「海賊には関係ねェよ!」と一蹴した。

 その上で、いつものように笑いながら言い放った。

「おれを助けて戦った以上は、おめェはおれの仲間だぜ」

「……!!」

 自分の意思が通ると信じて疑わない声色と、真っ直ぐな眼。

 落ちこぼれだの猿だのと吐き捨てられてきた甚爾にとって、ロジャーの言葉には度肝を抜かれた。

 ロジャーはさらに続けて言う。

「おめェ程の男が、何で自分(てめェ)のことを猿呼ばわりするぐらい卑下するかは聞かねェ。だがな、おめェは間違いなく〝(つえ)()()〟だ。おれが断言してやる。おめェを猿呼ばわりするバカはおれがぶっ飛ばしてやる!!」

「……」

 誰よりも仲間想いの最強の男の言葉に、甚爾は思わず口角を上げたのだった。

 

 

           *

 

 

 一方の黒王軍は、マモン間原から撤退していた。

「撤退とは、一体どういうことだ! 夜神!」

 詰め寄る土方に、ライトは冷静に言葉を返した。

「彼らは囮だ……まんまとかかってしまったんだ。本命は僕達じゃない」

「本命、だと?」

「それは……」

 その時、伝令兵の一人が声を上げた。

〈大変です、キラ様!! 北壁が漂流者(ドリフ)の奇襲に遭い、壊滅的な損害を……〉

「やはりそうだったか……!!」

「何……だと……!?」

 土方だけでなく、その場にいた全ての者が理由を悟った。

「もう手遅れね……やられたわ……」

 アナスタシアは気絶したジャンヌを介抱しつつ、悔しさを滲ませた。

 戦好きの義経も、険しい表情を浮かべている。

「いやはや、一ノ谷の奇襲を見事にやられたねぇ……どの世界も敗軍は惨めだよ」

 重い空気を纏う廃棄物の軍勢。

 それに対し、漂流者達はというと……。

《産屋敷殿、竜崎殿。拙者らの奇襲は成功した》

《クク……! 北壁は半年は使い物になんねェだろうよ》

「北壁が壊滅……!? いつの間に?」

「はっ、やっぱ戦はこうじゃねェとな」

 水晶玉からの報告に目を見開くオルミーヌ。

 志々雄は煙管を吹かしながら極悪人のような笑みを浮かべた。

 志々雄達は、天下分け目の決戦勃発の前に鉄床戦術(スレッジハンマー)――一方が敵をひきつけているうちに、もう一方が背後や側面に回りこみ本隊を叩く戦術を仕掛けたのだ。

 敵の本隊が来るということは、本陣たるカルネアデスが手薄になるということ。鬼の始祖・鬼舞辻無惨が控えていたが、無惨のトラウマである継国縁壱を鬼兵隊と共に送りこみ、鬼の相手を縁壱が、それ以外は騎兵隊が司令を務めて殲滅に動いたのだ。

「まあ、これで向こうは軍の立て直しに躍起だろうよ。その間に俺達も立て直して、今度こそ滅ぼそうじゃねェか」

 志々雄はニヤリと笑った。

 その直後――

《おい、ところで無惨のワカメ頭捕えたんだが、そっち連れてくぞ》

『……えェーーーーーーッ!?』

 

 こうして、天下分け目のマモン間原の戦いは、漂流者軍の辛勝でひとまずの決着を見た。




ロジャーはやっぱりおっさんホイホイだと思うんだ。しかもコンプレックスがある程に効果が強くなる特典付きで。(笑)


本作はあと二・三話で区切ろうと思います。
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