JUMP DRIFTERS   作:悪魔さん

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お久しぶりです、ようやく更新です!

ドリフターズ七巻出ましたね。
やっぱり兵糧攻めが効果的なんですね。


第41幕:終戦、そして真実へ

 黒王との全面戦争は、どうにか勝利を掴めた漂流者達。

 しかし負った傷は深く、失った兵も少なくない。

 その上、戦後処理を進めている最中に新たな廃棄物が攻撃してきてもおかしくないため、緊張の糸は緩められない。

 だが、それでも得られるものは得られた。

「また会ったね、鬼舞辻無惨」

「っ……()よりも元気そうだな、産屋敷」

 穏やかに微笑む耀哉に、無惨は不愉快そうに睨んだ。

 戦時中、別動隊として縁壱と鬼兵隊はカルネアデスに侵攻し、黒王軍に無視できない損害を与えた。その際に大物廃棄物の鬼舞辻無惨と遭遇し、縁壱の鬼のような猛攻に屈して捕らえられたのだ。

 鬼狩りの首領と人食い鬼の首領は二度目の邂逅なのだが、前回は病床の耀哉とドヤ顔――すぐに屋敷ごと爆破される運命――の無惨だった。今回は呪いを抑えられて独歩も可能な程に快調な耀哉と、崖っぷちの無惨……前回と正反対の状態である。

「こうして立場が逆転すると、色々思うことがあるのだけれど、まず聞きたいことが一つ」

「何だ……」

「なぜそんなに痛めつけられてるのかな?」

 その言葉に、全員が「そこ言っちゃうかー」と思った。

 というのも、無惨は耀哉の前に連れて来られる前、ロジャーに覇王色を纏った拳でぶん殴られたのだ。

 なお、ロジャー曰く「黒死牟を侮辱したケジメ」とのことだが、この一撃で民家が二・三軒吹き飛んだのは秘密だ。

「フフ……やはりこの世界でも、君は虎の尾を踏んで龍の逆鱗に触れているのだね」

「地雷原の上でタップダンス踊れるその度胸は大したものだと思うでござるよ」

「万斉君、彼は平安出身やから「祟り場で蹴鞠してる」っちゅーのが正しいと思うで」

 思いっきり茶化す万斉と秀元に、無惨は「黙れ貴様ら!!!」と叫んで怒りを露わにするが、すぐさま縁壱に日輪刀を突きつけられたので押し黙った。

 やはり自分の命は惜しいようだ。

「何と言うべきか……複雑ですね」

「うむ、あの鬼の始祖が囚われの身だとは……」

 しのぶだけでなく、杏寿郎もジト目で無惨を見据えた。

 鬼殺隊で鬼狩りとして、柱として命を捧げた者として、あまりにも強大なはずの無惨があっけなく捕まったのは嬉しいが、少しばかり呆れてもいた。

「さてと……気を取り直して。無惨、黒王軍の情報を吐いてもらえないかな?」

「黒王軍には前代未聞なことが起きているぞ、産屋敷」

「ウソだろ、あっさり自白しやがった!」

 手の平を返した無惨に、一同は唖然とした。

 ただその中でも、ロジャーや志々雄は「まあ、その程度の男だろうな」とでも言わんばかりの眼差しだったが。

「フン!! あの男は信用できなかった、機を伺って縁を切る腹積もりだったわ!! 私とて奴を庇い立てる義理もない」

「そもそも前の部下もロクに信用してねェ感じだろ、アンタ」

 煙管を咥えながら冷たいツッコミを浴びせる高杉。

 思わず肩をビクッと動かす無惨に、喉を鳴らして笑った。

「クククク……そんなんだから鬼殺隊(ガキども)に負けたんじゃねーか?」

「だろーな」

「やかましい!!」

「……で、この俺と似たような声のおっさんは?」

 高杉はふと、新手の男に目を向けた。

 するとロジャーが現れ、肩を組んで挨拶した。

「今日から仲間になるトウジだ!! かなり(つえ)ェぞ!!」

「伏黒甚爾だ、ヨロシク」

 口元の傷が目立つ男――甚爾は不敵に笑う。

 ロジャー程の強者が認めるのだから、相当な手練れなのだろう。一同は歓迎した。

「……で、話を戻すけど、前代未聞なこととは?」

「決まっているだろう。軍は食糧が大量にあるが、農業を始めたばかりの後背地にはないのだ」

 無惨の言葉に、首をかしげる一同。

 しかし、屈強な忍者達を統率していた元水影(やぐら)は「本当なのか!?」と驚き、高杉と万斉は面食らった表情を浮かべ、戦国の武家出身である継国兄弟も目を見開いた。

 どうやら戦争を経験した者ならわかるようだ。

「おい、どういうこった?」

「……志々雄さんも勘づいているようですが、わかるんですか?」

「幕末の動乱もそうだったからな。()()()()()()()()()()()

 志々雄の呟きに、一同はハッとなる。

 いくらでも食い物が湧き出て食いに飽きる最前線と、にわか農業の文明ごっこを始めた食うにも餓える後方地。

 千年に及び常夜に君臨したとはいえ、人間の世の移り変わりは目にしてきた無惨にとって、あまりにもおかしい事態なのだという。

「突然始めた農業で食っていけるわけないだろう。そう簡単に使い物になるものか。それに黒王軍には陶器を作る技術がないから食料を保存する技術がない。全く、玉壺の壺の方がまだ立派だ」

 愚痴でも溢すように無惨が吐き捨てる。

 しかし、一言一句聞き逃さず思考に浸っていたLは、大きく目を見開いた。

(……!! そうか、そういうことか!!)

 Lは思わず笑みを溢した。

 これなら、奴らに追い打ちをかけられるかもしれない。

「黒王軍は食糧が湧き出る最前線から、後方に食糧が送られるという逆転構造……普通に考えればあまりにも重い負担となる。だが「人外が国を作り人類に取って代わる」というお題目がある以上、辞める訳にいかない。それが黒王軍の隙となる……!!」

『!!!』

「そこの小僧は、私には及ばないが鬼狩りや産屋敷よりは賢いようだな。お前のような男が側近であれば、産屋敷も鬼狩りもそこの化け物もすぐ滅ぼせた」

 Lの推理力を、無惨は彼なりの最大の賛辞を贈った。

 しかし内心では、「こいつも化け物じゃないか!!」と冷や汗を流している。

「そうとなれば、兵糧攻めだな」

 甚爾は簡潔に結論を言った。

 黒王軍の圧倒的優位性と思われた兵站不要の無限兵糧と、彼らの「文明ごっこ」。無敵だと思っていた黒王軍のそれが、大きな足かせであり隙となる唯一の部分だったのだ。

 黒王軍が終始余裕なのは、食糧に困らないから。だが兵糧攻めを仕掛ければ、黒王だ救世主だなどと言ってられない状況となるのは明白だ。

「北壁は攻めたが、あくまでも厄介な幹部格を仕留めた。足軽共はやっちゃいねェ」

「兵糧攻めはその人外達を追い込むに持ってこいということでござるな」

「そうとなれば、早めに移す必要がありますよ。敵も相当厄介な参謀がいますし」

 がやがやと慌ただしくなる漂流者達。

 そこへ甚爾が待ったをかけた。

「なあ、おたくら」

「あ?」

「多分、兵糧攻めは黒王自身へのダメージにはならねェぞ」

 その言葉に、誰もが目を見開いた。

 今までの話を聞いていない訳ではない。甚爾には心当たりがあるからだ。

「その黒王の正体、少し心当たりがある。もし俺の予想通りならな……」

「一体誰なんだい?」

 甚爾は目を細め、かつて敵対した人物のことを口にした。

「名前は……何つったっけな……五条悟の方は知ってんだけど……誰だっけあいつ」

『ハァ!?』

「わっはっはっはっ!!」

 まさかの聞き忘れに、一同は憤慨。

 ロジャーだけは豪快にサムズアップしている。

「仕方ねェだろ、秒で倒してそれっきりだぞ? だが顔は知ってるのは事実だ、それはマジで信じろ」

「まあ、その内思い出すだろ!! 知らねェけどな!! わっはっはっはっ!!」

「面白いおっさんだな、ホント」

 涙が出るくらい爆笑するロジャーに、甚爾も釣られて笑った。

 あまりのカオスさに、無惨も言葉を失ったが、事態打開の為に黒王の情報を提供した。

「おい、男。私は一度だけ顔を見たことがある。照らし合わせてみろ」

「ん?」

「髪の毛を結った、両耳に黒い碁石のような耳飾りを付けている男だ。私も何者かは知らんが、どうなんだ?」

「あ、そいつで合ってるわ」

 あまりにも軽いノリで、黒王が甚爾の顔見知りだと発覚し、ついに全員がポカーンと口を開けた。

 ロジャーは相変わらず爆笑しているが。

「……じゃあ、これで連中の親玉は確定だな!! お前の顔見知りなら、大体の能力は知ってるだろ?」

「まあ、目に視えればの話だが。あいつ呪術師だし」

「呪術師? 何だそりゃ」

「それについては私達から説明しましょう」

 そこへ、漂流者を支える十月機関を率いる晴明が現れた。

「晴明!」

「晴明? あの安倍晴明か!」

「此度の戦、よくぞ生きて戻ってきてくれました。そして伏黒甚爾殿、貴重な情報を感謝する」

「お、おう……」

 頭を下げる晴明に、甚爾は動揺を隠せない。

 同じ情報提供者の無惨には言わないあたり、線引きはしているようだ。

「で、お前らは何か知ってるのか?」

「実はその呪術師に関する記録が十月機関で保管されているのです。当初は私のような陰陽道の使い手かと思いましたが……異なる部分も多く、ある意味では怪文書とも言えました。あなたがここへ飛ばされたのも、運命やもしれません」

「……俺みたいな猿がねェ」

 晴明は簡潔に呪術師の説明をした。

 

 呪術師は呪術を用いて呪いを祓う人間だが、陰陽師と違って一般人には知られずに暗躍する。

 彼ら彼女らが退治するのは、妖怪ではなく〝呪霊〟という人間の身体から流れた負の感情が具現し意思をもった異形であり、一般人には見ること・触れることも不可能。

 呪霊を視認し呪術を使う才能を持つ呪術師でないと呪霊を祓えないため、並の人間では太刀打ちできない化け物なので、極めて危険な存在である。

 

 一通り話した晴明は、その上で呪術師という者がこの世界に来ていたことを改めて語った。

「その者はいつかの未来で呪霊達が跋扈しても太刀打ちできるよう、()()()()を倒せる武器を遺しています。製造方法も残しているようですが……」

「武器自体は作れても、倒せるかは別問題だな……」

 ジョットの言葉に、晴明は無言で頷いた。

 視認できなくても、第六感や霊感で大よその位置を把握すれば、あとは自力でどうにかなる。だが武器自体に呪力が宿ってなければ無意味なのも事実だ。

 どうしたものかと考えあぐねるが、ロジャーは心配することはねェと笑った。

「相手は人類を滅ぼすんだろ? そのジュレイってのが人間から生まれるなら好都合だ。あとは武器が壊れないようにすりゃあいいだけだろ?」

 ロジャーが言ったのは、単純な一言。

 しかし黒王の目的が人類廃滅である以上、それは一理あり、彼の言う通りでもあった。

 この世界でも人間の割合は多いが、〝前の世界〟には及ばない。コボルトやオークと言った人外が存在しなかったからだ。人外から呪霊が生まれるという記録はないようだが、少なくとも視えない敵が想像を超える規模の数になることはないだろう。

「まだ勝機はあります。が、今は身体を休め、敵を知ることに集中しましょう」

「そうだね。体のいい人質もいるし」

「産屋敷め……」

 笑顔で毒を吐く耀哉に、無惨はとても苦い顔で忌々しそうに呟くのだった。




次回で最終回というか、一回区切ります。

あと、大事な情報を公開するのでそこもお楽しみに。
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