JUMP DRIFTERS   作:悪魔さん

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オリジナル展開です。
一度は見てみたいドリームマッチを実現できました。(笑)

ちなみに本作では、オルテ語はアニメのドリフターズの設定である「ラテン語ベースの架空言語」です。


第8幕:時空を越えて

 エルフの村では、村人達が話し合っていた。

 漂流者(ドリフターズ)達が巡察隊を壊滅状態にした後、唯一生き残ったアラムに彼らは止めを刺した。領主の兵を殺してしまった以上、もはや後戻りはできない。

 状況としては最悪だ。

 麦畑は半分焼けてしまい、税を収めることができなくなった。もし許されても収穫は全て持っていかれてしまい、食べるものがなくなるだろう。選択肢は、領主に反旗を翻して倒すか殺されるかのどちらかしかない。だが戦う術を奪われた以上、勝ち目は無い。

 答えが出ず、議論が平行線を辿ると思われたその時――

〈ありますよ〉

 突然木のドアが開いたと思いきや、殺せんせーが話しかけてきた。

 色んな言語を用いた中で、一番手応えがあったラテン語でコミュニケーションを図った。

〈私達が手を貸せば、間違いなく勝てます。ロジャーさんとしのぶさんという頼もしい味方もいますから、あの程度の練度の軍隊なら一捻りですよ?〉

「スゴイですね……異国の言葉を使ってます……」

「何でもラテン語っつー言語に(ちけ)ェらしいぜ。ラテン語が何なのか知らねェけどな」

「そう言えば、オルミーヌさんはなぜ私達と同じ言葉使えるんでしょうね。彼女もこの世界の方(・・・・・・)でしょうに」

 しのぶの呟きに、ロジャーはハッとオルミーヌに顔を向けた。

 そして二ィッと笑った。オルミーヌは嫌な予感がしたのか、ヒッと声を上げた。

「おめェはおれ達と同じ言葉使えるよな。何かタネあんだろ? 教えてくれよ」

 見るからに極悪人のような笑顔のロジャーに、オルミーヌは口早に説明した。

「あ、あのですね! 私達は魔導師結社でして、ずーっとあなた方のことを研究をやってるんでして」

 するとオルミーヌは大師匠なる人物が作った札を掲げた。

「これを貼れば、たちどころに言葉が喋れます。すごいでしょ、うちの大師匠」

「成程……自動翻訳機ですか」

「スゲェな! (おも)(しれ)ェ紙っぺらだな、おい!」

 豪快に笑うロジャーは、オルミーヌに「もっと見せろ」と迫る。

 一方の殺せんせーとしのぶは、彼女が取り出した札に注目していた。

「しかしこの札……まるで陰陽師が使う護符みたいですねェ」

「何者でしょうか?」

安倍(あべの)(せい)(めい)(あし)()(どう)(まん)、それに匹敵する陰陽師……それが大師匠の正体と考えるのが妥当ですねェ」

 日本史上最も有名な、様々な創作物にも登場する陰陽師の代名詞・安倍晴明と蘆屋道満。マンガ・アニメ・ゲームといった後世の大衆文化(ポップカルチャー)に多大な影響をもたらした、数々の伝説を持つ陰陽道を極めし者がこの世界に飛ばされているのなら、可能性は十分にある。もし味方につけば、非常に心強い存在だ。

「まあ、今はまず目の前の問題を片づけましょう」

「そうですね」

 殺せんせーはエルフ達の前に立ち、微笑む。

「さて、皆さん。状況を整理しますよ」

 パンパンと手を叩き、授業でも始めるかのように語り始める。

「ここを支配する領主の討伐隊は迫って来てます。まず間違いなく。アレが巡察隊とすれば、帰ってこないことで反乱が起こってると判断し、領主は討伐隊の編成をします。私の見立てでは、この村に討伐隊がやって来るのは……そうですね、装備がよかったので三日といったところです」

 殺せんせーの言葉に、エルフ達は息を呑む。

 明後日にはエルフの村に討伐隊が押し寄せ、焼き滅ぼす。要はそう言っているのだ。

 そして遠回しに、自分達に助けを求めるのか否かも訊いているのだ。

「村が無くなるまで時間は僅か……あなた達はどうするつもりですか?」

「……お願いだ!! 助けてくれ!! 力を貸して……ください!!」

 シャラはエルフ達を代表して、殺せんせー達に助けを求めた。

「おめェは?」

「奴らに殺された村長の子で、シャラという。弟達が世話になった」

「弟達? ああ、おめェらの兄貴か」

「「うん!」」

 ロジャーは「兄貴が無事でよかったじゃねェか」とマーシャとマルクの頭を撫でた。

「俺達は武器を取って戦ったことがない。40年前に俺達の国が滅ぼされた時はまだ子供だった。あの時戦った俺達の父兄らは殺されてしまった。俺達はろくに戦い方も知らない。お願いだ……お願いします!!」

「え?」

「は?」

「ヌルフフ…………」

 ぽかんと呆然とするロジャーとしのぶ。それに対し殺せんせーはニヤニヤと笑みを浮かべている。

「シャラっつったな……おめェ何歳だ?」

「え? 106歳だけど」

「……おめェらは?」

「39だよ」

「僕は36」

「と、年上……」

 18歳のしのぶは衝撃の事実にしょんぼりと落ち込み始めた。

 それを見たロジャーは、ジト目でオルミーヌを見据えた。

「……」

「何で私が彼女を泣かせたような空気になってるんですか!? 耳長族(エルフ)は長命なんですよ。大体人間の5~6倍長生きです。成長も遅いんですけど……」

「……殺せんせーは知ってたのか」

「私がいた世界じゃ、エルフは色んな物語で活用されてますから。――さてオルミーヌさん、彼らの現状を教えてくれませんか?」

「ハァ……現状ですか」

 オルミーヌは彼ら――エルフ族の今の状況を喋り始めた。

 元はというと、この山林地帯はエルフ族の国だったという。だがエルフ族は40年前に東方の人間の王国「オルテ」との戦争に敗れて以来、農奴として不遇の扱いを受け続けているという。そして戦争で長老衆を失ったため、文化や伝承も廃れてしまっている状況とのことだ。

「今ではここいらは全部オルテの領土になってますよ」

「そうか……女がいねェのも、そのオルテって国の仕業だな?」

「ああ……俺達エルフは年に一度しか子を作れない。その期間になると若い女は代官達に連れて行かれるんだ」

「! ――成程、そういうことか」

 ロジャーは察した。

 オルテの連中は、本気でエルフ族を根絶やしにする気だと。そして連れて行かれたエルフの女子供達は嬲り犯されているのだと。どうやら自分達の想像以上に腐った連中であると。

「他にもこの辺りにあったドワーフやホヴィットと呼ばれる諸族の国々が尽く滅ぼされ、農奴や(こう)()に落とされました。オルテ王国はいまや帝国を名乗り、人間至上を(むね)とした占領制度を()いています」

「そのオルテ、今も拡大中ですか?」

「四方で戦ってますよ。戦線は膠着して一進一退ですけど」

 オルミーヌの発言に、殺せんせーは「あちこちに戦争吹っ掛ければそうなりますよ」と呆れた笑みを浮かべた。

(40年前のオルテだったら黒王に対抗する大きな力になったかも知れないけど、今のオルテじゃ……)

「だが今こそチャンスっちゃあチャンスだぜ」

 ロジャーは自信満々に告げた。

「周辺を次々に侵略しているっつーこたァ、言い方変えりゃあ戦力を分散してるってこった。討伐隊の頭数は少ねェ方だろうよ。そういう意味じゃあ最初で最後の反撃の機会が訪れてるってわけだ」

 この機を逃せば、エルフ族滅亡への一方通行となるだろう。だがここで一斉蜂起し、一気に領主の本丸まで攻め落とせば解放される。立ち上がるのは今しかない。

 ロジャーの言葉に、シャラ達は一筋の希望の光を見出し、覚悟を決めた。

「いい目つきできるじゃねェか。全員フンドシ締めたな? さァ、後は殺せんせーに任せるぞ!」

「ファッ!?」

 ビシッと締めるかと思われた矢先の丸投げに、殺せんせーは絶句。

「こん中で一番頭いいのおめェじゃねェか。頭いい奴が作戦練るのが定石ってモンだろう?」

「あ、それ賛成です」

「私も」

「……」

 ロジャーだけでなくしのぶやオルミーヌまで賛同。三対一の多数決とエルフ達の無言の圧力で、殺せんせーが作戦を練ることとなった。

 何はともあれ、漂流者(ドリフターズ)はエルフ族とオルミーヌで討伐隊を迎え撃つこととなった。

 

 

           *

 

 

 一方。

 カルネアデスから脱出した十月機関は、追手を全て返り討ちにして一息ついていた。

「皆さん、五体満足のようで何よりです。これから我々は、先程言っていたように南下してセムと三人の漂流者(ドリフ)と合流します……って、聞いてるのかあなた達は!!」

 大師匠は怒る。

 彼の眼前では、晋助が煙管を吹かして夜空を仰ぎ、万斉は三味線をかき鳴らし、ジョットは氷の彫刻を作るという珍妙な光景が広がっていた。

「こうしている間にも黒王は迫ってるのです! 早く移動しなければ!」

「何事も重要なのはノリとリズムでござる。これを欠けば何事もうまくいかぬ。ノレぬとあらば、即座に引くのが拙者の流儀でござる」

「しかし……」

 食い下がる大師匠に、やぐらが口を出した。

()()、黒王も軍勢を率いている。むやみやたらに戦力を投入して兵を失うのは避けたがるはずだ」

「っ!」

「勝ち戦であれ負け戦であれ、戦争は得るモノより失うモノの方が多い。いかに優れた指導者だろうと、損害を最小限に抑えることができなければ軍の立て直しができなくなるからな」

 大師匠――平安の世を生きた大陰陽師・安倍晴明は何とも言えない表情を浮かべる。

 晴明が生きた世は、平安といえど源平合戦があった末期ではなく、武士という勢力が台頭する以前の貴族が栄華を極めた時代。軍事についての知識はほとんどない。戦いがあるとすれば、それは当時の都を荒らし回った酒呑童子や玉藻前といった闇の化生との戦いだ。

 反面、やぐらが生きた世界は幾度となく国家間の紛争があり大戦もあった。戦争に関係する知識や技術の理解は、やぐらの方が遥かに深いのだ。

「黒王は軍を立て直しているため、兵を動かすことはしないと?」

「そういうことだ。戦後処理は勝っても負けてもある。軍の再編成や兵糧の確保、作戦の立案……戦に至るまで何をするかなど山のようにある」

《あ~、もし? 声届いてるんコレ?》

「「!」」

 突如響いた京都弁。

 もしや、と目を見開いた晴明は慌てて水晶球を取り出す。

「その声は(ひで)(もと)か! 秀元、無事だったか!」

《お~聞こえた聞こえた。そっちも大丈夫そうやなぁ》

 声の主・秀元が無事であることに晴明は安堵の笑みを溢した。

 この秀元という男は、十月機関の長である晴明のパートナー的存在であり、道術や呪術の研究及び実用化に大きく貢献しているのだ。

「秀元、カルネアデスが陥落した。私達は今セムと共にいる三人の漂流者(ドリフ)と合流する」

《そうか……北壁はこれで連中の活動拠点になってしもうた以上、オルテも時間の問題やな》

 秀元の言葉に、晴明は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 圧倒的な兵力と統率された組織力でカルネアデスを陥落させた黒王軍。

「ところで、例の「鬼」の件はどうした?」

《う~ん、それなんやけど……僕の知ってる鬼とは少し違うんや。妖というよりも、人智を超えた〝生物〟という方が正しい気がする。生物やから太刀打ちできないわけじゃないと思うんやけど、霊力や妖力を封じるというやり方はあまり向かんと思う》

「っ……陰陽道では難しいのか?」

《それは実際に戦わんとわからん話や。向こうは陰陽師が何たるかは知っていても、()()()()()使()()()()()()()までは把握しとらんはずやろうし》

 平安の世において、都に災いをもたらした妖怪・怨霊を鎮めてきた陰陽師。彼らの術は陰陽師によって唱える祝詞も扱う式神も異なる。

 いくら廃棄物といえど、それら全てを把握しきることはできないだろう。ましてや晴明と秀元は生きていた世界が違うのだから。

《そういうわけやから、僕も動かさせてもらうで。どの道攻められるんやし》

「そうか……わかった。だが気をつけてくれ。廃棄物は私達の想像を超えた異能を使ってくるはずだ」

《そっちも気をつけてな~》

 その声を最後に、秀元との通信は切れた。

「……晴明。今慌てふためいたところで何にもならない。お前も疲れてるだろう、見張りは任せろ」

「やぐら殿……」

「疲労で満身創痍の大師匠様では格好つかないだろ?」

「……フッ」

 人懐っこい笑みを浮かべるやぐらに、晴明は釣られてしまう。

 この日初めて、晴明は笑うことができたのだった。

 

 

 そして、ここは陥落した北壁付近の十月機関のアジトの大広間。

「さてと。僕もそろそろ動かんとなあ」

 京都弁の青年は、暢気に呟きながら札を取り出す。

 彼はある世界で、魑魅魍魎が蠢く京の都の守護者。強大な妖怪達から都をらせん状の結界で守った、稀代の天才陰陽師。その名は――

 

 蘆屋家直系京守護陰陽師「花開院(けいかいん)家」当主 十三代目 花開院秀元

 

「秀元さん」

「! あ、耀哉ちゃん」

 そこへ、顔面上部の皮膚が変質した和装の青年が部屋に入った。

 彼もまた、秀元と同様にこの世界へ飛ばされてきた漂流者(ドリフターズ)の一人。彼はしのぶと同じ世界を生きた人間であり、人格者と修羅の顔を持つ鬼狩りの首領。

 〝お館様〟と呼ばれ深く敬愛される青年の名は――

 

 鬼殺隊第97代当主 産屋敷耀哉

 

「あなたの(しき)(かみ)を返すよ。さあ、お帰り」

 耀哉は足元に付き従っていた童子の姿をした二体の式神に声を掛ける。

 すると式神は手を鳥の羽のように変えて秀元の元へ舞い戻っていった。

「お戻り式紙。……耀哉ちゃん、何やってたん? 随分と時間かけたんやな」

「うん、今すぐ来るお客さんの為にお土産を用意していたんだ」

「!」

 刹那、石造りの壁が爆音と共に吹き飛んだ。

 幸いにも二人は爆発した壁から離れていたため、飛んできた瓦礫も届かず無傷で済んだが、土煙が晴れると異形の軍勢が乗り込んできた。

「キィ~~ッヒッヒッヒッ……! 見つけたぞ漂流者共め」

「あらら……見つかってもうた」

 悠然と立つ秀元と耀哉の前に現れたのは、耳が尖った小柄な老人だった。

 その背後には何十体という黒王軍が控えている。彼らは秀元と耀哉を殺そうと武器を構えたが、老人は「ワシ一人で事足りる」と制した。

「ワシはザボエラ……黒王様が率いる黒王軍の妖魔士。この世界で偉大な頭脳を持つ者じゃ」

 悪意に満ちた笑みを浮かべ、老人――ザボエラは自己紹介する。

「晴明ちゃんの言うとった廃棄物か。随分と気持ち悪い気配しとるなぁ」

「鬼ではなさそうだけど、確かに邪悪な気配だね……一応尋ねよう。何をしにここへ?」

「では期待通りの答えを返そう……貴様らを葬るために来たのじゃ!! 〝ザラキ〟!!」

 廃棄物の一人・ザボエラは恐ろしい集団昇天呪文を唱えた。

 相手を死に誘う不気味な声が、二人に襲い掛かるが……。

「……おや? 不気味な声が聞こえたけど、どうかしたかな?」

「な、何じゃとっ!?」

 二人は何事もなかったかのように平然としていた。

 死の言葉を投げかけ、敵の命を奪う強力な呪文が効かないことにザボエラは動揺を隠せない。

(バカな!! あり得んっ!! あの漂流者共は()()()()()()()の住人ではない!! どう考えても呪文の耐性は無いはずじゃっ!!)

「……いきなり失礼やなぁ。今の言葉、ようわからんけど呪詛の類やろ? 他人様の挨拶が呪詛って、えらい酷い爺さんやな」

 どこか苛立つように、秀元は口を開いた。

 彼の手を見ると、人型の和紙が指の間に挟まれており、真っ黒に黒ずんだかと思えば塵となって消滅した。

「も、もしや……その人型の紙を身代わりにしたというのか……!? いや、したというよりも()()()()()()()()と言うべきか……!? 信じられん……貴様、一体何者じゃ……!!」

「僕は花開院秀元や、以後よろしゅう。――じゃあ今度はこっちの番や……!」

 秀元は新たに札を指の間に挟むと無邪気に微笑み、ザボエラは警戒心を高めた。

 妖魔士と陰陽師……時と世界を越え、魔術と陰陽術の達人がぶつかった。




「ダイの大冒険」が今年10月にテレ東でやると知ったので、廃棄物としてザボエラを投下しました。(笑)
一方のお館様、秀元の式紙の手を借りて何をコソコソと準備してたのかは次回発覚します。

あ、もし「この人とこの人を戦わせてほしい」と思った方がいらっしゃったら、アンケートの方にお願いします。
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