4
小旅行ということで一旦部屋に戻ってちょっとした準備をする。
4次元バッグの中に着替えやタオル、生活用品等を詰め込んでいると、ベッドがもぞもぞと動いた。
そして、布団から顔を出したクチートのくーが目をこすりながらこちらを見つめてきた。
「くーちゃん、はよー。起きてそうそう悪いんだけど、今からちょっとした旅行に行くよ」
「……くー?」
「ナナミがタマムシに用事があるから一泊二日で小旅行。眠いならボール入ってて」
「……くー」
ベッドの上にくー用のボールを置く。
ちなみにハイパーボールだ。
くーカラーなのでなかなかのオシャレポイントを有していると自負しています。
くーはボールを見て一度あくびを浮かべると、そのまま枕を片手にボールへと入っていった。
おい、それ俺の枕だぞ。
相変わらずの相棒の行動にため息を吐きつつも、旅行の準備を進める。
4次元バッグ便利すぎワロス。
容量内に収めればどれだけ入れてもパンパンに膨れ上がらないし、重さも感じない。
ポケモン世界のテクノロジーは半端じゃない。
科学の力ってすげー、ってやつである。
荷造りもそこそこに6匹いる相棒たちを入れたボールをホルダーにつけ、それを腰に回す。
さて、準備もできたし、ナナミを迎えに行こう。
ナナミの家はお隣さんだ。
3軒お宅が並んでいるが、ナナミの家、俺の家、そして、過去最年少チャンピオンに輝いたことがあるレッド君の家と並んでいる。
レッド君はナナミの弟であるグリーンと同い年でマサラが生んだ天才トレーナー三人衆の二人である。
もう一人、ブルーちゃんという子も含め、同時期のポケモンリーグで三人とも入賞以上の結果を出していた。
やはり天才ということも相まって、皆それぞれ癖が強……もとい、個性派揃いではあるが、どの子も根はいい子である。
ポケモンを愛し、そしてポケモンに好かれているところを見れば、それはやっぱり間違いないだろう。
だって、ポケモンに好かれる人に悪人はいないのだから。
5
まぁ、そんなこんなで、すぐにナナミの家に着いた。
「ナーナーミちゃーん! あーそびーましょー!」
「あら、ソラ君こんにちは」
着いて早々、インターフォンを押すのが億劫だったので、昔ながらの方法でナナミを呼ぶと、ナナミの代わりにナナミのお母さんが家から出てきた。
ナナミをアダルディにした感じの近所で噂の美人ママである。
うちの母ちゃんに見習わしたい。
レッド君のお母さんもナナミのお母さんもブルーちゃんのお母さんも美人だというのにうちのママンときたら。
はー。
「おばさん、ちはー。相も変わらず今日も綺麗ですね」
「あらあら、ソラ君はいつも嬉しいことを言ってくれるわね。嘘でも嬉しいわ」
「いやいや、俺は嘘は言わない主義でして」
嘘つきは泥棒の始まりだからね。
ジュンサーさんみたいな美人に追われるのは嬉しいが、逮捕されるのは勘弁願いたい。
「そうそう。ソラは嘘は言わないけど冗談は言うんだもんねー」
と言いながら、お母さんに続いてナナミが家から出てきた。
髪をポニーテールにし、お出かけ用の服装のためかいつもと違う感じなのでなんかドキドキする。
俺、ポニーテール萌えやねん。
シュシュつけてあげたい。
「ナナミン、服似合ってるね。可愛いじゃん」
「はいはい、ありがと。ソラもカッコいいよー」
くっそ。大人の余裕で華麗に流されてしまった。
童貞だから余裕がないのだろうか。
だって、しょうがないじゃん。
こんな田舎だと相手いないんだから。
そろそろ出会いを求めにマサラタウンにさよならばいばいしたほうがいいのだろうか。
「じゃあ、私のトゲちゃんで二人乗りしてタマムシシティに行こうよ」
「チュゲ!」
と、ナナミはモンスターボールからトゲキッスこと、トゲちゃんを外に出した。
ぜんこくNO.468
しゅくふくポケモン
トゲキッス
フェアリー・ひこうタイプ
知る人ぞ知る、害悪ポケモンである。
特性のてんのめぐみは技の追加効果の発生率が2倍となる効果を持ち、それを生かした戦術、『まひるみ』型トゲキッスは一時代を築いた。
1ターン目に電磁波を巻き、あとはひたすらエアスラッシュ連打はマジでリアルファイト待ったなしの戦法である。
何度手持ちのDSをぶん投げようとしたかわからない。
はりきり型? やつはトゲチックがノーマルタイプを失ったと同時に死んだ。
しんそくをタイプ一致で打てなくなった恨みを俺は忘れない。
と、前述はゲームの中のトゲキッス。
この世界のポケモンバトルは『まひるみ』型という一つの戦法だけだと勝てなかったりする。
というのも、ポケモンバトルはターン制じゃなかったり、覚える技が4つ以上だったりとゲームシステムと全く違うのである。
『かわせ!』もありだし、バトルフィールドを生かした技だったりと、ぶっちゃけやろうと思えば何でもできるのだ。
なのでポケモンバトルはいかに育成の段階でいろいろ仕込めるかどうかに掛かっている。
まぁそれだけじゃないんだけど、育成でポケモンのできることを増やせれば戦術の幅も増えるのだ。
俺は一時期ポケモンの育成が楽しくなり、いろいろとはっちゃけた過去があるが、まぁ、それはそれで思い出として記憶の片隅に置いておく。
話を戻そう。
ものすごくやる気を出しているトゲちゃんはそのまま空を飛び、一度青空を旋回した後、ナナミのいるところに戻ってきた。
ナナミはそんなトゲちゃんの頭をなでなで。
傍から見てもトゲちゃんの毛並みが整っているのはさすがコーディネーターといったところだ。
というか、待って。
「二人乗り? 俺も空を飛ぶポケモンいるんだけど」
「だってソラ、カントーでの免許もってないでしょ?」
あ、そういえばそうだっけ。
俺が持っているポケモン飛行の免許はイッシュとカロスとアローラの国外ばっかだった。
この前までカロス地方にいて『そらをとぶ』を使いまくっていたからうっかり無免許で空を飛びそうになってしまった。
「仕方なしだな。ごめん、ナナミ」
「いいよー。最初っからそのつもりだし」
飛行免許取得の条件は飛行学校で免許を取るか、その地方のバッジを3つ持っている状態で申請するか、ポケモン協会に所属する上部の人間から認定許可証をもらうかのどれかだ。
ポケモン飛行はそれなりに危険があるため、ある程度ポケモンを扱えるトレーナーでなければ免許は取れない。
飛行学校は特定の地域しかないし、バッジはホウエンとイッシュとカロスのものしかもっていないからな。
ポケモン協会の知り合いはいるがわざわざ頼むのも忍びないし。
……今度長期旅行と称してバッジ巡りの旅にでも行こうかな。
「さぁ、時間は限られてるよ。早く後ろに乗って」
「おおう。そうだった」
長考していたせいか、いつの間にかナナミは『そらをとぶ』用のヘルメットとゴーグルを着けてトゲちゃんの背中に乗っていた。
俺もすぐに4次元バッグから自分用のヘルメットとゴーグルを装着する。
「二人乗せるのは重いかもしれないけど頼むよ、トゲちゃん」
「ちゅぎちゅっぎ!」
離陸待機しているトゲちゃんの首周りを撫でる。
嬉しそうに、そして、任せろーと鳴くトゲちゃんの背中によじ登り、先に乗っているナナミの後ろに座る。
落ちないようにナナミの細い腰に腕を回し、がっちりホールド。
あ、やわこいし、あったかい。
危ないから仕方ないけど、かなり密着してしまった。
さすがナナミン。良い匂いがする。
頭くらくら、心臓ドキドキではち切れそうなんだけど、俺生きてタマムシシティにつけるのだろうか。
「じゃ、じゃあお母さん行ってくるね!」
「はいはい。事故しないように楽しんできてね。……あっ、そうだ。ソラ君」
「おばさん、なんですか?」
「ふふ、そろそろお義母さんって呼んでもいいのよ。娘をよろしくね」
おばさんは、意味深な言葉とともにこれまた意味深なウィンクを飛ばしてきた。
……言葉に詰まるんですが、どうしたらいいんですかね。
「お、お母さんったら! もう行くからね!」
行くよ、トゲちゃんと合図を出し、トゲちゃんはその綺麗な翼を羽ばたかせ、飛び出す。
徐々に高度を上げ、そのまま気流に乗った。
地上にあったマサラタウンはすぐに遠くに流れていく。
心地よい風が頬を撫でる。
が、このくらいの速度ではタマムシシティに到着するまでに時間が掛かってしまう。
だから、トゲちゃんはまだまだ速度を上げる。
ふわふわの雲も空に浮かぶ鳥ポケモンを置いてきぼりにする速度に入るころ、トゲちゃんは気を利かせてか、自身の周りに『ひかりのかべ』『リフレクター』『しんぴのまもり』と壁を張り、乗っているトレーナーを自然の力から守ってくれた。
壁の中はそれなりに冷えるため、さきほどから熱く熱せられた顔の熱を冷ませながら、俺とナナミはタマムシシティに向かうのであった。
ナナミのお母さん
美人。さすがはナナミのお母さん。
最近の趣味はナナミに花嫁修業をつけること。
最近の楽しみはナナミとソラのやり取りを見守ること。
誰も勝てないオーラを放っている。
レッド
過去最年少チャンピオンとしてリーグに君臨していたが、ポケモン協会に束縛されがちだったのでチャンピオンを返上し、現在はみなさんご存じシロガネ山で修業している。
無口だけどポケモン愛がすごい。
昔、主人公に連れられて一ケ月無人島生活をしたことがある。
グリーン
ナナミの弟。
過去ポケモンリーグで準優勝している。
現在はジムリーダー不在だったトキワシティで常勝のジムリーダーとして働いている。
姉の男のセンスの悪さが悩み。
シスコン。
主人公のことを『クソ兄貴』と呼んでいるだとかいないとか。
ブルー
過去ポケモンリーグ3位の成績を収めた。
かわいらしい容姿とは裏腹に真っ黒な戦術で戦う小悪魔系トレーナー。
悪戯大好きで主人公とは落とし穴に落とす落とされるの仲。
現在はモデルとして活動している。
トゲキッス
ニックネームは『トゲちゃん』
白い悪魔。
ナナミの努力でそんじょそこらのトゲキッスには見られない『うつくしさ』を手に入れた。
昔どれだけこいつに泣かされたことか。
ブラック・ホワイトでの作者の相棒でもある。
作者も多様して使用していたから恨み言ばっか言ってられない。
ちなみにニックネームは『ゆでたまご』だった。
今作でも『ゆでたまご』にしようか悩んだのはここだけの秘密。