ゆるるんポケモン滞在記   作:社畜系ホタテ

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第三話

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 タマムシシティ郊外の人気がない場所にトゲちゃんは降り立った。

 マサラタウンからタマムシシティはそれなりの距離だがトゲちゃんは休憩を挟むことなく飛び続けたため、それほど時間がかからなかった。

 さすがナナミのトゲキッスだ。よく育てられている。

 

 俺は名残惜しくナナミの腰から腕を外し、地面に降りた。

 

「トゲちゃんお疲れ様。ゆっくり休んでね」

「ちゅっぎちゅぎ!」

「あとで激ウマポケモンフードたらふく食わしちゃるけん」

「ちゅっぎぷりいぃぃ!」

 

 ナナミはトゲちゃんを労わったあと、トゲちゃんをしばし休憩のためボールに戻した。

 

 先程までトゲちゃんの背中に乗っていたのでグーっと体を伸ばす。

 長時間同じ体勢だったから体が固まってしまっていた。

 ちょいっと前までは長時間飛行でも体に違和感がなかったのに歳を取るというのは本当に嫌なことである。

 

 それはさておき。

 

 遠くの方では賑わった声が聞こえる。

 さすがは都会、タマムシシティ。

 田舎でぶいぶい言わせている俺は完全なるお上りさん状態ではあるが、シティボーイに憧れていたのははるか過去の自分。

 ジムリーダーのエリカちゃんがよくタマムシシティの環境整備をしているものの、やはりそこは都会であるタマムシシティ。

 年間廃棄物は地方トップであり、お隣のヤマブキシティよりは劣るが大気汚染が問題視されている。

 やっぱり住むなら空気が綺麗なマサラタウンが良いな。

 

「うーん! やっと着いたねー!」

 

 だがしかし、女の子のナナミはウィンドショッピングが大好き。

 この後に控えるタマムシデパートでのお買い物にウキウキである。

 ナナミは『そらをとぶ』用のヘルメットとゴーグルを4次元バッグにしまって、オシャレ帽子とサングラスを装着した。

 

「何その変装セット。有名人みたいじゃん」

「私、一応有名人だからね。変に声掛けられるの嫌だし」

「あぁ、そういえばそうだった」

 

 グランドフェスティバルっていうポケモンコンテストの全国大会で優勝したナナミは、コーディネーターの頂点である『トップコーディネーター』と呼ばれ、その界隈では結構な有名人であった。

 普段一緒にいるからそういったことを忘れてしまいそうになるが、俺の周りにいる人たちって、皆とんでもない経歴を持っていたりするから驚く。

 

 レッド君、グリーン、ブルーちゃんも然り。

 俺からしたらただの可愛い近所の子供なんだけどな、と思ってみたり。

 

「はい、ソラの分のサングラス」

「え、なぜに?」

「お揃いだと嬉しいでしょ」

「ははー、ありがたき幸せー」

「はいはい、幸せ幸せ」

 

 まぁ、そりゃそうか。

 ナナミとペアルックとか恐悦至極、感謝感激雨あられである。

 

 俺は自分の『そらをとぶ』用のヘルメットとゴーグルを4次元バッグに仕舞い、ナナミから渡されたサングラスを素直に装着する。

 どうどう、似合う? 渋い渋い?

 

「はいはい、ちゃんと男前だからはしゃがないの」

 

 あまり掛けることがないサングラスって旅行とか行くときに掛けると不思議とテンション上がるよね。

 

 

 

 タマムシデパートに行く前に、とりあえずは今日お泊りするお家であるエリカちゃんのところに向かった。

 挨拶大事。前世は生粋の日本人である俺は挨拶の大切さを忘れちゃいない。

 おはようからおやすみまで心を込めて。

 どーも、転生者のソラです。

 前世の名前は憶えていませんが、世界でもかの有名な日本人の心『わびさび』を胸に秘めて今日も元気に生きています。

 

 ということで、

 

「えーりかちゃーん。あーそびましょー」

「はぁい!」

 

 なんというレスポンスの速さ。

 俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 

 タマムシシティジムリーダーのエリカちゃんはいいとこのお嬢様だったりする。

 なので、彼女のお家は、お家というかお屋敷だった。

 

 現在エリカちゃんのお屋敷の前。

 周りは高い塀に囲まれておりこれまた豪勢な城門のような門の前で例の如く、昔ながらの方法でエリカちゃんを呼び出すと、門の中でスタンバっていたのだろうかすぐにひょっこりと門から顔を出した。

 

「お待ちしておりました! お久しぶりです、ソラ兄さま! ナナミ姉さま! さぁ、こんなところで立ち話もなんですから家の中に!」

 

 なんかテンション高かった。

 これには俺もナナミも苦笑い。

 

 相も変わらずである和服姿のエリカちゃんに急かされて門をくぐるとそこにはやんごとなきものが住んでいそうな豪勢な日本家屋が。

 建物も庭も、どれもこれもが平安貴族ばりのものである。

 

 ……これが、これが……金持ちというやつか、と自分の財布の中身との差に絶望してみたり。

 

 お屋敷に入れば、サングラスを外してそのままエリカちゃんに着いていく。

 

 長い廊下を歩き、そのままエリカちゃんに案内されるがまま着いていくと一つの部屋に通された。

 今日はここに泊まっていいらしい。

 

 部屋に荷物を置き、一息つくために部屋の中央あった低いテーブルの前の座布団に座る。

 隣にはナナミ、対面にエリカちゃんという位置になり、お手伝いさんがよういしてくれたお茶を一啜り。

 うーん、うまい。テーレッテレー!

 

 

「さてさて、マサラタウンから遠路遥々よくいらっしゃいました。そして、ごめんなさい。久しぶりにお二方に会えまして淑女としてはしたない行動を取ってしまいました」

「んー、どっちかてーと小っちゃいころのエリカちゃんってあんな感じだったからそんな違和感がないっていうね」

「そうそう。昔は常にソラ君の背中に引っ付いて離れなかったもんねー」

「もう! ソラ兄さまもナナミ姉さまも揶揄わないでくださいまし」

 

 赤面しているエリカちゃんかわゆす。

 

 まぁ、話の内容でわかる通り、エリカちゃんとは昔ながらの付き合いである。

 俺がまだ小さかった頃、オーキドのじいちゃんに地方のいろんな街に連れられていた時があった。

 研究とかフィールドワークのためである。

 じいちゃん曰く、俺には研究者の才能があるとかないとかで小さい頃から訓練させられていたとかないとか。

 小さかった俺は常に旅行気分でいたもんだから、それを教えてもらったときにはそんな目的があったのかと驚いたものだ。

 

 さて、エリカちゃんとの出会いの話に戻そう。

 たまたまタマムシシティにナナミとともに連れられてきた。

 暇つぶしにと二人でタマムシシティの街並みを見るために散歩をしていたのだが、その時にエリカちゃんに出会った。

 

 そこは高層マンションの前だった。

 意外や意外。エリカちゃんは野生のナゾノクサを抱えながらがん泣きしていたのだ。

 どうやら、お屋敷の外をたまたま歩いていたナゾノクサを見つけ、好奇心に負けて追っかけてしまったため、そのまま迷子になってしまったらしい。

 

 このまま放置するのも忍びなかったため、ロリエリカちゃんの要領を得ない説明をヒントにナナミとともにお家を探すためタマムシシティを歩き回ったのも良い思い出だ。

 その後、運よく家が見つかり、当時ジムリーダーだった彼女のご両親に感謝された。

 そして、エリカちゃんに懐かれた。めさんこ懐かれた。

 俺のことを兄さま、ナナミのことを姉さまと呼ぶほどの懐きようであった。

 それはもう子カモネギの如く、兄さま兄さまと俺の後ろについてきたし、ネッコアラの如く背中に引っ付いていたりした。

 

 そんな過去もあり、思春期に差し掛かるこの年齢になっても慕ってくれているのである。

 

 それでも現在はジムリーダーを親から引継ぎ、それとともに家の当主として任命された彼女にとってはその過去の行動は恥ずかしいことなのだろう。

 多少寂しさはあるものの、赤面しながらも気品があり上品に笑う妹分の成長に思わず笑みが零れた。

 

 さて、と空気を換えるためにエリカは一度咳払いをした。

 

「さて、長時間のポケモン飛行で疲れたところもあるでしょう。お昼ご飯は家のものが腕をよりをかけてご馳走振る舞いますのでどうぞご堪能ください」

「ありがとねー。あっ、庭にポケモンたちを出してもいいかな?」

「はい、家の庭はそれなりに広いので大丈夫です。ポケモンフードも用意しますので伸び伸びとお過ごし下さいませ」

「何から何まで出せり尽くせりだね。準備が大変だったでしょ?」

「そんなことはありません。大事なお客様なんですもの。誠心誠意心を込めておもてなすのが当たり前です」

「……」

「……? ソラ兄さま、どうなさいました? 何か至らない点があったりしますか?」

 

 じーっと見ていた俺にエリカちゃんは不安そうに尋ねてきた。

 いやなんかさ。

 

「なんか華麗な所作で美人女将みたいなエリカちゃんに違和感が。俺の中のエリカちゃんってなんだかんだでポンコツ臭が見え隠れしている子だから特段違和感がすごい」

「もう! もう!」

 

 ソラ兄さまのいけず、と言いながら俺に近寄ってポコポコパンチを連打する可愛い妹分。

 そんな俺たちのやり取りを見てナナミもにっこり。

 俺は俺でエリカちゃんとの昔と変わらないやり取りができてほっこり。

 

 当主として、ジムリーダーとして淑女とあろうとする中で、やっぱり芯は変わっていないエリカちゃんに癒される土曜日午前中の出来事であった。 




オーキド博士
ナナミのおじいちゃん
言わずと知れたポケモン博士。
主人公の転生知識に騙されて研究者としての素質があると勘違いしてしまった可哀想な人。主人公はただ単にゲームと現在との差を検証していただけ。
遥か過去にリーグチャンピオンになったことごあるっぽい。

エリカ
タマムシシティジムリーダー。
ロリの頃は好奇心旺盛な女の子であった。
ロリの頃、両親は共に忙しい生活をしていたためエリカに構うことが少なかったこともあり、寂しがり屋なところもある。
現在は心身ともに成長し、お家の当主兼実力でジムリーダーとなった。
主人公に揶揄われないほどの淑女になるのが目標。
主人公、ナナミとお話しするのが好き。
寂しくなるとポケモンを抱きしめ癖がある。

ナゾノクサ
野生のときタマムシシティを散歩するのが趣味だったが、ある日ロリエリカの魔の手に捕まってしまう。
抱きしめられた時に隙を見て逃げようとも思ったわけなのだが、迷子になったことに気づきギャン泣きし始めたロリエリカを見て心配になり、頭の葉っぱを使い一生懸命に慰めた良い子。
そして、そのまま逃げるタイミングを失ったままエリカのパートナーとなったとさ。
なお、現在はキレイハナに進化している模様。
たまに寂しくなったエリカに抱きしめられていたりする。
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