ゆるるんポケモン滞在記   作:社畜系ホタテ

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第四話

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「ポケモンバトルをしてほしい……ですか?」

 

 お昼をエリカ邸で過ごし、お手伝いさんが腕によりを掛けたのであろう豪勢な昼食を取ったあとの話。

 お手伝いさん、お疲れ様ですと心の中でお礼をいいつつ、ついでに直接お礼をいいつつも満腹感に身を委ねながらちょいっと小休憩をしていた時だ。

 

 俺は見つけてしまった。

 ポケモンたちはエリカ邸自慢の庭で各々が仲良く遊んだりしているのだが、その中に混じらずにいる俺の長年のパートナーを見つけてしまった。

 視界に入ってしまった。

 相も変わらず、グースカ寝ているクチートのくーを。

 

 自宅から持ってきた枕を縁側に置き、完全に枕に顔を埋めながらぐだーと蕩けるように寝ていた。

 お日様の光がダイレクトアタックしているが、気温は暖かい程度なので超気持ちよさそう。

 絶好のお昼寝日和なのはわかるのだが、こいつ、今日飯食べる以外はずーっと寝てないか?

 はっ? なにそれずるくない?

 羨ましいんだけど。

 

 という経緯で、非常にずるい相棒に嫉妬したわけでも怠惰な彼女に罰をと思ったわけでもなく、ただ単にくーちゃんの食後にする軽い運動のため、エリカちゃんにバトルをお願いすることに。

 本当だよ。嘘じゃないよ

 

「ちょっとうちのくー太郎がぐーたら過ぎるからさ。常時寝ているとかうらやま……体によくないからな! 軽い食後の運動のために頼む」

「誤魔化しきれてないけどね。でも、食べて寝てを繰り返してるのはやっぱり体にはよくないかな。エリカちゃんお願いできる? 私だとコンテスト用のバトルが主だからちゃんとしたポケモンバトルができないと思うし」

「そうでしたらお任せください! 久しぶりのソラ兄さまとのバトル、わたくしワクワクしてきました!」

 

 目をらんらんと輝かせるエリカ。

 さすがはジムリーダーといったところだ。

 やはりバトルは好きみたいである。

 

 と、その前にナナミに謝った。

 ショッピングのためにタマムシシティに来たのに未だタマムシデパートに行けないことに若干の申し訳なさがあった。

 ナナミに「ごめんね」と謝ると「いいよ。買い物は明日にしようか。エリカちゃんも嬉しそうだし」と全然気にしていない様子だった。

 

 大天使かな?

 うん、大天使ナナミエルだったわ。

 

「場所はジムのバトルフィールドでいいでしょうか? あそこなら周囲に迷惑をかけることもありませんし、わたくしも本気で戦えます。ソラ兄さまのポケモンも力を十分に発揮できると思います!」

「それは願ったり叶ったりだけど、いいの? 勝手にジムのフィールド使って」

「いいのです! 今日はジムもお休みですし、なによりソラ兄さまとのバトル! 本気で戦わなければそれこそ無作法ですわ!」

 

 エリカちゃんは、それにと続け、

 

「それに兄さまとのバトルは学ぶところが多くあります。今回はジムリーダーではなく一トレーナーとしてソラ兄さまに全力で挑みます!」

 

 ふんすと両こぶしを握り、やる気まんまんのアピール。

 かわいい。かわいいのだが……。

 

 いや、あの、食後の軽い運動といいますか。

 そんなにやる気満々になられても困るといいますか。

 

 ジムリーダーなんだから軽い気持ちで胸を貸すスタイルでいてほしいものである。

 

 そんな俺の心情を知らぬエリカちゃんは、お手伝いさんにバトルの準備をするように指示を出し始めた。

 互いに6匹のポケモンを見せてその中から3匹選んでバトルをするとか、公式ルールのしかも決勝リーグルールを言い出したので、エリカちゃんにストップを掛ける。

 ちょ、待って、軽い運動気分で言ったのに!

 

 ルール変更!

 ルール変更を申すっ!

 

 

 

 その後互いに話し合い、それほど時間の掛からないルールを決めた。

 本気で戦いあって、疲れが明日に響いたらとんでもないからね。

 

 現在俺たちはジムのバトルフィールドに来ていた。

 互いに25メートル×25メートルはあるだろうフィールドの端に移動し、対面になるように立つ。

 エリカちゃんの顔を見ると、相変わらずのドキドキワクワクやる気まんまんである。

 

 フィールドはさすがは草タイプを専門とするタマムシジムといったところか、花や草、そして木々がそこらかしこに生えていた。

 草原というよりは軽くジャングルである。

 

『じゃあルールは決めた通り、1on1の戦闘不能になったら負け。道具はなしの持ち物はありね。あとは何でもありだから。審判は私、ナナミが務めます。公平にジャッジするからよろしくね。お互い精一杯戦うように』

 

 バトルフィールドに設置された音響からナナミの声が聞こえてきた。

 審判を務めるナナミは別室にいる。

 

 こうも木々が生えてお茂っているのだ。

 そりゃあ、審判がフィールド上に立っていたらジャッジしにくいだろう。

 

 フィールドにはシルフカンパニー産の変態技術が詰め込まれている。

 ところどころに様々な機能を持ったカメラが付いているので審判に気づかれずに不正なんてことは絶対にできない。

 

『……ねぇ、ソラ君。エリカちゃんは準備ができて待機しているのだけど、まだくーちゃんは準備ができないの?』

「ちょっと待って、今説得中」

 

 縁側で枕に埋まっていたくーちゃんをボールに戻し、ここまで連れてきたのはいいものの、いざボールから出してみるとこれまた枕に顔を埋めた状態で出てきた。

 バトルをするのにも肝心のくーちゃんがこれじゃあなぁ。

 

 ただ、これは寝たふりだったりする。

 だって、頭からのびたもう一つの口が先程から俺の頭をガジガジと噛みついてるのだから。

 

 本気で噛みつけば、鋼をも砕くその強顎だが、一応は力加減はしてくれているらしい。

 甘噛み程度でガジガジ、ガジガジと噛みついている。

 

 長年の相棒だからわかるのだが、この行動は単に不貞腐れているときの癖である。

 

 俺も行きたくもないバイトに行く前はよく枕に顔を埋めて現実逃避をしたものだ。

 そろそろ家を出なければ遅刻をする時間のギリギリまではみんなのオアシス、おふとーんから離れたくないのである。

 

 わかる、わかるよくーちゃん。

 寝るのは気持ちいいし、楽だもんな。

 俺もヒモニートになって寝ていたい。

 

 けど、俺からエリカちゃんにバトルをお願いした手前、今更バトルをやめてみんなで川の字になってお布団で寝ようぜなんて言えないのが現実なわけで。

 

 はー、とため息。

 

「くー、……諦めろ。お前は寝すぎたのだ」

 ガジガジ、ガジガジ

「昨今の世は働くことに重きを置く。働くことは善。働かないことは悪。そういったクソみたいな世の中の風潮が俺たちニートを生んだ」

 ガジガジ、ガジガジ

「そう生んでしまったのだ。俺たちは社会という歯車から外された存在だ。ゴミだ。存在価値のないゴミ屑だ」

 ガジガジ、ガジガジ

「なぜ働くことは善で働かないことは悪なのだ。働くことを得意なものもいれば不得意のものもいるだろう。性格、環境、宗教、さまざまな要因を得て、働かなくなるものもいるだろう」

 ガジガジ、ガジガジ

「そんな我々がなぜ悪なのだ。ゴミと呼ばれなければいけないのか。お前らが勝手に世の理を決めただけなのに、それに従わなければゴミなのか? なら俺はゴミでいい」

 ガジガジ……くー?

「ゴミになろう。くー。ゴミはゴミでも、ゴミにだって意地がある。こんなくそったれな世の中をぶっ壊してやろう」

「くー! くー!」

「そうだ、壊すのだ。いわば我々は……ニートは反逆者だ。寝てばかりではダメなのだ。この世界の理を食い破るため、世界を変えるために我々は……、反逆者は戦わなければならない。理不尽な世の中に! ニートの世界を作るために! だから共に戦おう! こんな腐った世の中を変え『ソラ君長い、早くして』ナナミ様がお怒りだから行ってきてくださいお願いします」

「……くー」

 

 説得しようと思ったけど、ニートについて語っていたらやたら熱くなってしまいナナミに怒られてしまった。

 というかいつもの癒しボイスじゃなくて背筋が凍るひえひえボイスだった。

 思わずひえっ……ってなった。

 

 ごめんくーちゃん。ナナミに説教されたくないから、俺のために行ってくれない?

 あいつニコニコした顔で怒ってくるからすげー怖いの。

 お前も知っているだろ?

 

「くー……」

「お、さんきゅー。これ終わったらナナミ直伝のマッサージと特別ポケモンフード上げるから頼むね」

 

 俺をじーっとジト目で見ていたくーは、やれやれしょうがないなと首を左右に振り、とことことフィールドの真ん中に行ってくれた。

 めっちゃありがたし。

 

 最悪、せっかくバトルに誘ったのにバトルができなくなってはエリカちゃんに申し訳ないので、当初の目的からは外れるが手持ちの1匹であるエーフィの『ちくわ』にバトルに行ってもらおうと考えていたからな。

 よかったよかった。

 

「さぁ、お待たせエリカちゃん。準備完了だぜ」

「いえいえ。ソラ兄さまとくーさまのやり取りはいつ見ても楽しそうでございますね! わたくしも見習いたいと思います」

 

 ナナミに怒られるからやめてください。

 

「こちらの準備はいつでも出来ています! ソラ兄さま、お願いします!」

 

『じゃあ二人とも準備が出来たみたいだから始めるね! バトルスタート!』

 

 久しぶりの妹分とのバトルだ。

 とりあえず、楽しんでいこう。




クチート 2
親はソラ。ニックネームは『くー』
一応女の子であり、手持ちの中で一番上のお姉さん。
なんだかんだ主人公に頼られるのが好きなので主人公のお願いを無碍にすることはない。
主人公の頼みを聞かない仕草をみせると高確率で主人公が構ってくれるため、甘えたいときは一度意図的に頼みを聞かないようにしていたりする。
寂しいまたは構ってほしいときは主人公の頭を頭から伸びたもう一つの口で甘噛みするが、乙女心がわからん主人公は未だ不貞腐れているときの癖と勘違いしている。かわいそう。

エーフィ
親はソラ。ニックネームは『ちくわ』
手持ちの中では一番下の女の子。
双子の兄のニンフィアがナナミの手持ちにいる。
主人公が唐突思いついた『第一回チキチキッ! 目的地不明、テレポートを使って世界のどっかを旅行しよう』という企画のため、努力に努力を重ねた結果、テレポートを覚えた過去があったりなかったり。

エリカ 2
タマムシシティのジムリーダー。
久しぶりの兄貴分とのバトルに心を躍らせている。
公式の決勝リーグでのルールで本気のバトルがしたかった。


ナナミ 2
怒ると怖い。
たぶん背中に般若っぽいスタンドが立っている。
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