ゆるるんポケモン滞在記   作:社畜系ホタテ

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第六話

10

 

 バトルが終わったため、俺たちはバトルフィールドの片づけをしていた。

 フィールド上の樹木をいくつか叩き折ってしまったことをエリカちゃんに謝っておいたのだけど、「ソラ兄さまの戦い方は知っています。これはわたくしに気を使って手を抜かずに戦ってくれた証拠です」と逆に感謝されてしまった。

 フィールドにあるものは極限に最大限に活用しろとポケモンたちに言ってはいるものの、草木花と自然を愛するエリカちゃんのジムで自然に乱暴を働くのはさすがに罪悪感がすさまじい。

 

 だから、それでもと再度謝罪をする。

 

 それでもエリカちゃんは笑って、

 

「ならまたわたくしとバトルをしてください。そしたら許してあげます」

 

 条件付きで許してくれた。

 

「わたくしもわたくしのポケモンたちもまだまだ美しく舞うことができます。こんなものではありません。華麗に華やかに美しく。もっともっと成長できます」

 

 ソラ兄さまのような戦い方はできませんが、それでもわたくしはわたくしなりのポケモンバトルでソラ兄さまに挑みますと笑顔でそう言うエリカちゃん。

 

 それがとてつもなく嬉しかった。

 

 今回のバトルでエリカちゃんがどれほど成長したのかなんて素人でもわかると思う。

 それほど、昔と違うのだ。

 

 なんせ、ポケモンの技を本来の使い方以外の目的で使ったのだ。

 

 『ねをはる』

 これはもともと、ポケモンから伸びた根が地面の栄養を吸い取り、体力を回復させる技なのだ。

 そう、回復技だ。

 そして、副次的効果で他のポケモンと入れ替えられなくなるというものがある。

 

 エリカちゃんは『ねのはる』のその副次的効果に着目したのだろう。

 くー渾身の『れいとうパンチ』で吹き飛ばされないように、さらに衝撃の反動で跳ね返ることも想定してあの局面で『ねをはる』を選択したのだ。

 

 普通なら回避を取ったり、覚えているのであればタイミング的には不完全な『まもる』を使用したりする。

 もう技のモーションに入っていたので完全な『まもる』にはならないが、それでも『れいとうパンチ』を直撃するよりは威力が落ちるだろう。

 

 だが、それだとくーの追撃に会う。

 それはそうだ。

 攻撃は一発では終わらない。

 

 くーの右アッパーで吹き飛んだ後、くーのもう一つの口が硬化していたのが見えたので多分くーは『アイアンテール』で追撃に移ろうとしていた。

 

 もしも回避したとしても、フシギバナが回避した場所をくーは追撃して打ち込むことができる。

 その昔、物理を極めると決めたくーに対し、5m×5m×5mの部屋で反発力が半端ないボールをただただ長時間打ち込む練習をひたすらさせたことがあった。

 

 そのため、くーは動く的を正確に打ち抜く技術が長けていたりする。

 

 そのことをエリカちゃんが知っていたかどうかはわかない。

 

 だけど、あの場面で通常の行動をせず、咄嗟に『ねをはる』を選択したのだからすごい。

 素直に称賛する選択であり、対応力だと思う。

 

 『ねをはる』を命綱として使用したのだ。

 そんな発想ができる時点で、エリカちゃんは立派に成長した。

 

 現在いるトレーナーはポケモンの技をそのままの効果で使う人が多い。

 攻撃技なら攻撃に。

 補助技なら補助に。

 その通りに使うトレーナーばっかだ。

 

 いやいや、それはもったいない。

 

 ここは現実だ。

 ゲームじゃない。

 

 補助技で攻撃したっていいじゃないか。

 攻撃技を布石にしたっていいじゃないか。

 その技をそのまんまの意味で使うのは非常にもったいない話だと思う。

 

 だったら、カイリューやバンギラスなど、超ド級の怪獣型のポケモンが、能力値が高いポケモンが『はかいこうせん』ばっか打っていればいいじゃないか。

 『じわれ』『ぜったいれいど』『はさみギロチン』など当たれば一撃で相手を沈めることができる技だけを使っていればいいじゃないか。

 

 力こそ全てだ、と思っているバカが多い。

 そんなやつはなんの面白味のない力だけのポケモンバトルをやっていればいい。

 

 バトルは自由だ。

 何をやってもいいのだ。

 だから、もっと独創的になってもいいじゃないか。

 

 誰かと『本当のバトル』がしたい。

 技の一つ一つに意味があるような、ただやたらむやみに技を放つだけではない『本当のバトル』がしたかった。

 

 そんな思いがこの数年間俺にはあった。

 

 それができる人は確かに存在するが、圧倒的に数が少ないし、簡単にバトルができない地位にいる人が多い。

 

 だから、エリカちゃんの成長ぶりは素直に感嘆したし、まだまだ先を目指しているその姿勢がとてつもなく嬉しかった。

 

「こちらからもお願いするよ。久方ぶりにバトルをしたって感覚だったからさ。またバトルしようぜ」

「はい!」

 

 俺の返答に満面に答えてくれる可愛い妹分の今後の成長が楽しみである。

 

11

 

「お客さん痒いところはありませんかー?」

「くー…」

 

 ところ変わってエリカ邸。

 別にエリカちゃんのお宅でくーにシャンプーをしているわけじゃなくて約束通りにマッサージをしていた。

 

 時刻は夜。

  これまた豪勢な夕食をすませ、エリカ邸に備わる煌びやかな露天風呂を堪能した後の話。

 

  俺はくーとのマッサージの約束を忘れずに行っている。

  俺、約束、破らない。

 

 というわけで敷かれた布団に寝転ぶくーからバトル後の疲れを取るべく入念にマッサージをしていく。

 今日のバトルは無理な体勢や力の使い方をしていたからくーの体はこりにこっていた。

 ほほう。

 こりゃあ、ほぐし甲斐のある体をしてるじゃありませんか、お客さん。

 

「ソラもマッサージ上手くなったよねー」

 

 ナナミはテーブルに置いてあった飲み物を口にしながら、俺のマッサージを見ながらそう言った。

 ども、常に成長し続ける男、ソラです。

 

「そりゃナナミ様直伝のマッサージだからな。本人には一向に勝てる気しないけど」

「ならもっと私を敬えー」

「ははーナナミ様ー」

 

 以前ナナミのマッサージを受けたとき知らぬ間に寝てしまったことがある。

 それほどナナミのマッサージは極楽浄土に誘うものだ。

 ゴーゴーヘブン、気づいたら天国である。

 

「くー……」

「はいはい。マッサージに集中しますよっと」

 

 ちょっとでもマッサージから意識が反れれば、くーからお叱りの言葉が飛んでくる。

 なので、マッサージに集中する。

 お疲れ様とありがとうの意味を込めて、丹精込めて揉み揉みとほぐしていった。

 すると、やはり疲れていたのだろう。

 くーはそのままスヤスヤと眠りに落ちた。

 

 俺は体全体をほぐすだけほぐしてマッサージを終え、そのまま掛け布団をかけた。

 

 おつかれ、くー。

 ゆっくり休んで。

 

「本当にくーちゃんには優しんだね」

「いやいや何言うさ。俺は誰だって優しいよ。聖人君子ですから」

 

 ご近所では噂の聖人君子と言われてた気がしないでもないのでね。

 優しさに溢れ、それを振りまくのだ。

 合言葉は、世界中の人々を笑顔に!

 

「だって全然私にかまってくれないじゃない」

「……もしかしてナナミ酔ってる?」

 

 ふとテーブルを見ると徳利が置いてあった。

 

 あれ、アルコール入ってんでしょ見た目的に。

 夕食後までお茶が置いてあったのにいつの間に。

 

 俺もナナミもお酒の飲める年齢にはなっているものの、そこはまだおこちゃまなのでちょっとでも口にするだけでべろんべろんに酔ってしまう。

 そして、何よりナナミは絡み酒の甘え上戸。

 やべー。

 

「もー。どこ見てるの? 私はこっちだよー」

「うへっ!?」

 

 いつの間にかナナミが近づいており、徳利を見ていた俺の首を力いっぱい自分の方に向かせた。

 

 グギッて音鳴ったんだけど!?

 折れるような勢いだったんだけど!?

 

 首に痛みが発し、悶えようとするもがっちりナナミにホールドされているわけで。

 てか顔近くない?

 

「ちょいちょいナナミさん」

「なんだねソラ君」

「顔。顔近いんだけど?」

「近づけているからね」

 

 いやいや、近づけてるからねじゃないんですがそれは。

 ちょっ、待って。

 本当にどんどん近づいてくるんだけど。

 

 さっきまでゆったりしてたじゃん!

 そういう空気じゃなかったじゃん!

 

「私もくーちゃんみたいに甘えたいのだー」

「これ甘えるのレベル超えてるよ! 幼馴染の一線超えようとしてるよ!」

 

 ほんと待って。

 まだ早いって。

 

「むー。いつも私に結婚しようっていってくれるのは嘘だったの?」

「ふくれっ面のナナミかわいい……じゃなくて!」

 

 あ、あぶねぇ。

 両頬を膨らましてむくれていたナナミの顔に精神がやられちまいそうになってしまった。

 

 なんとか正気に戻り、ナナミホールドから抜け出した俺は、逆にナナミの頭を持って俺の膝の上に固定した。

 いわゆる、膝枕というやつである。

 ふつう男女逆じゃね? と思ってみたり。

 

「ふっふっふ。ソラの膝は私のものだー」

「へいへい。俺の膝はナナミのものですよー」

「はー極楽極楽ぅ。ねーソラー?」

「んー?」

 

 膝の上で寛いでいたナナミの艶やかな髪を撫でていたら、突然ナナミに名前を呼ばれた。

 なんだろう、と思いつつも返事を返す。

 

「エリカちゃんが成長しててよかったね」

「そりゃそうだろ。大事な妹分だから」

「じゃなくて……」

 

 と、ナナミは一つ間を開けて、

 

「ソラが昔からいう『本当のバトル』ができるぐらい成長してよかったね、ってこと」

「…そうだな」

「久しぶりに見たよ。バトル中のソラの楽しそうな顔」

 

 さすが幼馴染だ。

 俺の変化をよく見ている。

 

 エリカちゃんとのバトルは本当に楽しかった。

 だが、それがばれるのが少々気恥ずかしかったのでナナミの髪を乱雑に撫でて誤魔化した。

 ナナミはキャーと楽しそうに笑った。

 

「ふふっ、恥ずかしいねー」

「うっせ」

 

 長年一緒にいると言葉にしなくても相手に気持ちが伝わってしまうのだろうか。

 たとえ酔っていても俺の感情の変化を機敏に悟る幼馴染に嬉しさもある反面、少々憎たらしかった。




主人公 3
名前はソラ
技のぶつかり合いだけではない高度なバトルがしたかった。
ポケモンバトルは好きだが、ただ技を放つだけの思考停止野郎と戦うのは嫌い。
ちなみに作者は赤版の通算対戦のとき、開幕マルマインの大爆発を使ってた思考停止野郎なので主人公とは相容れないと思う。

ナナミ 3
主人公をよく見ている。
酒に弱い。
絡み酒の甘え上戸。
酔っている時の記憶が残っているタイプ。
次の日恥ずかしすぎて人がいないところで激しく悶えていた。
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