12
日は変わり日曜日の朝方。
健康的な朝食を食べたあと、すぐさまお出掛け。
今日は本来の目的であるタマムシデパートへ買い物に行くことに。
明日からは悲しみの平日が待っているが、そんな現実は必要ないので忘却の彼方へ飛ばしておく。
というわけでナナミとともにタマムシデパートへと徒歩にて移動中でして。
ちなみにエリカちゃんはお家の生け花教室があるとのことで今回は断念。
「二人っきりで楽しんできてください」と残念そうではあるが笑顔で送り出してくれた。
「なー、いつまで昨日のこと引きずってるんさ」
「……うー、だって」
「酔うとああなるのはいつものことなんだし気にしない気にしない。現に俺は気にしていない」
「いつものことでも恥ずかしいことは恥ずかしいの!」
両手で顔を覆ってそう言ったナナミ。
お酒で理性というリミッターをぶっ飛ばしてしまうナナミだが、基本その時の状況が記憶にあるタイプらしく、昨夜の自分の様子を思い出して恥ずかしがっているようだ。
今朝も起きたとき、案の定記憶が残っており、恥ずかしさのあまりに床をゴロゴロと転がっていたりするのだが、その姿をナナミのファンが見たらどう思うのだろうか。
「いつもごめんね。介護させちゃって」
「んにゃ、役得だから別にいいよ」
相変わらずやわっこかったし、良いお匂いだったし。
ドキドキであんまり寝れなかったけど、それを差し引いてもプラス案件だから。
そんな俺の反応に両頬を赤く染めて「……ばか」とナナミは小さく呟いた。
ナナミ、かわいい。
「エー」
「フィーア」
そんな俺たちのやり取りに「早く行こうよー」と言うかの如く、鳴き声が下から聞こえた。
おまけにそのうちの一匹は紫色の前足で俺のズボンをぐいぐい引っ張って先を急かしてきた。
そんな様子にため息一つ。
「ちーちゃん、ちーちゃん。そんな急いでもいいことないぜ。もっとくーみたいにゆったりのんびり行こう」
「エー、エーフィ!」
ぜんこくNO.196
たいようポケモン
エーフィ
ニックネームは『ちくわ』。
予知能力とかに長けていたり、空気の流れを読み取って天気や相手の動きを読み取ることができるポケモンだと言われている。
うちのちくわもその例にあたり、毎朝『ちくわの今日の天気予報』として活躍してくれたりする。
しかし、なんだろう。
うちのちくわは『ひかえめ』な性格でこんな積極的に自己主張をする方ではないのだが、何をそんなに急いでいるのだろうか。
「フィー、フィー」
「ど、どうしたの? はー君?」
もう一匹の方もうちのちくわと同じようにナナミの足をぐいぐいと引っ張っていた。
ぜんこくNO.700
むすびつきポケモン
ニンフィア
ニックネームは『はんぺん』
ちくわとはんぺんは、昔マサキという知り合いから貰った『イーブイのたまご』から孵った双子の兄妹である。
二匹いっぺんに育てるのは難しかったので一匹をナナミに渡し育ててもらうことにしたのだ。
お隣さん同士なのでいつでも会うことはできるので、兄妹仲も良好である。
さて、そのはんぺんもちくわと同様に先に急ぐように急かしている。
普段の性格からは考えられない仕草ではあるものの、予知能力に長けているちくわの行動から察すると俺たちがこの場に留まっているのがよくない行動であるみたいだ。
ここにいると何か悪いことが起こるというか、そのためにちくわもはんぺんも俺たちに先に行くように急かしていると考えると納得がいく。
……という俺の考えは当たっていたわけで。
「グウォォォォ!!」
突如上空から何かが叫ぶ鳴き声が聞こえてきたかと思うとその声はだんだんとこちらに近づいてい来るのであった。
叫び声のする方へと目線を向けるとオレンジ色のポケモンが高速でこちらに向かってくるではないか。
気づいたのは俺だけではなく、ナナミやその他周辺を歩いていた人々もそちらの方を見る。
「ねぇぇえぇぇさああぁぁぁぁん!!」
ポケモンの鳴き声とともにどこかで聞いたことがある緑君染みた叫び声も聞こえてきた。
ナナミはその声の主に気づき、ため息を吐いていた。
お疲れ様です。
ポケモンはリザードンであった。
ぜんこくNO.006
かえんポケモン
リザードン。
フシギバナと同様、カントー御三家の一匹である。
現在の飛行からわかるように飛行能力が高く、地上1400メートルで飛行するのが可能であったりする。
一説ではその高い飛行能力は強い相手を求めて移動するために備わったと言われていたり。
というか、あれ、止まれる勢いじゃなくない。
ちょっと危ないだろあれ。
急停止したとしても衝撃波で周りに少なからず被害を及ぼすおそれがある。
たくっ、しょうがないな。
「ちーちゃん。『サイコキネシス』でリザードン止めて『ひかりのかべ』で被害抑えて」
「はー君。『てだすけ』でちーちゃんをサポートして」
「エー!」「フィー!」
ちくわの『サイコキネシス』で近くまで突っ込んできたリザードンを強制的にストップさせる。
その際に出た衝撃波を『ひかりのかべ』で抑えた。
『てだすけ』もあって、威力が上昇しているためか全く問題なく、リザードンを急停止させる。
「うおぉ!?」
急遽止まったリザードン。
そのため、背中に乗っていた緑君は急に止まった勢いでそのまま前に飛ばされる。
そして、被害を出さないために張った『ひかりのかべ』にぺちっと当たり、そのまま落下。
空中で一回転したのち、シュタッと地面に着地した。
無駄に身体能力高いな。
彼は何事もなかったかのように満面の笑みをナナミに向け、
「姉さん。おはよう。こんなところで奇遇だね」
と頓珍漢なことをのたまったのだった。
13
グリーン。
トキワシティのジムリーダーであると同時にナナミの弟でもある。
ポケモンバトルが上手く、その昔ジムリーダーとなる前はポケモンリーグを準優勝したこともある。
普段はクールな性格をしているのだが、姉関係になるとその性格は180°変わってしまう残念な人間だったりする。
はっきり言って極度のシスコンだ。
俺がナナミと一緒にいるだけで噛みついてきた過去があったり、定期的に「俺とポケモンバトルで負けたら金輪際、姉さんと関わるな」と言ってきたりする。
頭がおかしいかなと思う反面、バトルは大半くーで6タテしてやってるので特段どうでもいい話ではあるが。
というかなんでここにいんのこいつ。
ナナミと通報で駆け付けたジュンサーさんにみっちりこってり怒られているグリーンを見てため息が零れた。
現役ジムリーダーが何やってんだか。
「姉さんごめん」
「本当だよ。お姉ちゃん恥ずかしかったんだからね」
「そうだぞグリーン。常識を学べ常識を」
「なんだ、いたのかクソ兄貴。相変わらず姉さんに付きまとってるのか。ストーカーかよ」
なぜこいつはこんなに喧嘩腰なんざんしょか。
喧嘩安売りしすぎじゃないか。
自然とメンチビームしてしまうじゃないか。
「はいはい。喧嘩しない喧嘩しない。というかグリーンは何でタマムシシティに?」
「じいさんから聞いたんだよ。姉さんとクソ兄貴がタマムシシティに旅行に行ったって」
オーキドのじいちゃん余計なやつに余計なこと言いやがったな。
こりゃあ、お土産なしも検討しなければならない。
「ほらクソ兄貴って本能の塊でしょ。脳味噌が下半身についてるような男じゃん。だから俺は心配で心配で居ても立っても居られなくて」
「お前とは1回きっちり話をした方がいいかもしれんな」
「というか姉さん大丈夫? 昨日こいつに襲われてない?」
「おい、無視するな」
無視するのよくない。
いじめみたいでカッコ悪い。
いじめ、ダメ絶対。
「……」
「姉さん?」
グリーンの問いにナナミが反応しない。
どうしたのだろうか。
不思議に思ったのはどうやら俺だけではなく、グリーンもそう思ったらしく、再度ナナミに問いかけた。
よーく見ると、ナナミは両頬を赤く染めてうつむいてしまっていた。
……あぁ、どうやら昨夜の酔っぱらい事件を思い出してしまっているらしい。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
「いや、人の言葉話せよ」
そんなナナミの態度に何を思ったのか急に激高してきたグリーンに胸倉を掴まれてしまう。
これだから最近の切れやすい若者はと思いつつも、どうどうとケンタロスを落ち着かせるかの如く、グリーンを説得するとともに昨夜の話を内容を薄めて説明する。
グリーンも姉の酒癖を知ってはいるので渋々ながらに納得はしてくれて、胸倉を離してくれた。
「……本当に何もなかったんだな」
「しつけーな。あったら俺の呼び方を『クソ兄貴』じゃなくて『お義兄さん』と呼ばしてるわ」
「もしそうなったら婚姻届提出される前にお前を殺めなくてはいけない」
物騒だな。
相変わらず考え方が過激すぎると思う。
過激派なのだろうか。
「まぁ、いいか。じゃあ俺たちはこれからデパートへ買い物に行くからここでお別れだな」
「は? 何言ってんだ? 俺もついていくに決まってるだろうが」
決まってるのか。
それは初耳なのだが。
「お前と姉さんの二人っきりというのは危ない。何かあってからじゃ遅いからな。見張りとして俺もついてく」
「……もう好きにしたら」
なんか疲れた。
別にもうどうとでもなれ精神なのでなんでもよかったりする。
ナナミに視線で「グリーンも付いてくるって」と送ると、ナナミは疲れた表情で「わかった、ごめんね」という返信が視線で返された。
時間も時間で大幅なタイムロス。
マサラに帰ることも考えると、そんなに時間もないわけで。
だったら早くデパートに行きたいということもあり、素直にグリーンを仲間に入れ、再度歩き出すのだった。
「なぁ、ちょっといいか」
歩き出して数分でグリーンに声を掛けられる。
なんだよ珍しいなと思うところもあるが、グリーンに近寄った。
グリーンは前を歩いているナナミと間を開けるようなペースで歩き、ほどほどの距離になったときに小声で続けた。
「なんでタマムシシティへ旅行に来たんだよ」
「おいおい、そんな言い方しなくてもいいだろ。タマムシシティに失礼だぜ」
「違ぇよ。街批判的な意味で言ってんじゃねーって」
じゃあどういう意味だよ。
「クソ兄貴。まさか知らないのか、『ロケット団』がまた活動し始めたって話」
「……それ本当か?」
『ロケット団』。
簡単に言うとポケモンマフィアだ。
主にカントー・ジョウト地方を拠点に暗躍する犯罪組織である。
世界征服という小学生がふざけて言いそうなことを目標に各地でポケモンを利用した悪事を働いている。
団員は黒い服装で胸にRの文字のマークが付いており、非常にわかりやすい。
見た目から「あっ、ロケット団だ」と思うようなアホみたいな恰好をして暗躍ってなんだっけって疑問符を浮かべることこの上なかったりするのだが、問題はトップ、首領だ。
『ロケット団』の首領は元トキワシティジムリーダーのサカキである。
そう、ジムリーダーだ。
つまりポケモン協会の審査を受け、人となりを見られたうえで、その審査に合格し、ジムリーダーとなっていたのだ。
しかも、彼は地域活性の活動に貢献していたというのが地域住民の談である。
ポケモン協会を欺き、世間を欺き続け、その裏でポケモンを使った悪事を行っていた。
『ロケット団』は組織力もあることながら、団員数も多いみたいだ。
実際の数を把握させないのはさすがといったところか。
まぁ、そんな感じの大規模な悪の組織が『ロケット団』である。
というは、過去の話。
現在、組織は壊滅している。
数年前にレッド君たちが『ロケット団』が関わる事件をすべて解決し、最終的にサカキを倒して組織を壊滅させているのだ。
「最近、地方のところどころで過去起きた『ロケット団』の事件と似たようなことが起こっているらしい」
「ただ単に模倣犯じゃなくて?」
「それならそれでいいんだ。だけど、復活してたってことになるとタマムシシティは危ないだろ」
あぁ、だからこいつは急いでタマムシシティまで来たのか。
その昔ここタマムシシティも『ロケット団』の隠れアジトがあった。
カントー最大のカジノ、ゲームコーナーに『ロケット団』が関わっていたのだ。
そういうこともあって、『ロケット団』が復活した可能性があるのであれば、ここタマムシシティにも再度魔の手が伸びている可能性がある。
姉であるナナミがもしかしたら『ロケット団』と関わってしまうと考えたら居ても立っても居られなくなったというのがここに来た本当の理由なんだろう。
「だから気をつけろよ。レッドと同じでクソ兄貴もあいつらに目の敵にされてるんだから。急な襲撃があるかもしれない」
「……頭に入れとく」
「いや、クソ兄貴はどうでもいい。旅行中、姉さんの安全が第一だからな。ちゃんと周囲を警戒するんだ」
「りょーかい」
グリーンの言葉を頭に何げなく俺の前を歩いているナナミに目線を移す。
楽しそうに笑っていた。
久々の遠出。楽しい旅行。
それが壊れてしまう可能性が出てきてしまった。
まぁ、そうなる可能性は低いだろうけど、万が一を考えて行動しようと思う。
基本は気にしない。
気にしすぎると楽しい旅行も楽しめないから。
そんな風に楽観的に考えてしまったことを後々ながら後悔することになるのはもう少し時間が経った後の話だ。
なんでこのとき俺は気づけなかったのだろうか。
予知能力に長けたちくわが不安そうにこちらを見ていることに。
エーフィ 2
ニックネーム『ちくわ』。親はソラ。
マサキから貰ったタマゴから孵ったイーブイが進化した。
『ひかえめ』な性格だから自分から甘えてこないため、主人公が率先して甘やかしている。
『ちくわの今日の天気予報』というのを毎朝欠かさずにやっている。
双子の兄のニンフィアとの仲は良好。連携も抜群でとれる。
ニンフィア
ニックネームは『はんぺん』。親はナナミ。
ナナミの手により途轍もない『かしこさ』を周囲に見せつける。
双子の妹のエーフィの面倒をよくみる。阿吽の呼吸で連携が取れる。
二匹のニックネームである『ちくわ』『はんぺん』は主人公がつけたもの。
グリーン 2
シスコン過ぎて姉の危険を案じてタマムシシティまできた猛者。
ポケモン協会の命で復活したと噂される『ロケット団』について調べている。
リザードン
飛ぶことに命を懸けており、常に速さを求めている。
なぜか毎度主人公のクチートにボコられる。
ロケット団
ポケモンマフィア。
なんだか主人公と因縁があるみたい。