霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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九話

《いや~、皆さんお強いでやんすねぇ。ゲームが始まってまだ三十分も経ってませんぜ》

 

「そりゃあもう、ご主人様の選んだ者達ですからね。むしろ其のくらいして貰わないと困るってモンですよ」

 

新校舎の生徒会室。一誠の代理を務めるベンニーアは一人の女性と優雅にお茶の時間を楽しんでいた。女性はノースリープの和服に身を包み、頭からは狐の耳が生え、お尻からは太くて手触りの良さそうな狐の尻尾が生えている。女性は表面上は笑顔だが尻尾は毛が逆だっており目は笑っていない。何より先程から指で呪いの文字を書いていた。

 

《な、何かお気に障る事でもありやしたか!?》

 

「いえね~。最近ご主人様の周りに女が増えすぎだと思うんですよ。いくら英雄色を好むて言っても、あのバカ猫とイチャイチャしてますし。いくらなんでも節操がないと思いませんか? ちょっとね~、思い出したら呪いたくなってきたんですよ~」

 

《そ、そうでやんすか。と、所で玉藻さんはあの人とは何時頃からのお付き合いで?》

 

一誠の『言うことは聞いてくれるけど我が強すぎる』という言葉に納得したベンニーアは重苦しい空気を変えようと話題をそらす。すると彼女……玉藻は得意げにさらけ出した胸を張り答えた。

 

「良いでしょう。教えて差し上げますよ。実は、私こそがご主人様の手駒第一号なのです! あれはまだ私が霊ではなく生まれたての子狐だった時、飼いきれないからとご主人様の家に貰われて行ったのが私とあの方の出会いです。私とあの方は何時も一緒でした。寝る時もお風呂の時も……きゃっ! あの時からご主人様は魂がイケメンだったのを覚えています。……でも、とある日ご主人様の後を追って家から抜け出した私は車に跳ねられて死んでしまったんですよ」

 

そのことを語る時の彼女は物憂げな表情となり、キツネ耳も尻尾もシュンと垂れ下がる。だが、次の瞬間には耳は元気よく立ち上がり、尻尾は盛大に動いていた。

 

「私は死んだ後に庭の片隅に埋葬され、魂は現世に残りました。そうしたらアッサリとご主人様が見つけてくれたんですよ! いや~、もうなんかね、私とあの方は運命の赤い糸で結ばれているっ言うか。その後、伝説に残る九尾の狐の怨念を食べて今の姿になったという訳です。……だというのにポッとでの新人がご主人様とイチャイチャしやがって。死にたいのかなぁ~? あ、死んでるや」

 

《そ、そうなんでやんすか》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オバ様も大変なんだね、あたし」

 

「オバ様も大変なのよ、わたし」

 

何時の間にか『ありす』と『アリス』が部屋に戻って来ており、玉藻が持ち込んだお茶菓子を口にする。だが、彼女はオバ様呼ばわりされた事に怒るでもなく、得意げに鼻を鳴らしていた。

 

「はん! ご主人様が気まぐれで拾ってきたお子様には分かりませんよ。まわ、私も貴女達には同情しますよ? 永遠にツルペタなままなんですから」

 

「殺っちゃう? あたし」

 

「殺っちゃいましょう、わたし」

 

玉藻は自分の胸を強調した後で二人の平らな胸を見る。二人は膨れ面になり、一触即発の空気が流れた時、外から大声が響いてきた。

 

 

「出てきやがれ糞共が! どうした、ビビってやがのか!」

 

ライザーは口汚く罵りの言葉を発しながら『女王』のユーベルーナと共に魔力を放つも、張られた結界によって校舎はビクともしない。そんな二人を玉藻達は馬鹿にしたように見ていた。

 

 

「あの方、馬鹿なんじゃないですかねぇ。これだけ有利に進めてる側が態々敵の誘いに乗るわけないじゃないですか」

 

「疲れた所を袋叩きにしようかしら? あたし」

 

「疲れた所を袋叩きね、わたし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はん! 出てこねえ所を見ると臆病者なんだな! それとも人に顔を見せれないほど不細工なのかよ! だから顔を見た俺の眷属を殺したんだろ。テメェらの主も仮面の下はどんだけ不細工なんだろな!」

 

「どうしたのです! 出てこないという事は本当に主従揃って臆病で醜い面構えのようですね!」

 

 

 

 

 

 

「……ふ~ん。ご主人様に事まで馬鹿にされたとあっちゃ、良妻狐の名が廃ります。さっさと倒してご主人様から頭をナデナデして貰いましょう!」

 

「単純ね、あたし」

 

「単純よ、わたし」

 

 

 

 

「「でも、お兄ちゃんを馬鹿にした報いは受けさせましょ。お友達の出番ね」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、中々良い女じゃないか。なぁ、俺に乗りかえねぇ?」

 

ライザーは出てきた玉藻とありす達を見て色目を使う。その視線は主に玉藻の胸元に行っており、どうやら今回亡くした眷属の代わりのハーレム要員の代わりにしたいようだ。

 

 

 

 

「お生憎様。ブサイクモデルには用はないと申しますか」

 

「あのオジさん、キモいね。あたし」

 

「あのオジさん、キモいわ。わたし」

 

 

 

 

 

「……そうかよ。なら、テメェらを殺して死んだ奴らの仇を討たせてもらうぞぉぉぉぉぉ!」

 

三人の言葉に激高したライザーは炎を撒き散らしながら接近し、後ろに控えていたユーベルーナは爆炎の魔力を放つ。

 

 

 

 

 

「全く、先程は死んだ子の代わりをすぐに補充しようとしたくせに。ほんと、貴方の魂はブサイクですね。……死んでください!」

 

その瞬間、ライザーは纏った炎ごと凍りつき、ユーベルーナの放った魔力は突如現れた怪物によって防がれた。

 

 

「彫像の出来上がりです♪ って、うぇ~、しつこいですね」

 

「やっぱオバ様じゃその程度よ。ねぇ、アリス」

 

「年だから仕方ないわ、ありす」

 

凍りついてリタイアするかと思われたライザーではあったが、さすがフェニックスの才児と呼ばれるだけあって復活を果たす。だが、その再生スピードは明らかに遅く、受けたダメージの大きさを物語っていた。

 

「き~さ~ま~!!」

 

「……やれやれ、貴方は冥府が示談金を搾り取るまで生きていて貰わないといけないって言われたから手加減しましたが、どうやら手を抜きすぎましたか」

 

「はん! 負け惜しみ言ってじゃねぇ! ブサイクな主共々ぶっ殺してやる!!」

 

すっかり頭に血が上ったライザーは次々と一誠への暴言を吐き、それを聞いた玉藻はスっと目を細めた。

 

「……二人共。先ずは『女王』から殺っちゃってくだい。ご主人様を侮辱した罰はたっぷり受けて頂かなくては」

 

「「うん。分かっているわ。じゃあ、頼んだわよ、ジャバウォック!!」」

 

『gyaoooooooooooooooooooooooooo!!!』

 

ありす達の言葉に応えるかの様に怪物は雄叫びをあげる。そのあまりの音量に隙が出来ると分かっていてもライザー達は身を竦ませ耳を両手で塞ぐ。そして出来たその隙をついて怪物はユーベルーナ目掛けて跳躍し、彼女を掴むとそのまま地面へと落ちていく。

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

怪物……ジャバウォックの怪力によって掴まれた為に彼女は逃れる事ができず地面に怪物の下敷きになる形で激突する。地面にはクレーターができ、まるで踏み潰された虫のように転がるユーベールーナに対しジャバウォックは拳を振り下ろす。地面から離されたその拳には血がべっとりと付着していた……。

 

『ライザー・フェニックス様の『女王』一名リタイア……』

 

グレイフィアの悲痛そうなアナウンスの声が彼女の生死を表す中、ライザーは怒るでもなく悲しむでもなく、ただ恐怖していた。

 

 

 

 

 

 

「うふふ、どうしたんですか? 私をぶっ殺すんですよねぇ?」

 

クスクス笑う玉藻には何時の間にか八本もの尻尾が追加され、纏うオーラは桁が先程までとは遥かに違っている。そしてその後ろには百万もの軍勢が武器を構えてライザーを狙っていた。

 

「ゆ、許して……」

 

「はぁ? ご主人様をあれだけ侮辱しといて許して貰えるとでも? ……安心してください。四肢が欠損していても生きてはいられますから♪」

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

もう恥も外聞もなくライザーは逃げ出す。恐怖に支配された頭ではリタイアの事など忘れてしまい、今はただ恐怖の対象から一歩でも遠くに逃げ出したかった。だが、その体を無数の毒矢が貫き彼は地面に墜落する。そして動けない彼目掛けて百万の軍勢が一気に押し寄せた。

 

 

 

「存分に恨んでくださいませ」

 

玉藻はそう言って前方へと視線を向ける。其処にはもはやボロ雑巾と化し、二度と再起が望めない程の重傷を負ったライザーがいた。

 

 

 

 

 

 

 

『ライザー・フェニックス様の投了を確認しました。よってこの試合はベンニーア様の勝利です!』

 

アナウンスは一誠の代理であるベンニーアの勝利を告げる。だが、観覧席では一誠とハーデス以外に拍手を送る者は誰も居なかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッヒッヒ。俺達は行かなくて良いのかよ?」

 

「うぉれは、うぉれは、行かないぃぃぃぃぃ! こわいぞぉぉぉぉおぉお! ずっどぉぉぉぉぉん!!」




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玉藻 フェイトエクストラ この話ではキャス狐と同じような存在の怨念を元ペットの狐の霊に食わせた存在 基本的に一誠love ただしたまに呪う

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