霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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百話突破記念はこの巻が終わったら書きます 今回は話が進まず、影が薄すぎた二人が出てくる色気回です

最新刊で疑問が イリナの一枚だけの挿絵で、前の文に髪を下ろしたってあるのに結わえたままだった そういえば彼女って挿絵に登場するの初めてじゃない?


九十二話

八重垣の襲撃からの帰宅地中、一誠と玉藻はオデンの屋台に立ち寄っていた。寒い夜空の下で食べるオデンの味は格別で、具の中まで絶品の出汁が染み込んでいる。そのおでんの美味しさからすれば、店主の顔に目玉を模した文様のようなものが書かれた紙が貼り付けられている事など、一誠は気にしなかった。

 

「あ、次はタコとガンモを三個ずつね」

 

「私は厚揚げと巾着を二個ずつお願いします。あと、芋焼酎を湯割りで♪」

 

「……あいよ」

 

店主は手馴れた手つきでオデンを皿に盛り付けていく。二人は絶品のオデンに舌鼓を打ちつつ、先程の事を話し始める。店主は八岐大蛇や幽霊などが平然と話に出てくるにも関わらず、少しも変わった様子を見せないで、ただ黙々と作業を続けていた。

 

 

「でさ、今度会った時に揺さぶりに使えるように恨み事でも言わせない? 貴方なんかもう嫌いよ! とかも面白いかも」

 

「……うわ~、ゲスですねぇ。ま、私は賛成ですけど♪ 使えるものは使わねば、ですね」

 

「はっ! 俺の部下を消滅させたんだから、其のくらいはしないとね。……それに、恋人とその見た目を上辺だけ真似した無能姫との見分けが付かないなんてさ」

 

「あら、坊や達じゃない。貴方達もこの屋台を知ってたの?」

 

「あ、メディアさん」

 

メディアは他の店で飲んできたのか少々酒臭く、ほろ酔い加減で暖簾をくぐる。そのままメディアは二人の隣に座った。

 

「何時もの」

 

「……あいよ」

 

彼女は此処の常連らしく、店主は注文を受けてすぐにおでんの盛り合わせカラシ多めと熱燗を出す。メディアはお猪口に酒を注ぐと一気に飲み干した。

 

「くぅ~! この一杯の為に生きてるぅ!」

 

「いや、メディアさんって幽霊じゃ……。俺は偶々見付けたんだけど、メディアさんはよく来るの?」

 

「……うっさいわね。この店は奇数の日に決まったルートを通る事で行けるのよ。私も原稿が終わったら何時も来てるわ。此処のガンモは最高なのよ~♪ ……ところで埃まみれだけど喧嘩でもした?」

 

メディアは熱々のガンモドキを息で冷ましながら口にする。一誠達も注文を続けながら先程あった事を話す。するとメデイアは呆れたように溜息を吐くと一誠の両頬を引っ張った。

 

「こらっ。恋心を利用するのは駄目でしょ、坊や。貴方が同じ事されたらどう思う?」

 

「絶対にぶっ殺してやる、と思うかな?」

 

「そう。恋心を利用する奴は万死に値するのよ。だから、坊やも同じ事しちゃ駄目よ?」

 

「……は~い」

 

メディアは嗜めるように一誠の頭を軽く小突き、一誠は軽く頷いた。

 

「……所でメディアさんは俺が本格的に冥府に所属したのに、今まで通りに接してくれるんだね。ギリシア神話勢は嫌いじゃなかったの?」

 

「あら、嫌いに決まってるじゃない。今の幸せのために復讐はしないけど、恨みは永遠に消えないわ。それと、貴方が何になろうと貴方には変わりないでしょ? その程度で態度は変えないわ」

 

少々不安そうな一誠に対し、メディアは平然と言い切る。酒のせいか寒さのせいか、彼女の頬には微かに赤みが差していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、うん。その部屋から見える池はもうすぐ赤く染まるけど、害はないから。むしろ珍しいもの見れてラッキーだと思うよ? 二人は大人しくしてる? へぇ~、あの二人がもう懐いたんだ。え? 早く孫の顔見せろって? はいはい、こればかりは授かり物だからね」

 

屋台を後にした一誠は自宅から両親に電話をかける。あまり他人に懐かないありすとアリスはもう二人に懐き、今は父親にえ絵本を読んでもらっているらしい。八重垣の事はD×Dのリーダーであるデュリオに連絡を入れており、明日詳しく話す事になった。その間に玉藻は体に付いたホコリを落とす為にお風呂を沸かしている。

 

「ご主人様ぁ~! 先に入っていて下さいませ。私は後から参りますので」

 

「え~! 恥ずかしがってる時の可愛い玉藻の服を脱がすのが楽しいのに~」

 

「……むぅ。そう言われると心が揺れましねぇ。しかしっ! 今日の為に趣向を凝らしておりますので、小しぃお待ちを!」

 

玉藻は少々迷いながらも自室に行き、一誠は言われるがまま一人でお風呂に入りに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

自室に戻った玉藻はタンスの奥に隠しておいた水着を取り出す。ほとんど隠すところがないほど露出が高いその水着は……水に触れると溶ける仕組みになっている。アダルトグッズの店で買い求めたそれを着ようとしたその時、横合いから伸びてきた手が掠め取った。

 

「ふ~ん。今夜はこれを着てイッセーを誘惑しようって魂胆なのね」

 

《……うひゃぁ~、スゲエでやんすね。流石にあっしには着る勇気がありやせん》

 

風邪をひいた小猫の看病で暫く顔を見せに来なかった黒歌と、冥府に帰省中にゴタゴタがあって帰れなくなったベンニーアは荷物を床に置くと水着をしげしげと眺めている。

 

「……ちっ、帰ってきましたか、黒歌、ベンニーアさん。妹さんの風邪と冥府でのゴタゴタはもう良いんですか?」

 

「白音ならもう治ったわ。その節は薬を調合してくれて感謝するにゃ」

 

《ゴタゴタはまだ解決してないでやんすが、ハーデス様が手を回して下さってあっしは冥府の外に出ることができやした。なんでも最上級死神が一人とその配下が何者かに攫われたらしんでやんすよ》

 

「……なる程。ところで二人はなんで私を縛っているんでしょうか?」

 

「なんでって、ロープで亀甲縛り」

 

《……いや、質問の意図が違うでやんしょう。玉藻様はあっしらが留守の間に散々可愛がってもらってんでやんしょ? ……今夜は譲るから、風呂くらいは譲って欲しいでやんす》

 

ベンニーアは顔を赤らめ、モジモジしており、黒歌も何処かソワソワしている。それを見た玉藻はピンと来た。

 

「あ、だいぶ溜まってるんですね? ……仕方ねぇ、風呂は譲ってやりますよ。でも、水着は置いて行って下さい」

 

「……ちっ」

 

水着を持っていこうとした黒歌は不承不承といった態度で水着を玉藻の傍に置く。そのまま全裸で縛られた玉藻を放置して足音を忍ばせながら風呂場へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……遅いなぁ」

 

玉藻を待っていた一誠は中々やって来ない事に退屈し、湯船に浸かって天井を見上げながら呟く。するとドアがノックされ、一誠は湯船から出るも入ってこず、不審に思ってドアに近づいた時、背中に柔らかく小振りな物が押し当てられ、細い足が体に絡みつく。

 

「あ、帰ったんだ、ベンニーアちゃん」

 

《……あまり驚かないんでやんすね……んっ》

 

天井に魔法陣を繋げ、一誠の背中に抱きついたベンニーアは彼に裸体を密着させると、振り向いた一誠の唇を奪う。暫くの間、二人は互いの唇を求め合っていた。

 

「キス、上手になったね」

 

《一誠様に喜んで貰う為に勉強したんでやんす》

 

ベンニーアは顔を真っ赤にしながら再びキスを強請るように唇を突き出す。しかし、前方から伸びてきた手に一誠の顔を掴まれて阻害された。

 

「……私の事も忘れないで欲しいにゃ、んっ」

 

一誠の顔を掴んだ黒歌はまるで匂いを擦りつけるかのように豊満な体を押し付け、一誠の口に舌を捩じ込む。一誠も負けじと舌を捩じ込み返した。

 

「二人共、おかえり。玉藻は? ……って失礼だったね」

 

「へぇ、少しは女心が分かって来た? 今から抱く相手に他の女の話題を出すのはマナー違反って分かるなんて」

 

《……今回は譲って貰ったでやんす。……あの、久々なんで沢山可愛がって……》

 

ベンニーアが言い終わる前に彼女を背中から下ろした一誠は黒歌ごと抱きしめる。きつく抱き締められた事によって三人の体は密着し、互いの息使いや鼓動が聞こえるまでになった。

 

 

 

 

 

 

 

「……いただきます」

 

そのまま一誠は二人を押し倒し、存分にその体を満喫した……。

 




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