霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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百話

「いやぁ、ご主人様の体調も回復してきましたし、アポロン様から普通の食事を摂る許可を頂きました。今日はお鍋ですねぇ♪」

 

 スーパーの帰り、一誠の母とありすとアリスの四人で買い物に出掛けた玉藻はエコバック片手に上機嫌で鼻歌を歌う。最近ずっと病人食ばかりだった一誠の為、今日は腕によりをかけて鍋を作ろうと張り切る玉藻を見た母親は楽しそうに笑い、ありす達は先ほど強請って買って貰った焼き芋を食べながら歩いていた。だが、角を曲がれば家が見えてくるといった所で玉藻の足が止まり狐耳が動く。

 

「……わたし(ありす)

 

「ええ、わかってるわ、あたし(アリス)

 

「え? え? ちょっと、何!?」

 

 母親が状況を理解する前にありすとアリスは玉藻を残して『名無しの森』へ避難し、玉藻が身構えた所で角から一人の老人が現れる。その顔には深い皺が刻まれ弱い八十をとうに超えている事が分かるが、首から下は顔とは裏腹に逞しく張りがある鍛え抜かれた肉体だ。そしてその体には祭服を纏っていた。

 

「急な来訪申し訳ない。私の名はヴァスコ・ストラーダ。まず言っておきますが此方に争う気は……」

 

「ちょいさっ! ……ふぅ、いい仕事しましたねぇ」

 

 ヴァスコ・ストラーダ。デュランダルの元使い手で同盟に反対するエクソシストが起こしたクーデターの首謀者の一人。玉藻の飛び蹴りをガードしたまでは良かったがそのまま押し切られ気絶させられた彼は、M字開脚した状態で縛られてイリナとゼノヴィアが同居するマンションに放り込まれた。

 

 

 

「私はエクソシストの権利と主張を守る! 例え全ての悪魔と吸血鬼が邪悪でないとしても、滅ぼすべき悪は必ず存在する! 現に魔王の身内と堕天使の前総督は無限龍を匿ったではないかっ! ここまで問題が起きたならば同盟を解消すべきだっ!」

 

 何故か拘束がどうやっても解けず、仕方なくそのままの状態で意見を主張する事となったヴァスコは声高々に叫ぶ。それは悪魔や吸血鬼に家族を殺された者が殆どを占めるクーデターのメンバーの代表としての主張。だが、やはりM字開脚状態なので締まらない。

 

「……そうですか」

 

 話を聞き出したミカエルは彼の下半身を隠した状態で話を聞く。なお、彼らは戦争ではなくD×Dのメンバーに挑戦をしに来たのであって、それを伝える前に全員が殺られればなんとか参加していなかった他の者まで止まらず泥沼になり、最後にはエクソシストが絶滅するだけと判断して事前に伝えに来たらしい。結果は見ての通りだが……。

 

「え~、兎に角どうしますか?」

 

 シリアスな空気など存在せず、ミカエルは冥府や北欧に対する対処よる胃痛を堪えながら集まったメンバーに相談する。結局、勝負を受ける事にした。

 

 

 

 

「……ふ~ん。で、行きたいの? ランスロット」

 

「ええ! 有名な剣士二人と手合わせしてみたいですし、ロスヴァイセに格好良い所を見せたいですから!」

 

「俺達も久々に暴れたいのですが……」

 

 一誠も独立部隊とはいえD×Dのメンバーの一人であり、面白そうだから誰か参加させろとハーデスにも言われたので誰を参加させるか話し合っていた。

 

「ふふふ、彼らって悪魔や堕天使に対する復讐心とかが今回の要因なんでしょ? まあ、動機は分からなくもないけど、騒ぎの隙を狙ってリゼヴィムに暴れられても迷惑だし俺も異論はないよ。そして、同盟が気に入らないから同盟の象徴に喧嘩売るならさ……神に与えられた神器で人生を狂わさせられた者達の怒りを神の下僕の彼らにぶつけても良いよね?」

 

  一誠が笑みを浮かべると室内の気温が一気に下がり知能の殆どない下級霊達が姿を現す。それは一誠が口にした神器で人生を狂わさせられた者達の霊魂。彼らは怒りをぶつける正当な理由を与えられて歓喜の声を上げる。一誠は体が冷えたのか小さなクシャミをした。

 

「……テメェら、ご主人様の風邪が悪化したら未来永劫地獄の釜にくべるぞ、コラっ! ささ、ご主人様。今すぐお布団に入りましょう。なんなら玉藻めが抱き枕に……」

 

「それはそれで魅力的だけど絶対に其処で終わらないし、風邪が感染ったらいけないから駄~目っ!」

 

 一誠は服を脱ぎ捨てて抱き着いて来た玉藻を引き剥がすとベットに潜り込む。廊下には脱ぐ一瞬前に蹴り飛ばされて追い出されたランスロットと元円卓の騎士が転がっており、小猫の手によって運び出された。

 

「……馬鹿ばっかです」

 

「にゃはは。仕方ないわよ。生前が真面目すぎたから第二の人生を謳歌する気なんだからさ」

 

「じゃあ、姉様は真面目になるんですか?」

 

「さあ? それはどうだろうかにゃん」

 

 黒歌は小猫と共に元円卓の騎士達を運び出す。客間に放り込んだ頃にロスヴァイセがランスロットを迎えに来た。

 

「あの、ランスロットさんを迎えに来ました」

 

「はいはい、お疲れ~。あ、そっちも鍋なんだ」

 

 黒歌がロスヴァイセが手に提げた袋に目をやると鍋つゆやネギやニンニクやスッポンやドリンク剤が入っており、ロスヴァイセはランスロットを担ぐと家まで転移していった。

 

「ふふふ、たまには寝込みを襲うってシチュエーションも……あ、あたすったら人前で何をっ!?」

 

「……今更でしょ。さっさと子供作りなさい」

 

「ええ、最初は女の子が良いかなって思います。あっ! 黒歌さんに子供が出来たら恋人になっちゃったりして」

 

「あはは、それも面白いかもにゃん♪」

 

 

 

 

 

「……ねぇ、黒歌。俺って自分勝手かな? 敵には厳しいのに自分や身内には甘いしさ。ほら、俺だって恨み買うような事したり関係ない民衆を巻き込むような事態に発展させてるじゃん」

 

「馬鹿ね。何を今更言ってるのよ。誰にも彼にも平等なんて機械じゃあるまいし。それが人間ってもんだにゃん。ほらほら、次は前」

 

 黒歌は一誠の汗を拭きながら体をすり寄せる。唇が触れるか触れないかの距離まで顔を近づけ手探りで体を拭いていった。

 

「……さて、次は下ね」

 

「んじゃ、よろしく」

 

 一誠は躊躇なく下を全て脱ぐとベットに寝転がる。黒歌はじっくりと手を這わす様に一誠の汗を拭いていき、最後には上から覆い被さった。

 

「私は霊体だから風邪感染らないし、こうやって密着するだけなら問題ないわよね?」

 

「……それで終わったなら良いけどね」

 

「其処は一誠の……旦那様次第って事で♪」

 

 

 

「はいはい、独り占めは駄目ですよ? さて、ご主人さ……ア・ナ・タ♪ 絶対に添い寝で済ませるから良いですよね?」

 

《あっしもご一緒させて頂くでやんすよ、ダーリン!》

 

「うん、良いよ。じゃあ、早く来なよ」

 

 一誠は布団を捲ると二人を招き入れ、四人揃って寝息を立て始める。三人は最初に言った通りに何もせず、一誠も手を出さなかった。

 

 

「……有難うね。ちょっと風邪で気が弱まっていたみたい」

 

「いえいえ、気にしないで良いですよぉ」

 

《そうそう。風邪が治ったらたっぷりと虐めて頂くでやんすから》

 

 

 

「でも、風邪引いたのが私の順番の日だから溜まったのは全て貰うわよ?」

 

「なんですとぉ!?」

 

《ぐっ! こうなったら治るまで気絶させて……》

 

 

 

「さて、このまま見学すべきか襲って黙らせるべきか追い出すべきか……どうしよう?」




意見 感想 誤字指摘お待ちしています

さて、また文字が何故かくっつく 編集では離れてるのに


あ、フェアリーテイルの二次始めました

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