霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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百二話

「いやー、思ってたよりも早く済みましたねぇ。制限時間まであと二十分ですか? 終わったら宴会ですね!」

 

「では、私が何処かの店で予約を取っておきましょう」

 

 エヴァルトとその部下達はものの五分で敗れ、玉藻とロスヴァイセはグルメ雑誌を広げる。冥府の代表として来ている身からすれば有り得ない行為であるにも関わらず一誠は注意せず、ミカエル達も何も言わない。それが今の冥府と三大勢力の力関係を物語っていた。

 

「でもさ、アロンダイトを聖剣に戻しちゃったのは失敗だったかな? 湖の乙女(育ての母)の祝福の影響か狂化を打ち消しちゃってるよ。あのままでも十分強いけど、野獣のような凶暴さがないんじゃ”憤怒の将”じゃないよね」

 

「ランスロットさんはベットの中では野獣ですよ? 一度始まったら夜が明けるまで苛められていますから、きゃっ♪」

 

「ご主人様もぉ~、苛めてください、って頼んだら私が泣いても苛め続けますしぃ、優しくしてください、って頼んだら本当に優しくしてくれるんですよぉ。どっちにしろ睡眠不足になりますがお肌は艶々です♪」

 

 ロスヴァイセは頬に手を当てながら昨晩の情事を思い出し、玉藻は玉藻で一誠の膝の上に横向きに座ると体を摺り寄せながら首筋を舐める。画面にはゼノヴィア達の戦いが映し出されていたが三人は特に興味がなさそうにしていた。

 

「そういえばサーゼクスさん。家の方は大変だったね。確か放火犯の一人は奥さんの元部下の遺族だったんだって? 何人も同時に放火するなんてさ、無能姫といい、奥さんといい、よほど恨まれてたんだね。しかも、お母さんは”大王家の者を男爵家の嫁として置いておくなど許せん!”、って意見が出て離婚の末に辺境に追いやられてさ」

 

「……はい。父もだいぶ塞ぎ込んでいる様で……」

 

 サーゼクスは一誠に見られないように拳を握り締め唇を噛み締める。爪が食い込んだ手の皮は破け、唇が噛み切られた事で血が流れ出す。そして何時も隣に居るグレイフィアはミリキャスとの面会後に冥府が用意した幽閉先に送られてこの場所には居なかった。

 

「それにしてもロスヴァイセも助かったね。あのまま無能姫の眷属になってたらさ、騎士の様に崩れてきた瓦礫で片足を失った上に右手がマトモに動かなくなったり、僧侶の様に顔に酷い火傷を負った上に精神を病んで神器が使えなくなったり、もう一人の僧侶の半吸血鬼の様に両目を失明……彼の場合は望みが叶ったって言っていいかな? なにせ神器の力も失って、もう誰も停められないんだからね」

 

「……一誠さん。流石に女の子が顔に火傷を負ったのを茶化すのは……」

 

「裏切り者だし、死んでないんだから別に良いと思うよ? 彼女の選択で死んだ松田も死ぬよりは顔にやけどを負うほうを選ぶだろうし……やっぱ駄目かな?」

 

「ん~、やっぱり駄目ですかねぇ? じゃあ、今日は罰としてお一人で寝て頂きます。流石に厳しく致しませんとご主人様の腐った性根は治りそうにありませんから。そ・の・か・わ・り、帰ったら夕食までとお風呂でたぁっぷり可愛がって頂きますね」

 

 玉藻は一誠の首に手を回して強く抱きつく。ゼノヴィアがヴァスコに剣を弾き飛ばされた頃にはスヤスヤと寝息を立てていた。

 

 

 

 

 

「強くなったな、ゼノヴィア。力で押し切るという長所を活かしたまま、その上で牽制の為の技術も学んでいる。それによってデュランダルの特徴である破壊力がより活かされているな」

 

「いえ、貴方にはまだ敵いません。ですが! 私は今日貴方を超える!! 行くぞ、匙!!」

 

「アレをやるのかっ!? ……ぶっつけ本番だが仕方ねぇ!」

 

 ゼノヴィアがデュランダルを高く掲げオーラを放出する。それに合わせて禁手化した匙が黒炎を聖剣のオーラに放つと聖剣と邪龍という正反対の力同士が反発し合い拡散しそうになる。だが、ゼノヴィアが腰に差した五本のエクスカリバーを一本にしたエクスカリバーからもオーラが放たれ、拡散しそうな二つのオーラを包み込んで押さえ込む。

 

「デュリオ! これだけじゃ足りない! お前の力も貸してくれ!!」

 

「マジっすかっ!? あ~も~! どうなっても知らねぇっすよ!?」

 

 デュリオも神器を発動し聖なる力の篭った雷撃をオーラに放つ。やがて聖剣・邪龍・神器の三種のオーラは混ざり合い、それを纏うデュランダルの刃が砕け散ったかと思うとオーラによって形成された新たな刃が出現した。

 

「行くぞ! これが私の…私達の全力の力だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「成る程。ならば私も全力で相手しよう!!」

 

 ヴァスコもレプリカのデュランダルのオーラを全開にさせる。彼から放たれるオーラもそれに呼応するように増大し、ゼノヴィアとヴァスコは同時に動く。そのコンマ一秒後、二人の体は交差しゼノヴィアは膝をつく。前のめりに倒せそうになるのを剣を杖がわりにして堪え、対するヴァスコは悠然と立っている。

 

「……見事だ」

 

 その刹那、彼の持つデュランダルのレプリカが粉々に砕け散り、彼は前のめりに倒れる。今回のクーデターにおける三人の首謀者の内の二人にしてエクソシスト側の大将二人が負けた瞬間だった。

 

「……勝った! 勝ったぞぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ゼノヴィアは勝利の雄叫びを上げる。だが、残ったエクソシスト達は未だ剣を構えていた。残っている者達の中の一人が殺意を剥き出しにしながら向かってくる。

 

「まだだ! まだ終わらんよ!!」

 

「ちっ! しつけぇな!」

 

匙がゼノヴィアを庇う様に立ち塞がったその時、デュリオの周囲に無数のシャボン玉が出現した。

 

「はいはい、ここは俺に任せといて。もう、皆納得してくれると思うから……」

 

 このしゃぼん玉は彼の神器によるもの。触れた者の幸福な思い出を蘇らせる力を持つ。

 

 

 

「今、三十分過ギタ。約束ノ時間ダ」

 

「キシシシシ! 悪ぃなあ! お前らの出番はもう終わりなんだよ」

 

 そしてそれは上空から舞い降りた粘液の体を持つドラゴンと長い喉に縫い目のある大男の出現によって霧散した。ドラゴンの体からは常時粘液がこぼれ落ち、落ちた粘液は意思を持つように蠢きながらドラゴンの体に戻っていく。そして大男の周囲の影から無数の棺桶が出現し、中からアザゼルや英雄派が出てきた。それと同時に一誠の声が周囲に響き渡る。

 

『いやいや、残念だよ。時間内に決着が付けば良かったんだけど敵はまだやる気みたいだし俺も戦力を投入せざるを得なかった』

 

「ちょっと待ってくれ! あのしゃぼん玉の力さえあれば戦闘は終わる!」

 

『でも、中には憎しみを忘れられない者も居る。俺は常に人命優先(・・・・)なんだ。一人でも多くの人命を助ける為にも僅かな可能性も考慮しなきゃ。さて、実験…ゴホン! 戦闘を開始する前に二体を紹介しよう。男の名はゲッコーモリア。今まで忘れて…出し惜しんでいた『怠惰』の将さ。そしてもう一体はシャドウ。サマエルのオーラその他諸々から生まれた怨霊だけど、今はグレンデルとクロウクルワッハとドライグの魂の欠片を食わせて変化しているよ。大丈夫、二体の許可はとっている』

 

『……相棒。俺の許可は? てか、いつ削ったっ!?』

 

『じゃあ、実験開始!』

 

 ゼノヴィア達は強制的に転移され、一方的な戦い(蹂躙)が始まろうとしていた

 




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