霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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十一話

「雷よっ!」

 

朱乃の掌から電流が迸りブイヨセンに襲いかかる。だが、ブイヨセンが手を軽く動かすだけで雷は横に逸れていった。既に部屋の中は朱乃が放った雷撃によって穴だらけになっており、今にも天井が崩れ出しそうだ。

 

「クスクス…。全然当たらないネ…」

 

ブイヨセンは朱乃を小馬鹿にしたような態度で手に持った旗を弄る。一誠側から攻撃できるのは一人なので、そうでない彼は攻撃できないのか、それとも攻撃できないふりをしているだけなのか、朱乃は慎重にブイヨセンの様子を伺いながらも力を溜めていた。

 

「ウフフイ……。君の主は大丈夫かナ……?」

 

「……どういう事ですの?」

 

「教えてあげるよ…。今、君の本拠地には私と同じ『死霊四帝』の一体であるシャドウが向かっているんだ…。アイツの体は呪い其の物。触っただけで生命力を吸い取られるヨ…。しかも、此方から攻撃できないだけで、そっちから勝手に触って生命力を吸い取られてもルールには反しなイ……。あれ? シャドウが攻撃可能な奴だっケ…? クスクス…。ミイラになっていなけりゃいいネ……」

 

「……そうですか。なら、この一撃で貴方を沈めて救援に向かいますわ!」

 

「ウフ……」

 

その瞬間部屋全体を雷が包み込み、雷が晴れた時には放った朱乃以外の姿は消え去っていた。朱乃は少々無茶をしたせいで息を乱し、フラつきながらも部屋を出ようとする。

 

「旗も壊してしまいましたわね。……急がなくては」

 

先ほどの雷撃で天井は大きくひび割れ、今直ぐにでも崩落しそうだ。そして朱乃が入り口のドアに手をかけた時、廊下に充満していた霧が微かに揺らいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「行け! 青光矢!」

 

松田は一度に十本程の光の矢を放つ。レイナーレに命中するまで僅かに時間差を付けられたその矢だったがレイナーレは体を捻るだけで全て避ける。だが避けられた矢は軌道を変え再び彼女に襲い掛かり、それを避けても別の矢が再びレイナーレを襲う。計十本の矢は円を描くように彼女の周囲を飛んでいた。

 

「……なる程。機動を変えられるという特性を生かした訳ですね。常に何本かが私に向かってきています」

 

「そうだ! この短期間じゃ長距離狙撃なんて身につけられねえから無駄のない円運動でのコントロールと……ただ真っ直ぐに速く射つ事に絞ったんだよ!」

 

松田の叫びと共に五本の矢が高速で放たれ、それと同時にレイナーレを囲んでいた十本の矢も一斉に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

「ほらほら、ちゃんと狙わなきゃ。そんなんじゃ駄目だよ? 白音ちゃん」

 

「……はぁっ!」

 

小猫は一誠に向かって拳を振るうも全く当てられず、一誠は喜々として小猫を翻弄する。

 

「ほらほら……あれ?」

 

しかし、一誠が腕を突き出して手招きしながらステップを踏んで小猫を挑発していた時、足元に転がっていたガレキを踏んでバランスを崩してしまう。そして小猫はその隙に急接近して一誠の腕を掴んだ。

 

「……覚悟してください」

 

「えっ、ちょっと待って……」

 

小猫は小柄な体格からは想像できないような腕力で一誠を投げ飛ばし、そのまま空中に居る一誠に拳を叩きつける。

 

「がっ!?」

 

苦痛に喘ぐ声と共に鮮血が床に舞い散った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、もうこの塔の旗は全部集まったわね」

 

「そうですね、部長」

 

塔内にある旗を全て集め終えたリアスと祐斗は本拠地に集めた旗を置きに戻っていた。本拠地にはアーシアが待機しており、何かあったら通信機で知らせる事になっている。そして本拠地まであと少しとなった時、通信機が入った。

 

『部長、襲撃です!』

 

それはアーシアからの救援要請。急いで戻ろうとした二人だったが、目の前に敵が立ち塞がっていた。二人の目の前に現れたのは大人一人分ほどの大きさのドロドロとした粘液のような物体。その一部が口に様に開くと唸り声を発する。

 

「アァ~。俺、シャドウ。旗ヲヨコセェ」

 

「祐斗!」

 

「はぁっ!」

 

リアスの声と共に祐斗は神器で魔剣を創り出しシャドウに切りかかる。だが、彼の剣がシャドウの体に触れると抵抗なく中に沈んでいき、祐斗の腕も一緒に飲み込まれた。その瞬間、祐斗は咄嗟に後ろへ飛び退くと苦痛に眉をしかめて腕を押さえる。彼の腕はまるで長年寝たっきりの病人の様にやせ衰えていた。

 

「……どうやら触れた相手の力を吸い取る能力のようです。しかも、攻撃扱いされない所を見ると、常時発動タイプみたいですね」

 

「祐斗、ごめんなさい。私の判断ミスだったわ。彼奴は観覧席であの悪魔を飲み込んだ腕ね。随分小さくなっているから気付かなかったわ」

 

リアスは旗を後ろに置くと祐斗を下がらせ両手をシャドウに向ける。

 

「さぁ、さっさと貴方を倒してアーシアの救援に向かわせてもらうわ!」

 

リアスの腕から滅びの魔力が放たれシャドウに命中する。シャドウはリアスの魔力の直撃を受け破片を飛び散らせながら消滅し、破片も床にできた影に沈むように消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やりましたな! さすがはリアス殿!」

 

「ははは! やはりライザー殿に戦力を集中させていたらしい! もう二体も抹殺しましたぞ!」

 

貴族達はブイヨセンとシャドウが消滅したと判断して歓喜の声を上がる。後は生意気な人間とそれに付き従っている堕天使らしき女の死を望みながら観戦を続ける。だが、ハーデスはそんな貴族達を見下した様に見ていた。

 

《愚かな事だ。本当に死んだとでも思っておるのか?》

 

《いや~、あれはそう思っても仕方ないでやんすよ。あっしも予め力を教えてもらってなければ騙されてたでやんす。あれ、玉藻さんが今頃来たでやんすよ》

 

ベンニーアが騒がしくなった方向を見ると、先程まで観覧席に居なかった玉藻がありす達と共に入ってきていた。周りの貴族達は彼女達に忌々しげな視線や品定めするような視線を向け、何人かの貴族は話しかけるも相手にされず憤慨している。そしてハーデス達の所に来た彼女もウンザリした様子だった。

 

《遅かったではないか。それに、何やら話しかけられていたが、大方スカウトであろう?》

 

「そうなんですよ~。もう、私はご主人様の良妻で所有物だというのに、眷属にならないかとか言ってくるんですよ。中には妾になれとか言って来るのもいやがりましたから不能の呪いをかけてやりました♪」

 

「オバ様、お兄ちゃんとお風呂に入る約束したからって、一人でブツブツ呟いて体をくねらせてたの」

 

「ありす。わたし達はあんな大人にはなりたくないわね」

 

《……そうか。ファファファ……。見てみろ、コウモリ共が騒めき出したぞ。どうやら動き出したようだな》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドアが開かない!?」

 

朱乃がドアを開こうとするも動かず、仕方なくドアを破壊すると通路は瓦礫で埋まっていた。そして瓦礫の向こうから朱乃を小馬鹿にしたような笑い声が響く。

 

「クスクス……。もう、出られないヨ……」

 

ブイヨセンは瓦礫の隙間から顔を覗かせ、細長い舌をチロチロと動かし更に挑発を続ける。それを見た朱乃は笑い顔のまま隙間を縫って電撃を放つも、ブイヨセンは体を霧化させたことで向こう側の壁を破壊するだけに終わった。

 

「……先程の雷もそうやって避けましたのね?」

 

「そうだよ…。まぁ、あの程度なら食らっても平気なんだけどね…。でも、それじゃあ面白くないだロ…。おっと、もう雷を放つのはよした方がいいヨ…。天井が崩れそうだからね…。クスクス…」

 

朱乃が天井を見上げるとパラパラと欠片が舞い落ちてきており今にも崩れそうだ。先程彼女が放った電撃がトドメとなったのか天井全体に亀裂が入り、瓦礫をどかそうと大きな音を立てれば一斉に崩れてくるだろう。ブイヨセンの策略によって朱乃は完全に閉じ込められてしまった。

 

「じゃあね……。時間も残り少ない…。せいぜい静かにしている事だネ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ。所詮は付け焼刃ね。この程度の威力しか出せないの?」

 

「なっ!?」

 

松田の矢の全てが直撃したにも関わらずレイナーレには傷一つない。背中の六枚の羽で全ての矢を防いだのだ。そのまま彼女は右手に光の槍を出現させ松田に向ける。

 

「ああ、いい事を教えてあげるわ。攻撃可能なのは私よ」

 

そしてレイナーレが槍を持ったまま腕を振りかぶると槍は無数の光の矢になって松田に向かっていき、服のみを貫いて壁に貼り付けにする。そしてレイナーレは身動きの取れない松田に近づくと嗜虐的な笑みを浮かべた。

 

「ご主人様の提案でね、『さっきのゲームでは相手を全滅させたから、今度は一人も退場させずに勝とう』ですって。あははははは! 貴方達なんて相手として見られてないのよ!」

 

「く、くそぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くっ! な、なんで……」

 

小猫は拳を押さえながらしゃがみ込む。彼女の拳の骨にはヒビが入り血が吹き出ていた。一方、拳を受けた側の一誠は平気な顔で立っている。

 

「いや、この鎧頑丈なんだから殴ったらそうなるって。一応最上級悪魔クラスの仙術妖術魔力ミックスの一撃を受けても平気だったんだからさ」

 

「……やっぱり私の本名は姉様から」

 

一誠の言葉から姉の知り合いだと理解した小猫は震えだす。彼がこのゲームで勝った時に手配が解除されるのが誰か理解したのだ。

 

「な、なんで姉様を!? あの人は危険なんですよ!」

 

黒歌が手配された理由。それは仙術を暴走させ力に溺れて主を殺して逃げ出したという事になっている。残された小猫を上級悪魔達は殺すように主張したがサーゼクスが庇い、それが経緯で小猫はリアスの眷属になったのだ。そして今でも彼女は姉を恐れている。だが、一誠はそんな彼女の姿を見て溜息を吐いた。

 

「黒歌も報われないね。せっかく君を守る為に主を殺したってのにさ。そもそも、君に起きた不幸は現魔王がしっかりと貴族を管理できていれば起きなかったんだ。……これ以上は野暮だね。後は本人から聞いたら?」

 

「ど、どういう事ですか!?」

 

小猫が一誠の言葉に動揺した時、無数の影が部屋に入ってくる。どれも黒い粘液のような物体で体が構築されており、内部に旗を入れていた。

 

「全テ、集マッタ。残リ、敵ガ持ッテイルノダケ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、急ぐわよ!」

 

「はい!」

 

シャドウを倒したと判断した二人は旗を拾って本陣に戻ろうとする。だが、床に出来ていた影から伸びてきた粘液が旗を全て掴むとそのまま影に消えていった。最後に影の中から声が響く。

 

「馬鹿メ。勝ッタト思ッタ瞬間コソ気を引キ締メルモノダ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《うわ~、やっぱりエゲツナイ能力でやんすね。影に潜り込む能力と分裂。そして破片一つでも残っていれば直ぐに再生とか……》

 

《しかも触れただけで生命力を奪う力か……。しかも、彼奴は核に……そろそろ時間だな》

 

 

 

 

 

『制限時間が過ぎましたのでゲームを終了いたします。赤龍帝様が全百本中全てを獲得し勝利いたしました』

 

 

 

 

 

《では、サーゼクス。約束は守ってもらうぞ。詳細は後日知らせろ。私は此れからフェニックスとの示談の話し合いがあるからな》

 

「分かりました。……ハーデス様。彼らは何者なのですか? 幾らなんでも異質すぎる……」

 

《詮索不要だ。ただ一つ言えるのは、過去・現在・未来において最強の赤龍帝だという事だけだな》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え~、それでは皆さん。ギリシア旅行決定を祝いまして……」

 

『かんぱ~い!!!!』

 

ゲーム後、面倒臭い全てをハーデスに押し付けた一誠達は異界へと来ていた。今は旅行決定を祝う宴が催されており、皆盛大に飲み食いしている。口裂け女とベートベンが飲み比べをし、カシマレイコとテケテケがゲームに興じている。ありすとアリスや花子さん等のお子様組はジュースを飲み、メリーや人体模型などの飲食ができない者達も歌ったり踊ったりして楽しんでいた。

 

 

 

《あの~、玉藻さん。あっしもお呼ばれして良かったんで?》

 

「ええ、ご主人様が決めた事ですから。……本当は二人っきりで祝いたかったなぁ」

 

「私もにゃ。ああ、一誠の腕に初めて抱かれた時の事を思い出すと濡れてわ。……はぐれ解除して貰ったお礼って口実で夜這いしようっかにゃあ?」

 

「ちょっと、待ったぁぁぁ! 本妻は私なのですから妾は黙っていてください! 言っておきますがご主人様の初めては私が美味しく頂いたんですよ!」

 

「はぁ? 誰が本妻って言ったのかにゃ? それに、押し倒してヤったって聞いたわよ?」

 

二人はそう言って睨み合い火花を散らす。一触即発の空気が流れる中、突如二人の後ろから一誠が抱きついてきた。

 

「何やってんの~? えへへへへ」

 

「ご、ご主人様? ああん、こんな所で♪ 皆が見ていますよ」

 

「……まぁ、駄狐と一緒というのは嫌だけど……。あれ? もしかしてお酒飲んだのかにゃ?」

 

黒歌が一誠の体臭を嗅ぐとわずかにアルコールの匂いが漂ってくる。酒宴の席では黒歌に視線を向けられた口裂け女と後頭部が出っ張った老人が目を逸らした。

 

「……ちょっと絞めてくからイッセーは頼んだにゃ」

 

「は~い♪」

 

黒歌に睨まれた二人の周囲からは一斉に人が引き二人は取り残される。

 

「ちょっと拳でお話しましょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん。玉藻の膝は気持ちいいね~♪」

 

「それは何よりでございます♪ この玉藻。あなた様がお望みとあらば何時だって膝枕をいたしますよ。それどころか夜伽や昼伽、朝伽も、キャッ♪」

 

一誠はあの後に膝枕をねだり、玉藻は至福の表情で頭を自分の膝の上に乗せた一誠の顔を見つめる。だが、玉藻は急に真面目な顔をした。

 

「……ご主人様。私に問題児達の監督役を任せたのは私を信頼しているからだけじゃないですよね? 私をできるだけ戦わせたくないから……違いますか?」

 

「……うん。玉藻がいくら強くても絶対はない。もう、嫌なんだ。玉藻を失うのがさ。あの時、俺が後ろから付いてくる玉藻に気付いていれば死なずに済んだのに……」

 

一誠はそう言うと腕で目を隠す、腕の隙間から水滴が溢れていた。

 

「……だからさ、玉藻。今度は俺の傍にずっと居てくれる? もう居なくなったりしない?」

 

「……それはもう当然です! この玉藻、この魂が磨り減って無くなるまで貴方のお側でお仕えいたします。ですから、これからも宜しくお願いしますね? ご主人様♪」

 

「……有難う」

 

「……あの~、所で今の発言は……プロポーズですね! きゃ~、どうしましょう! 玉藻は俺の嫁発言いただきましたぁ!!」

 

「……色々台無しだね。まぁ、其れで良いよ。ってか、好きだって何回も言ったでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっ!? 少し目を離した隙に美味しい所を持って行かれた気がするにゃ!」




意見 感想 誤字指摘 活動報告でのアンケートお願いします

明日は久々に赤髪の予定 それ書いたらこっちの執筆

どうやら狐時代の玉藻を失ったのは相当堪えてるようです ライザーvsリアス? 其の辺は次回の会話の中で


シャドウ 召喚戦記サモンナイトに出てきた影の巨人を改造 分裂 影に潜る 高速再生 触れた相手の生命力を吸い取る 龍殺し などの能力持ち
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