霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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閑話 小さくなった外道 ②

 マッドサイエンティストという存在は非常に迷惑だ。まあ、訳すと”狂った科学者”なのだから仕方ないのだが。

 

「凄いヨ凄いヨ、これは素晴らしいネ!」

 

 ここは都市伝説組が暮らす何処かの旧校舎を模した異界。人の恐怖心から生まれた住人達は人の心から忘れ去られた今ではこの場所か精々一誠の家でしか活動できない物が殆どだ。

 

「あら、面白そうね。何を作ってるの?」

 

 この声の主も外ではロクに活動できない者の一人、”メリーさん”だ。捨てられた人形に”メリーさんへの恐怖心”等が入り込みメリーさんとなった彼女は一誠に誘われてこの場所で暮らしている。今は空中にフワフワ浮きながら先程から作業しているマユリの手元を覗き込んだ。

 

「邪魔するんじゃないヨ! オーフィスを封じ込めた宝玉を使ってアイテムを作ってるんだ。あっちに行け」

 

 マユリは虫でも追い払う様に手を振ると作業に集中し出す。当然、そのような扱いをされればメリーの不満は増すばかり。元々好奇心旺盛な性格なのでこの程度で諦めるはずがなかった

 

「ぶ~! この場所に溢れる妖気や瘴気が丁度良いから使わせろって言ったのはそっちじゃない。だったら見るくら良いでしょ! でさ、何を作ってるの?」

 

「はん! 見るだけじゃなくって質問もしてるとは頭の中までボロのようだネ。……ネム! このボロ人形を撮み出せ」

 

「了解しました、マユリ様」

 

 そのままネムに首根っこを掴まれて部屋から追い出されるメリー。

 

「開~け~ろ~! 開~け~ろ~! 開~け~な~さ~い~!」

 

 何時も手にしている鋏で扉に切り掛ってたり手でペチペチ叩いても空くはずがなく、三十分もすればメリーが飽いた。

 

「テレビでも見に行きましょ。……あ~あ、私も遊園地に行きたいなぁ」

 

 だがその願いは叶うはずがない。今のメリーでは外に出れば自我を失いタダの人形に成り下がる。此処に戻ってくれば元に戻るがその間の記憶はないのでまったくもって意味がなかった。

 

 

 

 

 

「その結婚! ちょっと待ったぁぁぁっ!!!! ……あれ? 明美は?」

 

「その人なら隣の式場ですよ」

 

 

 

「……つまんない。ふわぁ~あ」

 

 一誠が持ち込んだテレビを見るも再放送のドラマなどしかやっておらずメリーは何時の間にか瞼が重くなってしまい、リモコンの上でスヤスヤと寝入ってしまう。

 

 

 

「よく寝ているねぇ」

 

 その体にそっと赤いコートを着た女性が手を伸ばした……。

 

 

 

 

 

 

「遊園地だ! わたし、観覧車がいい!」

 

「あたしも最初は観覧車がいいわ。一番高い所で大佐のあのセリフ言いたいの」

 

 一行がやって来たのは家族連れで賑わった遊園地。今すぐにでも目的の乗り物に乗ろうとはしゃぐありすとアリス、

 

「ああ、良いわねぇ」

 

 そして其れを見ながら怪しい笑みを浮かべるメディア。一応人気小説家として顔が知られているので変装をしている。サングラスに帽子という”私、顔知られていま~す”、とアピールしているようなバレバレのものだが、其処ら辺は魔術で何とかしている、流石神代の魔女、といった所だろうか?

 

 

 それなら最初から魔術で気付かれないようにすれば変装する必要すら無いのだが。何処か抜けた王女様である。

 

 

「主、着きましたよ」

 

「ん……遊園地!」

 

 折角なのでと転移ではなく電車で来たのだが途中で疲れたのか遊園地で遊ぶ前に疲れて眠ってしまい、今はランスロットの背中の上にいた、体を揺すられて目を覚ました一誠は未だ眠そうにしているが遊園地を見るなり飛び降りた。

 

「こら! 危ないですよ」

 

「ごめんなさい……」

 

「……中身まで子供に戻っているのですね。しかし性格変わっていませんか?」

 

 ランスロットが疑問に思うのも無理はない。子供も頃の一誠を知る身からすれば同じ年頃の一誠なのに性格が大人しくて子供らしすぎるからだ。

 

「……簡単な話よ。この頃の坊やは何も出来ない自分に絶望して性格が弄れたけど、今の坊やは記憶が有るからどうにか出来る事を知っている。だから子供らしく振る舞えるのね……」

 

 メディアの言葉に場の空気が重くなる。その時、入場口の方から声が掛けられた。

 

 

「お~い! 早く早く!」

 

「早くチケット買って~」

 

「早く入りましょ」 

 

 聞こえてきたのは遊園地を純粋に楽しみにしている子供達の声。その姿に三人の気の落ち込みは晴れ、急いで売り場まで向かっていった。

 

 

 

 

「「ふはははは~! まるで人がゴミのようだぁ~!」」

 

 早速乗り込んだ観覧車で騒ぐありすとアリス。窓から外を見下ろしながら某大佐の有名台詞を叫ぶふたりを見てメディアは頭を悩ませていた。

 

「・・・・・う~ん。流石にどうなのかしら。まあ、アニメの真似だし、それなら坊やの方が悪影響だし……」

 

「僕、そんなに悪い?」

 

「あ~! メディアさんがイッセー苛めたー!」

 

「苛めたー!」

 

「ち、違うわよ!? 誤解だってば」

 

 今は一誠の方が年下の為か呼び捨てにしている二人に責められて慌てるメディア。その間、四人乗りなので余ったランスロットとロスヴァイセは何かあった時の為に外で待機していた。

 

「こういう所も良い物ですね。私達も子供が出来たら連れてきましょう」

 

「そ、そうですね。……あの、護衛って私達だけで本当に良いのでしょうか?」

 

「神滅具持ちが二人に私、そしてメディア殿が居るのですよ? 敏感な者には見えなくても悪影響が出てしまいますし、あまり目立つ力の持ち主も秘匿の点で却下。……大丈夫、ちゃんと優秀な方がついて来ていますよ」

 

 そう言ってお化け屋敷の屋根を指さすランスロット。屋根の上には見覚えのある悪霊の姿があった。

 

 

 

 

 

「ねぇ、次はコーヒーカップに乗りましょう!」

 

「私たち三人一緒のカップね!」

 

「うん、良いよ!」

 

 一誠は両側から腕組みされながらコーヒカップへと向かっていく。その姿を微笑ましそうに見詰めるランスロットとロスヴァイセ、

 

 

 

 

 

「……羨ましい羨ましい羨ましい」

 

 そして妬ましそうに一誠を睨むメディア。なんか近寄りがたいので美人でも声をかけられなかった。

 

 

 

 

「あ~、楽しかった! イッセーも私達と一緒で楽しかった?」

 

「イッセーも私達と一緒で楽しかったわよね?」

 

「うん! 二人位と遊ぶと楽しいよ! 僕、二人のこと大好き!」

 

 

 

 

「……あれって天然でしょうか? ……そういえばドライグさんは?」

 

「なんでも”相棒がまともに童心に帰って楽しい気分になってるのを邪魔したくない”、って何か有るまで表に出ない気らしいわよ。次はお化け屋敷なのね」

 

「お化け屋敷、ですか? 一体何で……?」

 

 此処のお化け屋敷は怖い事で有名だが、そもそもありす達は悪霊(幽霊)で一誠は霊感が昔からあって霊は身近な存在。態々入る意味がわからないといった様子のランスロットに対し二人と遠くの一体は同時に溜息を吐いた。

 

 

「分かってないわね」

 

「分かっていませんね」

 

「分かっていないネ」

 

「……え~と、何を?」

 

 

 

 

 

 

『バァッ!!』

 

「「きゃぁぁあああっ!!」」

 

 出てきたお化け(偽物)を見るなり悲鳴を上げて一誠に抱きつく二人。もちろん怖がってなどいなく、ここに入ったのは怖がって抱き着くといったシチュエーションの為だ。今の一誠は幼い姿なので抱き着かれていてもほのぼのとしており、思わず話し掛ける者もいた。

 

「おやおや、デートかい?」

 

「そうなるのかな? お爺さんは此処に住み着いているの? 地縛霊?」

 

「早く成仏しないと罪が重くなるよ」

 

「ハデスのお爺ちゃんは其の辺厳しいのよ」

 

 幽霊(本物)には普通に対処して進む三人。そのまま半場まで歩いた頃だろうか? 偽物の生首がぶら下がって来た。

 

 

 

「……そろそろ飽きてきたね」

 

「わたし、何か食べたいわ」

 

「お弁当があるわよ、お弁当。イッセーのお母さんとグレンデルとクロウクルワッハが作ってくれた奴」

 

 そろそろお化け屋敷がどうでも良くなった三人は特に反応せずに進んでいく。

 

 

 

 

 

 

「わっ!」

 

 その時、一人の少女が脅かすかの様に背後から大声を出してきた。

 

「……何?」

 

「え~!? それだけ~?」

 

 勿論一誠の反応は薄い。それが面白くないのか少女は頬を膨らませる。少女の見た目は金髪に青空のように澄んだ青の瞳、そしてドレスといったまるで人形の様な見た目。その胸元で大きめの石が嵌められた首飾りが光り輝いていた。

 

 

 

 

 

 

「あれ? ねぇ、アリス(わたし)。メリーって異界から出れたっけ?」

 

「メリーは出れなかったはずよ、ありす(あたし)

 

「それよりも何で人間の姿なの? メリー」

 

「……バレバレ!?」

 

 




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