霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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本当はもう少し書きたかったけど睡魔マックス 明日残り投稿します


二十話

「お礼の品を渡したいって呼び出してきたからどんな所かと思ったら、寂れた所ですねぇ。神気が全然しませんよ」

 

「仕方ありませんわ。神気があっては悪魔は住めませんもの」

 

小猫を通じて呼び出されたのは今は神に所有されていない神社。今は悪魔が所有しているこの神社には朱乃が住んでおり、入り口まで転移してきた一誠と玉藻を案内しながら石段を登る。その間、一誠は誰かの話を聞いているかのように頷き、最後に首を捻っていた。

 

「……うん。じゃあ、機会を見計らって、という事で」

 

「どうなされました?」

 

「あ、気にしないで。こっちの話だから」

 

三人が石段を登りきって奥に進むと一人の青年が立っていた。端正な顔立ちに純白のローブ。頭上には金色の輪っかが浮いている。青年は一誠達に気付くと笑みを浮かべながら近寄ってきた。

 

「初めまして、赤龍帝さんとその従者さん。私は天使の長のミカエルです。……見た目はだいぶ違っていますがこのオーラは確かにドライグですね」

 

メディアの術は神器を発動していない間だけ効果があるようになっているので禁手状態の一誠からはドライグのオーラが放たれている。ミカエルは背中から金色の十二枚の羽を出現させた。

 

「先日はコカビエルを止めて頂いたばかりか因子の魂を解放して頂いたと聞いています。本当に有難うございました」

 

「気にしないで。俺は彼らの声が聞こえたから助けただけだから。あのさ、一つ聞いて良い? なんであの二人だけを派遣したの?」

 

「生憎この街は悪魔の縄張りですので迂闊に人材を派遣しては要らぬ争いを生みかねません。ですが、今となってはそれを後悔しています。聞く所によると、あのままだと街が崩壊していたかもしれないとか。多少無理をするべきでした」

 

一誠の問いにミカエルは申し訳なさそうに答える。もし一誠やヴァーリが居なかったら大勢の死者が出ていたと聞いて気に病んでいたのだろう。一誠も極希に空気を読むのかそれ以上何も言わず、一行は本殿の方へ移動する。本殿の中央には一本の剣が浮いていた。

 

「こちらはゲオルギウスの持っていた龍殺しの聖剣『アスカロン』です。どうぞお受け取り下さい」

 

「俺あまり剣術は得意じゃないんだけどな~。生兵法は大怪我の元って諺知ってる? ま、お礼にくれるって言ってるんだし貰っておくよ」

 

一誠はあまり嬉しくなさそうな声で剣を受け取る。剣術を得意としない彼では、剣を貰っても無用の長物でしかない。すると玉藻が何か思いついたのか元気良く手を挙げた。

 

「あ、ご主人様。あの人に渡したらどうですか? 『私は貴方にお仕えできるだけで十分でございます』って言って普段は物を受け取りませんが、剣を下賜するって言えば喜んで受け取りますよ。……にしてももう少し相手に必要かどうか考えて欲しいですよね~」

 

「ははは、す、すいません。何分情報が少ないもので……」

 

一誠は玉藻の言葉を聞くなりアスカロンを影の中に沈める。ミカエルはそれを聞いて顔を引きつらせ謝罪した後に一誠に話しかけてきた。

 

「一つお聞きしたいのですが、なぜ正体をお隠しに? 貴方は冥府の所属だと聞いています。その身分が知れ渡った今では勧誘等の面倒事もないのでは?」

 

ミカエルのその問いに対し一誠は呆れたように溜息を吐いた。

 

「……俺は身を守れるけど両親は違う。一応守護は付けてるけど絶対はない。二人を守る為にも俺は正体を隠して置きたいんだ。俺が誰か分からななければ狙われないからね。……グレモリーやシトリーは一般人を眷属にしてるけど、俺が敵なら眷属の家族や友達を人質に取るな。それで情報を流させたり罠に嵌めたりするよ。侍とかの時代なら兎も角、現代人が親や友達を見捨ててまで貫くような忠義心を持ってるとも思えないしね」

 

「……なる程。納得しました」

 

「……んじゃ、俺はもう帰るね。あ、姫島さんに伝えといて。お父さんと仲違いしている事をお母さんが心配してる、ってさ」

 

 

その後、ミカエルからその言葉を伝えられた朱乃は動揺し、小猫を通じて一誠に連絡を取ろうとするも連絡が付かないまま会談の日がやってきた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、来たよ。悪いけど来て欲しがってたレイナは怪我で療養中だし、ポチには別の仕事があるから連れて来なかったよ」

 

勿論レイナーレが療養中だというのは堕天使を警戒しての嘘であり、ゲームの時に玉藻の癒しの力を見ている悪魔達は疑問に思うも何も言わなかった。

 

「ああ、別に構わないよ。こっちが無理にお願いして来て貰ったわけだからね。じゃあ、其処に座ってくれるかい?」

 

サーゼクスが指した方向には一誠と予め伝えてあった人数分の席があった。一誠は中央の席に座り、玉藻はすぐ隣の席に座る。ハーデスに一誠のお供として派遣されてるベンニーアも玉藻の隣に座った。そして黒い甲冑を身に纏った騎士らしき人物は二人の後ろに陣取った。

 

「君は座らないのかい?」

 

「いえ、私は主の護衛として来てますので此処で結構です」

 

サーゼクスの言葉に騎士は首を振って答え、部屋の中を警戒した眼差しで見回す。部屋は駒王学園の新校舎にある職員用会議室。中央には豪華なテーブルが有り、それを囲むように三勢力別に座っている。先日の一件の関係者でまだ来ていないのはリアス達のみだ。

 

「……何か主に御用ですか?」

 

騎士は先程から一誠の方を興味深そうに見ているアザゼルに問いかける。あまりに不躾な視線を主に向けられた事に少々苛立っているらしい声のトーンに対し、アザゼルは悪びれた様子もなく話しかけてきた。

 

「いや、神器の研究を趣味としてる俺としちゃ神滅具の禁手の亜種には大いに興味があるわけよ。んで、先日の一件の為に呼んだんだから会議中には言えねぇだろうし、今言うぜ。その禁手と幽世の聖杯を調べさせてくれよ」

 

「幽世の聖杯? ……さぁ、何の事?」

 

《あっしにもさっぱりでさ》

 

アザゼルが勘違いしている事を察した二人はとぼけたような態度を取る。なおも食い下がるアザゼルであったが、隣に座っていた幹部らしき男に止められ、リアス達が来た事もあって残念そうに黙り込む。しかし、まだ好奇心でいっぱいの目で一誠達を見つめていた。

 

 

 

会談は順調に進み、途中アザゼルの信用がないという話題になった時に、

 

 

「まぁ、堕天使自体が神から離反した裏切り者の集団だし仕方ないんじゃない?」

 

「それを言うなら魔王だって謀反起こした簒奪者ですよね」

 

と一誠と玉藻が発言し、後ろの騎士が胃の辺りを痛そうに押さえたり、それを聞いた悪魔や堕天使が殺気を飛ばしてくるも一誠達は平然としたりするなどがあっただけだった。そして最後に一誠に質問が投げかけられる。

 

 

「おい、赤龍帝。お前は世界をどうしたいんだ?」

 

同じ質問をされたヴァーリは強者との戦いを求めるという返答をし、今は一誠の発言に耳を傾けている。一誠は少し考えると答えを口にした。

 

「う~ん。世界をどうとか興味ないな。俺は面白おかしく生きれれば良いよ。あ、戦いとかは興味ないから」

 

「……おいおい、邪龍やら隣の狐の姉ちゃんとか強力な部下を集めていながらそれはねぇだろ。説得力ないぜ」

 

一誠の答えにアザゼルは納得いかない様子だ。無理もない。一誠の部下として把握されている者達だけでも十分過ぎるほどの戦闘力を持っている。そんな部下を沢山持っていながら戦いには興味ないと言われても納得できないだろう。だが、一誠は不満そうに返答した。

 

「仕方ないでしょ? 唯でさえドライグのせいで戦いに巻き込まれやすいんだから力や強い仲間が欲しいんだ。で、仲間が増えれば、それを守る為に更なる力や仲間が欲しくなるんだからジレンマだよね。まったく、ドライグてばロリペドなだけでなくて迷惑な相棒だよ」

 

一誠がドライグの評判をさり気無く貶めた時、会場の時間が停まった―――。




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