霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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シャガルマガラ撃破しました 思ってたより楽だったけど下位なら仕方ないかな?

装備はゴア・マガラのガンランスにガード性能+2 砲術王


冥界合宿のヘルキャット
二十四話


三すくみの会談から数日後の夏休みまであと少しの日の夜、異界では宴会が行われていた。何処から調達したのか様々な飲み物や食べ物があり、各々好きなものを食べている。ただ、何かの肉料理と赤黒くてドロドロとした液体だけは生者組と玉藻、元人間の霊達は決して口を付けなかった。

 

「うぉれは、うぉれは、くぅぞぉぉぉぉ!!」

 

「ひっひっひ! うんめぇなぁ」

 

クドラクとグリンパーチが何かの肉料理と赤黒い液体を美味そうに口にする中、ポチとランスロットは杯を交わしていた。

 

「どれ、ご一献」

 

「これは申し訳ありません。ポチ殿もどうぞ」

 

この二人は侍と騎士という似た者同士からか仲が良い。もっとも、群れを守る事を大切とする狼のポチは主を裏切ってしまい挙句の果てに国を滅ぼす要因となったランスロットの事を当初は嫌っており、その様子を面倒臭がった一誠の提案で剣を交える事で仲良くなったのだ。

 

「そう言えば夏休みにはギリシア神話体系ですね。ポチ殿は留守番で良かったのですか?」

 

今回の旅行はポチも招待の対象に入っていたのだが本人はそれを固辞した。

 

「拙者の役目は家を守る事。それが拙者の役目であり誇りで御座るよ。それに、異国の水は性に合わんのでな」

 

やはり酒も水も日の本の物が一番だ。ポチはそう言って盃を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、この間は楽しかったよ。久しぶりに怪異として本来の仕事をこなしたからねぇ。昨日も小学校の旧校舎から此処に迷い込んできてね。ま、適当に脅して追い出したんだ。子供の怯える声は何度聞いても最高だよ」

 

「は、はぁ……」

 

この間の一件で大暴れした口裂け女は楽しそうに酒を煽りながら玉藻に絡む、薄ろには空になった酒瓶が何本も転がっていた。なお、小学生が迷い込んだのは偶々異界と繋がりやすくなっていた旧校舎の上に、繋がるのを防ぐために置かれていた埴輪が壊れてしまったからだった。玉藻が口裂け女に解放されたのは宴が終盤に差し掛かった頃であり、一誠はその間ずっとありす達とトランプをやっていた。

 

 

 

 

 

 

「良い? バレなきゃイカサマじゃないんだよ」

 

「わかった! お兄ちゃん凄いね!」

 

「流石ね、お兄ちゃん!」

 

ありすとアリスは無邪気な笑みを浮かべて一誠を褒め称える。

 

「あ、でも、カジノとかでインチキしたら不味いからメディアさんとお小遣いを賭けて遊ぶ時だけにしといた方が良いよ」

 

なお、このセリフは後日メディアにバレ、一誠はこっ酷くお説教を受けるハメになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……朝か。確か今日は母さんは町内会の温泉旅行で居ないし、夏休みだから学校はないし……」

 

「……うみゅう」

 

ハーデスが旅行に連れて行ってくれる日はまだ先であり、最初の数日で宿題を終えた一誠は惰眠を貪っていた。床には男物と女物の下着や服が散乱し、横では玉藻が一誠の腕に抱きついてスヤスヤと寝ている。起こさないように腕を外した一誠がパンツを取ろうとした時、普段玉藻が付けているリボンが目に付いた。作られてから長い年月が流れたのかすっかりボロボロになっており、幼い子供が書いたのか汚い字で玉藻の名が書かれていた。

 

「……もう十二年も前になるのかぁ。懐かしいなぁ」

 

そのリボンは一誠が初めて玉藻にあげた物。まだ生まれたばかりの玉藻を飼う事になった時、一誠が少ないお小遣いを工面して買ったのだ。それはたまもが交通事故で死んだ日も付けており、死後もずっと付け続けていた。リボン自体は十二年前に買った物なので何度も縫い直しているが既に寿命が尽きかけている。

 

「ギリシアで新しいのを買ってあげようかな? ……とりあえず朝飯作って貰おうっと」

 

一誠は取敢えずパンツとズボンを履いて玉藻の体を揺らす。だが中々起きず、顔を覗き込んだ瞬間、腕を掴まれベットに引きずり込まれた。玉藻は器用にズボンとパンツを素早く脱がすと一誠に抱きついて足を絡ませる。

 

「ねぇ、ご主人様ぁ♥ 朝餉を食べる前に玉藻を食べて下さいませ♪ 昨日の夜の高ぶりがまだ残っておりまして辛抱ができません。まさか譲渡を使ってあそこまで敏感にさせられるとは……」

 

玉藻はそこまで言うと夜中の事を思い出したのか顔を真っ赤にする。しかし、一誠は狸寝入りに騙されたことに不満そうな顔をしていた。

 

「……むぅ。まさか玉藻に騙されるなんて……」

 

「騙して喰らうは狐の領分でございます。でもぉ~、私は食べられる方が良いかなぁ~。 キャッ☆ って、居ねぇし!?」

 

玉藻のホールドから器用に抜け出した一誠は幻覚と入れ替わって既に部屋から出ており、玉藻も慌てて台所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、失態の責任を取って実家に所有する領地の一部を返還かぁ。魔王も減俸処分を受けたんだ」

 

「ご主人様。新聞は後にして食卓に着いてくださいよぉ」

 

朝食の準備をしていた玉藻はソファーで冥府発行の新聞を読んでいる一誠を叱る。どうやら先日の一件でリアスやギャスパーは個人所有の領地を大幅に削られたようだ。一誠が新聞を畳んで食卓に着くと朝食が運ばれてきた。

 

「今朝のメニューは焼き鮭にほうれん草のお浸し、ワカメと油揚げのお味噌汁です。熱い内にお召し上がり下さいませ。ア・ナ・タ♪」

 

「……分かったよ、ハニー。あ、ご飯大盛りね」

 

一誠は取敢えず玉藻がして欲しそうな返答をしながらお茶碗を差し出す。玉藻はウキウキしながらお茶碗を受け取ると並々と白米を盛って渡す。そして自分の分を用意しようとした時、横合いから小さな手がお茶碗を差し出してきた。

 

 

 

「我も大盛り」

 

「はいはい、ちょっと待ってくださいねぇ……って、えぇぇぇぇぇ!?」

 

「もぐもぐ。……ドライグ、一誠、久しい」

 

玉藻からお茶碗を受け取ったオーフィスはその場で米を口にし、口元に米を付けたまま口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方ぁ! お醤油を取って下さるかしら?」

 

《待っていろ。直ぐに持っていく》

 

その日珍しくハーデスは妻のペルセポネーと共に料理をしていた。彼女はハーデスに見初められ、攫う形で冥府に連れてこられたのだが、今では夫婦仲睦まじく暮らしている。なお、実は彼女はハーデスの弟であるゼウスの娘であり、つまりハーデスの姪なのだ。ハーデスが妻に頼まれて鍋に醤油を垂らそうとした時、一人の死神が現れる。道化の仮面をつけた彼の名はプルート。神話に名を連ねるほどの実力を持つハーデスの側近だ。

 

《何の用だ、プルート》

 

《実は一誠から連絡がありまして……オーフィスが訪ねてきたそうです》

 

《ぶふぁっ!?》

 

ハーデスは驚きの余り醤油差しを取り落とし、鍋の中に醤油がぶちまけられる。……かと思いきやペルセポネーが素早く鍋を外し、代わりにハーデスのローブの裾を使って受け止めた。防水加工がされているおかげで床に醤油が垂れる事はなく、ハーデスの服が醤油臭くなるだけですんだ。

 

「危なかったわぁ。お醤油が床に溢れたら大変ですもの」

 

《私のローブが醤油臭くなったのだが……》

 

「何か文句があるのかしら?」

 

《いえ、ありません。……プルート。とりあえず刺激しないように伝えておけ》

 

何処の家庭も妻が最強のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グハハハハハ! いっちょ死合うとするか、おぉい!?」

 

「落ち着けグレンデル。此処で戦ったら家が吹き飛ぶで御座るよ」

 

プルートからあまり刺激するなと連絡を受けた一誠はオーフィスから要求されて話し合いに応じる事にした。一応護衛として人間サイズになったグレンデルとポチ、そしてシャドウと玉藻を傍に置いている。玉藻も今回は警戒してか最初から尾を九本出しており、いつでも戦闘態勢が取れるようにしていた。しかし、当のオーフィスは特に気にした様子もなく出されたお茶菓子を口にしている。

 

「はむはむ、ごくん。……この前の戦いの事聞いた。今回の赤龍帝何時もと違う。それに強いのにまともに戦わないってヴァーリが言ってた。何故?」

 

「そりゃまぁ、人は全て千差万別。同じ人なんて居ないんだから他と大きく違うのが居てもおかしくないよ。それに俺がマトモに戦わない? ねぇ、マトモな戦いの定義って何? 目的の為に手段を選ばないのが悪い事なの?」

 

「良く分からない。……また来る」

 

オーフィスは首を傾げながら去っていく。とりあえず一誠が再び連絡した所、ゼウスには伝えておくから心配するな、とだけ返答があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてギリシア旅行当日、魔法陣で転移した一行はベンニーアの案内でハーデスの用意した屋敷にたどり着いた。屋敷の近くには綺麗な湖が有り、泳ぐのに適していそうだ。

 

 

《此処は客人用の屋敷でやんす。では、部屋割り表を渡すでやんすよ。旅行中は部屋のメンバーで班を作って行動する事になってるでやんす》

 

彼女から渡された部屋割り表によると一誠は玉藻と同室になっており、その他は五人一組になっている。そんな中、ランスロットの表情が固まっていた。

 

「あ、あの、私と同室の者なのですが……」

 

彼と同室になったのはグレンデルとクドラクとグリンパーチ、そして後頭部の大きい老人だった。見事に問題児中の問題児達である。ランスロットは一誠に何とかしてくれと必死で目で訴えたが、

 

「期待してるよ、ランスロット。君なら彼らを抑えれるってさ」

 

「お任せ下さい我が主!」

 

基本単純なランスロットはあっさりと承諾した。なお、騎士って扱いやすいなぁ、と一誠が思っていたのは秘密である。世の中言わない方が良い事が沢山有るのだ。

 

 

かくしてランスロットの胃痛を確実にしながら一行は旅行を楽しんだ。湖では水着姿の玉藻と黒歌が一誠を誘惑しながら争い、レイナーレが遠巻きにそれを見ていたり、口裂け女がありす達と花子とメリーに泳ぎを教えたり、ランスロットが胃痛を感じたりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、玉藻。そのリボンもボロボロになってきたし新しいのに変えない? 好きなの買ってあげるよ」

 

念の為に禁手状態で出歩いている一誠は玉藻と一緒に入った店で綺麗なリボンを手に取り玉藻に見せた

 

「で、ですが、このリボンは……」

 

玉藻は一誠からの提案に言い淀む。今付けているのは初めて貰った物であり、生前から大切にしている物だ。いくら新しいのを送って貰えるからといって簡単にそうですかと言えはしない。そんな彼女の心中を察したのか優しく微笑むと玉藻が付けているリボンを触る。

 

「コレは俺にとっても思い出の品だし、戦闘で破れたらいけないから宝箱にでも保管しておこうよ。それに玉藻に何か送りたい気分なんだ」

 

「ご主人様……。有難うございます♪」

 

二人は店内で甘い空気を醸し出す。そんな二人に対し、偶々見ていた婚活中の百円ショップマニア以外に睨む様な視線を送っている者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ! 二人っきりでイチャつきやがって! しかも玉藻の奴、イッセーの子種を独占してるのにゃ!」

 

敵意を送っていたのは黒歌。彼女も一誠とは長い付き合いであり、何度か一緒に寝ているのだが玉藻の呪いによってBまでしか進んでいない。そんな彼女を呆れた様に見ているのはベンニーアとレイナーレだ。

 

《口調変わってるでやんすよ……》

 

「街中で子種とか言わない方が良いんじゃない? ……あれ?」

 

何時に間にか二人の姿は消えており、黒歌は慌てて気配を探すも見つからない。なお、残りの班員二人を放って行動したとして彼女達三人分の分の旅費は自腹となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《スマンな、此方が誘った旅行中なのに呼び出して》

 

「気にしなくて良いよ、爺さん。あっ、ペルセポネーさんお久しぶりです」

 

「お元気そうで何よりですわ、ペルセポネーさん。あ、ハーデス様もお久しぶり」

 

「あらあら、二人とも元気そうねぇ。お茶でも飲む?」

 

旅行の途中、急にハーデスから呼び出された二人は彼の館まで来ていた。二人はハーデスには適当に挨拶をするがペルセポネーにはキチンと挨拶をする。

 

《……私だけ扱い雑じゃね?》

 

「「「爺さん(ハーデス様)(貴方)だから仕方ない!!」」」

 

『その通り!!』

 

ハーデスが抗議した瞬間、三人と警備の死神達がピッタリの息でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ! まだ体中が痛む!」

 

ヴァーリはシャドウから受けたサマエルの毒による激痛が体から未だ抜けず、顔を顰めながらテロ集団の本部に通路を歩く。本部は広く道に迷った彼が誰かに案内して貰おうと辺りを見渡すと一人の少年が歩いてきた。

 

「ああ、其処の君! 済まないが資料庫は……痛っ!」

 

しかし、少年に道を聞こうとした瞬間、取り分け強い痛みが彼を襲い、ヴァーリは前のめりに倒れこむ。その時偶然少年を押し倒してしまい……、

 

 

 

 

 

 

「レオナルド、徐々次の作戦……へ、変態だぁぁぁぁ! くそっ! レオナルドから離れろ変態がっ! 来い! 『黄昏の聖槍』!!」

 

後からやって来た青年に誤解されてしまう。かくして、組織内にヴァーリとアルビオンのショタホモ説が瞬く間に広がる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルビオン、ショタ龍皇ホモビオンなる? 其れってどんなの? 我分からない。教えて」

 

「『グッハァァァァァァァァ!!!』」

 

ヴァーリの完治が一ヶ月遅れた……。




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