霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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今日は筆が走らないので短めです 感想が少ないとモチベーションが下がり、多いと上がる。今のところは絶好調です!!


二十六話

僅かな光すらない闇の中、三ヶ所に分かれて建物が存在している。闇の中でもその建物だけは白日の下の様にハッキリ見えた。一箇所目は四つの塔。大きさや形は多少違うがどれも立派な造りだ。二箇所目は大きな屋敷。大勢の者が暮らしていると思われ、庭園まである。そして三ヶ所目は七つの屋敷。どれも様式がバラバラで、其々の屋敷には七種類の紋様がある。豚、ユニコーン、蛇、蠍、熊、ライオン、狐。それらは七つの大罪を表す動物達だった……。

 

「ねぇ、例の物は完成してる?」

 

一誠は二箇所目の屋敷の一角にある研究室を訪れていた。室内には様々な機械やホルマリン漬けが置かれてあり、研究者らしい男性と助手らしき女性が一誠と対面していた。

 

「……例の本だったかネ? 当然完成しているに決まっているじゃないか。私を誰だと思っているんだネ」

 

「う~ん。ノーベルと呼ぶべきかエジソンと呼ぶべきかアルキメデスと呼ぶべきかフランケンシュタイン博士と呼ぶべきか……どれが良い?」

 

「私を素材で呼ぶんじゃないよ、素材で! 私の名はマユリだと何度も言っただろう! あ~、もう! ネム!」

 

「了解しましたマユリ様。一誠様、お受け取り下さい」

 

傲岸不遜に答えたのは研究者風の男性……マユリ。顔面を黒く塗り奇抜な帽子を被っている。助手らしき女性……ネムから本を受け取った一誠はそのまま帰ろうとするが、入り口のシャッターが突如締まった。

 

「……何? 俺早く帰りたいんだけど」

 

「まぁ、そう慌てるもんじゃないよ。新しい発明品があるんだ。見て行きたまえ。おい、ネム! 早くあれを持って来い! 全くグズだね、お前は!」

 

マユリはネムを叱責しながら目的の物を持ってこさせる。それは風水師が使うような針だった。ただし、大きさは桁違いで大凡一メートル程はあるだろうか。そしてその針からは途轍もないエネルギーが放たれていた。

 

「これは私の新発明である元始風水盤の針だよ。これを使えばなんと地脈の流れを好き勝手に操って世界を滅ぼす事すら……って、おい!? それをどうする気だネ!?」

 

一誠はネムから針を受け取るとマユリの声を無視して空中に放り投げ、

 

 

 

 

「断末魔砲」

 

複数の機材諸共、針を吹き飛ばした。

 

「……全く。そう言うのは作っちゃダメって言ったでしょ? もし奪われて悪用されたら責任を取らされるのは俺なんだから……」

 

どうやら危険極まりないものを作ったこと自体は怒っていない一誠だが、それを奪われた時の面倒臭さを想像して破壊したようだ。マユリが立ち尽くす中、一誠はネムに一枚の書類を渡した。

 

「ちょっと勝手が過ぎるから玉藻からの伝言だよ。幽死霊手・研究班最高責任者涅マユリ及びその助手、涅ネムに告げる。暫くの間は研究費用3割減」

 

「了解しました、一誠様」

 

「ちっ! 仕方ないネ。……所で君を使いパシリにして、狐は何処に行っているのかネ?」

 

「玉藻なら爺さんのお供で悪魔の若手の集まりの見物だって。同盟を申し込んだ相手を招待しているらしいよ。……本当は俺がお供を頼まれたんだけど、面倒だったから玉藻に頼んだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界の悪魔側の領地の旧首都、そこにある巨大な建物の一室にハーデス達は通された。貴賓室と思しき豪奢な部屋にはモニターがあり、其処から若手の集まりの様子を見えるようになっているらしい。

 

「これはこれはハーデス殿。まさか貴方が来るとは思いませんでしたな」

 

《なに、此れからのコウモリ共を引っ張っていく者の顔を拝みに来ただけの事。今の所は同盟など考えておらぬ。貴方はどうなのかな、オーディン殿》

 

ハーデスに話しかけて来たのは眼帯をつけた老人。彼こそ北欧神話の主神であるオーディンであり、後ろには戦乙女らしき銀髪の女性が控えていた。

 

「なぁに、暇つぶしじゃよ、暇つぶし。……所で其処の美女は誰かの?」

 

《ああ、赤龍帝の婚約者兼側近だ。今回は奴の代わりに護衛として来て貰った》

 

「初めまして。私は今代の赤龍帝の婚約者かつ腹心の部下である玉藻、と申します。以後お見知りおきを」

 

「カーッ! 赤龍帝は羨ましいのぅ。こんな美女を傍に置いとるとは。ほれ、お主も挨拶せんか!」

 

オーディンに急かされた女性は慌ててハーデス達に頭を下げる。

 

「ロ、ロスヴァイセと申します」

 

「まぁ、真面目なばかりで彼氏の一人もおらんが優秀な奴じゃ。……のぅ、赤龍帝には優秀な部下が多く居ると聞くがコヤツを嫁にもらってくれそうな奴はおるか?」

 

「う~ん、そうですねー。人型である程度顔が整っているのといえばポチさんかランスロットさん位ですかねぇ」

 

玉藻はそう言いながら携帯に保存しているランスロットとポチの顔を見せる。するとランスロットの顔を見たロスヴァイセが食いついた。

 

「ラ、ランスロットさんの収入は?」

 

「あ、ゼロです。旦那様……おっと、これはプライベートの時だけでしたね。ご主人様はちゃんと支払おうとしてるのですが本人が『お仕えできるだけで十分でございます』とか言ってやがるんですよ。あ、そろそろ始まりますね」

 

せっかく見つけた美形がまさかの収入ゼロという事実にロスヴァイセが固まる中、若手同士の顔合わせが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺達は本気なんスよ!」

 

会場内に匙の声が響く。魔王や高い地位を持つ者達の前で各々の夢を語るという事になり、彼の主であるソーナは分け隔てなく学べるレーティングゲームの学校を作りたいと語った。だが、それを聞いた貴族達はそれを一笑する。明らかに彼女や自分達の夢を馬鹿にされた事に怒る匙だが、ソーナはそれを黙らせた。

 

 

 

 

 

 

《……青いな。何故夢を否定されたかも分かっておらぬ》

 

ハーデスは彼の姿を見てそう呟く。悪魔社会に根強く残る下級悪魔や転生悪魔に対する差別。位の低い悪魔は就業の幅も狭く、上級悪魔に見出されて出世する事で初めて夢に挑戦できる。故に彼らはソーナの夢を否定したのだ。そして理由はそれだけではない。

 

「まったく、今ので自分の首を締めた事に気付いてないんですかねぇ。上層部の機嫌を損ねれば昇級試験を受ける資格を与えられにくくなるというのに。それに、あの老害どもが否定するのは怖いからですよ。実力主義の悪魔社会で伝統と誇りを重んじる旧家の自分達が力を付けた下級悪魔によって立場を揺るがされるのがね。特に彼の様に自分達に食って掛かるような奴が作ろうとしてるんじゃねぇ」

 

今回匙が食ってかかった事で上層部はソーナ達を旧家を重要視していない者達と思っただろう。そして、そんな彼女らが下級悪魔をも育てる学校を作ろうとしているという。プライドの高い貴族達が自分達の地位が下級悪魔に脅かされるのを警戒し学校の設立を妨害するのは目に見えている。

 

「ふぉっふぉっふぉ、厳しいのぅ。ほれ、見てみろ。怖い姉が泣きながら怒っとるぞ」

 

オーディンが刺した画面ではソーナの夢を馬鹿にされた事に怒ったセラフォルーが泣きながら叫んでいる。その様子を三人は冷ややかな目で見ていた。

 

《……愚かな。王として来ているにも関わらず私情を挟むとは。やはり冥界との同盟には反対だな。あの様な力だけで選ばれた者が王。しかもあの小娘はあれで外交担当とはな……》

 

「ありえませんよねぇ」

 

貴賓室での会話など知らず若手同士のゲームをするのが決まり、ソーナとリアスの対決が決定した。だが、その様子をオーディンは詰まらなそうに見ている。

 

「……やれやれ、下僕に予め言い聞かせておかぬ小娘に噂の才能だけの無能姫の対決か。面白みがなさそうじゃのぅ。……ハーデス殿。冥界側は赤龍帝の戦力を探ろうとしていると聞く。ならばこういうのはどうじゃ? 同盟を渋る素振りを見せれば反対しそうな魔王も承諾せざるをえんじゃろう」

 

オーディンはハーデスにそっと耳打ちした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《……という訳なのだ。了承してくれるか?》

 

「う~ん……。面白そうだけど嫌がりそうな奴も居るし。じゃあ、希望者だけを出すね。でも、オーディンって爺さんも面白い事考えるね。まさか当日になって助っ人としてクジで選んだ俺の手駒を一体ずつ貸し出すなんてさ」




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涅マユリ BLEACH 色んな発明家の魂を合成したマッド 一応玉藻の部下 研究係

ネム    上記    マユリの助手

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