霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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三十話

ソーナとの決戦前夜、リアス達はアザゼルを交えてのミーティングを行っていた。一誠から貸し出される相手は当日クジを引くのでそれを考慮しての話し合いが進む。

 

「……取敢えずあの玉藻って奴は絶対にねぇ。アレは主人以外には興味を示さないタイプだ。貸し出しメンバーは本人が許可した奴だけだそうだからな。まぁ、タイプ別に作戦を考えておくとして……リアス、お前はあちらをどの程度把握している?」

 

「副会長の『女王』と数名の能力といった所ね」

 

「……そうか」

 

アザゼルはリアスの言葉を聞いて返事をすると一枚の写真を取り出す。其処にはフードで顔を隠した人物が写っていた。

 

「どうやらソーナは若手の顔合わせの後に眷属を一人増やしたらしい。駒が『騎士』という事しか分かっちゃいねぇから注意しておけ。パーティにも出席させない程だ。何かあるんだろうよ。……今回のゲーム、お前らの勝率は六十パーセント以上だと言われている。全員今回の修行で基礎能力が上がったし、小猫は仙術、一郎は神器の制御が成長した。……朱乃は難しい話だから今回は諦めるが次は頑張れよ? 問題はお前らのチームには戦闘に必要なテンションを上げる役目の奴がいねぇ事だな。ソーナの所の新顔と其れだけが気がかりなんだよな……」

 

アザゼルは心配を残したまま帰って行き、残ったメンバーは最後の打ち合わせを遅くまで進めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、遅くなって御免ね」

 

ゲーム当日、貴賓席に招待されていた一誠はランスロットを連れ少々遅れてやって来た。アクビを噛み殺している所を見ると寝不足らしい。一誠は護衛にプルートを連れてきたハーデスの隣に座る。反対側にはロスヴァイセを連れたオーディンが座っており、先日の明らかに打合せしていたと思われる掛け合いからサーゼクス達は油断なく彼らを見ていた。

 

「随分眠そうじゃのう。遅くまでゲームでもしとったか?」

 

「……いえ、主は昨日は部下同士の戦いがあるので早めに寝たのですが……」

 

オーディンの言葉に代わりに答えるランスロットだが少々言いにくいのか言葉を濁す。部下同士の戦いというあたり彼も今回のゲームには興味がないのだろう。騎士として何度も死線をくぐり抜けた彼曰く、

 

「レーティングゲームは奴隷を使った剣闘士興業の劣化版」

 

らしい。彼からすれば例外を除いて命の保証のされた戦いなど誇りを賭けるに値しないというのだろう。複雑そうな顔でゲームを映し出す画面を眺める彼の顔には憂いがあり、美丈夫ゆえに見麗しい物がある。ロスヴァイセは惚けた顔で彼の横顔を見つめていた。そんな中、ランスロットが気を使って言わなくて良いように誤魔化したにも関わらず一誠は質問に答えた。

 

「実は昨日、玉藻がハーデスの爺さんから借りた映画のDVDを見てたんだけど、濃厚なベットシーンがあったらしくて『体の高ぶりが抑えきれません!』って言って今朝まで……」

 

「は、破廉恥な!」

 

「相変わらずお主は硬いのぅ。そんなんだから彼氏ができないんじゃ。……そういえばセラフォルーは今日は普通の格好じゃのぅ。魔女っ子とやらはどうしたんじゃ?」

 

一誠の言葉に真面目なロスヴァイセは顔を真っ赤にして反応し、オーディンはその様子を呆れたように見た後、セラフォルーの格好に気付く。何時もの魔女っ子の姿ではなく、ビシッとしたスーツ姿だった。

 

「ちょ、ちょっとね……」

 

「妹にコスプレババアって言われたんだよ。ちなみに最初に言ったのは玉藻っていう俺の一番の手下兼恋人。その時はコスプレババア一号って言ったんだよ」

 

「うぐっ!」

 

その言葉を聞いた瞬間、セラフォルーは胸を押さえて蹲る。先日の一件を酒の席で聞かされたサーゼクス達は遠巻きにしながら痛ましそうな視線を彼女に送っていた。

 

《そういえば一号って言う事は二号もいるのですか?》

 

「うん、居るよ」

 

一誠はプルートの質問に対し、サーゼクスを指さしながら頷く。指差されたサーゼクスは何の事か分からず戸惑っていた。

 

「彼の奥さんがほぼ毎日メイドのコスプレをしてメイドゴッコをしてるんだ」

 

「……グレイフィアはちゃんとメイドとしてやっているよ。ゴッコ呼ばわりはさすがに失礼じゃないのかい?」

 

流石に今の言葉は聞き逃せなかったのかサーゼクスは口を挟む。少々怒気を孕んだ口調だが、一誠は特に気にした様子もなく逆にハーデスやランスロットと顔を見合わせ、何を言われたのかわからないといった反応をした。

 

「ねぇ、ランスロット。俺の調べじゃ彼がアホな事を言うたびに口を引っ張るなどのお仕置きをしてるそうだけど……君の生きてた時代はメイドが王にそんな事したら普通はどうなってた?」

 

「絶対に考えられません。遊びでメイドの真似事をしてるなら兎も角、ちゃんとしたメイドならそのような無礼は致しませんよ。そして王がその様な無礼を許したのなら、相手をメイドとして扱っていないか、王など敬うに値しないと言っている様なものですね」

 

《何ともまぁ、呆れた話じゃな。聞く所によると忠義を示す為に魔王の奥方の職務の代わりにメイドとして仕えていると聞いたが……ルキフグス家の命令で死んでいった者達はどう思うじゃろうな。息女が敵方に取り入って妻になったばかりか使用人の真似事をしているとは……》

 

ハーデスは大げさに溜息を吐き、オーディンはその演技かかった様子を見て必死に笑いを堪えている。そんな中、アザゼルが口を開いた。

 

「……なぁ、赤龍帝。前から思ってたんだけどお前って現魔王が嫌いなのか?」

 

「うん!」

 

一誠は即答すると室内の者達を見渡す。

 

「俺は人間だよ? 人間を拉致して奴隷にする事を黙認している魔王が好きなわけないじゃない。あと、聖書の神が神器なんかを勝手に人に宿したせいで人生を狂わされた人や、危険な神器を持ってた為に君達堕天使に殺された人を沢山知っているからね。……何か反論があるなら言ってみれば? ただし、彼らの前でね」

 

その瞬間、一誠の背後に無数の霊魂が現れた。どれも人としての輪郭も朧気で今にも消えてしまいそうになりながらも虚ろな瞳でサーゼクス達を睨んでいる。

 

『ヨクモ……』

 

『家族ニ会イタイ……』

 

『コロシテヤル……』

 

霊魂達は口々に呪詛を吐き、部屋内の空気がドッと下がる。そして一誠は先程までの巫山戯た様な口調から一転して怒気を孕んだ口調になった。

 

「俺は昔から彼らの言葉を聞いてきた。彼らの無念を、悲しみを、怒りを聞いてきたんだ。彼らは同じ事を言ってるよ。『ウラミハラサデオクベキカ』ってね」

 

一誠の言葉と共に霊魂達は激しく嘶き出し、サーゼクス達は氷水に肩まで浸かったような寒気を感じる。そして一誠が更なる言葉を発しようとした瞬間、ハーデスがその口を塞いだ。

 

《……やめておけ。此処で此奴らに裁きを与えるのは簡単だが後が面倒だ。今はこの程度で終わらせろ》

 

「……うん。皆ゴメンね」

 

一誠が落ち着きを取り戻すと霊魂達は消えていく。サーゼクス達を苦しめていた寒気も消え去った時、ゲーム開始のアナウンスが流れた。

 

 

『皆様、今回のゲームの審判を務めさせて頂きます、ルシファー眷属のグレイフィアでございます。今回のゲームはお二人が通う駒王学園の近くのデパートを模した空間で行わさせて頂きます。なお、特殊ルールとしましてフィールドを大規模に破壊する事は禁止となっていますのでお気を付けください』

 

観覧席の事など知らずグレイフィアは冷静な口調でアナウンスを続ける。他のルールとしてフェニックスの涙は各チーム一つずつ、ギャスパーの神器の使用禁止が告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部長、助っ人は何時来るんですか?」

 

「確か本陣の中心に魔法陣があって、そこで顔見せがあるそうよ。ゲーム中はクジを持った者が呼ぶ事で書かれた数字の分数だけ協力してくれるらしいわ」

 

リアスは本陣の中心に設置されていた魔方陣にクジを置く。すると魔方陣から煙が上がり、中から凶暴そうな声が聞こえてきた。

 

『グハハハハハ! 普段は禁止されてる仲間内での戦いができるからって参加してみりゃ、力を貸さなくちゃならねぇのはお前らかよ、ゴミ共!』

 

煙の中には好戦的な笑みを浮かべた浅黒い鱗の邪龍が居た……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ソーナの所でも助っ人を呼び出していた。彼女は助っ人から能力を聞き出すと直ぐにそれを取り入れた作戦を練り出す。

 

「……これならいけるでしょうか? いえ、更に策を重ねなくては……」

 

ソーナは作戦を立てると直ぐに眷属に指示を出し準備に取り掛かる。そしていよいよゲーム開始の時間がやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアスの作戦で小猫は一人で店内を進んでいた。リアスは朱乃とアーシアと共に待機、祐斗と松田は立体駐車場から敵本陣を目指し、ギャスパーはコウモリに変化して店内の見回りをしている。小猫は普段は隠している猫耳を立て、仙術で気配を探りながら店内を歩いていたが、途中でピタリと立ち止まる。

 

「……其処に居るのは分かっています」

 

「ちっ、やっぱりか。会長の言ってた通りだな」

 

小猫が声をかけた場所から出てきたのは『兵士』の匙と仁村、日本刀を装備した『騎士』の巡だった。

 

「……三人相手。でも、私には姉様から教わった仙術があります。貴方達には負けません」

 

小猫は油断なく三人を見据えると気を練り出す。気を含んだ一撃は相手の体内の気を乱す事で魔力を練るのを阻害し内蔵にも深刻なダメージを与える。もしまともに喰らえば一撃でリタイアしかねないだろう。そして小猫が隙を伺っていた時、突然アナウンスが流れた。

 

『リアス・グレモリー様の『僧侶』一名リタイア』

 

「!」

 

そのアナウンスが流れた時、小猫の集中が一瞬だが乱れ、突如掛けられた液体を躱せず小猫は頭からびしょ濡れになる。その液体の匂いを嗅いだ瞬間、小猫は思わず両手で鼻を押さえた。

 

「こ、この匂いは……」

 

「やっぱり効いたか。猫の妖怪だもんなぁ。苦労して店中の柑橘類を絞ったかいがあったぜ」

 

猫は柑橘類の匂いを嫌う。なら、猫の妖怪である小猫にも有効なのではと判断したソーナは本陣近くの食料品売り場の柑橘類をかき集め果汁を絞った。そして、どうやら予想が当たったらしく小猫に大きな隙ができる。その隙を狙い、無数の蛇の刺青の様に変化した匙の神器から無数のラインが放たれ小猫に張り付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!」

 

立体駐車場を進む祐斗と松田を待ち受けていたのは『女王』の真羅、『戦車』の由良、そして謎の『騎士』だった。祐斗の相手は長刀を構える真羅が勤め、松田の相手は由良、謎の騎士は様子見をしていた。松田は必死に由良を狙うも車の影に隠れられ当たらない。

 

「……こうなったら」

 

だが、松田が集中すると光の矢が大きくなり、先程までは傷付けるに留まっていたボディに突き刺さる。そしてその突き刺さった矢めがけて正確に放たれた次の矢が命中すると、それに押し出されるかのように先ほどの矢が車体を貫通した。

 

「なっ!?」

 

由良が慌てて車の陰から出て行くと松田の背後に無数の光の矢が現れ、由良目掛けて放たれる。

 

「ま、負けるかぁぁぁ!!」

 

「なっ!?」

 

由良はバイクを持ち上げるとそれを盾にしながら松田に接近する。松田も一瞬たじろくも冷静さを取り戻し矢を放つ。バイクでは隠しきれない部分を光の矢が掠り、彼女の体を激痛が襲う。だが、由良の突進は止まらず、松田めがけてバイクを投げ飛ばしたかと思うとその毛げに隠れて急接近、松田の顎めがけて蹴りを放つ。

 

「かかった!」

 

「なっ!?」

 

だが、松田は自分の背後に一本だけ矢を隠しており、攻撃の動作に入って避けられない由良へと放つ、矢は真っ直ぐに由良の腹部へと向かい、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謎の騎士の振るった聖剣によって叩き落とされた。

 

「やれやれ、大丈夫か? まずは自分のできる所までと言われたから見ていたが、そろそろ助太刀させて貰うよ?」

 

「……有難う、助かった」

 

「……さて、久しぶりといった所か?」

 

「あ、あんたは!?」

 

謎の騎士は松田の方を向くと顔を隠していたフードを外す。松田の目に見覚えのある青髪の少女の顔が飛び込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアス達がゲームをする中、若手ナンバーワンと呼ばれるサイラオーグと凶児と呼ばれるゼファードル・グシャラボラスのゲームが始まろうとしていた。二人のゲームの舞台は三色に分けられた円形のフィールド。右から赤、青、黄色、の順番となっており、赤がサイラオーグ、黄色がゼファードルだ。

 

サイラオーグは魔力を持たず生まれ当主である父から蔑まれて生きてきたが、体を鍛え技を磨いて若手ナンバーワンと次期当主の座を手に入れたのだ。そんな彼の視界の先にはゼファードルの陣地があり、遠く離れた場所からでも分かるほどの巨体と触れた者の生命力を奪う能力を持ち、粘液で出来た体故に一切の物理攻撃を無効化するシャドウの姿が映っていた。

 

「……これは厄介だな」

 

サイラオーグは自分に貸し出された頼りなさそうな者達を振り返り溜息を吐く。そして、ゲーム開始のアナウンスがフィールドに鳴り響いた……。




あれ? サーゼクスはメイドゴッコは否定したけど? あと、サイラオーグの助っ人『達』は誤字にあらず

意見 感想  アンケート 誤字指摘お待ちしてます 躍起になって毎日投稿してたら質が下がって評価も下がった(つд⊂)
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