霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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モンハンにドハマリで書くのがが遅れました あと魔法使い更新しました

重甲エキスが三連続で出ない(つд⊂)


体育館裏のホーリー
三十四話


「いやぁ~、先生。今回も素晴らしい出来ですね。では、この藤村大河。責任を持ってお預かりします!」

 

一誠の協力者であるメディアは小説家を生業としており、やや締め切り前の逃亡癖が有るものの、かなりの売れっ子作家だ。故に彼女の担当は逃げ出した彼女を探し出すだけの体力と勘を持つ者がなる事になっている。この藤村大河という女性もご多分に漏れず超人的な体力と野獣のような勘で逃げ出したメディアを見つけ出していた。

 

「あら、もう帰るの? お茶でも飲んで行きなさい。坊やー! 藤村にお茶入れて頂戴」

 

「え~! メディアさんがパソコンのデータの整理しろって言ったんじゃん。てか、どうしたらパソコンをここまで壊せるのさ? もう整理云々どころじゃないよ」

 

「あ、お構いなく。此れから遅杉先生とハヨダッセ・ゲンコー先生の所にも向かう予定ですので」

 

もっとも、その能力が災いして問題作家ばかり担当させられていたのだが。藤村が帰っていくとメディアは作家の顔から魔術師の顔となった。

 

「……それでアーシアちゃんに求婚したディオドラってのは怪しい奴なのね?」

 

「うん、彼女達には一応見張りをつけてるんだけど、アレは笑ったなぁ。行き成り、蹴ってくれ、だってさ。……レイナーレがあの子を殺そうとしてた時に見張っていた使い魔の魔力が彼の物なんだ」

 

それを聞いたメディアは不快そうに顔を顰める。

 

「……ストーカーかしら? それとも気に入った女を手に入れる為にピンチになるのを待ってた? そもそも貴族が聖女が居るような教会に近づくって所からして怪しいわね。坊や、多分また来るだろうから、その時に守護霊剥がして聞き出しなさい!」

 

「分かったよ。所でアルジェントさんの事をどうして親しげに呼んでるの?」

 

「私が契約のお得意様だからよ。小猫ちゃんと一緒にいろんな服を着せて撮影会をしてるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え~、こんな時期ですが転校生です」

 

体育祭も間近という頃、一誠のクラスに又しても転校生がやって来た。

 

「(どうせ三大勢力関係者だろうね。木場君は仕方ないとしても、関係者は集めておきたいんだろうな)」

 

一誠が迷惑な事だと考えていると転校生が教室に入ってくる。それは彼が知っている少女だった。

 

「皆さん初めまして。紫藤イリナです!」

 

「……ふ~ん」

 

もはや不都合な記憶を操作した今、彼女には興味が無くなった一誠は手を振られても特に反応を示さないでいた。

 

 

 

 

 

 

「イッセー君、久しぶりね。元気してた?」

 

「君は相変わらず喧し……元気だね」

 

しかし、一誠の思いとは裏腹にイリナは一誠に話し掛けてくる。流石に知り合いにシカトを決め込むのは周りの目が邪魔だと思い、一誠は適当に相手をする事にした。

 

「今、喧しいって言おうとした!?」

 

「言ってないよ? 聞き間違えたんじゃない? ほら、年取ると耳が遠くなるって言うし」

 

「だから私は年取ってないって!」

 

「別に君が年寄りだなんて言ってないでしょ? 所でどうして日本に戻ってきたの? 前言ってたお仕事の都合?」

 

その質問をされたイリナは狼狽し出す。流石に一般人と思っている一誠に悪魔や天使の事を言っても、『はいはい、中二病乙』とでも言われるだけだからだ。

 

「そ、そうよ! 悪いけど仕事の事は聞かないでね」

 

「うん。全く興味無いから安心して」

 

一誠は曇り一つない瞳でそう言い切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは今から体育祭の参加種目を決めます。参加したい種目に立候補してください」

 

「……眠い」

 

体育祭に興味のない一誠は参加種目決めの時にウトウトしていた。去年も足が速いからと得点の高い種目に入れられたし、今回も其れで良いと判断したのだ。彼が寝ている時も種目決めは進み、途中で目を覚ました一誠は右腕を上げて背伸びをする。

 

「う~ん」

 

「はい、兵藤君は二人三脚ですね。ではもう一人は……」

 

「へ? ……拙っ」

 

一誠は事態を把握し冷や汗を流す。二人三脚は二人で参加する種目だ。そして一誠はモテる。自然と参加種目が決まっていない女子達が手を挙げ、男子達は威圧感を感じて手を上げない。この時点で一誠のペアは女子に決まってしまった。そう、女子と体をくっつけて走るのだ。

 

「(……玉藻に殺されるかも)」

 

先日のゲームで力を貸した方が勝ったら一緒に温泉旅行に行くと約束していたにも関わらず、玉藻はディオドラのせいで召喚すらされずに終わった。どうやら旅行の為に大分気合を入れていたようで、ゲーム後の彼女は落ち混んでいたのだ。それを何とか宥めすかして元気にさせたのはちょっと前の事。もし、この事がバレたら、そう不安になっている一誠の直ぐ傍で女子達が参加選手を決めるジャンケンをしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーシア・アルジェントの人生は波乱に満ちたものだ。親に捨てられ、育った教会で神器に目覚め聖女と崇められるようになった。しかし、怪我をした悪魔を助けた事で魔女として追放。そして堕天使に拾われ、今は悪魔になっている。そして先日、アーシアの助けた悪魔から求婚されたのだ。最も、余りにも変態的すぎる言い間違いをした為、

 

「あ、あの、私にはそんなご趣味は……」

 

と距離を空けながら断ったのだが。彼の名はディオドラ・アスタロト。現ベルゼブブを輩出した名門の出身だ。そして彼は一度断っただけでは諦めず、連日のように贈り物やデートの誘いをしてくる。流石に無視している訳にはいかないので食事の誘い等に何度か応じたが、その時の彼の目は松田や元浜が女子を見る目と同じで、アーシアは言い表せない嫌悪感を感じていた。そしてその日、次のゲームの相手がディオドラだと告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり裏があったよ。まぁ~た、アルジェントさんに会いに来た時にこっそり守護霊を剥ぎ取ったら興味深い話をしてくれたんだ。彼女が追放された一件なんだけど……」

 

「どうせ罠だったんでしょ?」

 

数日後、ディオドラを探っていた一誠は成果をメディアに報告するべく彼女の家を訪れた。しかし、一誠が言い切る前にメディアは答えを言い当てる。その顔には少々憂いの表情が滲んでいた。

 

「……いくら何でも怪しすぎるわ。どうせ聖女が欲しかったんでしょ。アーシアちゃんもアーシアちゃんよ。幼い頃から敵と教わり、エクソシスト達が命懸けで戦っている悪魔を助けたんですもの。それは彼らへの侮辱よ。教会としても放っておけないし、追放されない方がおかしいわ。……一時の感情に身を任せてもロクな事にならないって言うのにね……」

 

「メディアさん……」

 

メディアはまるで自分に言い聞かせるように呟く。植えつけられた偽の恋に身を任せた彼女は父を裏切って弟を殺し、夫に裏切られた時は自らの子を殺したのだ。その原因となったのはオリュンポスの神々。少し前、一誠は彼女に聞いてみた事がある。彼らを恨んでいるのか、と。

 

「……当然でしょ。でも、もう復讐する気はないわ。坊やのおかげで手に入れた今の平穏を大切にしたいから……」

 

悲しそうに答える彼女を見た一誠はその質問をした事を今でも悔やんでいた……。その事を思い出して表情を曇らせる一誠に対し、メディアは優しく微笑みかける。

 

「その顔は何? 貴方は気にしないで良いわ。……ねぇ、坊や。流石に私も女としてそのクズが許せないから殺す時は私を呼びなさい。絶望の中で殺してやるわ! フフフ、どんな手が良いかしら?」

 

「……同情するよ、ディオドラ君。君は怒らせてはいけない女性を怒らせた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……所で二人三脚に出るのがバレて玉藻が怒ったらしいけど仲直りはしたの?」

 

「……何とか。日曜日は両親とも居なかったんだけど、一日中執事のまね事させられたよ」




よく考えると三巻でのアーシアに対する二人の態度って当然なんですよね。悪魔や魔物退治に命をかけてきた二人にとって、聖女が悪魔を治すなんて自分達や仲間、戦いで死んでいった者の人生を否定するような物ですもんね

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