霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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三話

「……四天王。いや……四凶? う~ん、何か良いアイディア無いかな? ドライグ」

 

一誠は机に向かって何やらノートに書き綴っている。どうやら計四人の組み合わせ名を考えているようだが良い名が思いつかないようだ。

 

『……相棒、何を考えているんだ?』

 

「いや、俺の手駒の中で四人を選抜しようと思ってさ。シャドウとレイナーレと……。ドラゴンの魂とか欲しいなぁ」

 

『勝手にしろ。それで今月はいくら貰ったんだ?』

 

「え~と、ひ~ふ~み~よ~♪」

 

一誠は机の角に置かれていた分厚い封筒を手に取り、中に入っていたお札を数え出す。高校生には相応しくない大金だった。

 

「今月は結構浮遊霊を渡したからな~♪ 雑魚ばっかりだけど数は多かったから良い稼ぎになったよ。冥府の人材不足最高ー♪」

 

 

冥府。其処は死者の魂を管理する場所。其処に住む死神達は現世を彷徨う魂を回収するのが仕事の一つなのだが人口増加によって人手が足りず、一誠のような能力持ちに協力を要請しているのだ。回収しきれない魂を集める見返りとして好き勝手をある程度見逃し、回収数によって報酬を支払う。もっとも、一誠のような力の持ち主は減少してきており、そんな中で優秀な能力者である一誠を冥府の王であるハデス自らスカウトして来たのだ。

 

「じゃあ、死んだら就職先として考えとくよ。それかニートになりそうだったらヨロシク~」

 

一誠のその返事にハデスは満足こそしなかったが妥協し、魂を受け取りに行くのに幹部クラスの者を向かわすなどの破格の対応をとっていた。一誠が今回の報酬を秘密の隠し場所に入れた時、本棚の上に飾られた趣味の悪い骸骨の置物の目が光る。それを見た一誠は愉快そうに口角を釣り上げた。

 

「どうやらはぐれ悪魔が街に入り込んだらしいね。悪魔は良い栄養源になるから回収しに行こうか」

 

『今日はドレを使うんだ?』

 

「いや、たまには俺が戦うよ。たまには禁手を使っとかなきゃさ。ほら、たまに使わなきゃ壊れるって言うじゃん?」

 

『神器とクーラーを一緒にするな! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉん! 先代達は食われちゃったし、この悲しみを俺は誰と語り合えばいいんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、今日の仕事は大公からの依頼ではぐれ悪魔を退治しに行くわよ!」

 

ドライグの嘆きの声が一誠の頭に響き渡り『神器から魂を引きずり出せないかな?』と思われていた少し後、リアス達はとある廃屋に向かっていた。どうやら主を殺した下僕悪魔がこの街に逃げ込み人を食い殺しているという事なのだ。

 

 

 

 

 

 

「……血の匂い」

 

リアスの眷属の一人である塔城小猫は漂ってきた濃厚な血の匂いに眉をひそめる。また犠牲者が出たのかと一行が急いで匂いのしてきた場所に向かうと、其処にはバラバラにされた今回の討伐対象らしき悪魔の姿と一人の人物の姿があった。

 

「……貴方は誰? それは貴方がやったのかしら?」

 

リアスは警戒しながら目の前の人物に問いただす。目の前の人物は赤いローブで全身を覆い、いたる所に宝玉のついた骨のようなものが絡みついている。そしてフードの奥の相貌は龍の頭蓋骨を模した仮面で隠されていた。その人物はリアスの方を振り向くと声を発する。その声からは変声機などを使ったような声ではないにも関わらず、年齢も性別も伺うことができなかった。

 

「うん。そうだよ。それがどうかした?」

 

「……その服装からしてエクソシストではないようね。まぁ、良いわ。この街は私の縄張りなの。少し話を聞かせて貰うわよ」

 

リアスから告られた言葉にその人物は困ったように天を仰いで呟いた。

 

「……ブラックバス」

 

「?」

 

「ブラックバスってさ、ほかの魚の卵とかは好き勝手に食べるけど自分の卵に近づくと怒って襲い掛かるんだって。そうやって他の魚を虐げて自分たちの縄張りを広げて……勝手だよねぇ。ねぇ、君達はそんなブラックバスが駆除されるのをどう思う? やっぱり本来居ないはずの魚なんだから仕方ないよねぇ」

 

「……まぁ、そうでしょうね。さぁ、無駄話はここまでよ。とりあえずそのフードを脱いで顔を見せて頂戴」

 

「……だからさ、この世界に居ないはずの君達悪魔が縄張りだなんだと主張するなら、たとえ駆除されても仕方ないよね?」

 

「皆!」

 

謎の人物から発せられた気味の悪いオーラに対しリアスは警戒しながら下僕達に指示を飛ばす。朱乃が雷を放ち、金髪の少年の木場祐斗が剣で斬りかかり小猫が拳を振るう。だが雷が直撃する瞬間、その人物の姿は霞の様に消え去り、笑い声だけが響いた。

 

「あはははははは! 冗談だよ冗談。なんで僕がわざわざボランティアでそんな面倒な事しなきゃならないのさ。最近寒いから風邪引かないようにね、白音ちゃん♪」

 

「ッ!? なんでその名前を!?」

 

小猫は声の主に向かって叫ぶも返事は帰ってこず、一同が諦めて帰ろうとしたその時、リアスは床に落ちている駒王学園の生徒手帳に気付いた。

 

「コレはアイツが落とした物かしら。……ふぅん、彼がねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばっ! 生徒手帳落としちゃったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次にの日の放課後、一誠がカバンを纏めていると急に女子生徒が騒ぎ始め、見てみると入り口に女子に人気の木場祐斗の姿があった。彼はイケメン王子と呼ばれ成績優秀スポーツ万能なので殆どの女子から人気が有り、モテない男子生徒から敵視されているのだ。当然、変態二人組と呼ばれる松田と元浜も彼を嫌っており、一誠の近くでしていたAV談義を止めて彼を睨んでいる。すると祐斗は一誠達の方を見て……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、君が松田君だね。リアス部長が呼んでいるよ。悪いけど僕についてきてくれるかい?」

 

「リ、リアス先輩がっ!?」

 

リアス・グレモリーは二大お姉様と呼ばれ男女問わず人気がある。当然彼も憧れており、その憧れの対象からの呼び出しにウキウキしながら着いていった。

 

 

「そんな! お姉様があんな変態に何の用!?」

 

「いやぁぁぁぁっ!! あんな変態のそばにいたら、お姉様が汚されちゃう!」

 

普段の行動が行動なだけに松田は女子生徒から蛇蝎のごとく嫌われており、そんな彼が憧れの対象から呼び出されたと聞いて次々と悲鳴を上げる。

 

 

「な、なんでアイツだけがぁぁぁぁっ!!」

 

「……帰ろ」

 

残された元浜が悔し涙を流す中、昨日拾った生徒手帳をたまたま何処かに落とした一誠はそそくさと帰っていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「惚けないで! 貴方があの場所にいた事は分かっているのよ!」

 

「いや、だから俺は何も知らないですよ! だいたい、はぐれ悪魔って何っすか!?」

 

 

 

 

「……少し悪い事したかなぁ?」

 

従えた霊を使って部室の中を盗聴していた一誠は少しバツの悪そうな顔をする。オカルト研究部の中ではリアス達と松田の押し問答がされており、一向に話は前へと進まない。当然だろう。リアス達は昨日の人物が松田だと思い込んでおり、松田は身に覚えのないことを問い質されたばかりか悪魔や神器など、はっきり言って電波としか思えない事を話されているのだ。いくら美人でもオカルト研究部とか作ってるだけあって電波なのかな、と若干松田が引き出した時、リアスは溜息を吐くと一枚の書類を取り出した。

 

「……兎に角、貴方には監視の為に入部してもらうわ。さ、入部届けにサインして頂戴」

 

「は、はぁ……」

 

もしかしたら部活の勧誘の一貫だったのかな、と思いつつ、これ以上付き合いたくないけど拒否したらやばそうだな、と判断した松田は後日生徒会にでも相談しようと思いつつ入部届けにサインをした。すると先程まで離れていた小猫が彼の傍により問いただす。

 

「……先輩。なんで私の本当の名前を知っているんですか?」

 

「……本当の名前?」

 

この子、厨二病か。きっと無口なのも、あまり話さない私カッケェとか思っているんだろうなぁ、と戸惑いながら思った松田であった……。


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