霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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四十二話

堕天使の幹部バラキエルには愛する妻と娘が居た。そう、居たである。妻は既にこの世の者ではなく娘は彼を拒絶し旅立った。そしてその原因は彼が堕天使だったからだ。彼と妻の朱璃が出会ったのは娘が生まれる数年前に出会い恋に落ちた。しかし、伝統ある神主の一族である妻の両親はそれを認めず、娘が堕天使に誑かされたとして刺客を派遣。それを彼は撃退するもそれを恨んだ刺客達は彼に恨みを持つ者達に居場所を教え、その結果妻は殺されてしまった。

 

 

「何で傍に居てくれなかったの!? 父様が悪い堕天使だから母様が殺された。父様も黒い羽も嫌い!」、

 

そして娘は彼を拒絶し悪魔となり、数年ぶりに再会を果たすも彼を拒絶したままだ。だが、彼はいま親子三人で一つの部屋に居た。

 

「……貴方達、聞いているのかしら?」

 

「も、勿論だ!」

 

「き、聞いています!」

 

もっとも、感動の再会とは言い難かったが。彼は今、娘共々硬い床の上に正座させられている。そろそろ秋になるかという時期のせいか床は冷たく膝を冷やしていく。そして妻の眼差しは床よりも遥かに冷たかった。

 

「まずは朱乃。ずっと見守っていたけど貴女はもう少し慎みを持ちなさい。私もSだけど人前では隠していたわ。……それと、子供だけで旅を続けた事。あれは絶対に許せないわ」

 

「で、でも母様……」

 

「言い訳は許さないわ! ……お願いだからあんな無茶はしないで」

 

「……母様」

 

朱乃は涙を流しながら自分を抱きしめる母の背中を抱き返し涙を流す.バラキエルはそんな母娘の姿を見て涙を流し、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……次は貴方よ。いくら拒絶されたといっても、狙われている娘を迎えにも行かないで……」

 

次の矛先は彼に向けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そろそろ帰るね。家族の会話をこれ以上盗み聞きするのは野暮ってもんだし、これ以上グレモリーと同じ部屋に居たくないから」

 

「むぅ、もう少しお主と話がしてみたかったんじゃがの」

 

オーディンは少々残念そうな顔をしながら一誠を見送る。彼らが今いるのは旧校舎の一室の前。ちょうど朱乃が使用している部屋に居たのでバラキエルを連れてきたのだ。最初は彼を拒絶していた朱乃だが、一誠が朱璃を具現化させた事で親子三人の話し合いを承諾。部屋の外から会話を盗み聞きしていた。

 

「では主。私は引き続きオーディン様の護衛につきます」

 

「うん、頑張ってねランスロット。行くよ、ベンニーアちゃん」

 

《お先に失礼するでやんす》

 

そもそもオーディンがなぜ日本に居るのかというと、日本神話大系の神々との会談を予定していたのだが内部の反対派を危惧し予定より早く来日、いろいろ忙しくなるアザゼルの代わりにバラキエルが彼の護衛についた。そしてオーディンの護衛はバラキエルとロスヴァイセだけではない。

 

「では兵藤君。またお会いしましょう」

 

「……生徒会なのに学校休んで大丈夫?」

 

「……仕事ですから。私達は学生である前に冥界の一員なのですから。……教師を目指す身としてはどうかとは思いますけど」

 

オーディンの警護を任されたのはこの街を縄張りとするリアスではなく、最近評価が上昇しているソーナだ。当初はリアス達が護衛に着くはずだったのだが最近の評価低迷を危惧して上層部の多くが反対。あえなく待機となった。そして一誠もオーディンと個人的な交友関係にあるハーデスに護衛人員を派遣するように頼まれ、ランスロットを含む二名を護衛として置く事となった。

 

「頑張ってね、ロスヴァイセさん」

 

一誠はすれ違いざまにロスヴァイセに耳打ちする。耳打ちされた当人は真っ赤になっていた。どうやらランスロットをオーディンの護衛に選んだのは彼の幸せを望んでの事のようだ。そのまま学園を後にした一誠は携帯を見るなり急に表情を変えると走り出した。

 

《どうしたでやんすか?》

 

「……玉藻が倒れた」

 

 

 

 

 

一誠は家まで必死の形相で走り、家にたどり着くなり玉藻の気配を察知して自室へ飛び込む。そこにはベットの上に寝転がる玉藻の姿が有り、その顔色はあまり良くない。

 

「やっと来たネ。待っていたヨ」

 

「マユリ! 玉藻の容態は!?」

 

一誠が診察をしていたマユリに近づくと診断書らしき紙を渡される。そこには霊力の使いすぎによる過労と書かれていた。玉藻は一誠の顔を見るなり無理に笑顔を作りおちゃらけた態度を取る。

 

「えへへ~、最近色々使いすぎちゃって。ご心配おかけしました」

 

「……この間アレを使ったお前を止めた時にダメージを受けただろう? そのダメージを回復させる為に霊力を使いすぎたんだヨ。全く、本末転倒な話だネ。全く、そろそろ研究材料が目を覚ます頃だというのに……」

 

「ちょっ!? それはご主人様には言わない約束じゃっ!?」

 

どうやら一誠が自分を責めないように玉藻自身の責任ということにする約束だったようだがマユリがバラしてしまったようだ。それを聞いた一誠が茫然自失とする中マユリは診断書で軽く一誠の頭を叩く。

 

「悪いが貴様よりコッチのほうが上なんでネ。隠し事が出来る訳無いだろう? なぁに、霊力を軽く分けてやれば数日で治る。自分を責めることなんかないヨ。血でも飲ませてやることだネ」

 

「……有難う、マユリ」

 

フンッと鼻を鳴らしてマユリは部屋から出て行き部屋には一誠と玉藻だけが残される。一誠はベット横の椅子に座るも互いに気まずさから話しかけられず暫くの間沈黙が続いた。

 

「……あの、ご主人様。この度は差し出がましい真似をしてしまい申し訳御座いません。心配させまいとして逆に心配をおかけしてしまいました」

 

「……悪いのは俺だよ。そもそもの原因が俺だし、無茶してるのに気付かなかった。……ごめん」

 

再び気不味い空気が流れる。しかし、そんな空気に我慢できなくなったのか玉藻は上半身だけ起き上がって叫んだ。

 

「あ~、もう! こういう空気は私嫌いです! もっとパァ~っと行きましょう! パァ~っと!」

 

「……そうだね、。とりあえず霊力の補給をしようか」

 

その瞬間、何を思ったのか玉藻の耳が反応し、表情は上機嫌のソレになった。

 

「みこーん! やっぱり霊力の供給といえば房中術ですよね!? あ~ん♪ まだ昼間なのにご主人様ったら、だ・い・た・ん♥ つっしやぁぁぁ! バチコーイ! やっぱりご主人様が上から覆い被さって? それとも後ろから獣のように? あっ! たまには私が上になってご奉仕なんて……きゃっ♪」

 

「どの位が良いか分からないから最初は少しね。はい、あ~ん」

 

「はむっ!」

 

一誠は玉藻をスルーしながら自分の人差し指を噛み切り血が滲んだ指先を差し出す。玉藻は滲み出す血を一滴も零してなるものかと指全体を加えチューチューと血を吸い出す。更には指全体に舌を絡めて舐めまわし、存分に唾液と血が混ざった所で嚥下を行う。一誠の上質な霊力が玉藻の体内を駆け巡り顔色が少し回復したようだ。

 

「お陰様で少し楽になりました。……あの~、もう一つお願いしても? この体を得てから体調を崩すの初めてだから少々不安なので眠るまで手を……えへへ♪」

 

手を握っていて欲しい。そう玉藻が言い終わる前に一誠の手は彼女の手を握り締める。少し恥ずかしそうにしながら玉藻はベットに身を任せ、やがてスヤスヤと寝息を立て出す。そして彼女が眠っても暫くの間一誠は彼女の手を握り締めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう絶対に心配をかけないよ。絶対に君を守りぬくから……」

 

最後に玉藻に軽く口付けした後、一誠は退室する。良い夢でも見ているのか玉藻は嬉しそうに笑っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、冥界の監獄にアーサーと美猴の姿があった。二人が居るのは湿っぽく薄暗い粗末な部屋。二人共かなりの使い手なので食器も武器になりそうなものは与えられずスープも冷めている。仙術が使える美猴など鎖で縛られており二人の待遇の悪さが伺えた。

 

「……暇ですねぇ」

 

「ったく、助けに来るなら早く来いよなヴァーリ」

 

未だ来ぬ救援を今か今かと二人が待っていた時、突如轟音と共に壁が吹き飛ぶ。丁度壁際にいたアーサーは瓦礫の下敷きとなり、起き上がろうとしたその上に誰かが足を乗せた。

 

「ったっく、俺が折角助けに来たってのにクルゼレイ君は拒否すんし、シャルバ君は赤龍帝の部下に捕まっちまうしよ~。ま、暇だから孫の仲間でも助けに来たぜ。俺に仲間を助けられたと知った時の悔しそうな顔が目に浮かぶぜ、でひゃひゃひゃひゃひゃ♪ ……あ、でもアイツってホモになったんだよな。会いたくね~」

 

突如入ってきたのは銀髪の中年男性。彼は二人を監獄の外まで連れ出すとそのまま去っていった。最後にこう言い残して。

 

「俺はママンの言った通りビックな事をしなきゃいけないから、お前に構ってる時間はないって爺ちゃんが言ってたとヴァーリに伝えといて。宜しく!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ! 此処は……?」

 

シャルバが起きた時、見知らぬ手術室らしき部屋のベットに括りつけられていた。どうやら拘束具に魔力封じの刻印が刻まれているらしく力が入らない。そして戸惑っている彼の耳に上機嫌そうな声が聞こえてきた。

 

「目覚めたかネ?」

 

「だ、誰だ!?」

 

「おっと、名乗るのが遅れてたネ。私の名前は涅マユリ。只の研究者だよ。君には私の研究対象になってもらうネ」

 

「巫山戯るな! 私を誰だとっ……がぁっ!」

 

マユリの言葉にシャルバが怒りを顕にした瞬間、彼の右腕にメスが突き立てられた。

 

「五月蝿いヨ! ……なぁに、投薬は一日二十種類以内に収めるし、あまり死に至る様な研究はしないと約束しようじゃないカ。就寝時には服も着せてやるし肛門から栄養剤も与えよう! どうだネ? 研究対象にしては破格の待遇だろう? さて、まずはこの薬と行くか」

 

「(や、止めろ! 止めてくれぇぇぇぇ!!)」

 

先ほどのメスに毒でも塗られていたのかシャルバは一言も発する事ができずマユリの成すがまま薬を注入される。激痛と共に彼の意識は途絶え、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、眠るにはまだ早いヨ」

 

強制的に覚醒さされる。マユリは鼻歌を歌いながら次の薬品を選び出した……。




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