霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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お、お気に入りが一気に十以上激減 評価配置が増えたけど高評価も増えたから多少下がっても平気だったけど……

マジ凹む あとcccマジ面白い ザビ夫、ヤンデレに好かれすぎ(笑)


四十九話

《全くペルセポネーめ。こんな所に隠していたとは》

 

深夜の台所に異形の存在が居た。見た目はローブを着た骸骨、冥府の王ハーデスである。彼は妻が寝たのを見計らって寝所から抜け出し台所に忍び込む。彼の目的は妻であるぺルセポネー取って置きのカップラーメン醤油味。お湯を入れて三分待つと極上の香りが漂ってくる。ハーデスが早速食べようとした時、一誠から念話が送られてきた。

 

「あ、爺さん起きてる? ちょっと天照に舐められた真似されたんだけど」

 

《……なんだ藪から棒に。まぁ、良い。話してみよ》

 

ハーデスは一誠から先ほどあった事を聞き出す。聞き終わった頃には少々苛立っているようであった。

 

《……くだらんな。自らの過去の過ちからの後悔を他人に押し付けるとは。それも貴様が冥府で幹部の座を約束されていると知っての事だろう? ……その場で奴を殺さなかったのは正解だ。冥府から抗議して色々と搾り取ってやろう》

 

「さっすが♪ あのまま怒りに任せて行動するより、こうして公的立場を利用する方が得だからね。あははは! 許して貰ったと思ったら公式に抗議が来たと知った時の天照の顔が見てみたいな」

 

《……外道め。奴の顔は玉藻と瓜二つだろうに》

 

「……俺から玉藻を奪おうとしたのに死ぬだけで許される訳ないでしょ。向こうはこっちに負い目があるんだし搾り取れるだけ搾り取ってよ。あ、分け前は七:三ね? それと俺は見た目だけで判断しないよ? まぁ、爺さんは見た目が気に入ったからって姪を攫ったけどね」

 

《……ほっとけ》

 

その後細かい打ち合わせが行われ、ようやく終わった頃にはラーメンは伸びきっていた。ハーデスが嘆息を吐きながら啜ろうとすると台所の電気がつき……、

 

 

 

「あなた? そのラーメンはどうしたのかしら?」

 

《ぬおっ!?》

 

羅刹すら怯えて逃げ出しそうな憤怒の表情をした妻の姿があった。ハーデスは慌てた際にラーメンを溢し、彼のローブは再び醤油臭くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふははははははは! 愉快愉快!」

 

『全くだ! 喰らいやがれ、犬っころ!』

 

捕縛されたフェンリルの代わりにロキが差し向けてきたフェンリルの息子のスコルとハティ。ロキの相手をヴァーリチームに任せ、スコルを冥府組、ハティを残りが相手していた。

 

「燃え尽きなさい!」

 

グレンデルのブレスとレイナーレの光炎がその身を焼くもスコルの動きは止まらない。父親同様の戦闘欲求で飛び掛ってくる。しかし、ランスロットとポチが至近距離から斬撃の嵐を放ち、残りの騎士たちが槍や弓で攻撃を仕掛ける。そして片目に矢が刺さった時、流石のスコルも怯んだ。透かさず黒歌が腹の下に潜り込み気の篭った一撃を放つ。

 

「にゃん♪」

 

「ギャン!」

 

内蔵に深刻なダメージを受けたスコルは血を吐き出しその場にうずくまる。なんとか立ち上がろうとして力を込めたその右前足をポチが切り飛ばした。その瞬間、彼の持つ刀が意志を持つように振動しだす。

 

「至った! 遂に至ったぞ! これで拙者は狼王となる!」

 

突然高笑いを始めたポチは刀の鋒を自分の心臓に向け……そのまま突き刺した。すると刀は彼の胸に吸い込まれていきその体を黒い靄が包む。

 

「ぬっ!? 何かするようだな。ならばさせん!」

 

ロキはヴァーリ達の攻撃を捌きながら叫ぶとロキの影が蠢き中から巨大な蛇の怪物が数体現れる。そして空中のも魔方陣が現れ、中から無数のワイバーンらしき龍が出現した。

 

「ロキめ! ミドガルズオルムまで量産しているとは! それにあれはリンドヴルムか!」

 

リンドヴルム。北欧に伝わるワイバーンの一種でその尻尾は鏃のように尖り、その牙は鰐のように鋭い。そして稲光はこの龍が引き起こしていると言われている。リンドヴルム達はその伝承に違わぬ速さでランスロット達に襲いかかり、ミドガルズオルムは炎を吐きかける。その炎はタンニーンの炎で吹き飛ばされるが、リンドヴルム達はギャアギャアと知性を感じさせない鳴き声で迫った。

 

「はぁっ!」

 

ランスロットは龍殺しの力を持つアスカロンで次々と仕留めていき、他の騎士達も各々の武器で迎え撃つ。ポチを包む靄は徐々に形を成していき巨大な狼に酷似してきだした。

 

「ガラティーン!!」

 

ガフェインの持つガラティーンは太陽の力が込められた聖剣。彼自身も太陽の出ている時間にこそ本来の力を発揮するのだが、それでもアーサー王の片腕にまで上り詰めた力は凄まじく、聖剣から放たれた波動はリンドヴルムとハティを吹き飛ばす。先程から何度も雷光や滅びの魔力を受けても気にせず掛かってきたハティもこれは効いたのか動きを止めた。

 

「今だ!」

 

先程からアーシアと同じ位置に陣取り矢を放っていた松田はありったけの光の矢をハティへと打ち出す。だが、突如割り込んできた灰色の大きな影によって全て撃ち落とされてしまった。

 

「フェ、フェンリル!?」

 

なんと鎖で拘束されていたはずのフェンリルが鎖から抜け出しているではないか。見ると数匹のリンドヴルム達が前足で鎖を持っている。どうやら見た目より随分と賢かったようだ。フェンリルはリアス達をなぎ払うとロスヴァイセを狙って襲いかかる。その鋭利な爪は彼女の体を易々と切り裂き、神殺しの牙は確実にその命を奪うだろう。

 

「させませ……くっ!」

 

彼女を庇う様に間に入ったガウェインさえも一蹴され、ロスヴァイセが思わず目を閉じた。

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!!」

 

しかし何時まで経っても痛みは襲ってこず代わりに温かい物が顔にかかる。目を開けてみるとランスロットがフェンリルの前に立ち塞がっていた。フェンリルの爪は彼の鎧を貫いて深く刺さり、牙をアスカロンの腹で防いではいるものの徐々に押され始める。そしてランスロットの顔にフェンリルの息がかかった時、アスカロンが粉々に砕け散った。

 

「がっ!」

 

ランスロットはそのまま爪で切り裂かれ、フェンリルの牙が彼に迫る。その時、先ほど吹き飛ばされたリアスが背後から滅びの魔力を放つ。だが、その一撃はフェンリルの毛を少し吹き飛ばすに留まり、ただ怒りを買っただけだった。リアスの方を振り向いたフェンリルは口からヨダレを垂らしながらリアスへと疾走する。恐怖からリアスが立ち竦む中、その体を横合いから押した者がいた。

 

「小猫!」

 

リアスが驚く中小猫はフッと笑い、その体にフェンリルの爪が迫る。小猫が死を覚悟して目を閉じると腹部に鋭い痛みが走る。しかしそれは予想に比べると軽い痛み目を開けた小猫が見たのは自分を抱き抱えるように庇い胸を貫かれた黒歌の姿。

 

「にゃはは……。白音…怪我…無い…?」

 

「ね、姉さまぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

黒歌の体が間に入った事によって小猫は致命傷を免れたのだ。

 

「グルルルルルル!」

 

だが、その背後からハティが迫る。その口で二人を丸ごと飲み込もうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その瞬間。突如現れた、もう一体のフェンリルがその首筋に襲いかかった。

 

「拙者の仲間に何をする!」

 

「キャン!」

 

ハティの首筋に噛み付いたもう一体のフェンリルはポチの声で叫ぶ。そして黒歌の体を貫いたフェンリルは爪を引き抜くと目の前のもう一体のフェンリルに相対する。互いに睨み合い膠着状態に陥ったその時、フェンリル目掛けて缶詰が投げられ、もう一体のフェンリルは咄嗟に飛び退く。フェンリルは鬱陶しそうに缶詰を爪で切り裂き、とてつもない悪臭が辺りに漂った。

 

「ギャウンッ!?」

 

その缶詰の正体はシュール・ストレンミング。世界一臭い食品である。その香りは缶に入っている為に普段は臭わないが、一度缶を開けると悪臭が一気に吹き出す。犬の嗅覚は人より遥かに優れており、狼がベースになっているフェンリルの嗅覚はそれ以上。あまりの悪臭にフェンリルの意識が飛び、その隙をついて黒歌と小猫は回収された。二人を回収したのは駆けつけた一誠。玉藻が悪臭に顔をしかめながら小猫を抱き抱え、一誠は黒歌の亡骸(・・)を抱き抱える。

 

 

 

 

「……黒歌。ごめん、遅くなった」

 

一誠は妹を守り満足そうな表情な表情を浮かべる黒歌を抱きしめ涙する。何時もは喧嘩ばかりの玉藻も長年の付き合いである黒歌の死に居た堪れないようだ。一誠の力を使えば黒歌を霊としてこの世に繋ぎとめられるだろう。それでも彼女の死は二人の心を苛む。その時、ロキの声が響いた。彼は愉快そうな声で笑っている。

 

「ふはははははは! まずは一匹! そして貴様は赤龍帝だな? これは面白い事になりそうだ!」

 

「……少々黙りなさい」

 

「ぬっ!?」

 

愉快そうに叫んでいたロキだが玉藻から放たれる殺気に身を竦ませる。そして一誠は黒歌の亡骸を小猫に託すとロキを睨み付けた。

 

「……許さない。お前は殺す。俺の手で完膚なきまでに殺し、その魂をバラバラにして未来永劫苦しめてやる!」

 

「グルァァァァァァァァ!!」

 

「させん!」

 

復活したフェンリルが一誠へと襲い掛かるももう一体のフェンリルが間に入りそれを遮る。

 

「……ポチ? そう、至ったんだね」

 

「その通りで御座る、主よ! 拙者、フェンリルの霊力をスった事により霊格が上がりました! もはや拙者はただの人狼ではない! 狼王に候! さぁ、フェンリルの相手は拙者に任せ、主はロキを!」

 

もう一体のフェンリル……ポチはフェンリルに相対する。そしてその隣にグレンデルが並び立った。

 

『手ェ貸すぜ。その力にまだ慣れてねぇんだろ?』

 

「かたじけない!」

 

最強の魔獣を模した力を持つ狼王と大罪の暴龍との共闘。二体から放たれる威圧感にリアス達は見ているしかできない。そんな中、小猫の声が響き渡った。

 

「……お願いします。姉さまの敵をとってください!」

 

その声が合図のようにフェンリル達は同時に動いた。

 

 

 

 

 

「……ご主人様。シャドウは回復いたしましたか?」

 

「うん。小さいフェンリルの魂を食わせたらアレを使えるまでにはなったよ。玉藻、早速アレを使う。準備しろ!」

 

一誠の背後にシャドウが現れ、一誠の鎧に吸い込まれていく。その瞬間、玉藻の持つ鏡が光り輝いた。

 

 




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