冥府にある焼肉屋。其処の座敷席に異様な集団が居た。一人はピエロの仮面を被ったフード、一人は白い鎧を纏った青年、一人は大柄な筋肉質の男、そして最後の一人は人間の様な体のドラゴンだ。そして座敷席には予約席であるらしく、
『裁縫好きの漢の会御一行様』
と表示されている。此処に集まってのは手芸を趣味にする男性が集う掲示板の常連達であり、今日は初めてのオフ会の様だ。……もっとも、ドラゴンは残りの三名中二名と知り合いだった為に非常に気まずかったが……。
『……あ~、知り合いも居るが此処はHNで名乗る所か? ……グリリンだ』
最初に口を開いたのは一番気不味そうなドラゴン……グレンデルである。他の面々も彼に釣られたのか口を開き始めた。
《プルとんです》
「サンナイトです」
「……ヘラクレだ」
各自自己紹介をした後、場を気まずい沈黙が包む。そうしている間にも注文した肉が届けられ、四人は黙々と食事を続けた。
『(だ、誰か何か言えよ……)』
《(き、気まずい。グレンデルさん十円あげますから何か言ってください)》
「(あ~くそ! サマエル奪取の作戦サボってまで来たってのに気まずいぜ)」
どうやら四人とも人見知りする質らしく誰も口を開こうとしない。しかし、このままではいけないと思ったのかサンナイトと名乗った青年が口を開いた。
「で、では皆さん約束通りに新作を見せ合いましょう!」
サンナイト……お気づきの方が多数だと思うがガウェインはカバンから手縫いのヌイグルミを取り出す。その顔は自信に満ち溢れていた。
『……うわぁ』
《……何とも言い難いですね》
「……正直に言うべきか」
「ははははは! そう褒めないでください。この王とライオンの組み合わせ! まさに芸術です」
ガウェインは一同の反応に鼻高々といった様子ではあるが、その出来栄えは一同の反応から推して知るべしである。敢えて言うならば彼の裁縫の腕は料理の腕と同レベルと言った所だ。グレンデル達は喉元まで押し寄せた言葉を飲み込むと自分達の作品を取り出した。
《私は無難にクマのヌイグルミです》
プルとんっと名乗った道化の面の最上級死神が出したのは市販品かと思わんばかりの作品だ。みるだけで彼の腕前が伺える。
「俺はコレだ」
ヘラクレと名乗った巨漢が出したのはケルベロスのヌイグルミ。多少の粗が目立つがそれなりの出来栄えと言えるだろう。そしてグレンデルの番になると一同の視線が期待に満ちたものとなった。
《裁縫好きの男性が集まる掲示板でカリスマ的存在であるグリリンさんの作品ですか》
「……ふむ、相手にとって不足なしですね」
「……お前は少し黙っててくれ」
『んじゃ、取り出すぜ?』
グレンデルは空間の歪を作り出すと中から自慢の一品を取り出す。それは一メートルを超えるグレートレッドのヌイグルミだった。
《おお! 素晴らしい!》
「今回ばかりは私も負けを認めなくてはなりませんね」
「その自信は何処から……」
こうして盛り上がった一同は意気投合し、二次会としてバッテングセンターに向かった。実力者ぞろいの為にホームランを連発し、飽きてきたので最後にグレンデルが一球打つことになったのだが……。
『どりゃぁぁぁぁぁ!!』
グレンデルの打ったボールはジェット機のエンジン音のような轟音を上げながら飛んでいき、建物の天井を突き破り空の彼方へと消えていった。その後、逃げ出した一行は遊び回り、再びオフ会をする約束をして解散したのであった。
「……全く。ヘラクレスの奴、何処に行ったんだ?」
その頃、コキュートスから運び出された氷漬けのサマエルの封印解除と制御の為の作業が行われている場所を遠くから見つめる影が一つ。いや、影の近くに霧が集まりもう一人現れた。
「……ゲオルクか。首尾はどうだい?」
最初にいた人影は漢服を制服の上から着た青年、最近非常についていない幸運値Eの人だ。
「……何とかといった所だな。警備が厚すぎてそれほど細工をする時間がなかった。使えて一回といった所だ。ぶっつけ本番になる。今度の計画で試す、という訳にはいかないな」
「……そうか。……ん?」
漢服の青年は受けた報告に顔を顰め、近づいてくる轟音に気付く。そして振り返った瞬間、その股間に亜音速で飛来した硬球が激突し、彼は錐揉み回転をしながら吹き飛んだ。
「のわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「曹操の曹操が死んだ!? この玉な……大丈夫か!?」
多分大丈夫じゃない。
休日の朝、一誠は誰かが上に乗って体を揺さぶっている事に気付き、ムカついたので布団の中に引きずり込んでお仕置きしようと思った。万が一ありす達だったら色々と死ぬが、重さ的に違うので除外する。というよりあの二人だったら飛び乗るので腹部への衝撃で飛び起きる。そうでないっという事は違うのだろうと判断した一誠はどうせ玉藻か黒歌だろうと思い布団の中に引きずり込む。
「……あれ?」
しかし、一誠の手に伝わって来たのは何時もと違う感触。胸にやった手にはブラの感触が伝わり、大きさもそれ程ではない。中に手を入れて揉んでみたが何時もと感触が違う。そもそも二人は着けない派だ。そしてお尻にやった手が感じた感触も何時もと違う。感じたのは吸い付くような滑らかな肌と引き締まった小ぶりな尻の感触。
《あん! いきなり激しいでやんす》
そして聞こえてきた甘く切なげな吐息は二人のものではなかった。一誠が漸く目を開けると布団の中に居たのは半裸のベンニーア。上にブラとワイシャツを纏っている以外は何も着ておらず、顔を紅潮させながら吸い込まれそうな金色の瞳で一誠の目を覗き込んでいた。
「……え~と、何してるの?」
《朝這いでやんすが? いや~、このままだとあっしの名前の横に再び『影薄』って付きそうでしたので。所でこの格好はどうでやんす?》
「メタ発言禁止! ……その格好はベリーグット。ただ、下着はブラよりパンツの方が良かったな」
《……成る程。あ、お客さんが来てるでやんすよ》
「……そう。馬鹿猫も死んだの」
朝から一誠を訪ねてきた客の正体はメディア。彼女も黒歌とはそれなりの付き合いだったので少々思う所があるようだ。暫し沈黙が続いた後、彼女は一枚の封筒を取り出した。
「町内会の福引で高級ホテルの宿泊券が当たったのよ。そこで坊やの所にお誘いに来た訳」
「……俺とメディアさんが旅行に行くの?」
「そんなわけ無いでしょ。私はありすちゃん達を誘いに来たの。どう? 一緒に来ない?」
「行きたい!」
「有難うメディアさん!」
二人も行きたがっているので一誠も反対せず、二人はメディアと一緒に旅行に行く事になった。詳しい日程はメディアの執筆状況によるのだが、そろそろ大きな仕事が終わるのでそれ程先ではないだろう。大体一誠の修学旅行と同じ頃だという話題になった時、メディアは一枚の手紙に目をやる。それは三大勢力からの運動会のお誘いだった。それによると同盟勢力ごとにチームを作って参加、となっている。
「……大変ねぇ。オーディンの警護に学生を使った一件で信用ガタ落ちになって、同盟断られてるんでしょ? オリュンポスも破棄はしないの?」
「うん! 同盟していた方が搾り取りやすいからだって。それにしてもこんなんで親睦を深めようだなんて。しかも女性の服装は体操着にブルマだよ? サーゼクスの趣味かな?」
「……ブルマ。アーシアちゃん、小猫ちゃん、他にもまだ見ぬ美少女が……坊や、参加しなさい。そして写真を沢山撮ってくる事! ……頼まれてたアスカロンの修復の交換条件よ」
「……え~!? メディアさんが勧誘が面倒だから彼らの前に姿を出したくないのは分かるけどさ……」
一誠は大きく溜息を吐くも普段からお世話になっている為に逆らえず、渋々参加メンバーを決めたのであった。
「あ、ありすちゃん達も参加させてね!」
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