霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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……ふと思った エリザベートを召喚したザビーのエクストラのssが読みたいと どっかで誰か書いてないかな?


五十三話

京都を目指す新幹線の中、一誠は桐生と向かい合って眉間にシワを寄せる。二人は自由行動中の観光スケジュールを調整していた。

 

「……まさか交通事故が事件に発展するなんてね」

 

先ほど聞いたラジオによると、目的地の一つの近くで交通事故が起こったのだが、被害者の青年が槍のような物を持っており、警察官の制止を振り切って逃走した為に安全の為変更する事になったのだ。

 

「……しょうがないわ。最初に稲荷山に行って、その次に……」

 

二人が話し合う中、行動を共にする松田と元浜、イリナとアーシアは話について行けず耳だけを傾けている。予定としては一日目に仏閣を巡り、二日目は食道楽という予定になっていた。漸く予定を練り直せた桐生は少々呆れたような目で一誠を見る。

 

「それにしてもよく食べるわね……」

 

「そう? 君だって甘い物好きでしょ?」

 

一誠の膝の上には山盛りのお菓子が置かれており、既にかなりの量が彼の腹に収まっている。普段から一誠は大量の食事を取っており、それなのに無駄な脂肪がついていなかった。

 

「ホント、なんで太らないの?」

 

「そう言われても昔から沢山食べるけど太った事ないな。むしろどうやったら太れるの?」

 

その瞬間、唸る鉄拳、轟く打音! これが後に数多くの怪物を拳の一撃で撃退し、ワンパンウーマンと呼ばれる戦士の伝説の始まり……、

 

 

 

 

 

なんて事はなく、桐生が思わず突き出した拳は一誠に軽々と避けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふ~ん」

 

一誠は京都駅に着くなり絡みつくような視線を感じ眉をひそめる。どうやら悪魔である松田達に対して警戒心の篭った視線を送る者達が居て、彼らの近くに居るせいで不快感を感じたようだ。

 

「ほら、早く行かないと観光の時間がなくなるわよ。早く行きましょ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都ペルセポネーホテルに」

 

 

京都ぺルセポネーホテル。最近までは京都サーゼクスホテルという名前だったが最近になって元の経営者の所有していた株式の権利が別の者に移った為に名前も変更する事となった。なお、近くには京都セラフォルーホテルもあるが、此方も近々経営者が代わるという噂がある。

 

 

 

なお、お分かりかと思うが新しい経営者はハーデス……ではなくペルセポネーである。むしろ人間界で冥府陣営が行っている会社の実権は彼女が握っており、玉藻の協力もあって大繁盛している。給料も大幅に上がりホテルの従業員も大喜びのようだ。

 

「デケェ! 本当に此処に泊まれるのか? 高級ホテルだろ?」

 

「なんでも理事長が前の経営者だったらしいよ。だから今までは宿泊費を割引して貰ってたけど、来年からは別のホテルだって」

 

「へぇ、運が良かったわね」

 

一同はホテルに荷物を置きに行く。学生証を見せるとホテルマンは快く案内してくれ、直ぐに部屋にたどり着いた。部屋割りは二人一組になっているのだが……どうやら松田だけは一人部屋のようだ。他の生徒が泊まる部屋は大きなベットがある洋室。オートロックで安全性もばっちりだ。

 

 

 

 

「な、なんで俺の部屋だけ……?」

 

しかし、松田の部屋だけは和室。しかもかなりボロボロだ。

 

「ぶはははは! どうやら割引のツケがお前に回ってきたようだな!」

 

「安心して! 学園関係者による生徒へのイジメってネットに投稿するから。多分積立金は返ってくるんじゃない?」

 

どうやら何かあった時の連絡用としてこの部屋を使う事になったらしい。それを知らない元浜は大笑いし、知っている一誠は案内したアザゼルを誂うつもりで言う。嘆く松田を残し、一誠は自室に荷物を置きに行った。すると着替えが入ったカバンの中で何かが動く気配がし、元浜に見られないように覗き込むと……、

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃん♪」

 

猫の姿をした黒歌が入っていた。

 

「……ねぇ、元浜。生ゴミって何処に出すんだっけ?」

 

「にゃっ!?」

 

「どうかしたか? なんか猫の鳴き声が聞こえたような気が……」

 

「気のせいだよ。さ、行こうか」

 

一誠はカバンに幽霊封じの結界を張ると待ち合わせ場所であるロビーに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ゼノヴィアさん達可哀そうですね。折角の旅行なのに……」

 

アーシアはゼノヴィアや匙が生徒会の仕事だけで初日の自由時間が潰れると聞き、同情の表情を浮かべる。彼女としては友人になったゼノヴィアとも楽しみたかったのだろう。

 

「まぁ、しょうがないわ。あ、お土産屋さん!」

 

元相棒のイリナはお土産屋を見つけるなり走り出す。稲荷山の麓だけあって狐関連のお土産が揃っており、その可愛さに目を奪われる。

 

「ここで少しくらいお土産買ってもお小遣い足りるかしら?」

 

「はわぁ。可愛いですね」

 

「あ、串団子売ってる。すいません、タレとアンコ各三本下さい」

 

一誠は狐のお土産に興味がないのか食い気に走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ホテルの一室では……、

 

「あ~、やっと出られた」

 

どうやらカバンに張った結界は嫌がらせ程度のものだったらしく黒歌は何とか脱出する事ができた。

 

 

「さぁ! 駄狐や死神っ子のシーンは前回で終わった! 今回は私がメインヒロインにゃ!」

 

メタな発言をしつつ黒歌は窓をすり抜けて外に飛び出る。霊体になった為に空を歩けるようになった彼女は鼻歌交じりに空中散歩と洒落込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様、京の者ではないな? その霊力、怪しすぎる! まさか貴様が母上を……」

 

その頃、一足先に頂上にたどり着いた一誠は妖怪に囲まれていた。巫女服の狐の妖怪らしき少女は烏天狗達を引き連れ一誠を取り囲む。どうやら人払いの術をかけているらしく周囲から人の気配が消え去っていた。

 

「……怪しいって。俺はただの観光客だよ? 君の母親なんて知らないって」

 

一誠は言いがかりをつけてきた少女に呆れたような視線を送る。ただ怪しいと言うだけで相手の実力も図らずに襲いかかるなど愚の骨頂である。

 

「とぼけるな! 私の目は誤魔化せんのじゃ! 皆の者、かかれ!」

 

「……行け」

 

「なっ!? な、なんだ此奴らは!」

 

何時の間にか少女達は遥かに多くの怪物に囲まれている。イソギンチャクやタコを掛け合わせたような醜悪な化物の正体は『螺湮城教本』が生み出す海魔。そして烏天狗達が駆けつけるよりも早く少女は海魔に捉えられる。ヌメヌメとした触手が体を這いずり、鋭く尖った先端が左目に突き付けられた。

 

「動かないでね。動いたらその子の目を潰すよ」

 

「姫様っ! おのれ、姫様を解放しろ!」

 

「嫌だね。この状況で逃がす馬鹿なんていないさ。あ、とりあえず仲間同士で足と翼を潰しあってね」

 

一誠は烏天狗の叫びに対し、馬鹿にしたように舌を出す海魔は少女を捉えたまま一誠に近づき、一誠は少女を盾にするように受け取る。当然、触手の先は目に突き付けたままだ。

 

「お主ら、私に構わす此奴らを討て!」

 

「へぇ、自己犠牲? でも残念。君姫様なんでしょ? そんな重要人物を力量も分かっていない相手の前まで連れて行き、死ななくても大きな怪我をさせたとあっちゃ……下手したら一族郎党処罰物? 可哀想にね。身を守る手段を持たない癖に危険に飛び込む馬鹿の命令に逆らえないばっかりに……」

 

「くっ!」

 

一誠は芝居がかった口調で少女を責め立て、自分のミスに気付いた少女は悔しさから歯噛みする。人質になる危険性がある以上、無力な自分は出てくるべきでなかったのだ。足手纏いなくせに勇み足で部下を引き連れ、その結果がコレだ。抵抗しようにも目のすぐ傍に鋭利な触手の先を突き付けられては術での抵抗もできない。

 

 

「うっ……」

 

「あれ、泣いちゃった? でも逃がさないよ。君から襲ってきたんだ。子供だからって許しはしない。罪には罰……」

 

悔しさから少女は泣き出し、一誠はそれでも容赦しない。

 

 

 

 

 

その時である。一誠の背後から気配を殺した二つの影が飛びかかった……。

 

 




イッセーsanは子供でも容赦無しです 傍から見れば悪役(笑)

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