霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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五十五話

一誠が修学旅行で居ない兵藤家。その二階にある一誠の部屋に玉藻が侵入していた。ベットの掛け布団を捲るなり着物を脱ぎ捨てダイブする。そして徐ろに匂いを嗅ぎだした。

 

「ご主人様のシーツ、クンカクンカ」

 

別途に残った匂いを体に擦りつけるように体を摺り寄せ、手はやがて股へと向かっていく。その顔は既に発情しており、

 

 

 

 

《すいやせん。一誠様からお電話……》

 

ベンニーアが部屋に入ってきた頃には濃厚な雌の香りが部屋に充満していた。ベットで幸福そうな顔しながらグッタリとしていた玉藻であったが、一誠からの電話と聞くなり耳がピコンと動き飛び起きる。物凄い勢いで電話を受けとった時には平然とした声を出していた。

 

「もしもし、替わりましたぁ!」

 

『あ、玉藻? 京の妖怪に襲われたんだけど、こっちの九尾って玉藻の前に関係あるの?』

 

「お~そ~わ~れ~た~!? ガッテム! 直ぐ駆けつけて皆殺しじゃぁぁぁぁ!! ……あ、朝廷と戦った時の側近です。ま、私が負けるなり逃げ出しやがりましたけどね。つーかぁ、馬鹿猫は何してやがるんですか? どうせついて行ったんでしょ?」

 

『勝手にカバンの中に入ってたから結界で閉じ込めたんだけど、帰ったら居なくなってた。一応捜索はさせてる。……ねぇ、玉藻。無理して来なくても良いよ。俺は無事に帰るから笑顔で出迎えてよ』

 

「……はい! お任せを! あ、お帰りなさいのチューしても良いですか!?」

 

『うん。って言うか寧ろしろ。ってか俺がする。てな訳だから玉藻は大人しく愛しの旦那様の帰りを待っていれば良いよ。……あと発情期だからって自重する事』

 

「は、発情期ってバレてましたか!?」

 

《え!? 万年発情期じゃ無かったんですかい!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の早朝、一誠はホテルの屋上で座禅を組んでいた。強い力が流れる京都の朝の澄み切った空気によって一誠の霊力が活性化していく。人払いの術を掛けてあるので近付いてくる人は居らず、落ち着いた気分で座禅を続けられる。旅行中という事もあって本日の朝の訓練はこの座禅だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主、今日の訓練を始めますよ」

 

「……了解」

 

……なんて事はなく、ランスロットなど禁手時の一誠よりも強く、遥かに上の技量を持っている霊による鍛錬は旅行など関係ないとばかりに開始した。

 

 

「はぁっ!」

 

「甘い!」

 

一誠は籠手から出現させた刃でランスロットに斬りかかるもあっさりと躱され、蹴りを脇腹に貰う。結局一時間やっても刃は数回掠っただけに終わった。やはり湖の騎士の壁は厚いようだ。

 

 

「やはり主は武器の扱いはまだまだですね。……鍛錬時間を増やしましょうか?」

 

「……頼む。もしもの時にアレ頼りだけじゃ玉藻を守れなくなるかもしれないからな。手札は多い程良い」

 

服の下を痣だらけにして仰向けに倒れている一誠はランスロットの手を借りて起き上がると再び構え直す。ランスロットも微かに笑うと表情を騎士のものに切り替え一誠に殴りかかった。結局、一誠が鍛錬を終えたのはさらに一時間後の事。増えた鍛錬で疲れた後に食べる朝ごはんは格別に美味しく、何時もの三倍の量が胃に収まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ば、馬鹿な!? あの女子高生探偵に負けた事を励みに精進した、私の無敵バイキングが全滅……? 認めん、認めんぞぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事が終わってからは再び観光。一誠は満足そうに腹を押さえていた。

 

「あ~、満足満足♪」

 

「兵藤さんって沢山食べますね。……なんであれだけ食べて」

 

「それ以上は駄目! 黒化するわよ!」

 

黒化とは某腹ペコ王が病んだ腹ペコになる事である。よく知らないが多分合っている……かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……うわっ。タチが悪いのが居るなぁ。って、目が合った!)」

 

一行が最初に向かったのは清水寺。其処で一誠は一体の怨霊を発見した。其れは地脈の流れに引きずられた怨念が長い月日をかけて一つになった存在。その悪質さは一誠でさえも引く程だ。もっとも、怨霊は自分が何者かすらも分からず、ただ其処に存在し続けるだけだったのだが、一誠と目が合ってしまった。

 

『フフフ……』

 

黒くドロドロとした人型だった怨霊は目らしき赤い光を微かに動かし、嬉しそうに笑うと何処かに消えていく。一誠の背中をジットリとした汗が流れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……結構居るなぁ」

 

 

続いて銀閣寺金閣寺と回っている間、一誠は自分達を見張る妖怪の視線に気付いていた。流石にジロジロ見られるのは不愉快で、何体か死にたての霊を手に入れるも不機嫌さは収まらない。とりあえずお茶屋で休んでいる松田達の元に戻り、お茶菓子の追加注文でもしようと振り返ると一般人達は倒れ、獣耳の妖怪達が一誠達を取り囲んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とりあえず殺すな。生け捕りにして交渉材料にしろ」

 

『リョ……リョウカイィィィィィィ!!』

 

そして彼らの周りを一誠の手駒である悪霊達が取り囲んでいた。悪霊はピンク色の肉塊の様な姿をしており怨み辛みの篭った顔が全体にある。その悪霊の名前は『レギオン』。旧約聖書に登場する悪霊で『軍団』を意味する。そのレギオンは妖怪達を数で圧倒し、一斉に襲い掛かった。

 

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

「お待ちを! お待ちくださ……」

 

妖怪達はレギオンに押し潰され、或いは呪怨の篭った息を吐きかけられ倒れて行く。

 

「イッセー君!? ちょっとやりすぎ……」

 

「いや、昨日襲ってきたし。いきなり囲んだんだから情け無用でしょ? むしろ殺さない俺を聖人君子として称えるべきだと思うよ?」

 

イリナが止めようとするも一誠は聞かず、妖怪達は確かに死んではいないがズタズタになって倒れ伏していた。辺りには彼らの血潮がぶちまけられ、うめき声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……遅かったか。おい、此奴らは戦いに来たんじゃねぇ。昨日の誤解が解けたから九尾の娘がお前に謝りたいんだとよ。着いて来てくれ」

 

「え、嫌だけど? 絶対に会いたくない。どうせ、母上を助けてくれっと言われそうだし。妖怪と同盟結びたいんでしょ? なら、実績やら何やらが関わってる君達で何とかしてよ。俺はちゃんと旅費払ってるし、仕事外だから手伝わないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……曹操。ジャンヌに掛けられた呪いの解析が終わったぞ」

 

「本当か、ゲオルク?」

 

一誠が九尾の娘との会談を拒否している頃、最近死にかけまくりの青年。どうやら曹操と言う名前らしい。そして曹操はメガネの青年……ゲオルクが話をしていた。二人の周りには巨漢の青年と白髪の青年、無表情な子供が居る。曹操に真偽を問いただされたゲオルクは深刻そうな顔で口を開いた。

 

「ああ、彼女は今も呪いのせいで高熱に苦しめられているが、どうやらそれだけじゃないらしい。あの呪いは拡散し、仲間と思っている相手に不幸を呼ぶんだ」

 

「成る程、僕の目の前で期間限定プリンの最後の一個が売り切れたのも、レオナルドが嫌いなのを我慢して食べたサラダに青虫が入ってたのも呪いのせいか」

 

「俺が犬の糞を踏んだのも、ゲオルクが風俗店に行ってマニアックな注文をした後で財布を落とした事に気付いたのも呪いのせいなのか」

 

「え? 何度も死にかけるとかは……?」

 

「「「「え?」」」」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……馬鹿みたいにゃ。ま、どうせ駄狐がなんかしたんでしょうけど……」

 

黒歌は息を殺しながら曹操らを見張る。京都観光中に挙動不審な者達を見つけた黒歌は興味本位で尾行。そしてどうやら彼らはテロリストらしいっと分かった。曹操達は黒歌に気が付かなかったのかそのまま転移して行く。黒歌も今日の宿でも取ろうかと思って歩き出し、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ! 何やってんだ?」

 

「アンタは……」

 

間抜け面をした火の玉と鉢合わせした……。

 




明日はもしかしたらラスボス番外編の外伝を書くかも ふと思いついた

中学生の柳がバルバトスのワルノリで送られたのは…… 日記形式になるかも



予告

例えるならTVのスネ○と映画版のジャイア○位の差がありますね。あ、あの人、人類最古のジャイア○でした


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