霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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アーチャー強い セイバーで結構かかったリップを2ターンキル カラドボルクが強かった

まぁ、セイバーの時より6レベほど上だったんだけど


五十六話

「あ~、もう! 妖怪は何してやがりますかっ! コッチは色々忙しいっていうのに! ……まぁ、私の責任ですが」

 

「ガハハハハ! 分かっているではないか! あれはハッキリ言って八つ当たりだったからな!」

 

「うむ! おかげで天鹿児弓と天真鹿児矢を手放す事になったのだからな! 此方も徹夜続きだ!」

 

天照の目の下にはすっかりクマが出来ており、高らかに笑う雷神風神コンビも心なしか窶れている。先日の一件は三人の独断でやった事であり、流石にどうかと思った他の神々は彼女達に後始末を全てさせる事にした。当然、何時もの業務もやりながらである。

 

なお、会話に出てくる弓と矢は彼女が悪神と判断した者達を倒し地上を平定する為の使者であるアメノワカヒコに天照が渡した物であり、音信不通になった彼に雉を遣わした所射殺され、矢は天界まで届いたという。結局、彼は天照が投げ返した矢で命を絶たれたらしい。

 

地上の平定という重要任務の為に渡した弓矢。謝罪の為の品の中に入れられていたその品はハーデスの判断によって一誠の手に渡る。神を倒すために最高神からアメノワカヒコに渡した矢には神殺しの力が宿っており、もしかしたら、自分を射殺しても良い、という気持ちが篭っているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、玉藻と微かに繋がっている天照には玉藻の感情が流れ込んでくる事が有り、夜中に仕事している時に悶々とした感情が流れ込むとキツいそうだ。

 

 

「ま、感情だけとは言えオカズに困らないのは良いんですけどね」

 

……等と言っているあたり、根本的な性格は玉藻と同じなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……このような事を頼める程の関係ではない事は理解しておる。しかし、しかしどうか……母上を助けるのに力を貸して欲しい!」

 

アザゼルに連れられ妖怪の住む世界に連れて来られたイリナ達は一誠を襲った狐の少女『九重』は謝罪する事すら拒否された事に自責の念を募らせた後、イリナ達に母を助けてくれと懇願する。幼い少女が涙に声を震わす姿に胸を打たれた一行は快く引き受けた。

 

なお、交流の一環として九重が観光案内をするという話が持ち上がったものの、先日一誠に人質に取られた事や、間違いなく彼の不興を買う事が歴然としていたので白紙に戻された。

 

 

 

「……それで何の用なの、イリナちゃん?」

 

ホテルに帰ったイリナは松田達と共にはシトリー眷属と話し合った後、一誠を呼び出した。夕食をお腹いっぱい食べて機嫌の良かった一誠は呼び出しに応えたものの、真剣な眼差しの幼馴染の姿を見て要件を察し、不威厳そうな表情をする。それに合わせるかの様に下がった気温と彼から放たれるプレッシャーにたじろぐイリナであったが、震える声で何とか話しだした。

 

「……イッセー君。お願い、力を貸して!」

 

「嫌だね。俺の力を借りたきゃ冥府に話を通したら? ま、無理だろうけど」

 

既に一誠はハーデスに話を通しており、アザゼル達が対価を払うから力を借りたいと連絡を入れようとしても重要な会議中だからと話にすら応じないでいた。

 

「……イッセー君は強いでしょ? あの子には襲われたかもしれないけど、それはお母さんが心配だったからなのよ!?」

 

「それで? 確かに俺は強いよ? でも、それは力を貸す理由にはならない。力があるって事と、力を振るわなければならないって事は違うんだ。それに妖怪の総大将……八坂さんだっけ? メディアさんが地脈の流れは何とかするから問題無いって話になったでしょ?」

 

「そんな! もしかしたら死んじゃうかも知れないのよ!? あんなに小さい子がお母さんと会えなくなっても良いの?」

 

イリナは少し感情的になりだし、一誠は先程までの不機嫌さはどこかに行き、呆れ返っている。

 

「それ、君が言う? だったらさ、三大勢力の犠牲になった人達には何かないの? 例えば無理やり眷属にされた人達や神器が危険だからと殺された人達。そして天界も色々やってるよね? 神器で人生を狂わされた人だっているし……アルジェントさんや君の元相棒の様な人には同情しないの?」

 

「……え? そりゃ同情するけど」

 

「だよね。君、コカビエルの一件の時になんて言ってた? 異教徒からなら金を奪っても構わないって言ってたよね? 神は絶対! 我々の教えこそ唯一無二! そんな事を幼い頃から教えられて来たのに、偶々システムに不具合を出すからって追放された人がまともに生きていけるとでも? 訳も分からぬまま思っただろうね。自分が神を怒らせたって。 彼らを保護する施設とかは作ってなかったのかな? まず救うべきは彼らだと思うよ」

 

一誠が言葉を発する度に周囲の気温は下がり、二人の周囲に霊達が現れる。彼らは生気の篭っていない瞳を光らせ歯をカタカタと打ち付け合った。

 

「死なんて何時も理不尽に訪れる。彼らも神器なんてなかったら普通に生きられた。今も世界のどこかでは飢えや病気、そして紛争次々と人が死んでいってる。世の中なんて不平等で残酷なものさ。だから俺は一時の同情なんかで動かない。なぜなら死にたくないからさ。どんなに力があっても必ずはない。俺を動かしたかったら動くだけの理由を見せてよ。見知らぬ相手が死ぬかも知れないとかいう理由なんかじゃないのをさ」

 

一誠はそう言うと部屋に戻っていく。何時の間にか気温は元に戻り霊達は姿を消しさっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、坊や達も此処で食事なのね」

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

「……とオマケの人達」

 

一誠達が祐斗達と嵐山で合流し観光の途中で入った店にはメディア達の姿があった。ありすは一誠の姿を見るなり手を振り、アリスはイリナ達を不機嫌そうな目で見る。そしてその二人を見る元浜の瞳は輝いていた。

 

「び、美少女。それも双子……ハァハァ……」

 

「このロリコン何とかしないと。……所で兵藤の知り合い?」

 

桐生は元浜を呆れたような目で見た後に一誠に訊く。一誠は全くブレのない声で嘘を吐いた。

 

「あ、うん。あの保護者の人が母さんの従兄弟の更に従兄弟で血は薄いけど繋がってて、近くに住んでるから仲が良いんだ。でも、あの人のお姉さん達が双子なんだけど疎遠で、生まれた子の名前を教え合わないまま決めたら同じ名前だったんだ」

 

思いつきでスラスラと嘘を吐く一誠に内心呆れつつメディアは微笑んだ。

 

「初めまして。葛木メディアよ」

 

「わたし、ありす」

 

「あたしもアリス」

 

「……メディア!? もしかして小説家の!? あぁ、間違いない! 本に載ってた写真そっくりだわ! あの、私ファンなんです!」

 

「あらあら、嬉しい事言ってくれるわね」

 

桐生は瞬く間にメディアに夢中になりイリナ達は蚊帳の外になる。メディア自身もファンは大切にするのがポリシーらしく丁寧に対応している。そんな中、アザゼルの声が聞こえてきた。

 

「おう、お前らも嵐山観光か!」

 

どうやらアザゼルも来ていたらしく……彼の手には日本酒の入ったコップが置かれている。一誠はその姿を携帯で撮ると写メにして送信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しょ、書類がやっと終わりましたぁ」

 

その頃、ロスヴァイセは与えられた現地派遣員としての仕事をこなしていた。彼女の前には書き終わった書類の分厚い山。かなりの重労働であることが見て取れるが彼女は今幸せだった。

 

美形の恋人に高い給料、そして充実した福祉。育ててくれた祖母も戦乙女としての職を失った事を心配していたが、近況を知って喜んでいた。近々顔を見に来るとも言っていたので散らかった自宅兼職場の掃除でもしようかと思った時、上司である一誠からメールが入る。

 

「……は? 緊急時で学生の手も借りなきゃいけないっていうのに作戦の指揮をする筈の人が飲酒!? 運動会の時といい、今回の時といい、本当に人手が足りないんでしょうか? ……これは急いで書類を作らないと」

 

ロスヴァイセは重くなった眼を擦りつつ書類の作成を開始した。その内容はアザゼルの業務怠慢に関する報告書。それはハーデスの手に渡り、オーディンやゼウスの目にも触れる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あら? あの子達の姿が消えたわね。アリスちゃん達、名無しの森使った?」

 

「ううん、使ってないわ」

 

「多分、神器の力よ」

 

あの後、メディア達も観光に同行したのだが渡月橋の辺りでイリナ達が消失する。メディアは最初は二人の悪戯かと思ったがどうやら違うようだ。

 

「……メディアさん。此処……」

 

一誠が指さした先には微かな空間の歪み。どうやら時間の流れも外とは違う異空間が存在するようだ。

 

「……テロね。放っておきなさい、坊や。多分『絶霧』ね。厄介な神器だけど貴方には仕掛ける気がないようよ。殺しておきたい所だけど、今すぐ突貫しても逃げられるのが関の山。それに下手に刺激して家族を狙われても何だし、確実に殺れる時に殺りなさい」

 

メディアの言葉に一誠は静かに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アザゼル達は彼らを異空間に引き込んだ者達。テロリスト禍の団『英雄派』と対峙していた。

 

「初めまして、アザゼル総督。いつ襲撃があるか分からないのに飲酒とは余裕がある」

 

「けっ! 言ってろ。そういうテメェらは余裕がねぇな。赤龍帝は引き込んでねぇようだが……怖いのか?」

 

アザゼルに皮肉を言ったのは曹操。その手には神々しい槍が握られている。その槍の名は『黄昏の聖槍』。最強の神滅具である。アザゼルの皮肉返しに対し、曹操は肩をすくめた。

 

「彼が怖いかって? ああ、怖いさ。でも、憧れも感じるね。人外を従え、ドラゴンの力を完全に我が物とする。まさに英雄じゃないか。だからこそ君達の味方だと勘違いしてた時は許せなくて襲ったんだけどね。……それに、ロキの戦いで見せたアレが何か解析した今、絶対に敵に回す気はない。……彼を敵に回す事になるから部下にも手を出さないよ」

 

どうやら曹操は一誠がロキ相手に見せた物の正体を知ったらしく、冷や汗を流している。

 

「……アレが何かお前らは知ってるのか?」

 

「……その様子だと君達は知らないみたいだね。まぁ、良いや。挨拶がわりに教えてあげるよ。あれは通常の覇龍に加え、サマエルのオーラから龍としてのサマエルの力、そして神の悪意を引き出して、二重の覇龍と『覇輝』を同時に発動するという禁呪の類だよ。アレは絶対に敵に回さず、通り過ぎるのを待つだけの災害の様な存在。流石にアレに手を出す勇気はないさ」




意見 感想 誤字指摘お待ちしています



ccc 隠しボスにsnのセイバーが欲しかった

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