霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

64 / 123
五十七話

「ねぇ、メディアさん。あの狐の餓鬼ってどストライクだと思ったけど、恩着せて着せ替え人形にしようとか思わなかったの?」

 

其れは食事時の事、他の者には別の会話に聞こえるように魔術をかけてメディアと話していた一誠はふと思い出したように尋ねる。可愛い女の子に可愛い服を着せるのが趣味なメディアが九重には全く興味を示していない事に疑問を感じたのだ。

 

問われたメディアは少し言いにくそうな顔をし、渋々といった様子で話しだした。

 

「……同族嫌悪って奴よ。あの子は確かに母親への愛で行動したわ。でも、其れは周囲の者を巻き込むやり方。それを考えると関わりたくないって思ったのよ……」

 

かつてオリュンポスの神々の思惑で偽りの愛情を植えつけられたメディアは惚れた男と逃げる為に王である父を裏切り、逃げる際に弟を八つ裂きにして殺し、最終的には惚れた相手に裏切られて我が子すら殺してしまった。強い無念を抱いた彼女は死後も彷徨い、やがて一誠と出会って今の平穏を得た。

 

『神共の事は今も恨んでいるけど、今の平穏が愛おしいから復讐はしない』。そう言い切った彼女は九重の今回の行動と昔の自分が重なって見え、見ているだけで辛いのだろう。

 

最後にあくまで予想なのだが、彼女が気に入った子供を可愛がるのは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

剣が風を切る音と共に鈍い音が響く。イリナと祐斗が振り下ろした刃は英雄派の構成員が数人がかりで張った障壁に阻まれ通らない。元々祐斗やイリナは力よりも技術で攻めるタイプであった為、障壁を破壊する決定打に欠けていた。

 

「くっ!」

 

祐斗は着地するなりアーシアと松田の元に戻る。二人は弓と回復役と後衛向けの能力を持っているが、自分を守る手段を持たない。松田はそれ程の才能がなかった為。アーシアは性格的に攻撃手段を持っても無駄だとリアスが判断したからだ。

 

「放て、放てぇっ!」

 

直様構成員達の放った魔法が雨霰のように降り注ぐ。祐斗は聖魔剣で切り落とし、イリナと松田は光の槍と矢で撃ち落とそうとする。しかし広範囲から襲って来る魔法に対処しきれず三人共かなりの傷を負ってしまった。そして二人に庇われる様にされて無事だったアーシアは回復のオーラを飛ばす。三人は緑色のオーラに包まれ直ぐに傷が癒えるも、再び魔法が放たれた。

 

「殺せっ! 狙いはあの女だ! 彼奴は自分の身も守れん!」

 

魔法の殆どはアーシアを目標としており、凄まじい量の魔法が収束して向かっていく。

 

「アーシアさんっ!」

 

祐斗は直様アーシアを抱き上げると魔法を避ける。しかし、余波までは避けられず彼の自慢の足からは血が流れ出した。

 

「す、直ぐに回復を……きゃあっ!」

 

直ぐに彼の傷を癒そうとしたアーシアであったが、横合いから放たれた影による一撃で吹き飛ばされ気を失う。何時の間にか影でできた鎧に身を纏った男が立っていた。

 

「久しぶりだなぁ! リベンジの時を待ってたぜ!」

 

「その声はっ!」

 

祐斗は彼の声に聞き覚えがあった。最近続出している神器所有者の襲撃事件。彼もその中の一人で、禁手に至ったと思われる相手であった。彼の体から伸びた影の槍が気絶したアーシアに襲いかかる。

 

「させるかよっ! なっ!?」

 

松田が槍を破壊しようと光の矢を放つも影に吸い込まれ、槍はそのまま真っ直ぐに向かっていく。そしてアーシアを串刺しする瞬間、祐斗が再び彼女を抱えて避けた為に怪我はなかったが、代わりに彼の脇腹が深く切りつけられる。

 

「今がチャンスだ!」

 

影使いの号令と共に再び魔法の雨が四人に向かって降り注ぐ。範囲内には影使いもいたが、彼は先程と同様に魔法を影に吸い込ませ無事だ。そして雨が止んだ時、アーシアを庇って全身に魔法を浴びた祐斗がいた。彼も既に意識を失っており、左の手首から先が千切飛んでいた。イリナも足をやられ、彼女に突き飛ばされた事で無事だった松田は腰を抜かし完全に戦意喪失している。

 

 

 

「ははははは! 貴方の教え子は情けないな、アザゼル総督! さっきから足の引っ張り合いじゃないかい?」

 

「うるせぇ! その口、閉じやがれ!」

 

曹操はアザゼルと戦いながら祐斗達を嘲笑する。特に彼が馬鹿にしているのはアーシアと松田だ。まだ一般人としての感覚が抜けず戦いに恐怖を抱いている彼と回復以外に戦闘に役立つ手段を持たないアーシア。特にアーシアは性格的に攻撃を当てられずとも相手の動きを阻害したり攻撃を相殺する位なら出来るはずだ。なのに彼女はその手段を習っていない。曹操はその事を笑っていた。どこまで平和ボケしているのだ、と。

 

そして既に戦意喪失した松田と気絶して動けない三人目掛けて放つ為に構成員達は大規模な詠唱を行い出す。彼らの頭上に巨大な炎球が出現し、隕石のごとく落下する。

 

 

 

「ちっ!」

 

しかし、アザゼルが投げた光の槍によって破壊され、火の礫が落ちる程度に被害は留まった。だが、その代償は大きい。アザゼルは四人を守る為、曹操に無防備な姿を晒してしまっていた。

 

「……さようなら」

 

聖槍の矛先はアザゼルの心臓めがけて放たれる。アザゼルは心臓を貫かれて死ぬと思われたが、やはり歴戦の堕天使と言うべきか、僅かに体をずらす事によって致命傷を避け、槍は彼の右腕に突き刺さる。そして聖槍から聖なるオーラが放たれる瞬間、自ら腕を切り落とす事で即死を免れた。

 

 

しかし、事態は絶望しかない。既に戦えない四人に手負いのアザゼル。対照的に曹操は多少の手傷はおってはいるが未だ万全。構成員はアザゼルの前では塵芥に過ぎないが、禁手に至った影使いの実力は未知数。さすがのアザゼルも冷や汗を流す。

 

「拙いな……」

 

アザゼルが思わず弱音を吐いた時、突如魔法陣が現れ、中から魔法使いの格好をした少女が現れる。少女はアザゼル達の方に向き直ると深々と頭を下げた。

 

「初めまして。私はルフェイ・ペンドラゴン。ヴァーリチームに所属する魔法使いです。……曹操さん、ヴァーリ様からの伝言です。『邪魔だけはするなと言ったはずだ』。全く、私達に見張りを付けるなんて……。だから、これはささやかな嫌がらせですよ♪」

 

ルフェイが曹操達に向き直ると地震が起き、地面を割って無機質な物体で出来た巨人が現れる。それを見たアザゼルは驚愕の声を上げた。

 

「ゴグマゴクか! 古の神が創って次元の狭間に放置した破壊兵器がなんでこんな所に!? 機能は停止しているはずだろ!?」

 

アザゼルは目を輝かしながらゴグマゴクを見つめていた。

 

「オーフィス様が以前、動けそうな巨人を探知してたので、ヴァーリ様が探し出したんですよ。さぁ、ゴっくん! 曹操達にお仕置きをしてください!」

 

『ゴオオオォォォオオオオオオオオッ!!』

 

ルフェイの言葉と共にゴグマゴクは10メートルはある巨体を動かし、英雄派に向かって拳を振り下ろし構成員達を吹き飛ばす。その隙にアザゼルは四人を抱えてその場を離れた。

 

 

「槍よ、貫け!」

 

曹操はゴグマゴク目掛けてオーラを放ち、ゴグマゴクを転倒させる。ルフェイはこれ以上は無駄だと判断したのか転移して行き、曹操はフッと溜息を吐いた。

 

「……とんだ邪魔が入ったな。まぁ、良いか。雑魚の相手は詰まらないし今は引いておくよ。……今夜、二条城で総大将を使って儀式を執り行う。止めたかったら来る事だね」

 

その瞬間、アザゼル達の体をヌメリとした嫌な感触が襲い、何時の間にか景色が元の戻っていた。

 

「……メディアさん」

 

「分かっているわ」

 

彼らが怪我をしているのを見たメディアは周囲の人間に術をかけ騒ぎにならないようにする。結局、アザゼルたちはそのまま冥界の病院に運ばれる事となった。松田達が重傷を負った事はグレモリー家に伝えられるも、リアス達は旧魔王が起こしたと思われる暴動の鎮圧で不在。

 

 

「……私が出るね」

 

セラフォルーは部下と妖怪達にそう告げる。彼女達は曹操達が逃げ出さない様に待ち構える予定であったが、事態の深刻さを考えて魔王自らの出撃を決定した。妖怪と会談予定だった須弥山からも援軍が来る事となっているが、援軍を待っている間に儀式が開始される可能性を考慮して待たずに向かう事となった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「曹操、儀式の場に異変が起きている。今すぐ来てくれ」

 

その頃、影使いは曹操を儀式を行う予定の場に急いで連れてきた。肝心のゲオルクは今出払っており、仕方なく見に行った曹操であったが、彼の言うような異変は見当たらない。

 

 

 

「……何処に異変……がっ!?」

 

怪訝そうな顔をして影使いの方を振り返ったその時、彼の口内に硬い物が押し込まれる。曹操の口の中に銃口を突っ込んだ影使いの頬には何時の間にか丸い模様が浮き出ており、辺りに銃声が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

「どうした!?」

 

「……此奴が裏切ったんだ。だから殺した。まぁ、コッチもただでは済まなかったけどね。悪いがフェニックスの涙が不足している今、俺は出れない。今夜は君達に任せるよ」

 

銃声を聞きつけて英雄派の幹部が駆けつけた時、そこには脇腹から血を流した曹操と血塗れで死んでいる影使いの姿があった……。

 

 

 

 

 

 

 




次回は黒歌とのイチャイチャと英雄派の儀式

意見 感想 誤字指摘お待ちしています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。