霊感少年の幽雅な生活 (完)   作:ケツアゴ

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999さんスイマセン 頂いたキャラの名前間違ってました

霊子⇒佳織でした

十巻は短め そしていよいよ十一巻で……


メディアがなぜ曹操と会ってたのかも明らかになります


学園祭のライオンハート
六十話


「ありゃりゃ、参ったねこりゃ」

 

一誠は闇の中で座り込みながら呟く。先程ベットの中に入ったはずなのに知らない空間に来ており、彼はそれが夢、詳しく言うのなら霊的干渉を受けて見せられている悪夢の類だと理解した。一寸先も見えないほど深い闇の上に先ほど出したはずの声すら聞こえない。常人なら気が狂いそうな空間の中、一誠は呑気げに座り込む。

 

「ウフフフ、落ち着いていらしゃいますね」

 

「……やっぱり君か」

 

そんな中、聞こえるはずのない声が一誠の耳に届く。何処か蠱惑的で妖艶さを感じさせる声の正体は怨群佳織。一誠さえも引く程の怨念を放つ怨霊であり、一誠に惚れたと言って家までやってきた相手だ。佳織は一誠の隣に座るなりしな垂れかかり、耳元で甘く囁く。

 

「私は彼処でず~っと居ましたが誰も気付いてい下さいませんでした。でも、貴方は気付いて下さいました。だから、貴方は私の運命の方に決まっていますわ! ……ねぇ、一つになりましょう?」

 

まるで水中から突き出したかの様に地面から無数の手が現れ一誠に掴みかかる。霊子も一誠にしがみつき、徐々に地面へと沈んでいった。

 

「ああ、なんて素敵なのかしら。私の運命の方と……」

 

 

 

 

 

 

 

「……鬱陶しい!」

 

「きゃっ!?」

 

突如一誠の体が光ったかと思うと無数の手や佳織の体を弾き飛ばす。そして地面から這い出てきた一誠が手を翳すと佳織の体を無数の鎖が縛り付けた。

 

「あら、緊縛プレイがお好みかしら?」

 

「……君が気付かれなかったのは、君のタチが悪すぎて見る力のある人でさえ本能的に意識の外に追いやってたからだ。……さて、俺を襲ったのは気に入らないけど、その力は評価に値する。多分魔王を超えてるんじゃないかな。俺でも最大まで倍加しないと危ないや。……我、命ずる。汝、我下僕となりて力を振るうべし!」

 

「あぁぁぁぁぁぁんっ!」

 

佳織を縛る鎖は締めつけを更に強め、強く輝き出す。放たれる光は闇を打ち消し、全ての闇が晴れた時、一誠は目を覚ます。窓を見ると朝日が差し込んでいた。

 

「……調伏完了。二度寝しよ」

 

まだ余裕で寝ていられる時間だと判断した一誠は夢の中で力を使った事による疲れを癒すべく、全裸のベンニーアを抱き枕の代わりにして睡魔を受け入れようとした時に手が彼女の小振りな胸に触れ、とりあえず揉んでおいた。

 

 

 

 

「ん~ベンニーアちゃんのちっぱいも触り心地が……ぐはっ!」

 

発言の直後、一誠の鳩尾に衝撃が走り睡魔とは別の理由で彼の意識は閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《もう少し乙女心を学ぶべきだと思いやすよ》

 

「ごめんごめん。でも、俺は小さいのにも需要があると思うよ? 大きいのには挟まれたい、小さいのは挟みたいって俺の心の師匠も言ってたし」

 

《筋金入りのどスケベでやんすね。何処の誰でやんすか?》

 

「爺さん所の次男。この前、貧乳の人との浮気現場目撃したんだけど、口止め料を貰う時に言ってた」

 

昼休み、何時もの様に一緒にお昼ご飯を食べようとしていた一誠とベンニーアは今朝の事を話していた。

 

《とりあえずヘル様にはあっしから告げ口してご褒美を頂くでやんす。分け前は7:3でいいでやんすね?》

 

「うん! 多分ボッコボコにされた後だったら口止め料を返せって言わないだろうし、両方貰っちゃおう」

 

あくどい話である。とある神が謎の悪寒に襲われる中、一誠は重箱を広げた。最近では一誠の母親と玉藻、そして黒歌がお弁当を作っており、それぞれの料理が一段毎に入っている。

 

一番上は母親が作ったオカズでササミでチーズと梅と大葉を巻いて揚げたものや豆腐ハンバーグなどが入っている。二番目は玉藻の料理が入っており、レンコン入りのツクネを串に刺したものや筑前煮、煮豆や揚げ出し豆腐などの和食が中心となっている。そして最後は黒歌の料理だ。鳥の唐揚げ入り、梅じその混ぜ込みご飯、刻んだ沢庵と焼き鮭を解してて入れた混ぜ込み飯をオムスビにし、シナっとならないようにラップでくるんだ焼き海苔が入れられている。

 

 

なお、明らかに一人で食べる量ではないが全て一誠の腹に収まる。普通サイズのお弁当を食べ終わったベンニーアはもう慣れたのかコメントをせず、黙って膝を向ける。すると一誠は何も言わずに膝に頭を乗せた。

 

「……何時も悪いね」

 

《いいやいや、これも未来の妻の役目でやんすから。……あの怨霊は本当に大丈夫でやんすか?》

 

ベンニーアの声には明らかに心配が含まれている。多くの魂を見てきた彼女から見てもアレは異常だったのだろう。いくら一誠が術で縛り付けたといっても不安は尽きないようだ。

 

 

「ん~、大丈夫」

 

しかし、当の本人は心配を知ってか知らずか呑気に答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を殺していいのは玉藻だけだし、玉藻を殺してていいのも俺だけなんだ。だから、俺は玉藻以外には絶対に殺される気はない。実力と霊である事を考慮して一度は見逃したけど、次はないよ」

 

《そ、そうでやんすか……あれ? 寝てるでやんすか?》

 

一誠が平然と発した言葉に気圧されたベンニーアであったが、一誠が静かに寝息を立てている姿を見て微笑む。辺りをキョロキョロと見渡し人目がないのを確認した彼女はそっと顔を近づけ、軽く口付けをした。

 

《……あっしはあの二人と違って共に過ごした時間も対してありやせんし、貴方の助けにもなれやせん。でも、貴方の話を聞き、貴方の姿を見てあっしは確信しやした。貴方に惚れていると。ま、焦っても仕方ありやせんし、のんびりと行かせて頂きやすよ》

 

その時穏やかな風が吹き彼女の頬を撫でる。そろそろ季節は冬に移り変わろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、一誠、ベンニーアちゃん。学園祭が近いけど二人のクラスは何をするの?」

 

それは夕食時、揚げたて熱々のトンカツに大葉を巻きながら口に運んでいた一誠の手が止まる。どうやら学園祭でのクラスの出し物について触れて欲しくなかったようだ。

 

《あっしの所はフリーマーケットでやんす、各自家から使わなくなった物を……あっしの所は古い鎌か魔術書位でやんすかねぇ?》

 

「はいはい、駄目よ。危ないでしょ? それで、一誠は何をするの?」

 

流石の適応力で軽く窘めた母親は一誠から聞き出そうとする。しばらく無言で誤魔化そうとしていた一誠であったが、二枚目のトンカツを使って作られたカツ丼を差し出されては黙っていられなかった。

 

「……執事&メイド喫茶」

 

その瞬間、玉藻と黒歌の耳が動き、一誠はカツ丼を掻き込みながら嫌な予感に襲われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、その話は協力者である魔女の耳にも届くこととなる……。

 

 




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